診察予約
最終更新日:
2026-07-09

基礎体温を記録し始めた方のなかには「グラフのどこが排卵日なのか」「いつタイミングをとれば妊娠しやすいのか」と迷う方もいるのではないでしょうか。

基礎体温を測定していくと、排卵している周期は低温期と高温期の2相になります。この体温推移を知ることで、体のリズムをつかみ、おおよその排卵時期を推定するのに役立ちます。

ただし、排卵日を確実に特定することは基礎体温だけでは難しく、妊活でタイミングをとりたい場合は基礎体温の測定とともに、ほかの手段も組み合わせることが大切です。

この記事では、排卵日と基礎体温との関係や見方、正しく測定するためのポイント、基礎体温で排卵日がわからないときの対処法などについて解説します。

排卵日と基礎体温との関係

基礎体温とは、起床直後の体が活動していない状態で測る体温のことです。基礎体温は生理開始後から排卵前は低く推移したのち、排卵が起こると上昇します。

基礎体温の傾向をつかむことで、月経周期の中でのおおよその排卵時期を予測できるようになります。月経周期や排卵の有無、ホルモンバランスや体のリズムを知るためにも役立ちます。

基礎体温が排卵前後で変化する理由

基礎体温が排卵前後で変化するのは、女性ホルモンの変動によるものです。ホルモン分泌は排卵前後で以下のように変化し、基礎体温も連動して推移が変わります。

時期 ホルモンの動き 体温
排卵前(卵胞期) エストロゲン(卵胞ホルモン)が増え、
卵胞が育つ
低く推移する(低温期)
排卵期 黄体形成ホルモン(LH)の急増をきっか
けに排卵が起こる
体温が一旦下がる(体温陥落)
排卵後(黄体期) エストロゲンに加えて、プロゲステロン
(黄体ホルモン)が分泌される
高く推移する(高温期)

排卵前の卵胞ではエストロゲン(卵胞ホルモン)が盛んに分泌されています。排卵の前後で体温が一旦下がる体温陥落を起こした後、排卵が完了すると卵胞は黄体へと変化し、エストロゲンに加えてプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し始めます。

プロゲステロンは体温を上げる作用をもつホルモンです。プロゲステロンの働きにより、基礎体温は低温期から高温期へと移行するのです。

排卵日はいつ?基礎体温グラフの見方

基礎体温グラフは、横軸に生理周期、縦軸に体温の数値をとった折れ線グラフです。生理開始日を起点とし、毎日の記録を線でつなぐと、以下のような2相にわかれた形になります。

基礎体温の典型的なグラフの例
基礎体温の典型的なグラフの例

月経周期が28日の場合、月経開始日から約14日間が低温期であり、排卵を機に高温期へと移行します。一般的に低温期と高温期の差は0.3℃以上とされており、体温が大きく変化する数日間のいずれかのタイミングで排卵したと考えられます。

上記で示したグラフは、あくまでも典型的な一例です。日々の体温が多少ガタガタしていても、周期全体を通して低温期と高温期が確認できれば問題ありません。

基礎体温グラフを数周期つけたら、以下のポイントに注目してみましょう。

<基礎体温グラフで確認するポイント>

  • 2相にわかれているか:低温期と高温期が確認できれば、低温から高温に移行する期間で排卵している可能性が高いと考えられます。
  • 高温期が維持されているか:高温期は14日前後が目安です。高温期が長く続いている場合、妊娠の可能性も考えられます。

基礎体温を継続してつけると、ご自身のパターンがみえてきます。体のリズムやコンディションを把握でき、一般的なパターンから外れているときの受診目安にもなります。まずは2〜3周期を目安に測定してみてください。

体温が下がらず高温期が3週間以上続く場合は、妊娠の可能性がある点も理解しておきましょう。

基礎体温のグラフの見方に関する詳細や、「低温期が続き体温が上がらない」「グラフがガタガタする」など、基礎体温グラフが典型的な形にならない場合については、以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

基礎体温からわかるのは、あくまでも排卵日の目安

基礎体温の推移は排卵時期を予測する手がかりになりますが、排卵日そのものを正確に特定できるわけではありません。

前述のとおり、体温の変化は排卵後に分泌されるプロゲステロンの影響で起こります。体温が上がったことで「排卵があった」と後から推定できるものであり、事前に予測するのは難しいのです。

