診察や超音波検査で卵胞の大きさを聞いても、実際それがどういう意味を持つのかが分からず不安になった、という方もいるのではないでしょうか。
卵胞の大きさは排卵の時期を見積もるうえで大切な目安ですが、自然周期か排卵誘発剤を使っているかによって、妊娠につながりやすいサイズは変わります。また、妊娠のしやすさは卵胞の大きさだけで決まるものでもありません。
この記事では、排卵に必要な卵胞の大きさの目安、卵胞が育つスピード、卵胞の大きさと妊娠率の関係、「小さめ」「大きめ」と言われた場合に考えられることについて解説します。
卵胞とは?|排卵するまでの流れ
卵胞とは、卵巣内にある袋のようなもので、中には卵子が1つずつ入っています。生理周期によっても見え方は大きく変わりますが、通常片側の卵巣に5〜8個程度あります。
卵胞は卵巣内で原始卵胞というとても小さな状態から、一次卵胞となり、さらに細胞が厚くなって内側に空間を持つ二次卵胞へと変化します。その変化とともに中の卵子も受精できる状態へと準備を進め、排卵の直前に最終的な成熟が完了します。その後、排卵にいたると卵胞から卵子が放出されます。
成熟して排卵にまで至る卵胞は、通常1回の生理周期につき1つです。この排卵にまで至る卵胞以外は自然と消えていきます。この仕組みによって双子や三つ子などの多胎のリスクが抑えられているのです。
排卵に必要な卵胞の大きさ
排卵に必要な卵胞の大きさは厳密な基準があるわけではありませんが、大まかな目安が知られています。
日本産婦人科医会は、排卵時の卵胞径の目安は約20〜24mmとしており1)、国際産婦人科超音波学会(ISUOG)からも排卵時の卵胞の目安は18〜22mmと言及されています2)。
実際の排卵時の卵胞の大きさは、その周期の状態や薬剤の使用状況によっても左右されますが、おおむね18〜24mm程度が目安といえます。
卵胞の育つスピードと生理周期
卵胞の育つスピードも個人差があり、1日で何ミリ大きくなるかなどの明確な基準はありませんが、卵胞の大きさの変化をみた研究が参考になります。
自然周期の体外受精を対象とした海外の研究では、採卵前5日間における卵胞径の1日あたりの大きさの増加量は、平均1.04mmと報告されています3)。一方で過去に行われた別の研究では1日あたり1.48〜3.0mmといった結果もあり、超音波技術の精度の違いなどが原因と考えられ、研究間でもばらつきがあります。
卵胞の大きさと妊娠率
卵胞の大きさがどの程度だと妊娠しやすいかが気になる方もいるかと思います。ここでは卵胞の大きさごとの妊娠率を確認した研究結果を紹介します。
ただし、妊娠のしやすさは卵胞の大きさだけで決まるわけではない点には注意が必要です。以下では、自然周期の場合と排卵誘発剤を使用した場合の研究結果をそれぞれ紹介します。
排卵誘発剤を使用した人工授精の場合
一般的にクロミフェンなどの排卵誘発剤を使用した場合、排卵誘発剤に排卵を遅らせる作用もあるため、自然周期よりも主席卵胞(その周期に排卵する卵胞)が大きくなる傾向が知られています。
排卵誘発剤であるクロミフェンまたはレトロゾールを用いた人工授精(IUI)988周期を対象とした海外の研究では、トリガー時(卵胞が十分に育ち、排卵を促すための注射を行った時点)の卵胞の大きさごとに、臨床妊娠率(妊娠6〜7週の経腟超音波で胎児心拍が確認された妊娠)が算出されています4)。なおこの研究では、主席卵胞が18mm未満の周期は解析から除外されています。
上記のとおり、23〜28mmの範囲で高い妊娠率が報告されています。ただしこの研究では、最適な卵胞の大きさは子宮内膜の厚さによって変わることも示されており、内膜が1mm厚くなるごとに最適な卵胞径が0.5mm大きくなるという関係が報告されています。この結果からは、卵胞の大きさだけでなく、子宮内膜の状態も含めた判断が重要と考えられます。
排卵誘発剤については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
自然周期の体外受精の場合
自然周期の体外受精(採卵-新鮮胚移植)を対象とした海外の研究では、採卵時の卵胞の大きさごとに、胚移植後の妊娠率が算出されています3)。この研究では卵胞径が14〜22mmの時点で排卵を促しているため、23mm以上のデータは含まれていません。
