不妊治療の検査で子宮鏡検査をすすめられると、「カメラを入れるのは痛くないのだろうか」「どんなことがわかるのだろう」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
子宮鏡検査は、細い内視鏡を使って子宮内膜(子宮の内側)を直接観察する検査です。子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮内の癒着など、着床や妊娠の妨げになりうる変化がないかを確認するために行われます。
この記事では、子宮鏡検査でわかることや検査を受けるタイミング、痛みの程度、費用の目安、検査を受けると妊娠しやすくなるのかについて解説します。
子宮鏡検査とは?
子宮鏡検査とは、子宮鏡と呼ばれる細い内視鏡を腟から挿入し、子宮内膜(子宮の内側)を直接観察する検査です。
使用する内視鏡は、やわらかく曲がる軟性鏡(ファイバースコープ)が一般的に用いられています。近年では、鼻から入れる胃カメラよりも細い、直径3mm程度の軟性鏡が使用されることがあります。
子宮は、受精卵が着床し、赤ちゃんが育っていく場所です。その内側をおおっている子宮内膜は、受精卵を受け止めるベッドのような役割を果たしています。
子宮鏡検査は子宮内膜を直接確認できるため、不妊や流産を繰り返す原因を調べる目的のほか、不正出血や月経量の多さの原因を探る場合や、子宮筋腫などの病変が疑われる場合にも行われています。
子宮鏡検査で何がわかる?
子宮鏡検査では、子宮内膜を全体的に観察し、以下のような変化がないかを確認します。
- 子宮内膜ポリープ
- 子宮筋腫(粘膜下筋腫)
- 子宮内癒着
- 慢性子宮内膜炎
これらは、受精卵の着床を妨げたり、不妊や流産の原因になったりすることがあります。また、不正出血や月経量の異常などの原因になることもあります。
なお、慢性子宮内膜炎については、子宮鏡検査のみで診断を確定できるわけではなく、疑いがある場合は子宮内膜の組織を採取して調べる検査が行われます。
そのほか、子宮内膜増殖症や子宮体がんが疑われる場合などに、病変の部位や範囲を確かめるためにも実施されています。
着床や妊娠の妨げになる変化が見つかった場合は、治療してから妊娠を目指すなど、その後の治療方針を決めるための判断材料になります。
子宮鏡検査の痛みについて
子宮鏡検査は、細い内視鏡を使うため痛みは比較的少なく、麻酔を使わずに検査を行うこともできます。ただし、子宮の入り口が狭い方などは、生理痛のような痛みを感じることがあります。
子宮鏡検査の痛みを調査した具体例を紹介すると、麻酔なしで子宮鏡検査を受けた303人を対象にした海外の研究では、半数以上の方が、カメラが子宮の入り口を通るときの痛みを「痛みなし」または「軽い痛み」と答え、強い痛みを感じた方は5%でした1)。
一方で、約4割の方は中程度の痛みを感じており、痛みの感じ方には個人差があります。とくに出産経験がない方は、痛みを感じやすい傾向があると報告されています1)。
また、子宮の入り口の角度が強い方や、子宮が後ろに傾いている方(子宮後屈)も、痛みを感じやすいと報告されています1)。
痛みが心配な方は、痛み止めの内服薬や坐薬を事前に使用できる場合もあるため、あらかじめ医療機関に相談しましょう。
検査後には、軽い腹痛や少量の出血がみられることもありますが、通常は数日ほどで落ち着きます。
まれなケースにはなりますが、重篤な合併症として、感染症や多量の出血などの可能性があります。検査後の強い腹痛や多量の出血、発熱がみられる場合は、医療機関を受診してください。
子宮鏡検査と卵管造影検査はどちらが痛い?