また、「体温が急に下がった日」のような特定の日に排卵するとも限りません。過去の研究で、基礎体温と排卵日の一致率をみた結果は以下のとおりです1)

排卵日の一致周期数 排卵日の一致率
体温陥落日 9/16周期 56.3%
最低体温日 29/56周期 51.8%
低温相最終日 35/56周期 62.5%
高温相初日 15/56周期 26.8%

‍※体温が0.1℃以上下がった日

上記のとおり、低温期の最終日が排卵日だったケースもあれば、高温期の初日が排卵日であったケースもあり、基礎体温から確実に予測することはできないことがわかります。

基礎体温は、排卵日を1日単位で特定するものではなく、数周期分の記録からある程度の排卵時期や周期の傾向をつかむツールとして活用しましょう。

基礎体温からみる妊娠しやすいタイミング

「排卵日当日にタイミングをとらなければ」と思う方もいるかもしれませんが、妊娠する可能性は排卵日の2~3日前からであり、最大5日前からが目安となります。

なかでも妊娠率が高いのは、排卵の1〜2日前といわれています。卵子の受精能力は排卵後わずか12〜24時間程度であるのに対し、精子は女性の体内で2〜3日(最長5日)にわたり受精能力を保てるためです。

排卵前に性交渉し、精子が待機している状態をつくることで受精の機会が得られます。排卵日当日だけにこだわる必要はありません。

妊娠を目指す場合、2〜3周期分の基礎体温の推移から、次周期に排卵すると考えられる時期をつかんでみてください。その時期に合わせて、お二人のペースを大切にしながら週2〜3回程度タイミングをとるとよいでしょう。ただし、生理周期が毎周期一定ではない場合には、前の周期の基礎体温から次の周期の排卵時期を推定することは困難です。そのような場合には、早めに医師にご相談ください。

排卵日と妊娠しやすいタイミングについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

基礎体温を正しく測定するためのポイント

基礎体温は、朝目覚めた直後に横になったまま測定します。起き上がると体温が上昇してしまい、正確な数値が得られなくなるため注意してください。夜のうちに体温計を枕元へ置き、目覚めてすぐ測れるように準備しましょう。

測定には、小数点第2位まで表示される婦人体温計を使用します。より正確な数値を得るために、次の点に気をつけて測定してください。

<基礎体温を測るときのポイント>

  • 目覚めたら布団から出る前に測る
  • 感温部を舌下のつけ根にあてる
  • 舌で押さえ、口を軽く閉じた状態で測定する
  • 「予測値」よりもできれば「実測値」を測る

体温は、毎日できるだけ同じ時間帯に測定します。夜勤などで起床時間が一定でない方は、ご自身の起床タイミングに合わせて測定してください。時間をメモしておくとよいでしょう。

測った体温は、基礎体温表に記録します。紙の体温表のほか、スマートフォンのアプリを活用する方法もあります。基礎体温グラフの自動作成や、体調・性交日の記入に対応するサービスもあるため、ご自身が管理しやすい方法を選んでください。

基礎体温をつけても排卵日がわからないときの対処法

基礎体温は体のリズムを知るうえで大切ですが、それだけで排卵日を特定するのは難しいものです。妊活するうえでは、排卵検査薬の使用やおりものの観察なども組み合わせてみましょう。特に生理周期が毎周期一定ではない場合には基礎体温で排卵時期を推定することは困難です。

数周期分のグラフをみてもリズムをつかめない場合は、一度医療機関で相談してみてください。

排卵検査薬を使う

排卵検査薬は、排卵を約1~2日前に予測する検査薬です。排卵直前に黄体形成ホルモン(LH)が急増するLHサージを捉えることで、排卵タイミングの把握に役立ちます。

排卵検査薬が陽性を示したタイミングでできるだけ早く性交渉をもつと、妊娠の可能性が高まるといわれています。

排卵検査薬を適切に活用するためには、使用開始日や判定の仕方を正しく理解することが重要です。排卵検査薬の使い方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

