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最終更新日:
2026-09-04

月経周期の乱れや気分の浮き沈みなどから、「女性ホルモンを増やしたい」「ホルモンバランスを整えたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。

女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンは、月経や排卵、妊娠だけでなく、骨や血管など全身に関わる重要なホルモンです。食事や運動、睡眠などの生活習慣を整えることは、ホルモンが本来の働きをするための土台づくりにつながります。一方で、女性ホルモンを自力で大きく増やすことは難しく、必要に応じて排卵誘発剤やホルモン補充療法などの治療が検討される場合もあります。

この記事では、女性ホルモンの基本的な働きから、女性ホルモンを増やす方法として考えられるセルフケアや医療的な治療法、妊娠との関係について解説します。

女性ホルモンとは?女性ホルモンの働きについて

女性ホルモンには主にエストロゲンとプロゲステロンがあり、それぞれ異なる役割を担っています。ここでは、これらのホルモンの基本的な働きについて解説します。

エストロゲン(卵胞ホルモン)の働き

エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれ、子宮内膜を厚くして妊娠に備えることや女性らしい体つきをつくる役割を担っています。

他にも、自律神経を安定させたり骨密度や血管の健康を保ったりするなど、体のさまざまな働きに関わっています。

プロゲステロン(黄体ホルモン)の働き

プロゲステロンは黄体ホルモンとも呼ばれ、月経周期を整えるほか、排卵後に基礎体温を上げたり、受精卵が着床しやすいように子宮内膜の状態を整えたりなど、妊娠が続くように働きかける役割を担っています。

女性ホルモンを増やす方法はある?バランスを整えるセルフケア

女性ホルモンを自分の力だけで大きく増やすことは難しいです。ただし、生活習慣を整えることで、ホルモンの働きを支えることは可能です。ここでは、食事・運動・睡眠・ストレスケアなどのセルフケアについて解説します。

食事

食生活を整えることでホルモンバランスの乱れを軽減することにつながります。女性は女性ホルモンの変化やライフステージに応じて心身の状態が変わるため、食事のポイントを知り健康に過ごすことが大切です。

基本は3食を規則正しく摂り、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい食事を心がけましょう。女性はたんぱく質やビタミンB6、ビタミンE、鉄、亜鉛などが不足しがちとされているため、意識して取り入れるとよいでしょう。ただし、特定の栄養素を摂ることで女性ホルモンが増えるわけではありません。

なお、大豆イソフラボンという成分は、その化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ているため、エストロゲンに近い作用を発揮することが知られています。

ただし、メリットだけでなく、過剰に摂取すると健康影響のリスクも指摘されています。妊婦や小児については、日常の食生活に上乗せして摂取することは推奨されていません。日々の食事はバランスを大切にしながら、大豆イソフラボンも摂りすぎに注意しながら無理のない範囲で取り入れるようにしましょう。

食品安全委員会は、大豆イソフラボンの一日の摂取目安量の上限を70〜75mg(アグリコン換算)としており、サプリメントなどで日常の食事に上乗せする場合は30mgまでを目安としています。豆腐や納豆といった通常の食事から摂る分には問題になりにくい量ですが、サプリメントを併用する場合は注意してください。

適度な運動

適度な運動を取り入れることも、ホルモンバランスを整えることにつながることが期待できます。また、肥満はホルモンの分泌リズムを乱し、月経不順や不妊の誘因となることがあることが知られており、肥満を防いだり改善する意味でも適度な運動は推奨されます。

一方で、激しい運動によりエネルギーが不足した状態が続くと、脳からの指令がうまく働かなくなり、月経が止まる可能性なども知られています。適度な運動を無理なく続けるようにしましょう。

睡眠

女性ホルモンの分泌は、睡眠とも関わっていると考えられています。睡眠は脳の視床下部から下垂体、卵巣へとつながるホルモン分泌の司令系統を整え、女性ホルモンの分泌リズムを保つ役割が知られています。

睡眠時間が短い女性は、十分な睡眠を取っている女性に比べて、卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が低くなるという調査結果もあります。FSHは卵胞の成長を促すホルモンであり、エストロゲンの分泌にも関わることから、睡眠不足は間接的に女性ホルモンのバランスに影響を及ぼす可能性があると考えられます。

毎日の睡眠時間や睡眠の質を見直すことも、女性ホルモンが本来のリズムで分泌されるための土台づくりとして、意識してみるとよいでしょう。

ストレスケア

女性ホルモンの分泌は、ストレスとも関係が知られています。私たちの体は、ストレスを受けると脳がそれを感知し、心身の状態を一定に保とうとする働き(ホメオスタシス)を維持しようとします。

この働きは、自律神経系・内分泌系(ホルモン)・免疫系といった仕組みによって支えられていますが、ストレスが強すぎたり長く続いたりすると、この働きを保つことが難しくなり、ホルモンの分泌を調整する機能にも影響が及ぶ可能性があります。

