診察予約

体外受精(c-IVF)

卵子と精子の「自然な出会い」を、体外で再現する治療。

「体外受精」というと、何か人工的な操作を加えて受精させるイメージがあるかもしれません。

しかし、一般的に行われている「体外受精(コンベンショナルIVF / c-IVF)」は、シャーレの中で卵子と精子を出会わせた後は、精子自身の力で卵子に入り込み、受精するのを見守るという、非常に自然に近い方法です。

不妊治療を山登りにたとえると、山頂にいる卵子に精子が麓(ふもと)から登って会いに行くのが通常の性交渉であり、人工授精は五合目までショートカットさせてあげる治療です。そして、「山頂(卵巣)にいる卵子を麓(ふもと)に降ろし、地上で精子と出会わせてあげる」のが体外受精なのです。

精子が頑張って険しい山道を登る必要がない分、受精のチャンスを格段に高めることができます。

私たちが行うのは、卵子と精子が出会いやすい環境(培養環境)を整えるところまで。そこから先の生命の神秘は、卵子と精子の力に委ねられます。体外受精(c-IVF)は、生殖補助医療(ART)の中で、最も基本となる治療法です。

体外受精のイメージ
体外受精のイメージ

体外受精(c-IVF)の仕組み:「ふりかけ法(媒精法)」

採卵で取り出した卵子の入った培養液の中に、調整した良好な精子を一定濃度で加えます(ふりかけます)。

精子は尾っぽを振って自ら卵子に向かって泳ぎ、卵子の殻(透明帯)を通過して受精します。

  • 顕微授精との違い:顕微授精が「1匹の精子を選んで卵子内に直接注入する」のに対し、体外受精は「多数の精子の中から、受精能力のある優秀な精子が自力で受精する」のを待ちます。

適応となるケース

基本的に、精子の状態がある程度良好であれば、ふりかけ法(媒精法)はまず検討される治療法です。以下は体外受精自体の適応です。

  1. 卵管性不妊:両側の卵管が詰まっている、または切除している場合(卵子と精子が出会う唯一の方法として体外受精が必要となります)。
  2. タイミング法や人工授精でなかなか妊娠しない場合:原因不明不妊や、ピックアップ障害(排卵した卵子が卵管の中に入れない状態)が疑われる場合。
  3. 精子の状態が基準値以上の場合:自然受精できるだけの精子数と運動率がある場合。

メリットと注意点

  • メリット:
    • 自然に近い形での受精が期待できます。
    • どの精子が受精するかは自然の競争原理に任されます。
  • 注意点(受精障害):
    • 精子の見た目や運動率に問題がなくても、以下の理由により「全く受精しない(受精障害)」が稀に起こる場合があります(約5〜10%程度)。
      • 精子が卵子の殻を破る力が弱い
      • 卵子側が精子を受け入れられない

受精障害を回避する「スプリット法」という選択肢

「精子の状態は悪くないけれど、まったく受精しなかったら怖い(受精障害)」という場合、採卵で得られた卵子をすべてふりかけ法(媒精法)にするのではなく、一部を顕微授精に回すという方法があります。これを「スプリット法」と呼びます。(卵子が9個取れたら、5個を体外受精(ふりかけ法)、4個を顕微授精とする等)

受精しないリスクを回避しつつ、自然に近い受精の可能性も残すことができる、バランスの良い戦略です。卵子の個数や精子の状態とこれまでの妊娠歴や治療歴に応じて柔軟に決定します。

治療の流れ

Step 工程 内容
1 採卵・採精 麻酔をして卵子を採取します。同時にパートナーの方に精子を採取(または持ち込み)していただきます。
2 媒精(ばいせい) 培養士が精子を洗浄・濃縮し、適切な濃度の精子を卵子の入ったシャーレに加えます。
3 受精確認 翌朝、顕微鏡で受精のサイン(前核)が出ているかを確認します。
4 培養・凍結 受精卵を「胚盤胞」になるまで3〜6日間培養し、凍結保存します。

胚培養士メッセージ

体外受精(c-IVF)は、卵子に精子をふりかけるという、シンプルな治療方法です。

しかし実際には、卵子の状態を正確に観察し、ふりかける精子濃度、タイミングを適切に見極めなければ、受精が起きない場合や精子が複数侵入してしまう異常受精(多精子侵入)が増えることがあります。

そのため胚培養士は、卵子の成熟状態を確認したうえで、適切な精子濃度とタイミングを判断し、受精が正しく起こる条件を整えます。

また、培養液の種類や温度、ガス濃度など、培養環境を厳密に管理することで、卵子と精子が出会いやすい状態を維持しています。

体外受精の結果は、一つひとつの判断と管理の積み重ねによって左右されます。私たち胚培養士は、そうした日々の取り組みを通して受精を支えています。

上條 慎太郎
ORINAS ART CLINIC 院長

生命の「自力」を信じて、環境を整える治療です。

体外受精(c-IVF)は、生殖補助医療の中でも「スタンダード」な方法です。

培養室という管理された環境ではありますが、最終的にどの精子が卵子と結ばれるかは、自然妊娠と同じく神のみぞ知る領域です。

「顕微授精の方が確率が高いのでは?」と聞かれることもありますが、受精する力さえあれば、体外受精(c-IVF)の方が受精率は高く、胚の質も良くなる傾向があります。

精子の状態や過去の治療歴をしっかりと見極め、お二人の受精卵にとってベストな方法(体外受精で行けるか、顕微授精が必要か)を、プロの視点で提案させていただきます。

ご希望の方には、多数の卵子が取れた際に全て体外受精(c-IVF)にするのではなく、一部を顕微授精にすることもできます。両方の方法のいいとこ取りといった感じでしょうか。

受精の方法についても、採卵前にお気軽にご相談ください。

ORINAS ART CLINIC 院長

上條 慎太郎