採卵後の生理について「いつもより早い気がする」「出血量が多くて心配」と感じる方もいるのではないでしょうか。
採卵後の生理は、自然周期とは異なるホルモン環境の影響を受けるため、普段より早く始まったり、出血量が増えたり、生理痛が重く感じられたりすることがあります。一方で、症状の現れ方には個人差があり、必ずしも全ての方に同じ変化が起こるわけではありません。
この記事では、採卵後の生理がいつ頃来るのか、早まる理由や出血量・生理痛に変化がみられる理由について解説します。また、不正出血や生理が遅れる場合など、採卵後によくある疑問についてもあわせて紹介します。
採卵後の生理はいつ来る?
採卵後の生理は、採卵から1〜2週間後がひとつの目安です。
一般的に、月経は排卵後約14日で始まります。排卵が起こると、卵子を入れていた卵胞が黄体に変化し、エストロゲン(卵胞ホルモン)に加えてプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌するようになります。黄体機能が維持されている間はこの2つのホルモンの働きによって月経は起こりませんが、妊娠が成立せず黄体が縮小するとホルモンが低下するため、子宮内膜が剥がれ落ちて月経となります。ここまでの期間が排卵から約14日となります。
採卵は排卵予定日に近いタイミングで行われるため、もし採卵後の黄体機能が自然排卵の場合と同様であれば、採卵後の生理も約14日後になると考えられます。
しかし、実際は採卵周期では黄体機能が低下しやすいことが知られており、黄体期が短縮され生理は自然周期より早く始まる傾向があります。そのため、採卵後の生理は個人差があるものの、自然周期よりやや早い1〜2週間後が目安となります。
採卵後の生理が早い理由
採卵後の生理が自然排卵の場合よりも早く来る理由は、黄体期が短縮するためと考えられています。
黄体期が短縮するのは、採卵後に黄体機能が低下しやすくなるためです。黄体機能が低下する理由としては、以前は採卵によって黄体になる細胞の一部が回収されることによるものと考えられていました。
採卵では卵子だけでなく卵胞液も吸引します。この際、将来的に黄体となる顆粒膜細胞も一部回収されるため、自然排卵の場合と比べて黄体機能が低下しやすいと考えられていました。
しかし、近年では採卵周期の排卵誘発によって、黄体を維持するための黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑えられることが主な要因と考えられています。
採卵周期では排卵誘発剤によって複数の卵胞が発育し、自然周期よりも多くの女性ホルモンが分泌されます。このような通常とは異なるホルモン環境によって、黄体を維持する働きが弱まり、黄体機能が低下しやすくなると考えられています。
採卵後の生理で出血の量が多い、生理痛が重い理由
採卵後の生理は早く来る場合があるほか、出血の量が多かったり、生理痛が重い・きついといったケースも少なくありません。
多くの場合、採卵では卵巣刺激をおこなって自然周期よりも多くの卵子を発育させます。卵子がたくさん育つとその分ホルモンの分泌が増えるため、自然周期よりも子宮内膜が厚くなります。生理の出血は子宮内膜が剥がれ落ちた際に生じるものであるため、通常よりも子宮内膜が厚くなっていると生理の出血量も多くなります。
出血量が多いほど生理痛の程度も強くなる可能性が報告されており1)、採卵周期で子宮内膜が厚くなっていることで、生理痛についても重くなったり、通常より痛みがきついと感じる可能性が考えられます。
いずれも採卵後の生理では起こり得ることであり、症状自体をそれほど心配する必要はありません。ただし、あまりにも症状がひどい場合や長期間の出血が続く場合は、医師に相談するようにしましょう。
採卵後の生理に関するよくある質問
採卵後の生理に関してよくある質問をまとめました。
採卵後に生理以外の不正出血が起こることはある?
