不妊治療や妊活について調べるなかで、「卵胞」という言葉を目にして、「卵子や卵巣とは何が違うのだろう」と感じている方もいるのではないでしょうか。
卵胞は卵子を包み込み、排卵に向けて育てていく大切な存在です。その仕組みを知ることは、ご自身の体や妊娠への理解を深めることにもつながります。
この記事では、卵胞の基本的な役割から卵子・卵巣との違い、発育の仕組みや排卵・妊娠に至るプロセス、卵胞にまつわる病気まで、わかりやすく解説します。
卵胞とは?卵巣・卵子との違い
卵胞(らんぽう)とは、卵巣の中で卵子を包んでいる袋のようなものです。1つの卵胞の中に、1つの卵子が入っています。
卵巣・卵胞・卵子の関係は、以下のとおりです。
卵胞は、卵巣の中で排卵に向けて徐々に大きくなり、卵子を送り出す準備を整えます。排卵の直前には、卵胞は直径18〜24mm程度まで育ちます。排卵で卵胞から出た卵子は、卵管に取り込まれて子宮に向かって進みます。その途中で精子と受精すると、受精卵となります。
卵胞の発育と排卵・妊娠までの流れ
卵胞は、卵巣に蓄えられた「原始卵胞」から長い時間をかけて「成熟卵胞」まで育ち、排卵したあとは「黄体」という組織に変わります。ここでは成熟卵胞になるまでと、排卵から黄体化・妊娠するまでの流れを解説します。
原始卵胞〜成熟卵胞
卵巣の中では多くの原始卵胞が、長い時間をかけて以下の順に成熟していきます。
毎月の月経が始まる頃には、数mm程度の小さな胞状卵胞が卵巣の中にいくつも育っています。月経の開始とともに下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)が増加することにより、卵巣内の胞状卵胞が一斉に成長を始めます。
そのうち、月経周期の5〜6日目には1個だけが自然選択されて発育を続け、残りは「閉鎖卵胞」となって自然に消滅していきます。
残った1個の卵胞は1日に約1~2mmずつ大きくなり、成熟卵胞となって排卵を迎えます。さらに、この過程で、卵胞からはエストラジオール(卵胞ホルモン)が分泌され、子宮内膜を厚くして妊娠に備えます。
排卵〜黄体・妊娠
成熟卵胞から分泌されるエストラジオールが急激に増えると、その刺激で下垂体からLH(黄体形成ホルモン)が一気に分泌され(LHサージ)、約24〜48時間後に排卵が起こります。
排卵で卵胞から飛び出した卵子は卵管に取り込まれて子宮に向かい、その途中で精子と受精すれば受精卵となって子宮に運ばれます。
一方、卵子を送り出した卵胞は卵巣の中に残って「黄体」という組織に変わります。黄体は、プロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌して、受精卵を受け入れやすいよう子宮内膜を整えます。
その後、受精卵が子宮内膜に着床すれば妊娠が成立します。受精に至らなかった場合は、排卵後およそ12~14日で黄体が役目を終え、ホルモンの分泌が減ることで子宮内膜が剥がれ落ち、月経が始まります。
卵子の数と年齢の関係
卵子の元となる原始卵胞は、女性が胎児の時からすでにつくられており、生まれた後に新しくつくられることはありません。胎児の段階でもっとも数が多く、出生時には約200万個にまで減少し、初経を迎える頃には30万個程度になるとされています1)。
その後も年齢とともに卵子の数は減り続け、37歳を過ぎると減少のスピードが加速します。さらに卵子の数が1,000個以下になると、閉経を迎えるとされています1)。
残っている卵子の数の目安を調べる検査として、「AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査」があります。AMH検査は、卵巣の中で発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンの値をもとに、卵巣にどれくらいの卵子が残っているかの目安を調べる検査です。
ただし、AMH検査でわかるのは卵子の数の目安であり、卵子の質まではわかりません。妊娠のしやすさには、卵子の数だけでなく質も関わっています。そのため、AMHの値が低くても、卵子の質が保たれていれば妊娠に至る可能性は十分にあります。
AMH検査については、以下のページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
卵胞に関するよくある質問
ここでは卵胞に関するよくある質問にお答えします。
Q:卵胞に関わる病気はありますか?
