まず確認したい妊娠初期の受診の目安
妊娠初期には、軽い腹痛や少量の出血がみられることがあります。極端な痛みや大量の出血がなければ、多くの場合、心配する必要はありません。症状の程度には個人差があるため、不安がある場合は医療機関へ相談することが大切です。
月経2日目のような多量の出血や強い腹痛が続く場合には、夜間や休日であっても速やかに産婦人科に連絡し、受診してください。
妊娠初期の流産とは?定義と確率
流産とは、妊娠が成立したにもかかわらず妊娠22週未満で妊娠が終了することをいいます1)。
妊娠12週までに起こるものを早期流産、妊娠13週から22週未満に起こるものを後期流産と呼び1)、流産の約80%は妊娠12週までに起こる2)とされています。
流産は、臨床的に妊娠が確認されたケースのうち約15%に起こるとされており、決して珍しいことではありません。
妊娠初期の流産の主な原因
流産の原因は、胎児側の要因と母体側の要因に分けられます。とくに妊娠12週までの早期流産では、胎児側の要因が多いとされています。
胎児側の原因
流産の胎児側の原因として、最も多いとされるのが染色体異常であり、流産した胎児の組織の染色体を調べた結果、異常を認める割合は60〜80%程度であったとされています1)。
染色体異常は母体の年齢の影響を受けることがわかっており、これは胚の染色体異常の頻度が上昇するためであると考えられています。
母体側の原因
妊娠初期では母体側が原因となる頻度は高くありません。ただし、特有の疾患や感染症などが関連する可能性は知られています。
日本産婦人科医会サイトでは以下のものがあげられています4)。
- 子宮疾患(子宮形態異常、子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮腔内癒着症など)
- 抗リン脂質抗体症候群(血液が固まりやすくなる免疫の異常による疾患)
- 夫婦染色体異常
- 内分泌代謝異常(糖尿病、甲状腺機能異常など)
- 感染症
- ストレスなどの心理的要因
- 嗜好・環境要因(喫煙、過剰なカフェイン摂取など)
妊娠初期に流産しやすい行動はある?
妊娠初期の流産の多くは、胎児の染色体異常によるものであり、母体側に原因があるケースは多くありません。日常生活のなかで、通常の動作や軽い運動などが直接の原因となることは一般的にはありません。
しかし、母体側の原因として挙げた喫煙やカフェイン摂取などは、自身で改善を目指せる習慣です。ストレス・心理的要因や感染症の予防も含め、できる範囲で対処していくことを心がけましょう。
なお、カフェイン摂取量については、日本産婦人科医会が引用するメタ解析では1日350mg以上で流産リスク上昇との報告がある一方、WHO(300mg)、米国産婦人科学会・欧州食品安全機関(いずれも200mg以下)はより低い目安を示しています。現時点では1日200〜300mg未満を目安に控えることが一般的に推奨されています4)5)。 (注5)石本人士「妊娠中,カフェインはどれだけ摂取してよいのか」臨床婦人科産科 76巻5号, 2022.
流産の種類
流産は医学的には原因や経過によって分類されます。ここでは、妊娠初期にみられる主な種類を整理します。
症状や所見による分類
進行流産であれば多量の出血などがあり自分で気付くことも少なくありませんが、稽留流産は赤ちゃんが子宮内で育たなくなったまま外に排出されずに留まっている状態で、自覚症状がほとんどないため、超音波検査によって初めて気づくのが一般的です。
流産の進行度による分類
生化学的妊娠は「化学流産」とも呼ばれます。臨床的に妊娠が確認(超音波検査で胎嚢確認)される前の段階での流産であるため、日本では一般的には妊娠や流産の回数には含めません。
不全流産では出血や腹痛が続き手術が必要になることも多いのに対し、完全流産では完全に出てしまった後は症状が軽くなっていくことも多く、追加の処置も必要ないことが一般的です。
流産を繰り返す場合
原因の有無にかかわらず、流産を2回以上繰り返すことを反復流産、3回以上繰り返すことを習慣流産と呼びます。それぞれの頻度は、反復流産で2.6~5.0%程度、習慣流産で0.7~1%程度3)です。
流産を繰り返す場合には、血液凝固機能検査(血の固まりやすさの検査)や子宮形態の検査、カップルの染色体検査、甲状腺機能検査などが行われます。
検査を行っても明らかな原因が特定できない場合もありますが、流産回数が2回の場合は約80%、3回で約70%が次の妊娠を継続に至ったという報告3)があり、その後の妊娠では問題なく継続できることも珍しくありません。
妊娠初期に流産と診断されたら?治療とその後の妊娠について
妊娠初期に流産と診断された場合、状態によって対応が異なります。完全流産の場合は、子宮内に内容物が残っていないため、特別な処置を必要とせず、経過観察となるのが一般的です。
一方、稽留流産などで子宮内に内容物が残っている場合には、手術を行わずに自然に排出されるのを待つか、子宮内に残った組織を取り除く手術が行われます。いずれの方法を選択するかは、出血の状況や体調などを踏まえて医師と相談のうえ決まります。
どちらの場合でも、その後の妊娠への影響に差はないと考えられており、約80%の女性で流産後5年以内に妊娠・出産が可能だという報告もあります3)。
流産後に新たに妊娠を望む場合、いつから次の妊娠を目指すかについては、心身の回復状態によっても異なるため、かかりつけ医師と相談すると良いでしょう。
妊娠初期の流産に関するよくある質問
妊娠初期の流産についてよくある質問をまとめました。
妊娠初期の流産は気づかないことがある?
