「妊娠できるか検査したい」と思ったとき、どのような検査を受ければよいのか、どこを受診すればよいのか気になる方もいるでしょう。妊娠に関わる検査には、将来の妊娠に備えて体の状態を確認するブライダルチェックや、妊娠しにくい原因を調べる不妊検査などがあります。
ただし、はじめにお伝えしておきたいことがあります。「妊娠できるかどうか」を直接判定できる検査は存在しません。これらの検査でわかるのは、妊娠を妨げる要因が現時点で見つかるかどうかであり、検査結果に問題がなくても妊娠しないことはありますし、何か見つかっても治療によって妊娠に至ることも多くあります。
それでも検査を受ける意義は大きく、卵管の閉塞や重度の男性不妊など、検査をしなければわからない状態を早い段階で知ることができます。
この記事では、女性・男性それぞれの主な検査項目や受診できる医療機関、検査費用や保険適用、検査を受けるタイミングについて解説します。
妊娠できるかを調べる検査
妊娠に関わる体の状態を調べる検査には、ブライダルチェックや不妊検査があります。ブライダルチェックは妊娠に備えて現在の健康状態を確認する検査、不妊検査は妊娠しにくい原因を調べるための検査です。
女性は子宮や卵巣の状態、ホルモンの分泌、感染症の有無、卵管の通過性などを、男性は精子の状態や感染症の有無などを調べます。これらの検査を受けることで、現在の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)に関わる体の状態を知り、将来のライフプランや今後の妊活を考えるきっかけになります。
国立社会保障・人口問題研究所が実施した2021年の出生動向基本調査では、不妊を心配したことがある夫婦の割合は39.2%、実際に検査や治療の経験がある夫婦は22.7%となっています1)。前回2015年の調査結果はそれぞれ35.0%と18.2%であり、いずれも増加傾向となっています2)。
このような状況からも妊娠できるかを調べる検査は、以前よりも身近なものとなっています。妊娠を希望する時期や現在の状況に応じて、ブライダルチェックや不妊検査など、どのような検査が適しているかを知っておくとよいでしょう。
ブライダルチェックと不妊検査の違いは
ブライダルチェックと不妊検査の違いとして、目的や位置づけが異なります。
前述のとおり、ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えて今の体の状態を把握するための予防的・自主的な検査で、妊活を始める前や初期の段階に、将来子どもを望むすべての人が対象となります。
一方、不妊検査は、妊娠を希望して一定期間妊娠に至らない場合に、その原因を医学的に特定し治療へつなげることを目的とした検査です。検査内容には共通する項目も多いものの、費用面でも違いがあり、ブライダルチェックは原則自費である一方、不妊検査は医師が必要と判断すれば保険や助成の対象になることがあります。
ブライダルチェックと不妊検査の違いは、以下の記事でも詳しくまとめているのであわせてご覧ください。
妊娠できるかを調べる検査項目
妊娠に関わる検査には、女性側の検査と男性側の検査があります。ここからは、男女それぞれの主な検査項目を紹介します。なお、実施する検査項目や検査セットの内容は医療機関によって異なります。
女性側の検査
女性側では、子宮や卵巣の状態、ホルモンの分泌、感染症の有無、卵管の通過性などを調べます。
経腟超音波検査
経腟超音波検査は、腟内に細い器具を入れ、超音波で子宮や卵巣を画像として観察する検査です。
子宮や卵巣の形・大きさなどを確認し、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、卵巣嚢腫、子宮内膜症など、妊娠に影響する可能性がある病気を疑う所見がないか調べます。
ホルモン検査
ホルモン検査では採血を行い、排卵や月経周期に関わるホルモンの分泌状態を調べます。主な検査項目は次のとおりです。
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)
- 黄体形成ホルモン(LH)
- エストロゲン
- プロゲステロン
- プロラクチン
- 甲状腺ホルモン
ホルモンの分泌量は月経周期によって変動するため、同じ人でも検査を受ける時期によって検査値が変わることがあります。適した時期は検査項目ごとに異なるため、医療機関の指示に従いましょう。
AMH検査
抗ミュラー管ホルモン(AMH)検査は、採血によって卵巣に残っている卵子の数の目安となる「卵巣予備能」を調べる検査です。
ただし、AMHでわかるのは卵子の「数」の目安であり、卵子の質や妊娠のしやすさそのものを示すものではありません。数値が低くても妊娠される方はいますし、高ければ安心というわけでもありません。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では高い値を示すこともあります。
数値だけで判断せず、医師の説明を受けたうえで、今後の妊活やライフプランを考える参考のひとつとして活用してください。
感染症検査
感染症検査では、クラミジア、B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒などの感染状況を調べます。たとえばクラミジア感染は、卵管の閉塞や癒着につながり、妊娠に影響することがあります。
また、風疹の抗体価を調べることもあり、低い場合は妊娠前のワクチン接種を検討します。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査は、子宮の入り口から造影剤を注入して、子宮の形や卵管の通り具合を確認する検査です。
一般的なブライダルチェックの検査セットに含まれることは少ないものの、医療機関によってはオプションとして追加できる場合があります。また、妊娠しにくい原因を詳しく調べる際には、不妊検査の一環として行われます。
男性側の検査
男性側では、主に精液検査や感染症検査を行います。
精液検査
精液検査は、採取した精液から精液量、精子濃度、運動率、正常形態率などを調べ、精子の状態を評価する検査です。精液の状態は体調や採取条件によって変動するため、検査結果によっては再検査を行うことがあります。
なお、精液検査を受ける際は、検査前に2〜7日ほど禁欲期間を空けることが国際的な基準で推奨されています。期間が極端に短かったり長かったりすると、本来の状態を正しく反映しない結果になることがあります。予約時に確認しておきましょう。
男性ホルモン検査
採血によりテストステロンなどの男性ホルモンの値を調べます。精子をつくる機能や性機能に関わるホルモンで、精液検査の結果とあわせて評価します。
感染症検査
男性の感染症検査では、クラミジア、B型肝炎、C型肝炎、HIV、梅毒などの感染状況や、風疹の抗体価を調べます。
感染症によってはパートナーに感染したり、妊娠や将来の子どもに影響したりする可能性があるため、妊娠前に確認しておくことが大切です。
妊娠できるかの検査はどこで受けられる?
