妊娠がわかったばかりの時期や、生理が遅れて妊娠の可能性を考えている時期に、「おりものの量が急に増えた」「色がいつもと違う気がする」と気になっている人もいるのではないでしょうか。
妊娠初期は、ホルモンの影響でおりものの量が増えたり、色や性状が変わったりしやすい時期です。ただし変化には個人差が大きく、おりものの様子だけで妊娠しているかどうかを判断することはできません。
この記事では、妊娠初期のおりものの特徴を量・色・におい・性状などの面から整理し、生理前のおりものとの違いや、医療機関への相談を検討したい状態を解説します。
妊娠初期はおりものが増えやすい
妊娠初期は、おりものの量が増えたと感じる方が少なくありません。これは、妊娠にともなってエストロゲンやプロゲステロンというホルモンの分泌が高まり、結果として腟や頸管からの分泌物が増えるためです。つわりや眠気などと同じく、妊娠のごく早い段階からこうした変化を自覚し始める方もいます。
実際に日本国内で行われた調査でも、妊娠初期の妊婦のうち83.9%がおりものの増加(調査内では「帯下の増加」と表現)を自覚していたことが報告されています1)。(ただしこの調査で妊娠初期の対象となったのは56名であり、数値は目安としてご覧ください)
このように、妊娠初期からおりものが増えるのは体の自然な変化のひとつと考えられます。ただし、色やにおいがいつもと違う場合や、かゆみ・痛みをともなう場合には、感染症など他の原因が隠れていることもあるため、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談すると安心です。
妊娠初期のおりものの特徴
妊娠初期のおりものは、色・量・におい・性状のそれぞれに変化がみられることがあります。ただし感じ方には個人差が大きく、どれか1つの特徴だけで妊娠や異常を判断することはできません。
色の特徴
妊娠初期のおりものの色は、一般的には透明から乳白色、または薄い黄色など比較的薄い色合いになるケースが多くなります。これは、妊娠することでエストロゲンなどのホルモン分泌の変化により、サラサラした水っぽい状態になりやすくなるためです。
また、茶色やピンク色、あるいは血液が混じったような色合いのおりものは、着床時のわずかな出血や、診察・性交後の刺激による軽い出血が色に影響していることがあり、妊娠初期にみられることがあるケースのひとつです。このような色合いも、少量で一時的であれば経過をみることが多いものです。ただし、腹痛を伴う場合や、量が増えていく場合は別です。詳しくは後述の「出血や下腹部の痛みを伴う」もご確認ください。
着床出血については以下の記事でもまとめているので、あわせてご覧ください。
注意したいケースとして、色が濃い黄色や黄緑色に変化する場合は、腟炎など感染症のサインである可能性があります。また、月経のような出血がある、出血の状態が続いている、強い下腹部痛を伴うといった場合は受診をするようにしましょう。
においの特徴
妊娠初期のおりものは、においがほとんどないか、あってもわずかなにおいであるケースが一般的です。妊娠によっておりものの量自体は増えて水っぽくなり、においも強くない状態となります。
人によってはヨーグルトのようなやや酸っぱいにおいがすることがありますが、これも極端な状態でなければ正常な範囲と考えられます。
一方で、注意したいケースとして、生臭さや魚のようなにおいを強く感じる場合は、細菌性腟症など感染症のサインである可能性があります。腟内の環境の変化が生じることで、こうしたにおいの変化が現れると考えられています。
においの感じ方は個人差もありますが、いつもと違うと感じた際には早めに相談しましょう。
性状の特徴
妊娠初期のおりものは、ホルモンバランスの変化によって量が増え、水っぽくさらさらした状態になることがあります。人によってはよく伸びるように感じることもあります。
一方で、カラカラと乾いた感じやベタベタした感じの場合にただちに異常というわけではありません。おりものの性状に関しても個人差は大きく、塊のような状態になるケースもあります。
おりものの量のほか、色やにおい、性状を含めておりものの変化だけで妊娠しているかを判断できるわけではありません。妊娠の成立自体は妊娠検査薬や医療機関で確認し、おりものの変化に異常がないかを併せてみていくことが重要です。
妊娠初期と生理前のおりものの違い
生理前と妊娠初期のおりものには共通する特徴が多く、見た目やにおいだけで区別することは困難です。ただし、それぞれの時期にみられやすい傾向には、次のような違いがあります。
これらはあくまで一般的な傾向であり、この表で自分がどちらかを判断することはできません。実際のおりものの状態には個人差があります。妊娠の可能性を確かめたいときは、適切な時期に妊娠検査薬を使用しましょう。
妊娠前の排卵日などのおりものについては、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
妊娠初期に注意したいおりもの
おりものの異常は、色・量・においだけでなく、かゆみや痛み、出血といった症状を伴うケースもあります。
かゆみ・痛み・強いにおいを伴う
おりものが黄色や膿状、泡状になるほか、強いにおいや、かゆみ・痛みを伴う場合は、細菌性腟症や性感染症などの可能性があります。