痛みの感じ方には個人差があるため、一概にどちらが痛いとはいえません。痛みを感じやすい場面は検査ごとに異なるため、まずは、2つの検査の違いを整理しておきましょう。
卵管造影検査と子宮鏡検査の痛みを比べた海外の研究では、痛みの強さを0(痛みなし)〜10(最も強い痛み)で評価した平均値は子宮鏡検査が5.3、卵管造影検査が5.8で、両者に統計的な差はみられませんでした2)。
少なくともこの研究からは、どちらの検査の方が痛いとは言えない、という結果でした。ただし、この研究は対象者が46名と小規模で、全員が検査前に痛み止めの内服と子宮の入り口の周りへの局所麻酔の注射を受けたうえでの結果のため、参考程度に捉えておきましょう。
痛みへの不安もあるかと思いますが、子宮鏡検査も卵管造影検査も、医療機関では痛みを抑えるための工夫が行われています。
気になることは事前に医療機関へ相談し、できるだけリラックスした状態で検査を受けられるようにしましょう。
子宮鏡検査を受けると妊娠しやすくなる?
子宮鏡検査を受けるだけで、妊娠しやすくなるとは言えません。子宮鏡検査は、子宮の中に着床の妨げとなる病変がないかを確認するための検査です。
一方で、検査で子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫などが見つかり、適切に治療することで、受精卵が着床しやすい子宮環境へと近づく可能性はあります。実際に、ポリープや子宮筋腫(粘膜下筋腫)を切除する理由の一つとして、不妊や流産を繰り返すことが挙げられています。
なお、超音波検査などで子宮内に異常がない方を対象に、体外受精の前に一律で子宮鏡検査(見つかった病変の治療を含む)を行った場合の効果を、10件の研究(約3,750人)をまとめて分析した報告があります3)。この分析では、子宮鏡検査を行わない場合の妊娠率が約28%、出産率が約22%だとすると、子宮鏡検査を行うことで妊娠率は33〜40%程度、出産率は25〜32%程度に高まる可能性が示されました。
ただし、多くの研究で方法の記載が不十分であるなど、研究の質は低いと評価されています。信頼性の高い2件の研究(約1,450人)に絞って分析すると、妊娠率・出産率のいずれも改善はみられず、一律の子宮鏡検査が妊娠につながるとは判断できないという結論になっています3)。
子宮鏡検査は、妊娠を妨げる原因を見つけ出し、適切な治療へつなげるための検査だと捉えておきましょう。
子宮鏡検査はいつやる?検査の流れについて
子宮鏡検査を実施するタイミングは、月経が終わった直後から排卵前まで(月経開始から7〜12日目頃)が一般的です。
生理中(月経中)は子宮内が観察しにくいため、原則として検査は実施されていません。また、排卵後は妊娠している可能性があることや、子宮内膜が厚くなって観察しにくくなることから、基本的には検査を控えます。
また、妊娠している状態で検査を受けることを避けるため、検査を受ける周期は、月経が始まってから検査日まで避妊が必要です。
一般的な検査の流れとして、月経が始まったタイミングで検査の予約をして検査日を決めます。検査日当日は細いカメラを子宮内に入れ、子宮内膜を観察し、撮影した画像を見ながら検査結果の説明を受けることになります。通常は、検査そのものにかかる時間は5〜10分程度で、検査後はそのまま帰宅できるのが一般的です。また、胚移植を行う周期に合わせて検査を受けるケースもあります。
なお、検査の時期や当日の流れは医療機関によって異なるため、受診先に事前に確認しましょう。
子宮鏡検査については、以下のページにて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
子宮鏡検査で異常が見つかった場合(ポリープや子宮筋腫など)
子宮鏡検査にてポリープや子宮筋腫(粘膜下筋腫)などの異常が見つかった場合には、子宮鏡を使った手術(子宮鏡下手術)による切除が検討されます。
なお、検査用の細いカメラでは、基本的にその場でポリープを切除することができません。ポリープが見つかった場合は、手術が必要な大きさかどうかを慎重に判断したうえで、改めて子宮鏡下手術が実施されることもあります。
子宮筋腫の場合は、大きさや位置などによって治療方法が異なります。子宮鏡下手術で切除できる場合もあれば、腹腔鏡下手術や開腹手術が検討される場合もあります。
また、子宮内の癒着が見つかった場合には、癒着をはがす治療が実施されることもあります。
子宮鏡検査で「赤い斑点」や「白いふわふわ」が見えたら異常というわけではない
子宮鏡検査の結果は、一般の人にとっては見慣れない画像や映像のため、どのような状態が異常かなどは、わかりにくいと思えるかもしれません。
子宮内膜の色や形は月経周期によって変わるため、正常な内膜でも小さな赤い点(点状出血)や白い小さな点が見えることがあります。
