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最終更新日:
2026-09-16

これから卵管造影検査を受けるにあたって「もし詰まっていたらどうしよう」と気になっている方や、検査で「卵管が詰まっている」と言われ、妊娠できるのか不安になった、という方もいるのではないでしょうか。

卵管は卵子と精子が出会い、受精した胚が子宮へ運ばれるための大切な通り道であり、この通り道が塞がったり狭くなったりすると、自然妊娠がしにくくなります。ただし、詰まりが片側か両側か、どの程度塞がっているのかによって妊娠への影響は異なるため、「詰まっている=妊娠できない」と一概にはいえません。

この記事では、卵管が詰まっていた場合の妊娠への影響、詰まる原因や症状、排卵との関係、検査時の痛み、治療法について解説します。

卵管造影検査で詰まっていたら?妊娠への影響は?

子宮卵管造影検査(HSG:Hysterosalpingography)で卵管の詰まりがある場合、妊娠のしやすさに影響がある場合があります。「卵管が詰まっている」という状態には、主に以下の種類があります。

  • 卵管閉塞:卵管が完全に塞がっている状態
  • 卵管狭窄:卵管が狭くなり、通りにくくなっている状態

また、これらの詰まりが片側だけなのか両側なのかによっても妊娠の可能性や治療方針が変わってきます。

実際に、卵管造影検査を受けた2,554人を追跡した海外の研究では、卵管に異常がなかった人の妊娠のしやすさを1とすると、片側に詰まりなどの異常があった人は0.81倍、両側にあった人は0.28倍という結果でした1)

上記のように卵管が詰まっている場合、妊娠のしやすさに影響することがありますが、可能性がなくなるわけではありません。まずは詰まりの状態を詳しく確認し、今後の治療方針やライフプランを医師と相談していくことが大切です。

卵管が詰まる原因

卵管の詰まりの多くは、卵管やその周囲に起きた炎症や癒着によって、通り道が狭くなったり塞がったりすることで起こります。炎症や癒着のきっかけとなる主な原因は、以下のとおりです。

  • クラミジアなどの感染症
  • 子宮内膜症
  • 腹部・骨盤内の手術

卵管の詰まりや狭さといった卵管因子は、不妊の原因のおよそ20%を占めると報告されており、不妊の原因としては少なくありません。

しかし、これらの要因があるからといって必ず卵管が詰まっているわけではありません。一方で、特に思い当たる要因がない場合でも卵管閉塞が見つかることがあります。感染症や子宮内膜症は自覚症状がないことも少なくありません。気になる場合は、自己判断せず医療機関での検査を受けるとよいでしょう。

卵管が詰まっている人の特徴・症状

卵管の詰まりには、これといった共通の特徴や自覚症状がないことが多く、妊娠を望んで検査を受けて初めて判明するケースが少なくありません。

詰まり自体には症状は無くても、詰まりの原因となる疾患の症状が現れることはあります。例えば、月経痛が強い方は背景に子宮内膜症があり、そして子宮内膜症が卵管の癒着につながっている可能性があります。もちろん、月経痛が強い方が全員子宮内膜症というわけではありませんし、子宮内膜症の方すべてが卵管が詰まっているわけではないため、月経痛=子宮内膜症=卵管閉塞と考える必要はありません。

一方で、クラミジアなどの感染症では、おりものの異常や不正出血がみられることもありますが、目立った症状がないまま卵管や骨盤内の炎症が進み、気づかないうちに卵管が詰まってしまうこともあります。

症状の有無や月経が順調かどうかだけでは、卵管の状態は判断できません。

片方だけ卵管が詰まっている場合と両方の場合の違いは?

卵管の片側だけが詰まっている場合は、もう一方の卵管が通っていれば、卵子と精子が出会えるため、自然妊娠の可能性が残されています。前述した海外の研究でも、卵管に異常がなかった人の妊娠のしやすさを1とすると、片側の異常にとどまる場合は0.81倍と、両側の場合(0.28倍)に比べて低下は小さいという結果でした1)

一方、両側の卵管が詰まっている場合は、卵子と精子が出会う経路が塞がれるため自然妊娠は難しくなり、体外受精などの治療が検討されます。

ただし、治療方針や妊娠の可能性については、詰まりの場所や程度に加えて、年齢などの要素も重要となります。

卵管が詰まっていると排卵しない?