白くぽろぽろとした酒かす状・カッテージチーズ状のおりものと強いかゆみは、腟カンジダでよくみられる症状です。ただし、おりものの状態や症状だけで原因を特定することはできません。診察や検査の結果に応じて、適切な治療が選択されます。
なお、細菌性腟症は妊娠中に見つかった場合、早産や前期破水との関連が指摘されています。かゆみを伴わないことも多く、「においが少し気になる程度」で見過ごされやすい状態です。医療機関によっては妊婦全員に検査を行っているところもあります。
「おりものくらいで受診するのは大げさかもしれない」と感じる方もいますが、治療できる状態であり、早めに対応することに意味があります。気になる変化があれば遠慮なく相談してください。
出血や下腹部の痛みを伴う
妊娠初期の少量の出血では問題ないことも多いですが、鮮血が混じる、月経のような出血がある、強い下腹部痛を伴うといった場合は、切迫流産や流産の可能性もあります。速やかに受診を検討するようにしましょう。
少量の出血であっても、片側の下腹部に強い痛みがある場合や、めまい・立ちくらみを伴う場合は、異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性があります。異所性妊娠では腟からの出血が少なくても、お腹の中で出血していることがあるため、「出血が少ないから大丈夫」とは判断できません。特に不妊治療を経て妊娠された方では、異所性妊娠の頻度が自然妊娠よりやや高いことが知られています。
出血に強い腹痛が重なるときは、様子を見ずに速やかに受診してください。
妊娠初期の流産については、以下の記事でも解説しているのであわせてご覧ください。
おりものの不快感をやわらげるケア
妊娠初期におりものの量が増えて不快に感じるときは、外陰部を清潔に保ち、蒸れを防ぎましょう。
- 外陰部をぬるま湯でやさしく洗う
- 通気性のよい下着を選ぶ
- おりものシートや下着をこまめに取り替える
ただし、洗いすぎには注意が必要です。腟には内部の環境を保つ自浄作用があるため、腟の中まで洗う必要はありません。香料を含む石けんや洗浄剤は刺激になる可能性があるため、無理な使用は控えましょう。
妊娠初期のおりものに関するよくある質問
妊娠初期のおりものについて、よくある疑問に回答します。
Q:透明でよく伸びるおりものが出るのは妊娠のサインですか?
A:おりものが透明でよく伸びる状態は、妊娠初期の状態でも見られる可能性がありますが、生理周期の中で排卵日付近の特徴とも近い状態です。
また、おりものの状態は個人差や周期ごとにも差があり、おりものの状態だけで妊娠の有無や体の状態を判断することはできません。
妊娠しているかどうかを判断したい場合、おりものの状態だけで判断するのではなく、まずは適切な時期に妊娠検査薬を使用して確認するのがよいでしょう。
妊娠検査薬の使い方など基本的な内容は以下の記事をご覧ください。
Q:妊娠中にカンジダになったら赤ちゃんに影響はありますか?
A:妊娠中の腟カンジダが赤ちゃんの発育に直接影響することは、通常ありません。ただし妊娠中は使える薬が限られるため、自己判断で市販薬を使わず、必ず医療機関で相談してください。妊娠中はホルモンの影響でカンジダを発症しやすい状態になることも知られています。
Q:茶色いおりものが続いていますが受診したほうがいいですか?
A:茶色は古い血液が混じった色で、少量かつ短期間であれば経過をみることもあります。ただし、量が増えていく、何日も続く、腹痛を伴うといった場合は受診してください。妊娠が確認できている場合でも、超音波で子宮内に妊娠していることを確かめておくことが大切です。
院長からのメッセージ
妊娠がわかったばかりの時期は、体のちょっとした変化がすべて気になるものです。おりものもそのひとつで、「量が増えたけれど大丈夫でしょうか」というご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、量が増えること自体は妊娠に伴う自然な変化です。この記事にあるとおり、妊娠初期の8割以上の方が経験するという国内の調査もあります。透明から乳白色で、においがきつくなく、かゆみもないのであれば、心配はいりません。
一方で、注意していただきたい変化もあります。魚のような生臭いにおいが強くなる、白くぽろぽろとしたおりものが出て強いかゆみを伴う——こうした場合は、細菌性腟症やカンジダなどの可能性があります。妊娠中の細菌性腟症は、早産や前期破水との関連が指摘されています。「おりものくらいで受診するのは大げさかな」と思わずに、気づいた時点でご相談ください。妊娠中は使える薬が限られますので、市販薬を自己判断で使うことは避けてください。
もうひとつ。茶色やピンク色のおりものは、着床に伴うものや診察後の刺激によることもありますが、それだけとは限りません。特に不妊治療を経て妊娠された方は、子宮外妊娠の可能性を確認しておく必要があります。少量の出血に片側の下腹部痛が重なるときは、様子を見ずにご連絡ください。
参考文献
1)新川治子, 島田三恵子, 早瀬麻子, 乾つぶら. 現代の妊婦のマイナートラブルの種類,発症率及び発症頻度に関する実態調査. 日本助産学会誌. 2009;23(1):48-58.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/23/1/23_1_48/_pdf/-char/ja







