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最終更新日:
2026-08-28

基礎体温を記録していて、「いつまで経っても体温が上がらない」「ガタガタでどう見ればいいか分からない」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。

一般的に基礎体温は、排卵後に分泌が増えるプロゲステロンというホルモンの影響で上昇し、低温期と高温期の二相に分かれます。一方で、排卵が起こっていない場合や、排卵していても体温の変化がはっきり現れない場合などは、基礎体温が典型的な二相性を示さないこともあります。

基礎体温が上がらない原因は一つではなく、ホルモンの状態や生活習慣、測定方法などが関係している可能性があります。妊娠を希望している場合には、排卵の有無や妊娠への影響が気になる方も多いでしょう。

この記事では、基礎体温が低いままで上がらない・高温期がない原因や妊娠への影響、対処法、医療機関を受診する目安について解説します。

基礎体温が低いままで上がらない・高温期がないのは異常?

基礎体温が低いままで上がらない、高温期といえる期間がないという状態は、実際に経験する方も少なくありません。排卵が起きていない可能性もありますが、排卵していてもグラフの上では二相に見えないことがあるため、基礎体温だけで排卵の有無を判断することは容易ではありません。

ここでは基礎体温が低温期から高温期になって二相に分かれる理由と、基礎体温が上がらない状態を経験する頻度について参考になる結果を解説します。

基礎体温が二相に分かれる理由は?

基礎体温が排卵を境に低温期から高温期になり二相に分かれる理由は、プロゲステロンというホルモンが関係しています。生理周期の中で排卵が完了すると卵胞は黄体と呼ばれる組織に変化します。この黄体から分泌されるホルモンがプロゲステロンであり、プロゲステロンは子宮内膜を胚(受精卵)が受け入れられる状態に変化させるとともに、体温を上げる作用があります。

このため、排卵を機にプロゲステロンの分泌が増えることで高温期に移行し、基礎体温は二相に分かれます。

基礎体温の典型的なグラフの例
基礎体温の典型的なグラフの例

基礎体温が低いままで上がらない・高温期がない状態を経験する人の割合は?

基礎体温が上がらない原因のひとつは排卵していないケースです。排卵をしていない場合、プロゲステロンの分泌が増えないため、基礎体温が上がらない状態となります。

排卵をしていなければ月経が来ないので気付くはずだと思うかもしれませんが、海外の研究では月経のような出血がみられた人のうち、36.7%は調査した周期に排卵していなかったという結果があり1)、無排卵の周期を経験することは決して珍しいわけではないことがわかります。

また、排卵をしていても基礎体温の変化が現れない・わかりにくいというケースもあります。98名の女性の基礎体温を評価した研究では、排卵があったとされた77周期のうち22.1%は一相性であったという報告があります2)。この結果からは排卵があった周期でも、基礎体温が上がらない・高温期がないようにみえる場合があることがわかります。

このように基礎体温が低いままで上がらない・高温期がない状態を経験することは珍しいことでなく、その状態が継続するか、継続する場合はどのような対処をするかが重要といえます。

基礎体温が低いままで上がらない・高温期がない原因とは

基礎体温が低いままで上がらない・高温期がない状態は、前述のとおり排卵していないこと(無排卵)が原因のひとつです。

無排卵となる原因は、以下のようなものがあり複数の要因が関わる可能性もあります。

  • 生活習慣や体の変化:ストレス、急な体重変動など
  • ホルモンに関わる病気:多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、早発卵巣不全(POI)、甲状腺機能の異常・高プロラクチン血症など
  • 年齢による影響:初経後間もない時期や、閉経に向かう時期

また、無排卵でも月経は通常通りであることも珍しくありません。月経のような出血があるものの排卵していない状態を無排卵月経といい、見た目は通常の月経とほとんど変わらないため、排卵していないことに気づきにくい場合があります。

無排卵月経については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

一方で、排卵していても基礎体温が明確な二相性を示さないことがあり、プロゲステロンの分泌の不足などが原因となる可能性があります。プロゲステロンの分泌が不足する理由として、過度な運動や体重減少、ストレス、肥満、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、加齢などが考えられています。

また、まったく別の原因としてそもそも基礎体温が正確に計測できていないというケースもあります。基礎体温の計測では専用の婦人体温計を使う必要があり、朝目覚めたら起き上がらず、横になったままの状態で計測する必要があります。そのほかにも舌の裏側のつけ根に当てて、舌の下で計測するなどの注意点もあります。

基礎体温の計測の方法やグラフの書き方については、以下の記事もあわせてご覧ください。

このように、基礎体温が上がらない原因は一つとは限りません。特に将来的に妊娠を考えているケースでは自己判断で決めつけず、医療機関への相談も早期に検討するようにしましょう。

基礎体温が上がらないときの妊娠への影響

基礎体温が上がらない状態が続く場合、妊娠の成立に影響する可能性があります。

まず、高温期がまったくみられない場合はそもそも排卵自体が起こっていない可能性があります。排卵が起きなければ受精・着床が成立しません。

また、排卵があっても基礎体温が上がらない場合も注意が必要です。前述のとおり、基礎体温の上昇はプロゲステロンの働きによるものとされていますが、プロゲステロンは受精卵が着床しやすいように子宮内膜を整える役割を担っています。このため、プロゲステロンが十分に分泌されていない場合、着床に悪影響となる可能性があります。

