最終更新日:
2026-02-27

ブライダルチェックは任意の検査であり、全国的な受診率を示す公的な統計は現時点では公表されていません。そのため「何%が受けているのか」という明確な数字は示せませんが、不妊検査や不妊治療に関する公的データは参考になります。

本記事では、これらの参考データをもとにブライダルチェックの必要性を考えるとともに、不妊検査との違いや受けるタイミングの判断ポイント、検査内容などについて解説します。

不妊検査・不妊治療経験がある夫婦の割合

国立社会保障・人口問題研究所が2021年に実施した調査では、不妊について心配したことがある夫婦や、検査・治療を経験した夫婦の割合が報告されています。

<第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)1)

項目 割合
不妊について心配したことがある夫婦 39.2%(3組に1組)
不妊の検査・治療経験がある夫婦 22.7%(4.4組に1組)

不妊について心配したことがある夫婦は約4割にのぼります。実際に検査や治療を経験した夫婦の割合は、2015年の調査の18.2%から22.7%に増加しました2)。不妊は決して珍しいことではなく、多くのカップルにとってより身近な問題となっています。

ブライダルチェック単体の受診率は公表されていませんが、妊娠に関わる検査や治療は決して少数派ではなく、一定の割合で行われていることがわかります。

不妊検査・治療を受けるカップルが増えている背景

不妊検査や治療を受けるカップルが増えている背景には、社会的な変化や医療の進歩などさまざまな要因が関係していると考えられます。

妊娠する年齢が上がっている

不妊検査や治療を受けるカップルが増えている背景のひとつに、「妊娠を望む年齢」と「妊娠しやすい年齢」の差が広がっていることがあります。

日本では晩婚化・晩産化が進んでおり、妊娠する年齢が高くなっています。厚生労働省によると2023年において、第1子を産むときの母親の平均年齢は31.0歳でした3)

一方で、年齢が上がるほど妊娠の確率は低下することがわかっています。女性が妊娠する力は30歳から徐々に下がりはじめ、35歳を過ぎるとその傾向は著しくなるといわれています4)

妊娠を望む時期が遅くなるほど、妊活をはじめてから不妊に直面するケースも増えやすく、結果として検査や治療を受けるカップルが増加していると考えられます。そのため、妊娠を本格的に考える前に、自分の体の状態を確認しておきたいと考える人が増えているとみられます。

年齢と自然妊娠の確率については、詳しくは以下の記事をご覧ください。

不妊に対する意識が変わってきている

不妊について向き合う環境が整いつつあることも、検査や治療を受ける方が増えている理由と考えられます。

国や自治体では、将来の妊娠に向けて自分の健康状態を知り必要な対策を行う「プレコンセプションケア」の推進が進められています。年齢や婦人科系疾患など、不妊のリスクについて知る機会が増えました。

また、男性側にも不妊の原因があることが広く知られるようになり、男女とも不妊への関心が高まっています。

こうした意識の変化も、妊娠前に健康状態を確認する検査への関心につながっていると考えられます。

妊娠に向けた治療の選択肢が増えている

2022年4月に不妊治療への保険適用が拡大し、体外受精(c-IVF)や顕微授精(ICSI)といった生殖補助医療(ART)も一定の条件下で保険診療の対象となりました。経済的な負担が軽減されたことで、以前よりも治療に踏み出しやすい状況になっています。

2022年の体外受精・胚移植等の臨床実施成績では、生殖補助医療によって生まれた子どもの数は約77,000人と報告されています5)。これは同年の出生数の約10%を占めており6)、不妊治療が選択肢として広がっていることがうかがえます。

一方で、不妊治療を受ければ必ず妊娠できるわけではなく、年齢が上がるほど治療の成功率も下がる傾向もあります5)。治療の選択肢は広がっている一方で、年齢や体の状態によっては妊娠が難しくなる場合もあります。そのため、治療に進む前の段階で、自分の体の状態を把握しておきたいと考える人も増えています。

ブライダルチェックと不妊検査の違い

ブライダルチェックと不妊検査は、どちらも妊娠や出産に関わる検査ですが、目的や対象が異なります。

ブライダルチェック 不妊検査
目的 将来の妊娠・出産に備えて、現在の体の状態を確認する 妊娠しにくい原因を特定し、治療につなげる
主な対象 将来妊娠を考えている人 避妊をせず一定期間妊娠に至らないカップル
位置づけ 自主的・予防的な健康チェック 原因特定のための医学的検査

不妊検査は妊娠を希望して一定期間妊娠に至らない場合に、原因を特定して治療につなげることを目的としています。

一方、ブライダルチェックは何か問題があるから受けるのではなく、将来の妊娠に向けた備えを目的とする予防的な検査です。

「妊活前に体に異常がないか確認したい」「望むタイミングで授かれるか心配」といった場合は、ブライダルチェックが選択肢になります。一方、すでに妊娠を希望して一定期間結果が出ていない場合は、不妊検査が適しています。

自分がいまどの段階にいるのかを整理することが、受けるべき検査を判断するポイントです。ブライダルチェックと不妊検査の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

ブライダルチェックを受けるタイミングの目安

ブライダルという名前ではありますが、必ずしも結婚に関連づける必要はありません。ブライダルチェックを受ける時期に明確な決まりはありませんが、「妊娠を将来の選択肢として考え始めた段階」がひとつの目安になります。とくに、次のような場合は検討しやすいタイミングといえるでしょう。