妊娠に関わる検査は、不妊治療専門クリニックや産婦人科・婦人科、泌尿器科(主に男性向け)などで受けられます。それぞれ対応している検査や診療範囲が異なるため、検査を受ける目的に合わせて選びましょう。
同じ診療科でも、受けられる検査は医療機関によって異なります。受診前に、希望する検査に対応しているかをホームページなどで確認しておきましょう。
また、パートナーと一緒に検査を受けたい場合は、女性・男性双方の検査に対応している医療機関を選びましょう。
妊娠できるかの検査は保険適用される?費用の目安
妊娠に備えて現在の体の状態を確認するブライダルチェックは、病気の診断や治療を目的とした検査ではないため、自費診療となります。
一方、不妊症が疑われる場合や月経不順などの症状がある場合に、医師が診断や治療のために必要と判断した検査には、保険が適用されることがあります。
自費診療の検査費用は、医療機関がそれぞれ設定します。そのため、同じ検査でも医療機関や検査項目の組み合わせによって費用が異なります。
ORINAS ART CLINICのブライダルチェック費用
費用の一例として、ORINAS ART CLINICのブライダルチェックの費用を紹介します。当院では、女性・男性それぞれに以下のセットプランをご用意しています(2026年8月時点)。
<女性ブライダルチェック>
当院の女性ブライダルチェックの詳細については以下のページをご覧ください。
<男性ブライダルチェック>
当院の男性ブライダルチェックの詳細については以下のページをご覧ください。
自治体の助成金制度を利用できる場合がある
住んでいる自治体によっては、ブライダルチェックや不妊検査で受ける検査費用の一部について、助成制度を利用できる場合があります。例えば、東京都では「不妊検査等助成事業」や、「TOKYOプレコンゼミ」受講者向けの検査費助成を実施しています。
ただし、助成の対象となる検査や医療機関、年齢、住所などの条件は、自治体や制度によって異なります。助成制度を利用したい場合は、検査を受ける前に、住んでいる自治体の公式情報で対象条件を確認しましょう。
東京都の助成金制度については、以下の記事もあわせてご覧ください。
妊娠できるかの検査はいつ受ける?
ブライダルチェックを受ける時期に、明確な決まりはありません。将来の妊娠を考え始めたときや、自分の体の状態が気になったときに受けられます。具体的な妊娠の予定が決まっていない場合も、現在の状態を知ることで今後の妊活やライフプランを考えやすくなります。
女性の妊孕性は年齢とともに低下する傾向があり、30歳を過ぎると徐々に低下し始め、35歳を過ぎるとその低下が加速することが知られています。そのため、年齢は検査を受ける時期を考えるうえでの目安のひとつになります。
ブライダルチェックを受けるタイミングについては、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
妊娠できるか検査する際は夫婦・男女ペアで受けることも大切
妊娠できるかを調べる際、夫婦やパートナーがいる場合は、男女ペアで検査を受けることが大切です。WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因は男性のみが24%、男女双方が24%で、男性側の原因が関係する割合は約半数とされています。

男女ペアで検査を受けると、女性・男性双方の状態を確認でき、検査結果を踏まえて今後の妊活の進め方や必要な対応を相談しやすくなります。
ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリットなどについては、以下の記事でも詳しくまとめているのであわせてご覧ください。
一方、独身・未婚の方も、将来妊娠を希望している場合は、早めに検査を受けて妊孕性に関わる現在の体の状態を知っておくと、今後の妊活やライフプランを考えやすくなります。
検査の結果、AMHの値が同年代の平均より低かった場合、選択肢のひとつとして卵子凍結を検討する方もいます。将来の妊娠に備えて、今の時点の卵子を凍結して保存しておく方法です。
ただし、注意していただきたい点があります。卵子を凍結したからといって、将来の妊娠が保証されるわけではありません。凍結できる卵子の数や質は年齢や卵巣の状態によって変わり、凍結・融解の過程で使えなくなる卵子もあります。凍結した卵子を使って出産に至る割合は、凍結した年齢が若いほど、また凍結した個数が多いほど高くなるとされていますが、それでも確実ではありません。また、採卵にあたっては排卵誘発剤の使用や採卵手術が必要で、身体的な負担や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などのリスクも伴います。費用は原則として自費診療です3), 4)。
AMHが低いという結果だけで急いで判断せず、現在の年齢やライフプラン、パートナーの有無なども含めて医師と相談したうえで検討してください。逆に、AMHが低くても自然に妊娠される方は多くいます。数値に不安を感じたときこそ、一人で結論を出さずに相談していただきたいと思います。
日本産科婦人科学会「医学的適応による未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する見解」
「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する見解」(社会的適応)
妊娠できるかの検査に関するよくある質問
ここでは、妊娠できるかの検査について、よく寄せられる質問に回答します。
Q:生理中でも検査を受けられますか?