日々の生活の中で自分なりのストレスへの対処法を持ち、心身を休める時間を意識的に作ることが、女性ホルモンを整える土台づくりにもつながります。

女性ホルモンを医療的に補う・整える方法

セルフケアだけでは対応が難しい場合、排卵誘発剤やホルモン補充療法などの医療の力を借りる選択肢もあります。ここではその内容について解説します。

排卵誘発剤

ホルモンバランスの乱れなどにより、うまく排卵が起こらない場合には、排卵誘発剤による治療が選択肢の一つとなります。排卵誘発剤には、内服薬と注射薬があり、軽度から中等度の排卵障害には、まず内服薬が用いられることが一般的です。

ホルモンの分泌が乱れて排卵が起こりにくい場合でも、妊娠の可能性を高めるための治療法の一つです。ただし、薬剤によって複数の卵胞が育つと、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群のリスクが高まることもあるため、医師と相談しながら、自分の状態に合った治療を進めていくことが大切です。

ホルモン補充療法

ホルモン補充療法は、エストロゲンを薬で補うことで心身の不調を和らげる治療法です。エストロゲン製剤には飲み薬・貼り薬・塗り薬などの剤形があり、体質や状況に応じて医師と相談しながら選択します。

ホルモン補充療法は、ほてりや発汗といった血管運動神経症状だけでなく、骨粗しょう症など更年期以降に進みやすい病気を予防する効果も期待できるとされています。一方で、不正出血や乳房の張りなどの副作用が生じることがあります。また、エストロゲンと黄体ホルモンを併用する場合、5年以上の長期使用で乳がんのリスクがわずかに高まるという報告があります。ただしその程度は限られており、近年は開始年齢や薬の種類、投与方法によってリスクを抑えられることもわかってきています。

なお、乳がんや子宮内膜がんの既往がある方、血栓症の既往がある方、原因のわからない不正出血がある方などは、この治療を受けられません。開始前には必ず、効果とリスクの両方について医師から説明を受けたうえで判断してください。

女性ホルモンと妊娠の関係

女性ホルモンは妊娠が成立するプロセスに深く関わっています。これらがどのように連携して妊娠を支えているのか、また月経周期や排卵の乱れの意味について解説します。

エストロゲン・プロゲステロンが妊娠で果たす役割

妊娠するまでには、エストロゲンとプロゲステロンがそれぞれ働いています。

月経周期の前半では、卵胞から分泌されるエストロゲンの作用によって子宮内膜が厚くなり、受精卵を迎える準備が進んで排卵が起きます。排卵後、卵胞は黄体に変化してプロゲステロンを分泌するようになり、エストロゲンとともに子宮内膜の厚みを保ちながら、受精卵が着床しやすい状態へと整えていきます。

妊娠すればプロゲステロンの分泌は保たれ、子宮内膜が維持されて妊娠が継続します。一方、妊娠しなかった場合はホルモンの値が下がり、子宮内膜は剥がれ落ちて月経が起こります。

月経周期・排卵の乱れが妊娠に与える影響

エストロゲンやプロゲステロンの分泌に乱れが生じると、月経周期に影響が現れることがあります。

通常、月経周期は25〜38日とされていますが1)、周期が短い場合や長い場合は、卵胞の発育や排卵のタイミングに乱れが生じている可能性があります。

他にも、周期の乱れの背景には、排卵がうまく起こっていない状態が隠れていることがあり、月経のような出血があっても、実際には排卵を伴っていない「無排卵周期症」というケースがあります。この場合は排卵されないため、妊娠には至りません。

無排卵月経について、詳しくはこちらの記事で解説しています。

年代別・女性ホルモンとの向き合い方

女性ホルモンとの付き合い方は、将来の妊娠に備えたい20〜30代と、更年期の入り口に差し掛かる40代以降とでは意識したい点が異なります。ここではそれぞれの年代で意識しておきたいことについて解説します。

20〜30代

20〜30代は、将来の妊娠に備えて生活習慣の土台を整えておきたい時期です。この時期に意識したいのが、月経周期の乱れを放置しないことです。自己判断せず、気になる乱れが続く場合は早めに婦人科に相談するとよいでしょう。

また、まだ妊娠を考えていない段階でも、ブライダルチェックのような検査を知っておくことも、将来の自分のための備えになります。

ブライダルチェックについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。

40代以降

40代に入ると更年期の入り口に差し掛かる方が増えていきます。ほてりやのぼせ、気分の落ち込みなどの更年期症状は、ホルモン補充療法によって症状を和らげられる場合があります。

また、40代で妊娠を希望する場合は、その時点で不妊治療専門の医療機関へ相談することが勧められます。女性は年齢とともに卵子の数や質が低下し、40代では妊娠する力の低下や流産率の上昇も顕著になるためです。

40代の妊娠については以下の記事でも詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。

女性ホルモンの増やし方についてよくある質問

女性ホルモンの増やし方に関して、よくある質問についてお答えします。

Q:アロマターゼで女性ホルモンは増えますか?