ただし、「基礎体温の上がり方が弱い=プロゲステロンが不足している=妊娠しにくい」と単純に結びつけることはできません。プロゲステロンが不足する病態を黄体機能不全と呼びますが、これを確実に診断する方法が現時点では確立しておらず、不妊の独立した原因であるとも証明されていないというのが国際的な見解です。基礎体温のグラフから自己判断するのではなく、気になる場合は医療機関でホルモン検査を含めた確認を受けることをお勧めします。

基礎体温が上がらないときの対処法とクリニック受診の目安

基礎体温が上がらない・高温期がはっきりしないと感じたときは、セルフケアとしてまずは生活習慣の見直しを考えましょう。

食生活に関しては、過度な食事制限によるエネルギー不足は排卵に影響を及ぼすことがあるとされています。極端なダイエットは避け、バランスの取れた食事を意識しましょう。睡眠不足は体内リズムやホルモンバランスに影響を与えることが知られているため、毎日同じ時間に起きる、朝の光を浴びるなど、規則正しい睡眠習慣を心がけることも大切です。

また、見落としがちな点として、正しく測定できているか見直すことも重要です。基礎体温は、朝目覚めてすぐ、体を動かす前に測ることで正確な値が得られます。起床時間が不規則だったり、測定のたびに条件が異なったりすると、実際には体温が上がっていても変化が分かりにくくなることがあります。

一方で、これらのセルフケアだけでは改善が難しいケースもあります。3か月以上月経のない状態が続いていたり、月経周期が24日以内、または39日以上など月経不順がみられる場合などは、排卵にまつわる何らかの異常が隠れている可能性もあります。明確な異常がない場合でも、妊娠を希望して1年以上(35歳以上の場合は6か月以上)妊娠に至っていない場合は、婦人科での相談が推奨されます。

ただし、妊娠を希望している場合は必ずしも上記の期間を待つ必要はありません。医療機関での相談や検査を早めにすることで時間のロスを防げる可能性があるため、妊娠を望むケースでは早期の受診も検討しましょう。

基礎体温が上がらないことに関してよくある質問

基礎体温が上がらない場合に関する質問と回答をまとめました。

Q:基礎体温が上がらないことを初めて経験しましたが、どうすれば良いですか?

A:基礎体温が上がらない、あるいは高温期がはっきりしないという状態を初めて経験すると、不安を感じることもあるかと思います。しかし、1周期だけの変化であれば、決して珍しいことではありません。

排卵のタイミングがいつもより遅れていたり、その周期だけ排卵が起こらない「散発性無排卵」が生じていたりする可能性もあります。先述の文章でも紹介したとおり、その周期に月経のような出血がみられた人でも36.7%は排卵していなかったという報告もあります1)

心理的なストレスなどは排卵に影響する可能性があり、一時的に排卵が乱れる要因になることがあります。ほかにも起床時間のずれや測定条件の違いなど、排卵そのものとは直接関係のない要因で高温期がはっきりしないように見えることもあります。

基礎体温が上がらないこと以外に明確な症状がなく、1周期だけの変化であれば、次周期以降の基礎体温の推移を見守ることも一つの選択肢です。実際、月経周期が順調な方において、ときどき起こる無排卵が妊娠までの期間に大きく影響するとは考えにくいという研究報告もあります3)

ただし、同じような状態が2〜3周期以上続く場合や、月経周期そのものが乱れてきた場合は、排卵に関わる何らかの変化が起こっている可能性もあります。特に妊娠を希望している場合は、様子を見る期間をあまり長く取りすぎず、早めに医療機関へ相談することを心がけましょう。

院長からのメッセージ

基礎体温をつけている方から「体温が上がらないのですが、排卵していないということですか」と相談を受けることがよくあります。まず知っておいていただきたいのは、基礎体温だけで排卵の有無を判断することはできない、ということです。

この記事で紹介したとおり、実際に排卵が起きていた周期でも、2割ほどはグラフが二相に分かれて見えなかったという報告があります。基礎体温は、朝の目覚めの状態、睡眠時間、部屋の温度など、さまざまな影響を受けて上下します。グラフがきれいに二相に分かれないからといって、排卵していないと決まったわけではありません。

一方で、何周期も高温期がみられない、月経周期そのものが乱れているという場合には、排卵に関わる何らかの変化が起きている可能性があります。このときに大切なのは、基礎体温をつけ続けて答えを探すことではなく、超音波検査やホルモン検査で確かめることです。原因がわかれば、対応できることは少なくありません。

高温期が短い、体温の上がり方が弱い、といったグラフの見た目から「黄体機能不全ではないか」と心配される方もいます。ただ、この状態を確実に診断する方法は現時点では確立していません。基礎体温から結論を出そうとするより、気になる点を担当医に伝えていただく方が近道です。

基礎体温は妊活の出発点として役立つ記録ですが、それだけで答えが出るものではありません。妊娠を希望されているなら、記録を持って早めにご相談ください。

参考文献

1)Prior JC, Naess M, Langhammer A, Forsmo S. Ovulation prevalence in women with spontaneous normal-length menstrual cycles: a population-based cohort from HUNT3, Norway. PLoS One. 2015;10(8):e0134473.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4546331/

2)Bauman JE. Basal body temperature: unreliable method of ovulation detection. Fertil Steril. 1981 Dec;36(6):729-33.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7308516/

3)DeVilbiss EA, Stanford JB, Mumford SL, et al. Sporadic anovulation is not an important determinant of becoming pregnant and time to pregnancy among eumenorrheic women: a simulation study. Paediatr Perinat Epidemiol. 2021;35(1):143-152.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7854799/