おりものの状態を観察する

おりもの(頸管粘液)は、生理周期によって性質が変化します。日々の変化を観察すると、排卵時期の手がかりが得られることがあります。

<排卵期のおりものの特徴>

  • 量:普段のおりものに比べて、量が増える
  • 伸び:指で触れたときに、糸を引くように伸びる
  • 透明度:透明で水分を多く含む

ただし、おりものの変化だけで排卵日を見極めるのは難しいため、基礎体温の測定や排卵検査薬と組み合わせることが重要です。

排卵日前後のおりもの変化については、以下の記事で詳しく解説しています。

医療機関を受診する

排卵日をより正確に知りたい場合は、医療機関で相談する方法もあります。医療機関では、超音波検査で卵胞の大きさを測定したり、血液検査でホルモン値を調べたりすることで、より精密に排卵日を予測できます。

基礎体温の推移に不安がある方は、一度受診を検討してみてください。排卵が起きていない、または何らかの病気が隠れている可能性もあります。

1周期だけで判断する必要はありませんが、数周期続けて以下のような傾向がみられる場合は、基礎体温表を持って婦人科で相談してみましょう。

  • 低温期が続いて2相になっていない:排卵が起きていない(無排卵)可能性がある
  • 低温期が短い:早発卵巣不全などの病気が疑われることがある
  • 高温期が短い:プロゲステロンの分泌が不十分な可能性がある

基礎体温の推移は一人ひとり異なるため「自分のグラフは問題ないのか」「きちんと排卵しているのか」と悩む方は少なくありません。少しでも心配な場合は、気軽に医師へ相談してください。

特に生理周期が毎周期一定しない場合には、基礎体温で排卵時期を推定することは難しいです。そのような場合も、医師へご相談ください。

基礎体温と排卵日についてよくある質問

基礎体温と排卵日の関係について、よく寄せられる質問に回答します。

基礎体温が下がった日が排卵日ですか?

基礎体温が下がった日が排卵日とは限りません。

基礎体温と実際の排卵日を比べた研究では、最低体温日(体温がもっとも低い日)が実際の排卵日と一致した割合は51.8%、体温陥落日でも56.3%でした1)。これらの結果からは、必ずしも体温が大きく下がる日を排卵日とは断定できないことがわかります。

ただしその前後が排卵日である可能性は高いため、体温が下がった日の前後にはタイミングを取ることが勧められます。

排卵日前に基礎体温が上がることはありますか?

通常、排卵前に高温期へ移ることはありません。基礎体温の上昇は、排卵した後に分泌されるプロゲステロンの影響で起こります。体温が上がり高温期に入っていれば、すでに排卵したと考えられます。

ただし、基礎体温は睡眠状況や前日の食事など日々の生活に左右されやすく、一時的に高くなることはあります。一日ごとの体温を追うのではなく、周期全体の流れを捉えることが大切です。

院長からのメッセージ

基礎体温をつけ始めると、「グラフのどこが排卵日なのかわからない」という疑問が出てくるのは自然なことです。毎日丁寧に計測しているのに判断できないと、もどかしく感じる方も多いと思います。

基礎体温が教えてくれるのは「ちゃんと排卵したかどうか」と、「おそらくこの周期でこのあたりに排卵した」という後からの推測です。体温が上がってから「排卵したらしい」とわかるものなので、事前の予測には向いていません。それよりも数周期記録を続けて、自分の周期のリズムを把握することに使うのが正しい活用方法です。

タイミングを合わせたいのであれば、排卵検査薬と組み合わせることをお勧めします。検査薬は排卵の1〜2日前に陽性を示すため、事前に動ける時間があります。「毎月確実に排卵日当日に合わせなければ」とプレッシャーに感じなくても、週2〜3回のペースでタイミングをとることで、十分な受精の機会が得られます。

基礎体温のグラフが典型的な形にならない、2相がはっきりしないという場合は、一度受診して超音波検査やホルモン検査で確認することをお勧めします。原因がわかれば対処できることが多いです。

特に、生理不順などがあって周期が一定でない場合には基礎体温で排卵時期を推定することは難しいです。そのような場合は、早めに医師へご相談ください。

参考文献

1)石川睦男, 千石一雄. 基礎体温法による排卵診断および排卵日の検討 -超音波断層法との相関-. 産婦人科の実際(1985. 02)34巻2号:255〜261.
https://amcor.asahikawa-med.ac.jp/modules/xoonips/download.php/1985162938.pdf?file_id=3124