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最終更新日:
2026-05-20

「着床したかどうかを体のサインで知ることはできるのだろうか?」判定日を待ちながら、そう感じる方は多いのではないでしょうか。少しの出血や腹部の違和感があれば「着床したのかもしれない」と期待し、何も感じなければ「うまくいっていないのでは」と不安になる。そのような気持ちの揺れは、ごく自然なことです。

ただ、着床に伴う明確な症状があるとは限らず、症状の現れ方は人によって大きく異なります。この記事では、着床後にみられる可能性のある症状や体のサイン、自覚症状以外で着床を確認する方法などを解説します。

着床した時に明確な症状やサインはない場合もある

着床が起きていても、体調の変化を感じない方は少なくありません。少量の出血や腹部の違和感といった変化がみられることがありますが、これらは必ずしも着床と直接関連がない場合もあります。

着床から判定日までの期間は妊娠のごく初期にあたり、妊娠が成立していても目立った変化が現れないことは珍しくありません。また、症状の現れ方には個人差があるため、何も感じないことを「うまくいっていないサイン」と捉える必要はありません。

体調の変化がない場合も悲観的な判断はせず、まずは判定日まで経過をみるようにしましょう。

着床後にみられる可能性のある症状や体のサイン

着床後にみられる可能性のある症状はさまざまであり、着床に伴う体の変化やホルモン状態に変化があるために症状として出るケースがあります。

主な症状の例をあげると以下のとおりです。

  • 出血(着床出血)
  • 腹痛
  • 吐き気
  • 疲労感や眠気
  • 頭痛
  • おりもの増加
  • 微熱

出血(着床出血)

着床出血は着床時にみられる可能性がある代表的な症状です。ただし、医学的に明確な診断名ではなく、すべての妊娠で起こるわけでもありません。妊娠初期にみられた出血を後から振り返って「着床出血だったかもしれない」と気づく程度のこともあり、出血の有無だけで着床を判断することはできません。

また、出血がみられる時期は生理予定日前後と重なることもあり、生理との区別もつきにくい場合があります。

着床出血が起こる頻度は必ずしも明確になっていませんが、妊娠初期の期間を通して出血を経験する人は15〜25%という報告があります1)。すべての出血がいわゆる着床出血というわけでもないため、着床と関連する出血を自覚する人はさらに限られると考えられます。

また、不妊治療で胚移植を行っている場合は、子宮頸部や子宮内への一時的な刺激によって、少量の出血が生じる可能性もあり、必ずしも着床とは関連がないケースがあります。

着床出血については以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

腹痛

腹痛や痛みまでいかないものの、腹部の違和感や張りを感じるケースもあります。原因のひとつとして考えられるのはホルモンバランスの変化があり、PMS(月経前症候群)や生理の時のような痛みや張りを感じる可能性があります。

不妊治療で胚移植を行っている場合、出血と同様に子宮頸部や子宮内への一時的な刺激で痛みや違和感を感じる可能性も考えられます。

吐き気

吐き気は妊娠後によく知られている症状のひとつです。着床時というよりは一般的に妊娠5〜6週目から始まってつわりと表現されることが多いです。ただし、人によってはより早期に感じるケースもあれば、まったく吐き気の症状がない人もいます。

つわりの原因はまだ完全には解明されていませんが、最近では胎児・胎盤由来のGDF15というホルモンが関連している可能性が考えられています2)。妊娠前からこのホルモンの値が高い女性は妊娠中のつわりの症状が軽くなることも報告されており、つわりの症状も個人差が大きいことが知られています。

疲労感や眠気

疲労感や眠気も妊娠後に症状として感じる場合があります。こちらも原因が明確なわけではありませんが、妊娠後に黄体ホルモンが増えることで疲労感や眠気が現れる可能性が考えられます。

頭痛

頭痛やふらつき、めまいなどの症状も人によって感じる可能性があります。これらの症状も着床が直接関連するというよりも妊娠後の体内のホルモンバランスの変化や血液量の増加が原因のひとつとして考えられます。

おりもの増加

おりものが増えることも症状として見られる可能性があります。おりものが増える原因は妊娠に伴うエストロゲンの増加が考えられています。妊娠中のおりものは無色または白色、かゆみや不快感、臭いもあまりないものが一般的ですが、個人差もあります。

微熱

妊娠すると微熱のような状態が続く可能性も考えられます。原因のひとつとして、妊娠が成立すると基礎体温の高温期が続くことが挙げられます。女性の体は排卵後に黄体ホルモンが分泌され、これが体温を上昇させて高温期となります。妊娠していない状態では14日間程度の高温期が続いた後に次の月経が始まり低温期となりますが、妊娠が成立している場合は高温期が続くため、人によっては微熱のような状態が続いていると感じる場合があります。

このように黄体ホルモンによる高温期の継続は、着床時の症状というよりも妊娠成立によるホルモンの変化によるものですが、妊娠時のサインのひとついえます。

自覚症状以外で着床したかわかる方法は?