卵管が詰まっていても、排卵の異常がない限り、排卵は起こります。排卵は、卵巣の中で卵胞が育ち、成熟した卵子が卵巣から飛び出す現象で、卵管とは離れた場所で起こるためです。

卵管閉塞で問題となるのは、排卵ができないことではなく、排卵された卵子と精子が出会い、受精した胚が子宮へ移動するまでの通り道が塞がれてしまうことです。

通常どおり排卵が起こって卵子が育っていれば、卵巣から卵子を採り出して体外で受精させる体外受精など、卵管を介さずに妊娠を目指す方法もあります。排卵と卵管は別の問題として、それぞれの状態をふまえて治療を考えていくことが大切です。

卵管造影検査、詰まっていたら痛い?

卵管が詰まっている場合、検査中に痛みを感じることがあります。

卵管造影検査は、腟から造影剤を注入し、その流れをX線で確認する検査です。器具の挿入時などに違和感を覚えることもありますが、特に痛みを感じやすいのは、造影剤を注入するステップです。

痛みが出る理由は、子宮内や卵管に圧力がかかるためです。卵管が通っていれば造影剤が卵管から腹腔内へ抜けていくため強い圧力はかからないのですが、卵管が閉塞していたり狭くなっていたりする場合は子宮内に造影剤が溜まっていくため圧力がかかり、痛みを感じやすくなります。

ただし、痛みをやわらげる工夫として、造影剤を低い圧でゆっくり注入したり、鎮痛薬を使用したりします。

卵管造影検査で痛みを感じた人の割合や痛みが出る理由について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。

卵管が詰まっていた場合の治療法

卵管造影検査で詰まりが見つかった場合の治療には、「卵管そのものを治療する方法」と「卵管を介さずに妊娠を目指す方法」があります。

卵管そのものの治療としては、子宮に近い部分の閉塞・狭窄を細い管で内側から広げる卵管鏡下卵管形成術などがあります。

一方で、こうした手術を選ばず、そのまま不妊治療へ進むケースも多くあります。日本産科婦人科学会も、卵管の異常に対しては手術を考慮しつつ、近年は卵管での受精を必要としない体外受精などの生殖補助医療に進むことが多いとしています。

海外の研究でも、卵管に不妊原因がある患者さんに対する生殖補助医療での妊娠率が34.2%であり、卵管以外の原因の患者さんの妊娠率(35.4%)と統計的な差がなかったという報告があります2)

この調査の卵管に不妊原因がある患者さんは、卵管留水腫を伴わないという条件があります。そのため、卵管留水腫の場合は該当しませんが、生殖補助医療を実施することで卵管に問題があった場合でも一定の妊娠率が期待できることがうかがえます。ただし、妊娠率は年齢や胚の状態などによっても大きく変わる点には注意が必要です。

どちらの方法を選ぶかは、年齢や卵巣機能などの体の状態、男性側の精子の状態なども踏まえて、総合的に検討していきます。体外受精について詳しくは、以下のページをご覧ください。

卵管造影検査でわかること、わからないこと

最後に、卵管造影検査自体の精度についてもご説明します。

卵管造影検査で見ているのは、「造影剤が子宮から卵管を通って、お腹の中へ流れ出ていくかどうか」です。卵管が閉じているかどうかを直接観察しているわけではありません。そのため、造影剤がしっかりと通った場合には卵管が通っていると言えるのですが、通らなかった場合でも本当に卵管が詰まってしまっているとは言い切れません。

卵管はもともと非常に細いのですが、造影剤が入る刺激で一時的に収縮し、さらに狭くなってしまうことがあります。そうなると造影剤が流れなくなってしまうため、検査としては詰まっている可能性があるという診断になりますが、実際には卵管そのものが塞がっていないこともあるのです。

腹腔内を直接観察する腹腔鏡検査と比較した研究をまとめた解析では、次のような結果が報告されています。

実際に卵管が閉じていた方のうち、卵管造影検査でも造影剤の流れが止まって見えたのは約65%でした3)。残りの方は、卵管が閉じていたにもかかわらず、検査では造影剤が流れているように見えていたことになります。

一方、実際に卵管が通っていた方のうち、検査でも造影剤が流れて見えたのは約83%でした3)。残りの方は、卵管が通っていたにもかかわらず、検査では造影剤が流れていないように見えていたことになります。

つまり、造影剤の流れ方と実際の卵管の状態は、一致しないことがあるということです。

そのため、造影剤の流れが確認できなかった場合でも、その1回の所見だけで卵管が閉じていると確定するわけではありません。時期を変えて再検査したり、別の方法で確認したりすることがあります。

卵管造影検査に関するよくある質問

卵管造影検査や卵管の詰まりについて、よくある質問に回答します。

Q:卵管造影検査で卵管の詰まりは解消されますか?