上記のとおり、18mm前後でやや高い妊娠率が報告されていますが、いずれの群も統計的にはっきりとした差は確認できなかったとしています。なお、この妊娠率は妊娠が確認された割合であり、出産に至る生産率はこれより低くなります。同研究での採卵周期あたりの生児出生率は卵胞径18〜22mmで7.7〜12.5%と報告されています。
また、この研究では、卵胞の大きさそのものよりも、女性ホルモンのひとつである血中エストラジオール(E2)濃度の方が採れる卵子の数や成熟度と関連が強いとも報告されています。この結果からは卵胞の大きさだけでなく、ホルモン値なども含めて総合的に判断してもらうことが大切といえます。
卵胞の大きさのみが妊娠に影響を与えるわけではない
卵胞の大きさと妊娠率の例を2つ紹介しましたが、先述のとおり卵胞の大きさは重要な要素のひとつであるものの、それだけで妊娠のしやすさが決まるわけではありません。
排卵誘発剤を使用した人工授精で紹介した研究では、卵胞が適切な大きさであれば、子宮内膜が厚いほど妊娠率が高くなるとしており、この点は統計学的にも差があることが確認されています4)。
ほかにも、妊娠した周期としなかった周期の排卵前の卵胞の大きさを比べた調査では、卵胞の大きさに明らかな違いはなく、排卵に向かう卵胞の成長パターンや、LHサージ(排卵を促すホルモンの急上昇)から排卵までの時間に違いがみられたという結果が報告されています5)。
このように妊娠を目指す際には、卵胞の大きさだけで一喜一憂せずに、さまざまな要素から妊娠のしやすい状態を目標として、妊活や治療を進めていくことが重要となります。
卵胞が「小さめ」「大きめ」の場合
ここでは、卵胞が「小さめ」「大きめ」だった場合に考えられる原因や一般的な対処法について解説します。
卵胞が小さい場合
卵胞が小さい、育ちにくい原因には生活習慣やストレス、ホルモン調整の異常など複数の要因があります。
卵胞の発育は、脳の視床下部から下垂体、卵巣へと続くホルモンの連携によって調整されており、この連携のどこかに乱れが生じると、卵胞発育不全や排卵障害が起こります。
そのような乱れの原因のひとつとして知られているのが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)です。
多嚢胞性卵巣症候群とは、超音波検査で卵巣に多数の小さな卵胞がみられ、ホルモンのバランスが崩れることで排卵障害を起こす病気です。症状としては月経不順や不妊、多毛などが特徴ですが、糖代謝の異常などから糖尿病のリスクにもなり得ることが知られています。単に多数の卵胞が見られるだけでは多嚢胞性卵巣症候群の診断とはならないことにも注意が必要です。
多嚢胞性卵巣症候群の治療は妊娠希望の有無などにより異なり、妊娠を希望している場合には排卵誘発剤の内服や注射が検討されます。
多嚢胞性卵巣症候群については、以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
卵胞が大きい場合
卵胞が目安より「大きめ」であった場合にも、いくつかの背景が考えられます。
ひとつは、排卵の準備ができた卵胞が破裂せず、卵子が排卵されないまま卵胞が残ってしまう状態です。排卵を促すLHサージは起きているものの、卵胞の壁が破れずに卵子が中に閉じ込められたまま黄体へと変化してしまうもので、黄体化非破裂卵胞(LUF)と呼ばれます。基礎体温やホルモン検査では排卵があったときとほとんど同じ所見になるため、超音波で卵胞が消えたかどうかを確認しなければ気づけないことが特徴です。
排卵誘発剤を使用した場合にも排卵抑制剤の併用によって卵胞が大きくなりやすいことが報告されていますが、専門知識を持つ医師のもとで慎重に管理をして排卵誘発をしていれば卵胞が大きくなっていること自体を過度に心配する必要はありません。
いずれの場合も、その後の治療方針は状況を見ながら決められていきます。
卵胞の大きさに関するよくある質問
ここでは、卵胞の大きさに関するよくある質問についてお答えします。
Q:卵胞の大きさによっていつごろ排卵するかわかりますか?
