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最終更新日:
2026-09-04

妊娠初期になかなか寝付けなかったり、眠りが浅くなって夜中に目が覚めてしまったりして、「このまま眠れない状態が続いて大丈夫だろうか」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

妊娠初期の不眠は、ホルモンバランスの変化やつわり、不安・ストレスなどが関係しています。多くの方が経験する自然な体の反応であり、過度に心配する必要はありません。

この記事では、妊娠初期に眠れなくなる原因や過ごし方の工夫、受診を検討したほうがよい症状について解説します。

妊娠初期に眠れないのはよくある?赤ちゃんへの影響は?

妊娠初期には多くの方が「眠れない」「なかなか寝付けない」と感じています。

妊娠中の症状をまとめた日本の調査では、妊娠初期に「入眠困難感」があった人は62.5%という結果があります1)

また、デンマークで妊娠初期(妊娠5〜16週)の妊婦1,338人を対象に行われた調査では、3つの睡眠の悩みのうち少なくとも1つを抱えていた人は約6割(1つが38%、2つが16%、3つすべてが4%)でした2)。内訳は、「寝付くのに時間がかかる」が23%、「朝早く目が覚めてしまう」が47%、「夜のほとんどを眠れずに過ごす」が14%です。

現時点では、妊娠初期に眠れないことが赤ちゃんに直接的な影響を与えるという研究は限られており、過度に心配する必要はありません。一方で、眠れない状態が続くと、日中の眠気や疲労感が強まったり、気分の落ち込みにつながったりと、お母さん自身の負担になることがあります。また、眠れない背景に別の原因が隠れていることもあります。いびきや息苦しさ、気分の落ち込み、脚のむずむず感を伴う場合については、後述の「受診の目安」もあわせてご確認ください。

妊娠初期や妊娠超初期に眠れない・眠りが浅い原因

妊娠初期に眠れなくなったり、眠りが浅くなる原因はさまざまであり、すべてが明確になっているわけではありませんが、体内のホルモンの分泌量の変化によって、睡眠のパターンに影響することが考えられます。さらに、つわりや頻尿などの体の不調、環境の変化に伴う不安・ストレスによって、眠りが妨げられることもあります。

妊娠超初期や妊娠初期における睡眠の変化の現れ方には個人差があり、寝付きが悪くなるケースもあれば、眠りが浅くなって夜中に目が覚めるケースもあります。

寝付きが悪いケース

寝付きが悪くなる原因の例として、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの増加による変化が挙げられます。

また、不安やストレスによってストレスホルモンであるコルチゾールが増加し、寝付きにくくなる可能性が考えられます。生活環境の変化に伴うストレスも、寝付きが悪くなる要因のひとつです。就寝時に考え事が続いて気持ちが落ち着かないと、なかなか眠れない場合があります。

先述のとおり日本の妊婦を対象とした調査では、妊娠初期に「入眠困難感」があった人は62.5%という結果があり1)、比較的多くの人が経験する症状といえます。

眠りにくいと感じたら、まずは就寝前の環境を整えることから始めてみましょう。

眠りが浅くなる・夜中に目が覚めてしまうケース

妊娠中は、深い眠りにあたる徐波睡眠が減ったりすることで、夜中に目が覚めやすくなることがあります。また、夜間の頻尿やつわりによる吐き気などの不快感によって、睡眠が途中で妨げられる場合もあります。

先述したデンマークで妊娠初期の妊婦を対象に行われた調査では、約半数にあたる47%の女性が早朝に目が覚めてしまうと回答しており、14%は夜中にほとんど眠れないと回答しています2)

このような場合は、かかりつけ医に相談したうえで、日中に軽く体を動かすなど、メリハリのある生活を心がけることも対処法のひとつとなります。

妊娠初期に眠れないときの過ごし方

妊娠初期に眠れないときは、夜の習慣だけでなく、日中の過ごし方も意識してみましょう。過ごし方の主な工夫は以下のとおりです。

時間帯 過ごし方の工夫
日中 ・仮眠は15分程度の短さにとどめる
・医師に相談しながら軽い運動を取り入れる
・就寝の1〜2時間前に湯船で体を温める
・就寝前のスマートフォンの操作を控える
・無理に眠ろうとせず、一度寝床を離れてみる

