「着床」という言葉は知っていても、具体的にどのような現象なのか、いつ起こるのかなど、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
着床とは、受精卵が子宮内膜にもぐり込んでいく現象のことであり、着床は妊娠の始まりとなる重要なステップです。受精後すぐに完了するわけではなく、数日間かけて進んでいきます。
この記事では、着床が起こる時期や排卵・受精からの流れ、着床期にみられる体の変化、妊娠を確認する方法とタイミングについて解説します。
着床とは?
着床(ちゃくしょう)とは、受精卵が子宮内膜の表面にくっつき、内部へ入り込んでいく過程のことです。
妊娠は、排卵・受精・着床という段階を経て進みます。「排卵」は月経周期の中で自覚しやすかったり症状がある方もいるので意識しやすいかもしれませんが、「受精」と「着床」はすべて体内で起こるためイメージがしづらいかもしれません。
受精は、卵管のなかで卵子と精子が出会い、一つの受精卵という細胞になることをいいます。その受精卵が卵管から子宮へと移動する過程で卵割・成熟して胚となり、子宮にたどり着いた後に子宮内膜に定着する過程が着床です。
受精卵が着床すると、妊娠成立となります。無事に着床した後は、胎盤が形成されていき、赤ちゃんの発育へと進んでいきます。
着床はいつ起こるの?
着床が始まるのは、受精してから5〜7日頃が目安です1)。卵管内で受精した受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら成長し、数日かけて子宮へ移動します。
子宮に到達すると着床を開始し、子宮内膜に入り込んでいきます。着床が完了するのは、受精からおよそ12日前後といわれています。
受精のタイミングを特定するのは難しく、必ずしも性交した日に受精するとは限りません。精子は女性の体内で2〜3日間、長ければ5日程度生存できるといわれているため、性交日(精子が女性の体内に入った日)から数日経って受精することもあり得るのです。
そのため、性交日よりも排卵したと考えられる日を起点にすると、実際の着床時期が予測しやすくなります。
排卵日から何日後に着床する?
排卵日から数えると、着床は排卵から6〜7日目前後に始まるといわれています2)。
排卵された卵子の寿命はおよそ24時間であり、排卵してから間もなく受精が起こるため、排卵日と受精日はほぼ同じ日になります。
あくまでも目安ですが、排卵日から着床までの過程を整理すると次のようになります。
受精卵は着床を開始した後、数日間かけて子宮内膜に定着していきます。個人差はあるものの、着床する時期は、排卵日から1週間前後経った頃より数日間となります。
排卵・受精から着床までの流れ
これまで述べてきたとおり、妊娠は「排卵→受精→着床」という段階を経て成立します。ここでは、3つの段階をより詳しく整理します。
排卵
ひと月に1回、成熟した卵胞から卵子が放出されることを排卵といいます。卵胞1つには卵子が1つずつ入っています。月経周期が28日の場合、月経開始から約14日目に起こります。
通常、卵巣内では多数の卵胞が発育しますが、成熟して排卵に至る卵胞・卵子は多くの場合1つです。卵胞が育つにつれて、卵胞から分泌されるエストロゲンの量が増えます。
エストロゲンが一定値を超えると、脳下垂体から黄体形成ホルモン(LH)というホルモンが急激に分泌されるLHサージという現象が起こります。このLHサージをきっかけに卵胞が破れて中の卵子が外に放出されることで、卵巣から卵子が排出されるのです。
排卵された卵子は、卵管の先端部分である卵管采(らんかんさい)に取り込まれ、卵管膨大部という場所に移動します。
受精
排卵前後に女性の体内へ射精された精子は、頸管粘液(おりものの一部)内を泳ぐようにして子宮内に入ります。さらに卵管へと進み、卵子と出会う卵管膨大部にたどり着きます。
射精により数千万個もの精子が女性の体内に入りますが、卵管までたどり着く精子はごくわずかです。最終的にはたった1つの精子のみが卵子に入り、受精が成立します。
着床
受精した受精卵は、卵管から子宮へと移動しながら、2つ・4つ・8つ……と細胞分裂を繰り返していきます。やがて100個ほどの細胞からなる「胚盤胞」に成長します。
この間、子宮内膜はホルモンの働きによって胚盤胞が着床しやすいように整えられます。ふかふかのベッドのように厚くなった状態です。
子宮にたどり着いた胚盤胞は、透明帯と呼ばれる卵の殻のような薄い膜から脱出(ふ化)し、子宮内膜の表面にくっつきます。
その後、数日かけて内膜の中へと深く入り込んでいきます。着床が完了すると、受精卵はさらに細胞分裂を繰り返し、赤ちゃんへと成長していきます。
着床期間には体の変化がみられる?