A:排卵の目安は、おおむね18〜24mm前後です。
あくまで目安となりますが、たとえば卵胞が10mmであれば排卵まではまだ数日程度かかることが予想されます。一方で18mmや20mmという大きさまで育っていると排卵が近いといえます。
ただし、卵胞の育つスピードには個人差があり、治療の状況によっても変わるため、卵胞の大きさのみで排卵日が決まるわけではありません。
医療機関を受診している場合は、適切なタイミングでの指示や処置を実施することになるため、しっかりとコミュニケーションをとりながら妊活や治療を進めていくようにしましょう。
Q:卵胞が30mm以上で排卵することはありますか?
A:卵胞が30mm前後まで大きくなって排卵するケースもありますが、多くの場合は排卵誘発剤を使ったケースに限られます。薬を使っていない自然周期で30mm以上になっても排卵をしていなければ、排卵の引き金となるLHサージが正常に起こっていない可能性を考えます。
不妊症の日本人女性21名を対象とした研究では、排卵前の卵胞の大きさについて以下の結果が報告されています6)。
上記のとおり、排卵誘発剤を使用している場合には卵胞が30mm前後にまで大きくなるケースもあります。
一方で、卵胞が大きくなっているように見えても、実際には排卵に向かっている卵胞ではないことがあります。そのひとつが卵胞嚢胞(らんぽうのうほう)です。排卵しなかった卵胞に液体がたまって袋状に大きくなったもので、超音波では通常の卵胞と区別がつきにくいことがあります。前の周期の卵胞が排卵せずに残っている場合は遺残卵胞(いざんらんぽう)と呼ばれ、この卵胞が女性ホルモンを出し続けることで、次の周期の卵胞が育ちにくくなることもあります。
多くは治療をしなくても1〜2周期のうちに自然に消えていきます。そのため、しばらく様子をみるという判断がされることもあれば、ホルモン値を確認したうえで、次の周期の卵胞発育を整えるための薬が検討されることもあります。
「大きな卵胞がある」と言われたときに、それが排卵に向かっている卵胞なのか、排卵しなかった卵胞が残っているものなのかは、超音波の所見だけでなく、月経周期のどの時期か、ホルモン値がどうかを合わせて判断します。気になる場合は、その卵胞がどちらの状態と考えられているのかを担当医に確認してみてください。
Q:採卵時に、卵胞の大きさがバラバラなことはありますか?