日中に眠気が強いときは、15分程度の短い仮眠をとるとよいでしょう3)。長く眠りすぎると、夜に寝付きにくくなります。また、軽いウォーキングやマタニティヨガなどを取り入れると、睡眠の質の改善が期待できるといわれています。

ただし、日本臨床スポーツ医学会が作成している妊婦スポーツの安全管理基準では「妊娠成立後にスポーツを開始する場合は、原則として妊娠12週以降で、妊娠経過に異常がないこと」「妊娠前から行っているスポーツについては、基本的には中止する必要はないが、運動強度は制限する必要がある」といった注意喚起がされているため4)、実施する際は医師としっかり相談するようにしましょう。

夜は、就寝の1〜2時間前に湯船で体を温めておくと、その後の体温低下とともに眠気を感じやすくなります3)。就寝前のスマートフォンの操作は、寝付きを妨げることがあるため控えましょう。それでも眠れないときは、無理に眠ろうとせず、一度寝床を離れて気持ちが落ち着くのを待つ方法もあります。

市販薬や睡眠薬は自己判断で使わない

妊娠初期に睡眠に関する悩みがあっても、自己判断で市販薬や睡眠薬を使用するのは避けましょう。市販薬のなかには、妊婦や胎児への安全性が確立されていない成分が含まれている場合があります。

睡眠に関する悩みに対しては、生活習慣や睡眠環境の見直しが優先です。それでもつらい場合は我慢せず、医療機関に相談しましょう。

妊娠前から不眠症などの治療で睡眠薬や精神安定剤を処方されている場合も、妊娠がわかった時点ですぐに服用を続けるか相談するようにしましょう。自己判断で中止すると症状が悪化し、かえって母体や赤ちゃんに悪影響が及ぶ可能性があるため、服用の継続や減薬、中止については必ず主治医に確認してください。

妊娠初期に眠れないときの受診の目安

妊娠初期に眠れないときの多くは、ホルモンの変化など一時的な体の変化によるものですが、なかには注意が必要な症状が隠れていることもあります。

以下のような症状がある場合は、医師に相談しましょう。

睡眠中にいびきや息苦しさ、呼吸が止まるような症状がある場合

大きないびきをかく、眠っている間に呼吸が止まっているように見える、息苦しさで目が覚めるといった症状がある場合は、睡眠時無呼吸の可能性があります。

妊娠中はホルモンの影響で気道の粘膜がむくみやすく、また子宮が大きくなることで呼吸に影響が出やすいため、睡眠時無呼吸が起こりやすい時期とされています。妊娠中の睡眠時無呼吸は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病との関連も指摘されており、放置せずに確認しておくことが大切です。

本人は気づきにくい症状のため、日中に強い眠気がある場合や、パートナーからいびきを指摘された場合などは、早めにかかりつけ医に相談してください。

気分の落ち込みが続く場合

眠れない状態に加えて、一日中気分の落ち込みがある、何をしても楽しめないといった状態が続く場合は、うつ状態になっている可能性が考えられます。

うつ病は、気分の落ち込みなどの心の症状だけでなく、眠れない、食欲がない、体がだるいといった体の症状として現れることもあります。体の不調が目立つために、心の症状に気づきにくいことも少なくありません。

妊娠・出産の時期は、こうした不調に注意が必要な時期とされています。気分の落ち込みが長引く場合や、日常生活に支障を来す場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

脚がむずむずして落ち着かない場合

安静にしているとき、特に夜間に脚のむずむず感や不快感が生じ、じっとしていられない場合は、「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」の可能性があります。むずむず脚症候群は、安静時に脚に不快な感覚があり、脚を動かすことで不快感が一時的にやわらぐのが特徴です。

妊娠中はむずむず脚症候群の発症頻度が高まることが知られており、一般的な有病率と比べて2〜3倍程度高いとされています5)。国内の妊婦266人を対象とした調査でも、有病率は15%程度と報告されており、決してめずらしい症状ではありません6)

妊娠中のむずむず脚症候群の多くは出産後に自然に軽快するとされていますが、妊娠前から症状があった方では、産後も症状が続くことがあります。

むずむず脚症候群の背景には、鉄が不足していることが関係している場合があります。妊娠中は赤ちゃんへ鉄が優先的に届けられるため、母体の鉄が不足しやすい時期です。血液検査で鉄の状態を確認できますので、症状が気になる場合は市販薬などで対処せず医療機関で相談してください。

妊娠初期に眠れないことに関するよくある質問

妊娠初期の眠気や睡眠に関してよくある質問に回答します。

Q:妊娠初期に眠くならないのは問題ありませんか?

