妊娠初期に、頭がふわふわしたり、急に立ちくらみがしたりして不安になっていませんか。
慣れない体の変化で症状が続くと、「何か悪いことが起きているのでは」と心配になる方も少なくありません。妊娠初期のめまいや立ちくらみは多くの方が経験する症状で、感じ方や原因にも個人差があります。
この記事では、めまいの種類や妊娠初期に起こりやすい原因、症状が出たときの対処法、いつまで続くのか、そして注意が必要なケースについて解説します。
妊娠初期のめまいや立ちくらみはめずらしくない
妊娠初期は、つわりと並んで、めまいやふらつきを感じる方が少なくありません。国内の調査でも、妊娠初期の妊婦の66.1%がめまいや立ちくらみを経験しており、その頻度も妊娠中期よりも妊娠初期が多かったと報告されています1)。ただしこの調査で妊娠初期の対象となったのは56名と限られており、数値は目安として捉えてください。
めまいにはいくつか種類があり、「頭がふわふわ・ふらふらする」「ぐるぐる回る感じがある」「急に立ちくらみがする」などの表現をされることがあります。ここからは、それぞれのめまいの種類を解説します。
ぐるぐるするめまい|回転性めまい
自分自身や周りの景色がぐるぐると回転しているように感じるめまいは、回転性めまいとよばれます。
天井や部屋全体が回っているような感覚を伴うことが多く、耳の奥にある三半規管や前庭(体のバランスをとる器官)の不調が関係しているケースが少なくありません。
このタイプは、耳鳴りがしたり音が聞こえにくくなったりする感覚を伴うこともあります。
ふわふわ・ふらふらするめまい|浮動性めまい
体がふわふわと浮いているように感じたり、地に足がつかずふらふらするように感じたりするめまいを浮動性めまいといいます。
天井や部屋全体が回転している感覚ではなく、自分の体の軸そのものが定まらないような感覚を伴います。このタイプのめまいには立ちくらみを伴うこともあります。
急に目の前が真っ暗になる|立ちくらみ
座った状態や寝た状態から急に立ち上がったときに、目の前が一瞬暗くなったり、くらっとしたりするのが立ちくらみです。
通常は、立ち上がると足の血管を収縮させて脳への血流を保つ仕組みが自律神経によって働いていますが、調整が追いつかないと脳への血流が一時的に不足し、立ちくらみにつながるとされています。
妊娠初期にめまいが起こる原因
妊娠初期のめまいには、体のさまざまな変化が複雑に関わっています。
血圧の変化
妊娠中は、体が赤ちゃんを育てる準備をするため血圧が変化しやすくなります。
妊娠が成立した後、血圧はゆるやかに下がっていき、妊娠20週前後で最も低い値になるといわれています。血圧の変化に加え、hCGやプロゲステロンといったホルモンの影響で、血管の収縮・拡張を調整する神経の働きが不安定になり、立ち上がったときに血圧の調整が追いつかない起立性調節障害につながることもあります。
つわりによる脱水
つわりで嘔吐が続いたり、食事や水分を十分にとれていなかったりすると、脱水の状態になりやすく、立っているとフラフラする、めまいがするといった症状のきっかけになることがあります。
つわりで食事がとれない状態が長く続くと、ビタミンなどの栄養が不足することがあります。ふらつきが強くなる、まっすぐ歩きにくい、物が二重に見えるといった症状が出た場合は、点滴による治療が必要になることがあります。我慢せず早めに相談してください。
その他にも急激な体重減少がある、水分がとれない、排尿回数が減少するなどの場合は受診するようにしましょう。つわりの症状は、妊娠16週前後で落ち着いてくることが多いです2)。
貧血の影響
妊娠中は体全体の血液量が増えますが、赤血球の増える速さより血液の液体成分である血漿(けっしょう)が増える速度のほうが速く、血液が相対的に薄まります。
血液が薄まると、酸素を全身に運ぶ働きが弱まるため、脳への酸素供給が一時的に不足し、めまいや立ちくらみを感じることがあります。
この変化は妊娠初期からはじまるため、妊娠初期にめまいを感じる原因となる可能性があります。
妊娠初期にめまいが起きたときの対処法
めまいの感じ方や原因はいくつかありますが、めまいを感じた瞬間は、どのタイプのめまいや原因であっても、まずは転倒を防ぐために安全の確保を優先します。そのうえで原因に応じたケアをしていきましょう。
その場で座る、横になる
めまいを感じたら、無理に動かず、その場でしゃがむ・座るなど、姿勢を低くして安全を確保しましょう。立ったままでいると転倒の危険があります。
立っていて気が遠くなりそうなときは、すぐに座れる場所を探してください。座っても治らないときや、仰向けで気分が悪いときは、頭を下げたり、体を横向きにしたりすると楽になります。
座ったり横になったりして落ち着いた後は、急に起き上がらず、ゆっくりと体を動かしましょう。
こまめに水分や食事をとる
つわりで嘔吐が続くなどして水分が十分にとれないと、脱水がめまいのきっかけになることがあります。少しずつ、こまめに水分をとるのを心がけるとよいでしょう。
また、空腹になると吐き気が強くなる一方、一度にたくさん食べると吐いてしまうため、こまめに少量ずつ食べましょう。水分がとれない、尿の色が濃い、8時間以上尿が出ていないなど、何か変わった様子がある際は受診してください。
めまいの症状はいつまで続く?