A:アロマターゼはアンドロゲンというホルモンをエストロゲンに変換する酵素であり、エストロゲンの生成に重要な役割を果たします。

一方で、不妊治療で使われるのは、そのアロマターゼの働きを抑える薬(アロマターゼ阻害薬)です。卵胞を育てるために使われる薬ですが、この薬を使うとエストロゲンが一時的に少ない状態になり、脳がそれを「卵胞が育っていない」と受け取ってFSHの分泌を増やします。その結果、卵胞の発育が促されるという仕組みです。

このようにアロマターゼは女性ホルモンや卵胞の発育にも深く関わりがある酵素ですが、薬として使われているのはその酵素の働きを抑える薬であり、直接女性ホルモンを増やす薬ではなく、卵胞発育を促すために使われる薬です。

Q:漢方で女性ホルモンは増えますか?

A:漢方薬は、エストロゲンなど特定のホルモンを増やすようなものではなく、生薬の組み合わせによって、体全体の「気・血・水」のバランスを整えることを目的とした薬です。ホルモンそのものに作用するというより、心身のバランスを整えることで、結果的に不調の緩和につながると考えられます。

女性ホルモンを直接増やすというよりも、ホルモンバランスの乱れによって生じる不調に、体質に合わせて寄り添う選択肢の一つと捉えるとよいでしょう。

Q:性行為で女性ホルモンは増えますか?

A:性行為で女性ホルモンが増えるかという点は、必ずしも明らかになっていません。

これらの関連を調べた研究の例として、日常的に性的に活発な女性はそうでない女性と比べて、エストロゲンやプロゲステロン濃度が高い傾向があるという調査結果の報告があります2)

ただし、この関連がどのようなメカニズムによって生じているのかは、まだ十分には解明されていません。ホルモンの状態が性欲や性行動に影響している可能性もあり、どちらが原因でどちらが結果なのかを、この調査だけで判断することはできません。

現時点では、性行為を女性ホルモンを増やすための直接的な方法として捉えるのは、慎重に考えたほうがよいでしょう。

Q:男性にも女性ホルモンはありますか?

A:男性の体内にも女性ホルモンは存在します。男性における女性ホルモンの役割は明確になっていない部分もありますが、エストロゲンを生成する酵素のアロマターゼが欠損した男性では、骨の成熟や脂質・糖代謝の異常、不妊症などの関連が知られており、これらに影響を及ぼしていることが考えられています。

このため、男性においてもエストロゲンは重要なホルモンの一つといえます。

院長からのメッセージ

「女性ホルモンを増やしたい」という言葉を、外来でもよく耳にします。生理が乱れている、気持ちが不安定になる、妊娠を考えている——きっかけはさまざまですが、その背景には「自分でできることがあるなら知りたい」という切実な気持ちがあるのだと思います。

まずお伝えしたいのは、食べ物や運動で女性ホルモンそのものを大きく増やすことはできません。これは、努力が足りないという話ではなく、そういう仕組みになっているということです。「〇〇を食べるだけで女性ホルモンが増える」といった情報には、慎重であってほしいと思います。

では意味がないのかというと、そうではありません。ホルモンの分泌は、脳から卵巣へと続く指令のやりとりで成り立っています。極端な減量や睡眠不足、強いストレスは、この指令そのものを乱します。実際に、体重が大きく減った方や激しい運動を続けた方で月経が止まることは、決してめずらしくありません。生活を整えることは、ホルモンを増やす方法ではなく、本来の働きを妨げないための土台づくりだとお考えください。

そのうえで、大切なことがあります。月経周期の乱れが続いている、3か月以上生理が来ない、といった状態は、セルフケアで様子をみる段階ではありません。背景に排卵障害や甲状腺の病気などが隠れていることもあり、血液検査と超音波検査で確かめられます。原因がわかれば、排卵誘発剤やホルモン補充療法といった対応がとれます。

「まだ受診するほどでは」と思われるかもしれませんが、状態を知っておくことに早すぎるということはありません。気になることがあれば、いつでもご相談ください。

参考文献

1)公益社団法人日本産婦人科医会 思春期のQ&A「正常な生理(月経)の目安を教えてください!」.
https://www.jaog.or.jp/qa/youth/qashishunki5/

2)Prasad A, Mumford SL, Buck Louis GM, Ahrens KA, Sjaarda LA, Schliep KC, Perkins NJ, Kissell KA, Wactawski-Wende J, Schisterman EF. Sexual activity, endogenous reproductive hormones and ovulation in premenopausal women. Hormones and Behavior. 2014;66(2):330-338.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4127088/