妊娠を希望して一定期間授からない場合などに、医師が不妊を疑って必要と判断した検査は、「不妊検査」として扱われ、東京都の不妊検査等助成事業により、最大5万円の助成を受けられる場合があります。
しかし、ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えて体の状態を確認することを目的とした自由診療の検査であり、原則として東京都の助成金の対象にはなりません。
同じような検査内容であっても、「不妊検査として医師が実施したのか」「ブライダルチェックとして受けたのか」によって、助成対象かどうかが分かれる点には注意が必要です。
この記事では、東京都の不妊検査等助成事業の仕組みを軸に、助成対象となる検査内容、申請条件、申請の流れを整理し、制度上の違いを解説します。
ブライダルチェックの基礎知識については、以下の記事をご覧ください。
原則としてブライダルチェックは助成金の対象外
ブライダルチェックは、妊娠や出産に影響する可能性のある体の状態を事前に把握することを目的とした検査であり、東京都の制度上は予防的検査として位置づけられています。そのため、原則として助成金の対象にはなりません。
一方で、同じ検査項目であっても、妊娠を希望して一定期間授からない状況にあり、医師が不妊を疑って実施した場合には、「不妊検査」として助成制度の対象となる可能性があります。
また東京都では、将来の妊娠に備えた別枠の支援制度として、TOKYOプレコンゼミが実施されています。TOKYOプレコンゼミはブライダルチェック自体への助成ではありませんが、講座を受講したうえで、指定された検査を受けることで、条件付きで検査費用の一部が助成される仕組みです。
妊娠に関する東京都の助成金のまとめ
- 一般的なブライダルチェック:原則として助成対象外
- 不妊検査として実施される検査:不妊検査等助成事業の対象
- TOKYOプレコンゼミ:将来に備える目的の別枠支援制度
ブライダルチェック・プレコンセプションケア・不妊検査の違い
妊娠に関連する検査や取り組みには、「プレコンセプションケア」「ブライダルチェック」「不妊検査」といった言葉があり、混乱しやすいかもしれません。
ここでは、それぞれの違いを整理して解説します。
プレコンセプションケアとは(最も広い概念)
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの健康について「知り、考え、行動する」ための取り組み全体を指します。
具体的には以下のような内容です。
- 知る: 講座を受ける、検査で体の状態を知る、妊娠の仕組みを学ぶ
- 考える: ライフプランを考える、パートナーと話し合う
- 行動する: 生活習慣を見直す、禁煙・節酒、予防接種を受ける
プレコンセプションケアは検査だけでなく、TOKYOプレコンゼミのような講座に参加すること、日々の生活習慣を見直すこと、すべてが含まれる包括的な概念です。
将来の妊娠に備える支援制度「TOKYOプレコンゼミ」
東京都では将来の妊娠や出産に備えることを目的とした支援制度として「TOKYOプレコンゼミ」を実施しています。
TOKYOプレコンゼミは、ブライダルチェックそのものに対する助成制度ではなく、プレコンセプションケア(妊娠前の健康管理)を目的とした講座と検査支援を組み合わせた制度です。
TOKYOプレコンゼミでは、医師などの専門家による講座を受講し、妊娠や年齢、生活習慣と妊娠する力の関係について正しい知識を学びます。そのうえで、所定の条件を満たした場合に限り、妊娠・出産に向けたヘルスチェック検査について、男女それぞれ上限3万円までの助成を受けることができます。
TOKYOプレコンゼミは、自由診療として行う一般的なブライダルチェックの代替となるものではなく、「将来いつか妊娠を考えたい」「早めに自分の体の状態を知っておきたい」といった段階の方が、知識を得たうえで必要な検査や相談につなげるための支援制度です。
TOKYOプレコンゼミについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
ブライダルチェックとは(プレコンセプションケアの一部)
ブライダルチェックは、将来の妊娠に備えて妊娠する力や体の状態を確認することを目的とした検査で、プレコンセプションケアの「知る」に該当する検査です。
- 目的: 将来の妊娠に備えて体の状態を確認する
- タイミング: 妊娠を考え始めた段階、結婚前後など
- 検査の性質: 予防的・自主的な健康チェック |