A:すべての卵胞が同じペースで育つわけではなく、大きさにばらつきがあるケースは少なくありません。これは卵巣刺激の開始前の段階で卵子の発育度合いにばらつきがあるためと考えられており、以前は卵胞の育ち方をそろえる目的で、採卵周期の前にピルなどのホルモン剤を用いる方法が使われてきました。
ただし現在では、この前処置が妊娠率の向上につながるとは限らないことが分かっており、刺激法によってはかえって成績が下がる可能性を示す報告もあります7)。前処置を行うかどうかは、卵巣の状態や刺激法に応じて個別に判断されます。
体外受精・顕微授精を対象とした国内の調査では、卵巣刺激周期において卵胞の大きさが自然にばらつくことを前提に、大・中・小さまざまな大きさの卵胞(合計3377個)から採れた卵子の発育能力が比較されています8)。
その結果、小さい卵胞は卵子が採れる割合や受精率がやや低い傾向はあったものの、受精さえできれば、その後の胚盤胞への発育や妊娠率は卵胞の大きさによる差がなかったと報告されています。
この結果から、採卵時に卵胞の大きさがバラバラであること自体は問題ではなく、小さな卵胞も含めてしっかりと採卵することで妊娠の可能性を広げることにつながる可能性があります。
院長からのメッセージ
卵胞の大きさは私たちが排卵の時期を見積もるための大切な情報のひとつです。ただしそれだけで妊娠の有無が決まるわけではありません。
この記事で紹介した研究でも、卵胞の大きさだけで妊娠のしやすさが決まるわけではなく、子宮内膜の厚さやホルモンの値と組み合わせて判断することの重要性が示されています。卵胞が何ミリだから妊娠しやすい、しにくいという単純な話ではないのです。
同じ18mmでも、自然の周期なのか、排卵誘発剤を使っているのかで意味合いは変わります。クロミフェンなどを使うと排卵前の卵胞は自然周期より大きくなることが知られており、30mm近くになることもあります。「大きすぎるのでは」と不安になる必要はありません。私たちは大きさだけでなく、ホルモン値や子宮内膜の状態、これまでの周期の経過を合わせて、いつ排卵を促すかを判断しています。
採卵のときに卵胞の大きさがそろっていないことも、よくあることです。小さめの卵胞から採れた卵子でも、受精さえすればその後の育ち方に差はないという報告があり、私たちは小さな卵胞も含めて丁寧に採卵しています。
数字が気になったときは、ぜひその場で聞いてください。何を見て判断しているのかをお伝えします。
参考文献
1)日本産婦人科医会. (2)一般不妊治療. 日本産婦人科医会ウェブサイト.
https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89%E4%B8%80%E8%88%AC%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E6%B2%BB%E7%99%82/
2)International Society of Ultrasound in Obstetrics and Gynecology. Folliculometry.
https://www.isuog.org/clinical-resources/patient-information-series/patient-information-gynecological-conditions/folliculometry.html
3)Helmer A, Magaton I, Stalder O, Stute P, Surbek D, von Wolff M. Optimal Timing of Ovulation Triggering to Achieve Highest Success Rates in Natural Cycles—An Analysis Based on Follicle Size and Oestradiol Concentration in Natural Cycle IVF. Frontiers in Endocrinology. 2022;13:855131.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9178246/
4)Palatnik A, Strawn E, Szabo A, Robb P. What is the optimal follicular size before triggering ovulation in intrauterine insemination cycles with clomiphene citrate or letrozole? An analysis of 988 cycles. Fertility and Sterility. 2012;97(5):1089-1094.e3.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22459633/
5)Zegers-Hochschild F, Gómez Lira C, Parada M, Altieri Lorenzini E. A comparative study of the follicular growth profile in conception and nonconception cycles. Fertility and Sterility. 1984;41(2):244-247.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0015028216475989
6)Hata T, Yoshino K, Nagahara Y, Matsunaga I, Kitao M. Precise day of ovulation determined by real-time ultrasound evidence of graafian follicular development. International Journal of Gynaecology and Obstetrics. 1983;21(6):435-438.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6141103/
7)Farquhar C, Rombauts L, Kremer JA, Lethaby A, Ayeleke RO. Oral contraceptive pill, progestogen or oestrogen pretreatment for ovarian stimulation protocols for women undergoing assisted reproductive techniques. Cochrane Database Syst Rev. 2017;5:CD006109.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28540977/
8)Tamura I, Kawamoto-Jozaki M, Fujimura T, Doi-Tanaka Y, Takagi H, Shirafuta Y, Mihara Y, Taketani T, Tamura H, Sugino N. Relationship between follicular size and developmental capacity of oocytes under controlled ovarian hyperstimulation in assisted reproductive technologies. Reproductive Medicine and Biology. 2021;20(3):299-304.
https://doi.org/10.1002/rmb2.12382