採卵後では、通常の生理周期ではみられない不正出血が認められる場合があります。
原因のひとつとして考えられるのは腟壁からの出血です。海外の調査では採卵後に2.8%の人で腟出血が認められたという報告があります2)。これは採卵時に針で刺した傷跡から出血が起こるためと考えられています。多くの場合は自然に傷が塞がって止血しますが、ごく稀に出血が止まらず圧迫や縫合などの治療が必要なことがあります。
その他、卵巣や腸管などの腹腔内臓器や血管が損傷し、その出血が腟の傷から出てくることもあります。その場合は速やかな治療が必要です。
長期で出血が続く場合や大量の出血がある場合は、受診を検討しましょう。
採卵後の生理が遅れたりなかなか来ないことはある?
先述のとおり、採卵後の生理は一般的には早まる傾向があります。ただし、個人差や使用する薬剤によっても影響が異なる可能性があり、必ず生理が早くくるわけではありません。
たとえば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合は、排卵が遅れたり無排卵となることがあるため、生理周期が不規則になる場合があります。
ただし、採卵後の周期で生理が遅れたり来ない場合は、他の原因も考えられるため、受診時に状況をしっかり伝え医師の判断を仰ぐようにしましょう。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
採卵後2回目の生理が遅れることがある?
採卵を実施した場合、使用する薬剤によって採卵周期の次の月経周期で、卵胞期(生理が始まってから排卵が起こるまでの期間)が長くなる可能性が報告されています3)。
そのため、人によってはその次の周期である採卵後2回目の生理が遅いと感じる可能性があります。
一方で性交渉の機会があった場合は自然妊娠している可能性もあるため、生理が来ない状態が長く続く場合は、妊娠の可能性があれば妊娠検査薬を使用し、妊娠の心当たりがない場合でも受診を検討するようにしましょう。
院長からのメッセージ
採卵後の生理がいつもより早く来たり、出血量が多かったり、痛みが強かったりすると、「何かおかしいのでは」と心配になる方が多いです。ただ、これらはいずれも採卵周期特有のホルモン環境によって起こりやすいことで、多くの場合は次の周期には落ち着いていきます。
採卵のとき、排卵誘発剤によって多くの卵胞が育つため、通常より多くの女性ホルモンが分泌されます。このホルモン環境の変化が採卵後の黄体機能に影響し、生理が早まる方向に働くことが多いです。また、子宮内膜が通常より厚くなることで、剥がれ落ちる際の出血量や痛みが増すことがあります。
また、最新の研究では、採卵前にGnRHaトリガー(スプレキュアやブセレリンなど)を使用した場合、採卵後2周期目の卵胞期(生理から排卵までの期間)が若干長くなる傾向があることが報告されています。そのため「採卵後2回目の生理がなかなか来ない」と感じる場合も、この影響の可能性があります。
大量の出血が続く場合や強い腹痛がある場合は自己判断せず連絡してください。経過が気になる場合は次の受診時に状況を伝えてください。
参考文献
1)Weisberg E, McGeehan K, Fraser IS. Effect of perceptions of menstrual blood loss and menstrual pain on women's quality of life. Eur J Contracept Reprod Health Care. 2016 Dec;21(6):431-435.
https://www.tandfonline.com/doi/10.1080/13625187.2016.1225034
2)Ludwig AK, Glawatz M, Griesinger G, Diedrich K, Ludwig M. Perioperative and post-operative complications of transvaginal ultrasound-guided oocyte retrieval: prospective study of >1000 oocyte retrievals. Hum Reprod. 2006 Dec;21(12):3235-40.
https://academic.oup.com/humrep/article-abstract/21/12/3235/2939110
3)Berkovitz-Shperling R, Libai Y, Aviv S, Dalit BY, Foad A, Ido F. Impact of GnRH agonist trigger on subsequent follicular phase length in ART cycles. J Assist Reprod Genet. 2025 Jun;42(6):1917-1924.
https://link.springer.com/article/10.1007/s10815-025-03503-8