- 主な検査項目: ホルモン検査、超音波検査、感染症検査、精液検査など
- 助成制度: 原則として助成対象外(自由診療)
ブライダルチェックは「何か問題があるから受ける」のではなく、「将来に備えて早めに自分の体を知る」ための検査です。
不妊検査とは(医学的診断のための検査)
不妊検査は、妊娠を希望しているにもかかわらず一定期間妊娠しない場合に、医師が不妊の原因を特定・診断するために行う検査です。
- 目的: 不妊の原因を特定し、適切な治療につなげる
- タイミング: 妊娠希望で約1年妊娠しない場合(※)
- 検査の性質]:医学的に必要な診断のための検査
- 主な検査項目: ブライダルチェック項目に加え、卵管疎通性検査、子宮鏡検査、染色体検査など、より詳細な検査
- 助成制度: 東京都では最大5万円の助成対象
※女性の年齢が35歳以上の場合や、明らかな原因がある場合は半年程度、40歳以上であれば妊娠したいと考えた時点での受診が推奨されます。
助成金の対象になる東京都の不妊検査等助成事業とは
東京都では不妊検査等助成事業として、不妊検査や一般不妊治療にかかる費用の一部を助成しています1)。
助成される費用
東京都の助成額は上限50,000円です。不妊検査および一般不妊治療にかかった費用が対象で、保険薬局での薬代も含まれます。将来の妊娠に向けた健康チェック目的で受けるブライダルチェックは助成の対象にはなりません。
なお、助成額は自治体によって異なります。助成制度の活用を検討している方は、住んでいる自治体の制度内容を事前に確認しておきましょう。
助成回数
助成回数は、夫婦1組につき1回限りです。
助成対象期間は検査開始日から1年間で、この期間内の費用をまとめて申請します。ただし、1年以内でも妊娠が判明した場合や、体外受精・顕微授精に移行した場合は、その時点で対象期間が終了します。
申請は1回のみのため、検査や治療の費用を把握したうえで、適切なタイミングで申請することが大切です。
助成対象となる検査内容:男女別
助成対象は医師が必要と認めた不妊検査です。女性と男性それぞれの主な検査項目は次のとおりです。
【女性側】
【男性側】
対象者の要件
助成対象となるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 検査開始日から申請日までの間、法律婚または事実婚の関係にあること
- 検査開始日から申請日まで夫婦いずれかが継続して都内に住民登録をしていること
- 検査開始日時点で妻の年齢が40歳未満であること
- 夫婦ともに助成対象の検査を受けていること
夫婦で検査開始日が異なる場合は、早いほうの日が基準となります。また、夫婦どちらか一方のみの検査では対象外となるため、2人で受診するよう計画しましょう。
対象となる医療機関とは
助成対象の検査は、保険医療機関で受ける必要があります。保険医療機関とは、健康保険が使える病院や診療所のことです。自由診療のみの医療機関は対象外となります。
東京都福祉局のサイトでは、都内で不妊検査等を実施している医療機関の一覧が公開されています。検査内容や費用は医療機関ごとに異なるため、受診前に確認しておくとスムーズです。
院長からのメッセージ
「ブライダルチェックは助成金が出ますか?」というご質問をよくいただきます。
原則として、ブライダルチェックは東京都の助成制度の対象外です。しかし、将来の妊娠に備えた検査については、TOKYOプレコンゼミという別の制度があり、講座受講後に検査を受けることで最大3万円の助成が受けられます。
同じような検査でも、妊娠を希望して一定期間(半年~一年程度)妊娠しない場合に医師が行う不妊検査については、最大5万円の助成を受けられます。
どの選択が適しているかは、現在の状況によって異なります。
- これから妊娠を考え始める → TOKYOプレコンゼミ(講座+検査、最大3万円)
- すぐに体の状態を知りたい → ブライダルチェック(助成なし)
- しばらく妊活したが妊娠しない → 不妊検査(医師の判断、最大5万円)
ただし、助成金の有無だけで判断する必要はありません。大切なのは、ご自身の状況に合わせて適切なタイミングで必要な検査を受けることです。
どの選択が最適か、一緒に考えましょう。お気軽にご相談ください。
参考文献
1)東京都福祉局. 不妊検査等助成事業の概要. 東京都福祉局.
2)こども家庭庁. 男性不妊について. みんなで知ろう、不妊症不育症のこと.
妊活ながの.妊活検診(不妊検査)について

