生理前になると子宮内膜が厚くなると耳にしたことはあっても、実際にはどのような仕組みで厚さが変化しているのか、詳しくはわからないという方もいるのではないでしょうか。
子宮内膜の厚さは、生理周期のなかでホルモンの影響を受けながら常に変化しており、生理前・生理中・生理後で大きく異なります。また、その厚さには個人差もあるため、一概に良し悪しを判断できるものではありません。
この記事では、子宮内膜の構造や役割、生理前・生理中・生理後の厚さの目安、子宮内膜の厚さを確認する方法などについて解説します。
子宮内膜とは?子宮内膜の構造と生理周期による変化について
子宮内膜は、子宮の内側を覆っている組織です。受精卵が着床する場所で、妊娠しなかった月には剥がれ落ち、生理の出血として体の外に出ていきます。
子宮内膜は、機能層と基底層という2つの層に分かれています。機能層は子宮の内側の空間に面した層で、生理周期のホルモンの変化を受けて厚くなり、生理のときに剥がれ落ちます。基底層は機能層の外側で、子宮の筋肉との境目にある層です。生理後も残り、ここから新しい機能層がつくられます。
こうした変化は卵巣から分泌されるホルモンによってコントロールされており、生理周期前半の卵胞期にはエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が増加し、基底層から新しくできた機能層が徐々に厚くなります。
排卵後の黄体期にはプロゲステロン(黄体ホルモン)の働きが加わり、機能層は着床に適した組織になります。妊娠が成立しない場合、プロゲステロン値の低下とともに次第に剥がれ落ち、血液などとともに排出されて生理がくるのです。
生理前の子宮内膜の厚さの目安は何ミリ?体外受精に適した厚さはある?
子宮内膜は排卵期に10ミリ程度まで厚くなり1)、排卵後の黄体期(生理前)はその厚さがおおむね保たれます2)。ただし厚さには個人差があり、この厚さになれば必ず問題ないというわけではありません。実際に26名を対象とした小規模な研究であるものの、黄体期の子宮内膜の厚さは実測で6〜17ミリと幅があったという報告もあります3)。
体外受精などの不妊治療を実施している場合、どの程度の厚さがあれば良いのか、妊娠率に影響するのか気になる方もいるかと思います。
これまでの研究では、体外受精の胚移植では、子宮内膜が7ミリを下回るあたりから妊娠率や出産率が下がる傾向が報告されており、ひとつの目安とされています4)。ただし明確な診断基準が定まっているわけではなく、薄いとみなされる値は6〜8ミリと報告によって幅があります5)。
子宮内膜の厚さは、測る時期によっても多少変動します。また、不妊治療で排卵誘発剤を使っている場合は薬の種類や使用期間によって子宮内膜が厚くなりにくいこともあります。子宮内膜の厚さだけで妊娠のしやすさが決まるわけでないため、しっかりと医療機関とコミュニケーションをとりながら治療を進めることが重要です。
子宮内膜が薄い・厚い場合に考えられることは?妊娠への影響について
子宮内膜が明らかに薄い場合や厚い場合は、妊娠のしやすさへの影響や、病気が隠れている可能性が考えられます。ここでは子宮内膜が薄い場合と厚い場合に分けて、それぞれ考えられることを解説します。
子宮内膜が薄い場合
子宮内膜が薄い場合に考えられる影響は、受精卵が着床しにくくなる可能性です。薄い子宮内膜に関する研究をまとめたレビューでは、内膜が薄いと受精卵を受け入れる力(受容性)が下がり、着床率や妊娠率が低下すると指摘されています5)。
また、子宮内膜は加齢によっても薄くなる傾向があり、同じレビューでは、40歳を超えると自然周期でも薄い内膜がみられる割合が高まると報告されています5)。
さらに、クロミフェンという内服の排卵誘発剤には、子宮内膜を薄くする作用があることが知られています。これは薬を使っている周期に限った影響で、中止すれば回復します。そのほか、過去に子宮内の手術を受けたことがある場合や、子宮の内側に癒着がある場合にも、内膜が厚くなりにくいことがあります。
ただし、こうした報告の多くは体外受精の胚移植を対象にしたもので、自然妊娠やタイミング療法でも同じ結果になるとは限りません。子宮内膜の厚さだけで妊娠のしやすさが決まるわけではないため、薄いと言われた場合も、医師に相談して原因や治療の進め方を検討することが大切です。
子宮内膜が厚い場合
生理がある年代で子宮内膜が厚いと指摘された場合、子宮内膜ポリープなどの腫瘤性病変が隠れていることがあります。子宮内膜ポリープは、子宮内膜が過度に厚くなったり細胞が増殖したりすることでできる腫瘍で、多くは良性であり、症状がなく妊活中でもなければ必ずしも治療が必要なものではありません。
ただし、受精卵が着床する場所を物理的にふさいだり、精子や受精卵の通り道を妨げたり、子宮内膜に炎症を起こしやすくしたりするため、大きさや位置によっては不妊の原因となることがあります。
子宮内膜ポリープについて詳しくは、以下の記事で解説しています。
また、排卵が起こらない周期が続いている場合にも、子宮内膜が厚くなることがあります。排卵がないと、内膜を整える黄体ホルモンが分泌されず、エストロゲンの作用だけを受け続けるためです。この状態が長く続くと子宮内膜増殖症といって、内膜の細胞が過剰に増える状態につながることがあります。
生理が3か月以上来ない、周期が40日を超えることが続いているという方で内膜が厚いと指摘された場合は、放置せず医師に相談してください。
生理中・生理後の子宮内膜の厚さはどう変わる?