A:眠気をはじめとする妊娠初期に見られる症状について、多くの症状を経験する人もいれば、一部だけの場合やほとんど症状を感じない人もいます。そのため、眠気を感じないからといってそれ自体が問題というわけではありません。

妊娠初期の眠気は、プロゲステロンというホルモンの増加によって生じやすいとされる症状のひとつですが、体調や症状の感じ方には個人差があります。眠気の有無だけで過度に心配する必要はありませんが、他の症状も含めて気になることがあれば、医療機関に相談してください。

Q:妊娠初期に昼間は眠いのに、夜眠れないのはなぜですか?

A:妊娠初期は、プロゲステロンの影響によって、日中に強い眠気を感じることがあります。一方、夜はつわりによる吐き気や頻尿などで眠りが妨げられることがあり、夜の睡眠の質が低下することで、日中の眠気が強まることがあります。

日中に眠気が強いときは、昼食後に15分程度の仮眠をとるとよいでしょう。長時間の仮眠は夜の睡眠に影響することもあるため、短めにとどめるのがポイントです。体調に問題がなければ、医師に相談しながら軽く体を動かす方法もあります。

Q:妊娠初期に気持ち悪くて眠れないときはどうすればよいですか?

A:妊娠初期は、つわりによる吐き気などの不快感で、眠りが妨げられることがあります。楽に感じられる姿勢を探す、食事の量やタイミングを調整するなど、体調に合わせて過ごし方を工夫してみましょう。

吐き気が強くて水分を十分にとれない場合や、眠れない状態が続いて日常生活に支障が出ている場合は、我慢せずに医療機関へ相談してください。

院長からのメッセージ

妊娠がわかってから眠れなくなった、という声はとてもよく聞きます。夜中に何度も目が覚める、朝早くに目が覚めてしまう。そんな状態が続くと、「眠れないことが赤ちゃんに影響するのでは」と心配になりますよね。

まずお伝えしたいのは、妊娠初期の睡眠の変化そのものが赤ちゃんに悪い影響を与えるという根拠は、現時点では乏しいということです。海外の調査でも、妊娠初期の女性の半数近くが早朝に目が覚めると答えています。決してめずらしいことではありません。

一方で、眠れない背景に別の理由が隠れていることもあります。ひとつは睡眠時無呼吸です。大きないびきをかく、息苦しさで目が覚めるといった症状がある場合は相談してください。妊娠中は気道が狭くなりやすく、非妊娠時よりも起こりやすいことが知られています。適切に対応できる状態です。

もうひとつは脚のむずむず感です。妊娠中に多い症状で、鉄が不足していることが背景にある場合があります。血液検査で確かめられますので、思い当たる方は申し出てください。

そして気分の落ち込みです。眠れないことと気持ちの沈みは、どちらが先とも言えないかたちで絡み合います。「眠れないだけ」と片づけずに、つらいと感じたときは話していただきたいと思います。

眠れない夜は長く感じられるものです。どうかひとりで抱え込まないでください。

参考文献

1)新川治子, 島田三恵子, 早瀬麻子, 乾つぶら. 現代の妊婦のマイナートラブルの種類,発症率及び発症頻度に関する実態調査. 日本助産学会誌. 2009;23(1):48-58.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/23/1/23_1_48/_pdf/-char/ja

2)Ertmann RK, Nicolaisdottir DR, Kragstrup J, Siersma V, Lutterodt MC. Sleep complaints in early pregnancy. A cross-sectional study among women attending prenatal care in general practice. BMC Pregnancy Childbirth. 2020;20(1):123.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7036174/

3)健康日本21アクション支援システム. 快眠と生活習慣
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004

4)日本臨床スポーツ医学会産婦人科部会. 妊婦スポーツの安全管理基準. 日本臨床スポーツ医学会誌. 2005;13(Suppl.):276-281.
https://www.rinspo.jp/files/proposal_11-1.pdf

5)Srivanitchapoom P, Pandey S, Hallett M. Restless legs syndrome and pregnancy: A review. Parkinsonism Relat Disord. 2014;20(7):716-722.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4058350/

6)近藤英明. 妊婦に多いむずむず脚症候群. 看護薬理学カンファレンス2024石川. 2024.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/npc/2024.2/0/2024.2_S1-1/_article/-char/ja