一方で、内膜の一部が赤くなっている、小さな白っぽい突起(マイクロポリープ)がいくつも見えるといった所見は、慢性子宮内膜炎を疑うきっかけになることがあります。ただし、見た目だけで慢性子宮内膜炎と診断することはできず、疑いがある場合は内膜の組織を採って調べます。
子宮鏡検査の費用について
子宮鏡検査にかかる費用は保険適用の有無により大きく変わります。
保険適用となるのは、医師が診療上必要と判断して行う場合です。例えば、不妊症などの可能性があり、その原因特定や診断のために必要な検査だと医師が判断した場合に、保険適用となります。
保険適用で子宮鏡検査を受ける場合、細くやわらかいカメラ(軟性鏡)を使用した際の検査料は、3割負担で2,400円です。
ただし、この金額に加えて、初診料や再診料、同日に受ける他の検査費用なども追加されます。そのため実際の支払額は、医療機関や検査内容によって異なります。
一方、健康診断目的や、症状などがない状態で本人の希望により検査を実施する場合は、原則として保険適用外(自費診療)です。
保険適用外(自費診療)の場合は、医療機関ごとに費用が設定されており、8,000〜12,000円程度が目安です。当院で子宮鏡検査を自費診療で受ける場合は、8,000円(税込)です。
保険適用外(自費診療)の場合であっても、初診料や再診料などの別途費用が必要になるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
※2026年10月時点の保険点数や金額に基づく費用になります。
院長からのメッセージ
子宮鏡検査について、「痛くないですか」と聞かれることがよくあります。当院では、細くやわらかい軟性鏡を使っているため、子宮の入り口を広げる処置は必要なく、麻酔をしなくても多くの方が検査を受けられています。
それでも、子宮の入り口が狭い方や出産経験のない方は、生理痛のような痛みを感じることがあります。痛みが心配な方は、事前に痛み止めを使うこともできますので、遠慮なくご相談ください。
当院で子宮鏡検査をおすすめするのは、超音波検査や卵管造影検査で子宮の内側に異常が疑われる場合や、良好な胚を移植しても着床しないことが続く場合などです。検査を受けること自体で妊娠しやすくなるわけではありませんが、ポリープや慢性子宮内膜炎のように、見つけて治療することで着床しやすい環境に近づける変化もあります。
検査は月経が終わってから排卵前までに行います。妊娠している可能性がある状態では検査ができないため、月経が始まってから検査日までは避妊をお願いしています。
モニターに映る子宮の中に赤い点や白い点が見えると、不安になる方もいるかもしれません。正常な内膜でも見られることがあり、それだけで異常とは限りません。必要なときは組織の検査を追加して判断しますので、気になったことはその場で医師に聞いてください。
参考文献
1)Guraslan H, Senturk MB, Dogan K, et al. Diagnostic office hysteroscopy; why is it still painful procedure despite the surgical experience and mini-hysteroscope? J Obstet Gynaecol Res. 2022;48(6):1418-1425.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35274418/
2)Brown SE, Coddington CC, Schnorr J, Toner JP, Gibbons W, Oehninger S. Evaluation of outpatient hysteroscopy, saline infusion hysterosonography, and hysterosalpingography in infertile women: a prospective, randomized study. Fertil Steril. 2000;74(5):1029-1034.
https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(00)01541-7/fulltext
3)Kamath MS, Bosteels J, D'Hooghe TM, et al. Screening hysteroscopy in subfertile women and women undergoing assisted reproduction. Cochrane Database Syst Rev. 2019;4(4):CD012856.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6472583/