生理中は子宮内膜が最も薄くなる時期です。これは、妊娠が成立しなかった場合にプロゲステロン値が低下することによって機能層が剥がれ落ち、血液とともに排出されるためです。このとき失われるのは機能層で、基底層は残るため子宮内膜そのものが無くなることはありません。
生理直後の子宮内膜は2〜5ミリ程度と、周期のなかで最も薄い状態になります。そこから卵胞期にかけて卵胞が育ってエストロゲンが分泌されることによって、残った基底層から新たな機能層がつくられて少しずつ厚みを増し、排卵期の10ミリ程度に達します。ただし測定値には個人差があり、また経腟超音波での測定は、測る時期や条件によっても多少変動します。
子宮内膜の厚さが気になるときの確認方法
実際に子宮内膜の厚さを確認したい場合は、婦人科などで経腟超音波検査(エコー検査)を受けることで確認できます。経腟超音波検査は、腟内に細いプローブを挿入し、子宮や卵巣の状態を画面に映し出す検査方法で、妊活や不妊治療の過程で受ける機会が多い検査でもあります。
一般的に痛みが少ない検査で、不妊治療においては、子宮内膜の厚さや卵胞の育ち具合などを確認するために行います。
子宮内膜の厚さの変化が気になるときは、医師に相談してみるのひとつの方法です。
生理前の子宮内膜の厚さに関してよくある質問
生理前の子宮内膜の厚さに関して、よくある質問についてお答えします。
Q:子宮内膜は何ミリになったら生理がきますか?
A:生理が始まるタイミングを決めているのは、子宮内膜の厚さではありません。生理は、排卵後にできた黄体の働きが弱まってエストロゲンとプロゲステロンの分泌が減少し、機能層が剥がれ落ちて血液とともに排出される現象です。
子宮内膜の厚さが何ミリになったら生理が来るという基準はなく、生理の始まりはホルモンの変化が関係しています。子宮内膜の厚さには個人差もあるため、厚さの数値だけで生理のタイミングを予測することは難しいといえます。
Q:子宮内膜の厚さは生理の出血量に関係しますか?
A:子宮内膜の厚さは、生理の出血量に影響する要因のひとつです。厚くなった内膜が剥がれ落ちるときは、その分だけ排出される組織や血液の量も増えるためです。実際、体外受精の採卵を行った周期などで内膜が通常より厚くなった場合に、いつもより出血量が多いと感じることがあります。
ただし、出血量は内膜の厚さだけで決まるわけではありません。子宮筋腫や子宮腺筋症といった病気、血液の固まりやすさ、ホルモンバランスなども関わります。また、内膜が厚い人ほど必ず出血量が多いという単純な関係でもなく、正常な範囲でも個人差が大きいとされています。
出血量が急に増えた、レバー状の塊が出る、昼でも1〜2時間ごとにナプキンを替える必要があるといった場合は、内膜の厚さ以外の原因が隠れていることもあります。気になる場合は婦人科で相談してください。
院長からのメッセージ
診察で「内膜は今日〇ミリです」とお伝えすると、その数字を持ち帰って調べる方がとても多いようです。数字を目にして、自分は大丈夫なのかと心配になった方もいらっしゃると思います。
内膜が7mm以上だと妊娠しやすいという目安は、体外受精で胚を移植するときの研究から出てきた数字です。4万件を超える移植を分析した報告ですが、これはあくまで傾向で、6ミリで妊娠される方もいれば、12ミリでも着床しないこともあります。厚さは着床に関わる要素のひとつにすぎません。
それから、内膜の厚さは測る時期で変わります。同じ方でも、周期のどこで測ったかによって数字はまったく違います。生理直後なら数ミリ、排卵の頃には10ミリ前後になります。ですので、一度の数字だけを取り出して良い悪いと判断する意味はあまりありません。
生理の量との関係もよくご質問をいただきます。内膜が厚ければ剥がれ落ちる量も増えますから、無関係ではありません。採卵をした周期は内膜が厚くなりやすいので、その次の生理が多いと感じる方がいるのは、そのためです。ただ、量が多い原因は筋腫や腺筋症のこともありますので、明らかに増えたと感じるときはご相談ください。
数字が気になったときは、その場で聞いていただいてかまいません。何を見て判断しているのかをお伝えします。
参考文献
1)日本産婦人科医会.(2)女性患者の検査・診断. 日本産婦人科医会ウェブサイト
https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E5%A5%B3%E6%80%A7%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%83%BB%E8%A8%BA%E6%96%AD/
2)一般社団法人日本がん・生殖医療学会. 生殖機能. 一般社団法人日本がん・生殖医療学会ウェブサイト
https://www.j-sfp.org/fertility/female/function/
3)Jokubkiene L, Sladkevicius P, Valentin L. Appearance of the endometrium at saline contrast sonohysterography in the luteal phase of the menstrual cycle: a prospective observational study. Ultrasound Obstet Gynecol. 2015;45(3):339-345.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25044364/
4)Liu KE, Hartman M, Hartman A, et al. The impact of a thin endometrial lining on fresh and frozen-thaw IVF outcomes: an analysis of over 40 000 embryo transfers. Hum Reprod. 2018;33(10):1883-1888.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30239738/
5)Wang Y, Tang Z, Teng X. New advances in the treatment of thin endometrium. Front Endocrinol (Lausanne). 2024;15:1269382.
https://doi.org/10.3389/fendo.2024.1269382