着床時期には、少量の出血がみられたり、下腹部に痛み・違和感を感じたりすることがあります。おりものの量が増えたり、眠気や吐き気を感じる方もいます。
これらの症状は、着床すると必ず起こるわけではありません。妊娠初期症状として現れることもありますが、着床時期は妊娠のごく初期にあたるため、実際には目立った変化を感じない場合もあります。
これから紹介する体の変化は、あくまでも可能性として考えられるものであり、実際には特定の症状の有無や特徴だけで、着床したかの判断は難しい点は注意が必要です。
出血(着床出血)
受精卵が子宮内膜に付着する過程で、わずかに出血することがあります。「着床出血」と呼ばれることもありますが、医学的に定義された名前ではなく、また医学的にはそれほど重要な所見でもありません。
着床出血は、短い期間で軽い傾向があるとされるものの、個人差もあります。生理予定日と同じタイミングで起こることもあり、実際には生理との区別が難しいとされています。
着床しても、必ず出血がみられるわけではありません。妊娠初期に出血を経験する人は15〜25%程度との報告もあり、出血する人の方が少ないという統計です3)。ですから出血がないからと言って着床していないと思い込む必要はありません。
着床出血について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
下腹部痛(着床痛)
下腹部に軽い痛みやチクチクとした違和感を感じる方もいます。「着床痛」と表現されることもありますが、この言葉も正式な医学用語ではありません。
着床という過程そのものが痛みを引き起こすかどうかは、医学的に明らかになっていません。痛みの原因としてはホルモンバランスの変化など間接的な影響が考えられ、PMS(月経前症候群)や生理時のような鈍い痛みや張りを感じる可能性があります。
また、妊娠初期は骨盤内の血流が滞りやすくなることで、軽い下腹部痛が起こる可能性があるともされています。
この痛みも着床したら必ず起こるというものではなく、また着床以外の原因でも痛みが起こる可能性はあるため、痛みの有無で着床の有無を判断することはできません。
その他の体調変化
妊娠が成立すると、以下のような症状を感じる方もいます。
- 眠気やだるさ
- 吐き気
- 頭痛
- おりものの増加
- 微熱 など
これらの症状も着床の過程が直接的な原因ではなく、妊娠成立に伴うホルモンバランスの変化や高温期の継続、血液量の増加などが関係していると考えられています。しかし、排卵やホルモン剤の影響でこのような症状が出ることもあります。
着床時期にみられる症状については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる症状のある方はご覧ください。
着床したかを確認する方法やタイミングは?
着床・妊娠の確認は、市販の妊娠検査薬または医療機関での検査によって行います。市販の妊娠検査薬で調べたのち、陽性が出たら医療機関を受診する流れが一般的です。
検査や受診を判断するタイミングの目安は次のとおりです。
- 一般的な妊娠検査薬:生理予定日の1週間後以降(排卵日から3週間後以降)
- 医療機関への受診:妊娠検査薬で陽性が出た後(生理予定日の1〜2週間後頃)
着床すると、胎盤のもととなる組織からhCGの分泌が始まります。市販の妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCGを検出することで妊娠の可能性を判定します。
決められた時期より早く検査すると、妊娠していてもhCGが十分に増えておらず「偽陰性」になる場合があるため注意しましょう。着床直後の時期は、hCGが市販の検査薬で検出できる量まで分泌されていない可能性があります。
医療機関の血液検査では、市販の検査薬より早期にhCGを検出できます。ただし、超音波検査で胎嚢を確認し、正常妊娠と判断できるのは妊娠5週頃です。不妊治療中の方や気になる症状がある方を除き、まずは妊娠検査薬で陽性を確認してから受診するとよいでしょう。
妊娠検査薬の使い方などの詳細は、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
院長からのメッセージ
「今が着床の時期かもしれない」と感じて、体の変化に注意を向けている方は多いと思います。出血があった、チクチク痛む、眠い……そういった感覚を妊娠と結びつけたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、正直にお伝えすると、着床が起こった瞬間に特定の症状が出るとは医学的には言えません。出血も下腹部の違和感も、黄体ホルモンの変化やPMSと同じメカニズムで起こるため、着床の有無とは関係なく現れることがあります。症状があっても着床していないことも、症状がなくても着床していることも、どちらもあり得ます。
大切なことをひとつお伝えします。着床しているかどうかを確認できるのは、妊娠検査薬か医療機関での血液検査です。生理予定日の1週間後以降になれば市販の検査薬でも確認できます。それまでの期間は、体の変化を観察しながら、でも症状に一喜一憂せず、普段どおりに過ごしてください。
陽性が出たら、次は胎嚢確認のために受診してください。そこから一緒に確認していきましょう。
参考文献
1)Zegers-Hochschild F, Dyer S, Adamson GD, et al. The International Glossary on Infertility and Fertility Care, 2025. Fertil Steril. 2026. Accessed June 21, 2026.
https://www.asrm.org/practice-guidance/practice-committee-documents/the-international-glossary-on-infertility-and-fertility-care-2025/
2)日本生殖医学会. Q1.妊娠はどのように成立するのですか?. 日本生殖医学会ウェブサイト.
http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa01.html
3)Snell BJ. Assessment and management of bleeding in the first trimester of pregnancy. J Midwifery Womens Health. 2009 Nov-Dec;54(6):483-91.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1016/j.jmwh.2009.08.007