A:卵管造影検査は本来、卵管が通っているかを調べる検査ですが、治療的な効果もあることが知られています。造影剤が卵管を通ることで軽度の癒着や粘液の詰まりが押し流され、通りが良くなる「フラッシング効果」があると考えられています。

39歳未満で卵管病変のリスクが低い方を対象とした研究では、油性の造影剤を使った検査のあとは、妊娠率が高かったという報告があります4)。一方で、2025年に報告された卵管病変が疑われる方を含む集団の研究では、油性と水性とで妊娠率に明らかな差は認められませんでした5)

ただし、卵管造影検査はあくまで検査であり、詰まりを治すための治療ではありません。また、妊娠のしやすさは、卵管の状態だけでなく、ほかの不妊の要因や年齢によっても異なります。

Q:卵管が詰まっているかどうかは、卵管造影検査以外でもわかりますか?

A:卵管が詰まっているかどうかを確認する方法には、卵管造影検査のほかに、卵管通水検査があります。ORINAS ART CLINICでは、卵管通水検査について、ヨードアレルギーや甲状腺疾患などでヨード造影剤を使用できない方向けの代替検査として位置づけています。

具体的には、子宮鏡(胃カメラのような細いカメラ)で子宮の中を確認しながら検査液を注入し、気泡や液体の流れを観察することで、卵管が詰まっていないかを調べます。

卵管造影検査や卵管通水検査の詳細に関しては、以下のページもご覧ください。

院長からのメッセージ

子宮卵管造影検査で「卵管が詰まっています」と伝えられたら、「もう自然には妊娠できない」と感じてしまいますよね。その気持ちはよくわかります。ただ、そこで一度立ち止まっていただきたいのです。

まず、詰まっているのが片側だけなのか両側なのかで、状況は大きく変わります。片側が通っていれば、自然妊娠の可能性は十分に残されています。

そして、これはぜひ知っておいてほしいことなのですが、卵管造影検査で造影剤が流れなかったからといって、必ずしも卵管が塞がっているとは限りません。この検査が見ているのは造影剤の流れであって、卵管そのものではないからです。特に子宮に近い根元の部分は、造影剤が入る刺激で一時的に縮こまることがあり、実際には通っていたというケースが少なくありません。1回の検査結果だけで確定と考える必要はありません。

もうひとつ、よくある誤解についても触れておきます。卵管が詰まっていても、排卵は起こります。卵管と卵巣は別の場所にあり、それぞれ別の機能を担っているからです。排卵が正常であれば、卵管を通さずに妊娠を目指す方法があります。

治療の選択肢は、卵管そのものを広げる手術と、体外受精のように卵管を使わない方法に大きく分かれます。どちらを選ぶかは、詰まっている場所や程度、年齢、卵巣の状態、パートナーの精子の状態まで含めて考えます。一律に決まるものではありません。

検査結果を見ながら一人で考え込むより、ご相談ください。何が書かれていて、それが何を意味するのかを、一緒に確認しましょう。

参考文献

1)Verhoeve HR, Coppus SF, van der Steeg JW, et al. The capacity of hysterosalpingography and laparoscopy to predict natural conception. Hum Reprod. 2011;26(1):134-142.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21088018/

2)Kozinszky Z, Bereczki K, Vedelek V, Bicskei P, Tabi M, Ekes C, Lajkó N, Nagy O, Sinka R, Vágvölgyi A, Zádori J. Pre- and Procedural Factors Influencing the Success of In Vitro Fertilization: Evaluating Embryo Quality and Clinical Pregnancy in Cases of Tubal Factor Infertility. J Clin Med. 2024 Sep 27;13(19):5754.
https://www.mdpi.com/2077-0383/13/19/5754

3)Swart P, Mol BW, van der Veen F, et al. The accuracy of hysterosalpingography in the diagnosis of tubal pathology: a meta-analysis. Fertil Steril. 1995;64(3):486-491.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7641899/

4)Dreyer K, van Rijswijk J, Mijatovic V, et al. Oil-Based or Water-Based Contrast for Hysterosalpingography in Infertile Women. N Engl J Med. 2017;376(21):2043-2052.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28520519/

5)Huijser J, et al. Oil-based versus water-based contrast media for hysterosalpingography in infertile women with advanced age, ovulation disorders or high risk of tubal pathology: a randomised controlled trial. Hum Reprod. 2025;40(Suppl 1):deaf097.197.
https://academic.oup.com/humrep/article/40/Supplement_1/deaf097.197/8170418