A:生理中でも受けられる検査があります。例えば、FSHやエストロゲンなどの女性ホルモンの基礎値は、月経周期の初期に測定するのが一般的です。
一方、検査項目によって適した時期は異なります。予約時に生理中であることや月経周期を伝え、受診する時期を医療機関へ確認しましょう。
当院では以下のような分類でそれぞれの検査を実施します。
Q:ピル服用中でも検査を受けられますか?
A:ピル服用中でも受けられる検査はあります。ただし、ピルはFSHやLHなどの分泌を抑えて排卵を抑制する薬です。そのため、FSHやLH、発育中の卵胞から分泌されるE2、未熟な卵胞から分泌されるAMHなどの検査結果に影響する可能性があります。そのため、ホルモン検査やAMH検査では、服用状況を踏まえて結果を判断する必要があります。
予約時や問診時に、服用しているピルの名称と服用目的を医師へ伝えましょう。検査のために自己判断で服用を中止せず、検査時期や休薬の必要性について医師に確認してください。
院長からのメッセージ
「妊娠できるか調べたい」というご相談は、当院でも多くいただきます。最初にお伝えしておきたいのは「妊娠できます」と判定できる検査は存在しないということです。
検査でわかるのは、その時点で妊娠を妨げる要因が見つかるかどうかです。卵管が詰まっていないか、排卵はしているか、精子の状態はどうか、感染症はないか。こうした一つひとつを確認していきます。明らかな問題が見つかれば、それを治療・改善することで妊娠に近づける可能性があります。逆に、すべて問題がなくても妊娠しないことはあるため、検査だけで「妊娠できます」ということはできないのです。
AMHについても補足させてください。この検査でわかるのは卵子の「数」の目安であり、卵子の質や妊娠のしやすさそのものを測るものではありません。数値が低くても妊娠される方はいますし、高いから安心というわけでもありません。数字だけが独り歩きしやすい検査なので、必ず結果の説明を受けたうえで受け止めていただきたいと思っています。
そのうえで、検査を受けたことで見えてくる選択肢もあります。そのひとつが卵子凍結です。今はまだ妊娠を考える時期ではないけれど、いずれは、と思っている方にとって、現在の卵子を保存しておくことは将来の可能性を広げる方法になります。年齢が若いうちに行うほど有利であることもわかっており、「知ったから動ける」という意味では、検査を受ける価値そのものだとも言えます。採卵に伴う体への負担やリスクもありますので、そのあたりも含めてご説明します。
検査を受ける意味は、ほかにもあります。卵管が詰まっている、精子がほとんどいないといった状態は、検査をしなければわかりません。時間が経ってから見つかるより、早く知っておくほうが、選べる道は確実に広がります。
そして、できればお二人で受けてください。不妊の原因の約半数には男性側の要因が関わるとされています。片方だけ調べても、全体像は見えません。
「まだ具体的に妊娠を考えているわけではない」という段階でも構いません。知っておくこと自体に価値がありますし、知ったうえで「今は何もしない」と決めることも、立派な選択です。
参考文献
1)国立社会保障・人口問題研究所. 第16回出生動向基本調査報告書(2021年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou16/JNFS16_Report04.pdf
2)国立社会保障・人口問題研究所. 第15回出生動向基本調査報告書(2015年調査). 国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_report4.pdf
3)日本産科婦人科学会. 医学的適応による未受精卵子,受精胚および卵巣組織の凍結・保存に関する見解・指針/細則. 2026年6月改定. 日本産科婦人科学会ウェブサイト(倫理に関する見解・指針一覧)
https://www.jsog.or.jp/medical/576/
4)日本生殖医学会. 倫理委員会報告「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する指針」. 2018. 日本生殖医学会ウェブサイト
http://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2018_01.html