生化学的妊娠(化学流産)や稽留流産では、自覚症状がないまま進行することも少なくありません。生化学的妊娠は、胎嚢が確認できる前に流産している状態であり、妊娠検査薬などの検査をしていなければ妊娠自体に気づかないケースも多くあります。
稽留流産は胎嚢確認後の流産ですが、こちらも流産にともなう症状がなく、母親が気づかないまま進行し、超音波検査で初めてわかるケースが多い流産です。
生化学的妊娠、化学流産について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
赤ちゃんの大きさが週数より小さいのは流産の兆候?
胎児が週数相当の大きさよりも小さい場合、必ずしも問題があるわけではありません。
考えられる理由として、妊娠週数の計算がずれている可能性もあります。妊娠週数は最終月経の1日目を基準としますが、排卵日が遅れている場合などでは実際の受精日がずれ、週数が進んでカウントされる場合があります。
特に問題が指摘されてなければ、医師としっかりコミュニケーションを取りつつ経過を見守りましょう。
流産と切迫流産の違いは何?
流産とは、妊娠が成立したにも関わらず、妊娠22週未満で妊娠が終了してしまう状態を指します。すでに胎芽や胎児、付属物が子宮内から排出された、あるいは子宮内で発育が停止している状態です。
一方、切迫流産は、妊娠22週未満の時期に、今後流産に進行する可能性があると判断される状態のことです。性器出血、腹痛、子宮頸管長短縮などの症状がみられます。
切迫流産と診断されても、子宮内に胎嚢構造や胎児・胎芽心拍が確認できた場合、妊娠が継続するケースも少なくありません。切迫流産と診断された場合は、子宮の収縮を抑える薬や安静などで経過を観察しながら対応します。ただし、流産の主な原因が胎児側の染色体異常であることが多いため、すべての切迫流産がこうした治療で防げるわけではありません。
院長からのメッセージ
妊娠初期に「発育がない」「心拍が確認できない」などと告げられたとき、頭が真っ白になるような感覚を覚える方は少なくありません。「自分が何かいけないことをしたのではないか」と、心当たりを探し続けてしまう夜もあるかと思います。
まず、このことをお伝えしたいのです。妊娠12週までの早期流産の原因の多くは、受精卵そのものの染色体の異常です。これは受精の瞬間に起こる偶発的な出来事であり、その後のお母さんの行動や生活習慣が原因となることは、医学的には一般的ではありません。あなたのせいではありません。
流産は、臨床的に確認された妊娠のうち約15%に起こります。決して珍しい出来事ではなく、多くの方が経験されることです。それでもご自身のこととなれば、その悲しみや戸惑いは統計の数字とは別のものとして、確かにそこにあります。
流産後に次の妊娠を望む場合、流産の回数が2回であれば約80%、3回でも約70%の方が次の妊娠を継続できたという報告があります。流産を経験したことが、妊娠・出産の可能性を閉ざすわけではありません。
もし今、出血や腹痛などの症状があって不安を感じているのであれば、一人で抱え込まずに産婦人科を受診してください。特に、月経のような多量の出血、強い腹痛、片側の下腹部痛、めまいなどは、時期を待たずにすぐに受診が必要なサインです。
正確な診断は、超音波検査によってのみ行われます。どうか、ひとりで結論を出そうとせず医師にご相談ください。
参考文献
1)公益社団法人日本産婦人科学会.流産・切迫流産.公益社団法人日本産婦人科学会ウェブサイト.
2)公益社団法人日本産婦人科医会.No.99流産のすべて.2.染色体異常.公益社団法人日本産婦人科医会ウェブサイト.


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