前述した自覚症状や高温期のサイン以外で着床したかを知る方法は、妊娠検査薬の使用と医療機関での検査が挙げられます。

着床が成立すると、胎盤のもととなる組織からhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌が始まります。このhCGを検出する方法として、尿検査(市販の妊娠検査薬)と医療機関での血液検査があります。

着床直後はhCGの量がまだ少なく、一般的な妊娠検査薬では生理予定日の1週間後からが、検査薬の使用期間となります。

一方で、不妊治療を実施している場合は、医療機関の血液検査で妊娠4週ごろからhCGの情報を確認できることが多く、より早期に判別ができます。ただし、正式な臨床妊娠の判断は胎嚢が確認できる5週目ごろからとなります。

妊娠検査薬の一般的な内容やいつから反応するかなどについては、以下の記事でも詳しくまとめているので、あわせてご覧ください。

着床の症状がみられる人の割合はどれくらい?

着床後の症状はいずれも必ずみられるというものではありません。個人差が大きく、複数の症状がみられる場合や特定の症状のみあらわれる場合、ほとんど症状を感じないという場合もあります。

たとえば着床出血については、先述のとおり妊娠初期の期間を通して出血を経験する人が15〜25%という頻度が報告されています。どちらかといえば、症状がみられない人の方が多いことが想定されます。

吐き気に関しては、症状が出る頻度に関していくつか研究報告があります。2021年の海外の報告では、94.1%の女性に吐き気や嘔吐の症状がみられ、そのうち67%の人は排卵から11日〜20日以内に症状が現れたとしています3)

このように症状の種類によってもみられる割合は異なっており、症状の重さや現れる時期も人によって異なるといえます。

着床しなかった場合の症状は?

着床しなかった場合、エストロゲンやプロゲステロンの血中濃度が低下して、新たな月経周期が始まります。通常の月経前にPMS(月経前症候群)の症状がある場合、腹痛や胸の張り、眠気、頭痛・腰痛などは妊娠していない場合でも起こり得るため、症状だけで着床の有無を判断することはできません。

不妊治療での胚移植を実施している場合でも、着床しなかった場合は通常の月経が来ることによって胚は失われ、特別な症状はとくにないことが一般的です。

受精から着床までの期間における体調の変化は?

受精から着床までの期間は、受精の影響による特徴的な体調の変化はあまりないと考えられます。この期間は受精卵が発育しながら卵管から子宮に移動している状態であり、母体組織と直接接触しているわけではありません。また、hCGといった妊娠後にみられるホルモンも検出できるレベルになるのは主に着床後になります。

排卵後のホルモン分泌の変化として黄体ホルモンの上昇がありますが、こちらは受精の有無に関係なく起こる変化であり基礎体温の上昇などがみられますが、受精による特別な症状ではありません。

院長からのメッセージ

判定日を待っている間、体のわずかな変化がとても気になりますよね。「何か感じるから着床したかもしれない」「何も感じないから失敗かもしれない」——そういった気持ちはとてもよくわかります。

ただ実際には、自覚症状だけで着床の有無を判断することはできません。着床後にみられることのある症状——少量の出血、腹部の違和感、眠気、微熱——は、着床していない場合でも体内のホルモンや薬の影響として現れることがあります。逆に、症状が何もなくても着床している場合は十分にあります。「症状があるから大丈夫」とも「症状がないから失敗」とも言えないのです。

確実に妊娠の有無を確認できるのは、医療機関での血液検査(hCG測定)と、その後の超音波による胎嚢確認です。判定日まで自己判断せず、必ず受診してください。

体の変化に敏感になるのは自然なことですが、症状の解釈に一喜一憂するより、判定日まで穏やかに過ごすことに意識を向けてみるのも有用です。

参考文献

1)Snell BJ. Assessment and management of bleeding in the first trimester of pregnancy. J Midwifery Womens Health. 2009 Nov-Dec;54(6):483-91.

2)Fejzo M, Rocha N, Cimino I, et al. GDF15 linked to maternal risk of nausea and vomiting during pregnancy. Nature. 2024;625(7996):760-767.

3)Gadsby R, Ivanova D, Trevelyan E, Hutton JL, Johnson S. The onset of nausea and vomiting of pregnancy: a prospective cohort study. BMC Pregnancy Childbirth. 2021 Jan 6;21(1):10. doi: 10.1186/s12884-020-03478-7. 

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