妊娠に伴うめまいがいつまで続くかは、明言できるものではありません。妊娠初期のめまいを経験する割合は、先述の通り66.1%という調査の結果がありますが、同じ調査では妊娠中期が65.7%、妊娠後期が59.1%という結果であり1)、妊娠初期以降も経験する人は少なくありません。
一方で症状を感じる頻度は妊娠初期がもっとも高く、中期以降はやや落ち着く傾向が見られることも結果として示されています。
このように明確な継続期間はないものの症状自体は落ち着く傾向があるため、転倒などには注意しつつ様子をみながら過ごすようにしましょう。
妊娠初期に注意が必要なめまい
ここまで紹介してきためまいの多くは、日常の中で起こり得るものです。ただし、その他の症状を伴う場合は、早めに医療機関へ連絡しましょう。
強い腹痛を伴うめまいは、すぐに受診してください
妊娠初期のめまいで、最も注意が必要なのが異所性妊娠(子宮外妊娠)です。受精卵が子宮の中ではなく卵管などに着床した状態で、妊娠4〜12週ごろに症状が現れることが多いとされています。異所性妊娠が進むと卵管が破れ、お腹の中で出血が起こることがあります。このときに現れるのが、突然の強い腹痛と、めまい・立ちくらみ・気が遠くなる感覚です。
注意していただきたいのは、腟からの出血がほとんどない場合も多いという点です。お腹の中の出血は外からは見えません。「出血がないから大丈夫」と考えず、強い腹痛とめまいが重なったときは、すぐに医療機関を受診してください。
また、肩の先端が急に痛むという症状も、お腹の中の出血を示すサインとして知られています。お腹の血液が横隔膜を刺激することで、離れた場所である肩に痛みとして感じられるためです。一見関係のない症状に思えますが、妊娠初期に突然この痛みが出た場合は、すぐにご相談ください。
気を付けた方がいい症状
- 強い頭痛が消えない、目がちかちかする、視界がかすむ
- 意識が遠のく
- 出血がある、お腹が強く張る、痛む
- 片側に強い下腹部の痛みがある
- 肩の先端が急に痛む
- 同じ症状を繰り返す、なかなか改善しない
- 水分や食事がとれない、ふらつきが強い
これらの症状がでている場合は、ほかの疾患が原因である可能性も考えられます。症状が改善しないときは、一人で抱え込まずに早めに相談してください。
院長からのメッセージ
妊娠初期にめまいや立ちくらみを感じる方はとても多く、その多くは血圧やホルモンの変化によるもので、心配のいらないものです。ただ、不妊治療を経て妊娠された方には、ひとつだけ知っておいていただきたいことがあります。
異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性です。妊娠が確認できても、それが子宮の中にあるかどうかは、超音波で胎嚢を確認するまで分かりません。もし卵管などに着床していた場合、成長に伴って卵管が破れ、お腹の中で出血することがあります。このときに現れるのが、強い腹痛と、めまい・立ちくらみ・気が遠くなる感覚です。
ここで大切なのは、腟からの出血がほとんどないこともあるという点です。「出血していないから大丈夫」とは考えないでください。お腹の中で出血していても、外からは見えないことがあるからです。もうひとつ、肩の先端が急に痛くなるという、一見関係のなさそうな症状も、お腹の中の出血を示すサインとして知られています。
強い腹痛とめまいが重なったとき、意識が遠のくようなとき、肩の先が急に痛むときは、様子をみずにすぐに医療機関を受診してください。夜間や休日であれば救急外来もためらわないでください。
つわりで食事や水分がとれない状態が続いているときも、脱水からめまいにつながることがあります。判断に迷うときは、遠慮なくお声がけください。
参考文献
1)新川治子, 島田三恵子, 早瀬麻子, 乾つぶら. 現代の妊婦のマイナートラブルの種類,発症率及び発症頻度に関する実態調査. 日本助産学会誌. 2009;23(1):48-58.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/23/1/23_1_48/_pdf/-char/ja
2)Martinez de Tejada B, L.Vonzun, D.U.Von Mandach, A.Burch, M. Yaron, M.Hodel, D Surbek, I.Hoesli. Nausea and vomiting of pregnancy, hyperemesis gravidarum. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2025;304:115-120.
https://www.ejog.org/article/S0301-2115(24)00612-2/fulltext






