妊娠初期に「急に出血した」「レバー状の血の塊が出た」と、不安になる方もいるのではないでしょうか。とくに出血が続いたり、茶色や黒っぽい血がみられたりすると、流産ではないかと心配になることもあるでしょう。
妊娠初期の出血は決してめずらしいものではなく、着床時にみられる出血など心配のいらないケースもあります。一方で、赤ちゃんを包む膜と子宮の壁の間に血液がたまる絨毛膜下血腫(じゅうもうまくかけっしゅ)や切迫流産、異所性妊娠などが原因となっている場合もあるため、出血の量や続く期間、腹痛の有無などを確認することが大切です。
この記事では、妊娠初期にみられる不正出血について、血の塊やレバー状のものが出る原因、出血が続く場合に考えられること、色や状態による違い、受診の目安などを解説します。
妊娠初期の不正出血とは?
妊娠初期の不正出血とは、妊娠中に性器から起こる出血のことです。妊娠すると月経は止まるため、妊娠中にみられる出血は不正出血に該当します。着床時の出血や絨毛膜下血腫など、原因はさまざまです。
妊娠初期の不正出血は決してめずらしいものではありません。実際、妊娠初期に該当する期間での出血について確認した研究では、15〜25%の妊婦で観察されたという報告があります1)。
ただし、出血が見られた場合、流産や異所性妊娠などの可能性もあるため、出血の量や続く期間、腹痛の有無などもあわせて確認することが大切です。
着床出血の特徴や生理との違い、妊娠検査薬を使うタイミングについては、以下のページもご覧ください。
出血の色や状態(茶色・黒っぽい・サラサラなど)でわかること
妊娠初期の不正出血は、血液の色から出血後の経過時間の参考になるケースがあります。出血して間もない血液は赤色で、時間が経つと茶色や黒っぽい色に変化することがあります。また、わずかな出血では、ピンク色や黄色っぽく見えることもあります。
出血の状態もさまざまで、サラサラした状態にみえる場合もあれば、血の塊を伴う場合もあります。ただし、色や状態だけで出血の原因やその後の経過を判断することはできません。
先述のとおり、出血の色だけでなく、続く期間や量、腹痛の有無などもあわせて確認することが大切です。出血量が増えたり継続する場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
妊娠初期に血の塊が出たときに考えられる原因
妊娠初期に血の塊がみられた場合、絨毛膜下血腫や切迫流産、流産などが考えられます(インターネット上では血の塊について「レバー状」などと表現されていることもあります)。ただし、実際には出血の状態だけで原因を判断することはできないため、医療機関で相談をすることが重要です。
絨毛膜下血腫
絨毛膜下血腫は、赤ちゃんを包む膜(絨毛膜)と子宮の壁の間に血液がたまった状態です。多くは治療をしなくても自然に吸収され、妊娠への影響は大きくありません。ただし、血腫が大きい場合や、妊娠14週前後で見つかった場合は、慎重な経過観察が必要です。
出血の色は、新しく出た血液であれば赤色っぽく、時間が経つと茶色や黒っぽい色に変化し、レバー状の塊として出てくることもあります。気になる出血がみられた場合は自己判断せず、医療機関に相談しましょう。
また、流産が進行している場合にも、血の塊が排出されることがあります。この場合は出血量が多くなり、生理2日目以上の出血が続いたり、強い腹痛を伴ったりすることが多くみられます。
血の塊が出たときに、それがどの原因によるものかを見た目で判断することはできません。量が多い場合や腹痛を伴う場合は、速やかに受診してください。
妊娠初期の出血で特に注意が必要なケースと出血が続く原因
妊娠初期に出血がなかなか止まらず続く場合、切迫流産や流産、異所性妊娠の可能性があります。出血の量や続く期間、痛みの有無などは原因によって異なるため、それぞれの特徴を知っておきましょう。
切迫流産
妊娠初期に出血が続く場合、切迫流産の可能性があります。切迫流産とは、妊娠22週未満で、赤ちゃんが子宮内で生存しているものの、出血や下腹部痛がみられ、流産の可能性を念頭に置きながら経過をみていく状態を指します。切迫流産と診断されても、必ず流産するわけではありません。
出血の原因としては、絨毛や胎盤の一部が子宮壁からわずかに剥がれるケースが挙げられます。少量の出血が続いても、子宮頚管が開いておらず、妊娠が継続していれば出産まで至る可能性が十分にあります。
切迫流産に対して、流産を確実に防ぐ治療法は現在のところありません。出血や腹痛が強いときに安静を勧められることはありますが、これは症状を悪化させないための対応であり、安静にすることで流産を防げると証明されているわけではありません。海外の研究をまとめた解析でも、安静が流産の予防に有効であるという質の高い根拠は得られていないと報告されています2)。
妊娠初期の流産の多くは、赤ちゃん側の染色体の異常によるもので、お母さんの行動によって起こるものではありません。「あのとき動いてしまったから」と自分を責める必要はありません。
どの程度安静にするか、仕事をどうするかは、症状の程度や週数によって判断が変わります。気になる状態が続く場合は、自己判断せず担当医に相談してください。
流産
妊娠初期に継続した出血がある場合、残念ながら流産に至ってしまうケースもあります。
この時期の流産は、胎児の染色体異常によるものがほとんどであり、兆候などがない場合でも流産に至ることがあります。実際に臨床的に妊娠が確認されたケースのうち、約15%に流産が起こるとされており、決して珍しいことではありません。