将来の妊娠を意識しはじめた

妊娠に影響する異常の中には自覚症状がないものもあります。早めに体の状態を確認することで、必要な対応を取ることができます。

結婚や妊活の予定がある

妊娠前に確認しておきたい項目として風疹抗体があります。ワクチン接種の必要性も考慮し早めに検査を受けておくと、妊娠に向けた準備を計画的に進められます。

年齢や体の変化が気になる

とくに月経不順や強い月経痛がある場合は、婦人科疾患が隠れていることもあるため、放置せず早めに検査を受けることが大切です。

検査で異常が見つかった場合は必要な治療につなげることができ、異常がなければより前向きに妊活に臨めるでしょう。妊娠への意識が芽生えた段階で確認しておくと安心です。

ブライダルチェックのタイミングについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

ブライダルチェックの検査内容

ブライダルチェックでは、妊娠や出産に影響する可能性のある項目を中心に検査します。

医療機関によって検査項目は異なりますが、一般的な内容は以下のとおりです。

<女性の主な検査項目>

  • 超音波検査(経腟超音波検査)
  • ホルモン検査
  • AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査
  • 感染症検査
  • 風疹抗体検査
  • 子宮頸がん検査

<男性の主な検査項目>

  • 精液検査
  • ホルモン検査
  • 感染症検査
  • 風疹抗体検査

実施される検査内容やプランは医療機関によって異なります。

どのような検査項目が含まれているか、自分に必要な検査項目があるかは、受診前に確認しておきましょう。

ブライダルチェックの検査内容について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

ブライダルチェックの費用や助成制度について

ブライダルチェックは将来の妊娠に備えた予防的な検査のため、原則として自費診療です。ただし、不妊や感染症が疑われる状況で、医師が必要と判断した場合は保険適用となることもあります。

また、自治体によっては将来の妊娠に備えた検査について、費用の一部を助成する制度があります。

東京都では、ブライダルチェックそのものを対象とした制度ではありませんが、以下のような助成制度が利用できる場合があります。

助成の対象や条件は地域ごとに異なるため、住んでいる自治体の公式サイトを確認してください。

また、制度の考え方について詳しくは以下の記事をご覧ください。

ブライダルチェックについてよくある質問

ブライダルチェックに関して、よくある質問について解説します。

Q:ブライダルチェックがすぐに必要ない人もいますか?

以下のような場合は、ブライダルチェックをすぐに受ける必要性は高くないと考えられます。

数年以内に妊娠を考えていない場合
今すぐ検査を受ける必要性は高くありませんが、妊娠の仕組みや検査の目的を知っておくと、将来必要なタイミングで判断しやすくなります。

定期的に婦人科検診を受けている場合

基本的な確認はできていることがあります。がん検診のみ受けている方は、超音波検査や妊娠に関わるホルモン検査などを別途検討するとよいでしょう。

将来的に妊娠を希望しない場合

ブライダルチェックは妊娠・出産に関わる検査が中心のため、優先度は高くありません。

ただし、ライフステージの変化に応じ、必要なタイミングで受検を検討できるよう、目的や内容について理解を深めておくことが大切です。

ブライダルチェックが必要ないケースについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

Q:ブライダルチェックは男女ペアで受けるべきですか?

ブライダルチェックは、必ずしも男女ペアで受ける必要はありませんが、将来的に妊娠を望む場合、一緒に受けることには意味があります。

WHOによると、不妊カップルのうち、男性側のみに原因がある場合が約20〜30%、 男女双方に原因がある場合も含めると男性側に何らかの要因が関わるケースは 約50%に上るとされています。

男女ペアで検査を受けることで、妊娠に関わるリスクを早期に把握でき、2人で同じ認識を持って妊活に取り組めるようになります。

仕事のこと、お金のこと、妊娠のタイミングなど、お2人の将来のライフプランをより具体的に描きやすくなるでしょう。

ブライダルチェックを男女ペアで受けるメリットについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

院長からのメッセージ

「ブライダルチェックって受けた方がいいの?」という質問を、患者さんだけでなく友人や知人からもよくいただきます。率直にお答えすると、「妊娠を将来の選択肢として考えているなら、早めに受けておいて損はない」というのが私の考えです。

個人的には、「ブライダルチェック」という名前には少し問題があると思っており、ブライダルとついてはいますが、必ずしも結婚に関連づける必要はありません。結婚の予定がなくても妊娠について考え始めたタイミングでも受ける価値のある検査です。

ブライダルチェックで重要なのは、何か問題を見つけることではありません。「今の自分の状態を数値として知っておくこと」です。卵巣の予備能を示すAMHや、子宮・卵巣の状態は、自覚症状がなくても変化していることがあります。異常が見つかれば対策を取れますし、問題がなければより安心して妊活に臨めます。どちらに転んでも、知ることは前向きな一歩です。

本記事にもあるように、不妊について何らかの検査や治療を経験した夫婦は全体の5組に1組以上にのぼります。不妊は特別なことではなく、多くのカップルにとって現実のテーマになっています。そして、その原因は女性側だけとは限りません。男性側に要因があるケースも少なくなく、カップル2人で状態を把握しておくことが、その後の選択肢を広げることにつながります。

気になるのは「受けるべきかどうか」よりも、「今の自分に必要な検査は何か」という点だと思います。婦人科系の定期検診をすでに受けている方と、何年も婦人科から遠ざかっている方とでは、優先度も内容も変わります。

「何から始めればいいかわからない」という方は、まずご相談いただけると、あなたの状況に合わせた検査の考え方をお伝えすることができます。

参考文献

1)国立社会保障・人口問題研究所.第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)

2)国立社会保障・人口問題研究所.第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)

3)厚生労働省.令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況.厚生労働省ウェブサイト

4)一般社団法人日本生殖医学会.生殖医療Q&A

5)日本産科婦人科学会.ARTデータブック.2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績

6)厚生労働省.令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況.厚生労働省ウェブサイト

関連記事

関連記事がありません
コラム一覧へ