A:卵胞に関わる代表的な病気として、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が挙げられます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、ホルモンのバランスが乱れることで卵胞が育ちきらず、排卵が起こりにくくなる病気です。超音波検査では、卵巣の中に小さな卵胞が多数みられることが特徴です。月経不順や不妊の原因として知られています。
また、排卵時に卵胞が破れずに卵子が放出されないまま黄体に変わってしまう黄体化非破裂卵胞(LUF)などもあります。
黄体化非破裂卵胞(LUF)は基礎体温やホルモン検査では排卵があったときとほとんど同じ所見になるため、超音波検査にて卵胞を確認しないと気づけません。
いずれも排卵がうまくいかない状態のため、将来的に妊娠を考えている方や月経不順がある方などは、早めに医師への相談を検討しましょう。
Q:排卵しているか自分で調べる方法はありますか?
A:排卵しているかどうかを自分で確認する方法の一つに、基礎体温の計測があります。
基礎体温を毎日測って記録すると、排卵の前後で体温が変化します。低温期と高温期の「二相性」が確認できれば、排卵が起きていた可能性が高いと考えられます。
ただし、基礎体温だけで排卵の有無を確かめることはできません。実際に排卵が確認された周期でも、グラフの上では二相に分かれて見えないことがあります。睡眠時間や室温の影響も受けやすく、日々の数値は上下します。
医療機関では、この基礎体温表に加えて、超音波検査(エコー)による卵胞の大きさの確認や尿中ホルモンの検査を組み合わせて、より詳しく排卵の時期を予測しています。
基礎体温は自宅で手軽に続けられる方法なので、ご自身の周期のパターンを知る第一歩として役立ててみてください。
基礎体温については以下の記事にて詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
Q:排卵できない原因には、どんなものがありますか?
A:排卵障害の原因となる代表的な疾患として、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が挙げられるほか、ストレスや過度なダイエットなどをきっかけに、脳の視床下部からのホルモンの指令が乱れて起こる視床下部性の排卵障害が挙げられます。
また、抗うつ薬などの服用によってプロラクチンというホルモンの分泌が高まり、排卵が妨げられることも少なくありません。
ほかにも、卵巣内の卵子が早期に減少してしまう早発卵巣不全などの病気もあり、排卵に影響する病気は多岐にわたります。
排卵障害の詳しい原因や症状については、以下の記事でも解説しているので、あわせてご覧ください。
院長からのメッセージ
タイミング療法をするにあたってまず覚えてもらいたい用語が「卵胞」です。卵胞というのはよく聞くけど、卵子や卵巣との違いがよくわからなかった、という方が少なくありません。
簡単に整理すると、卵巣という臓器の中に卵胞という袋があり、その袋の中に卵子が1つ入っています。超音波で私たちが測っているのは袋のほうです。卵子そのものは非常に小さく、超音波では見えません。ですから「卵胞が育っている」ことは確認できても、「中の卵子がどういう状態か」は実際には採卵してみないとわかりません。
それでも排卵の時期を知るには卵胞のサイズを測ることが非常に有用であり、タイミング・人工授精・体外受精のすべての治療において、卵胞の観察というのは最も重要な検査になります。
もうひとつ、よくご質問をいただくのがAMHです。この検査でわかるのは、卵巣に残っている卵子のおおよその数です。質はわかりません。数値が低いと言われて落ち込まれる方がいますが、少ない数の中から良い卵子が採れることもありますし、逆に数が多くても質が伴わないこともあります。AMHはあくまで治療の方針を決めるための情報のひとつです。
年齢によって卵胞の数が減っていくこと自体は、誰にでも起こる自然な変化です。ただ、その速度には個人差があります。ご自身の現在地を知っておくことは、これからの見通しを立てるうえで役に立ちます。
用語がわかりにくいと感じたら、遠慮なく聞いてください。ご自身の体で起きていることですから、納得して治療を進めていただきたいと思っています。
参考文献
1)一般社団法人日本生殖医学会 生殖医療Q&A「Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?」.日本生殖医学会ウェブサイト.
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa24.html