出血の量が多かったり、強い腹痛がある場合は流産が進行している状態である可能性もあるため、早急に受診するようにしましょう。
妊娠初期の流産について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
異所性妊娠
出血の量や続き方にかかわらず注意が必要なのが、異所性妊娠です。異所性妊娠とは、受精卵が卵管など子宮内以外の場所に着床してしまう状態で、妊娠を継続できないことがほとんどです。
強い下腹部痛が起こることがある一方、腟からの出血は少量にとどまる場合も多く、出血が少ないからといって安心はできません。また、不妊治療を経て妊娠した方では、異所性妊娠の頻度が自然妊娠よりやや高いことが知られています。
放置すると卵管など着床した部位が破裂し、大量出血につながる危険性もあるため、出血が続く、または痛みが強い場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診しましょう。
妊娠初期に出血があったときの受診の目安
妊娠初期に少量の出血だけの症状であれば、必ずしもすぐに治療が必要になるわけではなく、経過観察で問題ない場合も少なくありません。ただし、出血の原因や対応は妊娠週数や他の症状などによって異なるため、不安がある場合は医療機関へ相談してみましょう。
一方で、月経2日目のような多量の出血や血の塊を伴う出血がある場合、強い腹痛を伴う場合には注意が必要です。また、少量の出血であっても、片側の下腹部に強い痛みがある場合やめまい、立ちくらみ、肩の先端が急に痛むなど、体調の急激な変化を伴う場合も注意すべきサインといえます。このような症状があるときは、夜間や休日であっても速やかに医療機関へ連絡し、受診しましょう。
妊娠初期の不正出血に関してよくある質問
妊娠初期の不正出血について、よく寄せられる質問にお答えします。
Q:妊娠初期に血の塊が出たが、腹痛がない場合は大丈夫?
A:腹痛がないから安心というわけではありません。
痛みの感じ方は個人によっても異なり、腹痛がないから危険な状態ではないとは言い切れません。レバー状の血の塊が出てきた場合、絨毛膜下血腫などの可能性があり、状態によっては注意が必要なケースもあります。
血の塊が続けて出る場合や出血量が増えてくる場合は、腹痛がなくても自己判断せず、医療機関に相談しましょう。
Q:茶色い出血が続いていますが、受診したほうがよいですか?
A:茶色い出血は、時間が経った血液が排出されているもので、いま出血しているとは限りません。少量で短期間であれば経過をみることもあります。
ただし、量が増えていく、何日も続く、腹痛を伴うといった場合は受診してください。また、まだ超音波で子宮内に妊娠していることが確認できていない段階であれば、出血の色にかかわらず一度確認しておくことをお勧めします。
院長からのメッセージ
妊娠がわかったばかりの時期に出血があると、多くの方が「流産してしまうのでは」と考えます。夜中に出血に気づいて、朝まで眠れなかったという話もよく伺います。
妊娠初期の出血は、決してめずらしいものではありません。妊娠初期に出血を経験する方は15〜25%という報告があり、4〜5人に1人は経験する計算になります。ごく少量付着程度の出血も含めれば、個人的な体感では半数弱の方が出血を経験しているとも感じます。しかし、多くの方は多少出血があってもそのまま順調に経過しています。
一方で、注意が必要な出血もあります。生理2日目以上の量が続く場合、強い腹痛を伴う場合、そして少量の出血でも片側のお腹が強く痛む場合です。最後のものは子宮外妊娠のサインのことがあり、この場合は腟からの出血が少なくても、お腹の中で出血していることがあります。肩の先が急に痛むという、一見関係のない症状が出ることもあります。出血が少ないから大丈夫、とは考えないでください。
それから、ぜひお伝えしたいことがあります。切迫流産と言われたとき、「安静にしていれば防げる」と考えて、仕事を休んだりずっと横になって過ごしたりする方がいます。しかし、安静にすることで流産を防げるという確かな根拠は、現在のところありません。妊娠初期の流産のほとんどは、赤ちゃん側の染色体の問題によるもので、動いたから起きるものではないのです。
もし残念な結果になったとしても、それはあなたのせいではありません。そのことだけは、覚えておいていただきたいと思っています。
参考文献
1)Snell BJ. Assessment and management of bleeding in the first trimester of pregnancy. J Midwifery Womens Health. 2009 Nov-Dec;54(6):483-491.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1016/j.jmwh.2009.08.007
2)Aleman A, Althabe F, Belizán J, Bergel E. Bed rest during pregnancy for preventing miscarriage. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Apr 18;2005(2):CD003576.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15846669/








