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最終更新日:
2026-05-06

胚移植後、判定日を待っている間に出血があると、「生理が来てしまったのだろうか」と不安が募ることもあるかもしれません。しかし、判定日前の出血には、妊娠が成立していても起こりうるものをはじめ、さまざまな原因が考えられます。出血の有無だけで妊娠の成否を判断することはできず、結果は検査による判定を待つ必要があります。

この記事では、判定日前に出血が起こる主な原因、自分で確認しておきたいポイント、早めに受診すべき症状の目安について整理します。

判定前の出血は必ずしも生理とは限らない|判定日には必ず受診を

胚移植後の出血は必ずしも生理(=移植不成功)を意味するわけではありません。出血の有無や量、見た目だけで妊娠の成否は判断できないため、指示された判定日に受診をして確実に検査をすることが重要です。

2023年に、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療後に起こる妊娠初期の出血について、海外の医学雑誌に報告が掲載されました。この研究では、これまでに発表された12本の研究をまとめて検討したところ、妊娠初期の出血は約2〜36%と、報告によってかなり幅がありました。全体としては、ART後の妊娠初期出血は約18%にみられると推定されています。

さらにこの論文では、ホルモン補充周期で凍結胚移植を行い、妊娠判定が陽性となった320名についても検討された結果、妊娠8週までに約47%の方が何らかの出血を経験したことが報告されています。さらに出血があった方となかった方で妊娠12週まで妊娠が継続していた割合は統計的な有意差はありませんでした。

大切なのは、出血があっても、自己判断で薬をやめたり、判定日の受診を中止したりしないことです。

胚移植後の出血は、とても不安になる症状です。しかし、出血だけで妊娠の成否を決めることはできません。判定日には必ず受診し、確実な検査で確認することが重要です。

胚移植後~判定前に出血が起こりうる主な原因

胚移植から判定日までの期間に出血があると、「失敗だったのでは」と考えてしまうかもしれません。残念ながら出血の原因が妊娠の不成立に伴う場合もありますが、この時期に起こる出血の原因は1つではなく、移植に伴うものから、妊娠が成立した場合に起こりうるものまでいくつかの可能性が考えられます。

ここでは代表的な原因を整理します。

胚移植時の刺激による出血

胚移植では、子宮の入り口である頸管から細いカテーテルを挿入して胚を子宮内へ送り込みます。このとき、カテーテルによる微小な刺激が生じ、少量の出血が起こることがあります。この出血はしばらくすると治まることが多く、妊娠の成否と直接関係するものではありません。

他にも、軽度の痛みや違和感といった症状は起こりうるものの、多くの場合は経過とともに治まります。ただし、出血の量が増えていく場合や、強い腹痛を伴う場合、日にちが経っても出血が続くようなときは、判定日を待たずに相談してください。

黄体ホルモン補充の影響による出血

胚移植後に実施する黄体ホルモン補充によって、子宮内膜を維持するホルモン(プロゲステロン)の影響で出血が起こることがあります。黄体ホルモン補充の方法によって妊娠判定前の出血の起こりやすさが異なるという報告があります1)

黄体ホルモン補充とは、移植後の胚が着床しやすい状態を整え、妊娠の維持を助けるために行われる治療です。天然型プロゲステロン坐薬や筋肉注射、内服薬などの薬が用いられます。

着床出血

妊娠が成立した場合でも判定日前後の時期に出血することがあります。着床出血と呼ばれることもあり、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる出血で、出血量は少なめの傾向があるとされています。しかし、妊娠初期に出血しない場合もあるため、出血の有無で妊娠の成否を判断することはできません。

自己判断はせず、判定日には必ず受診し血液検査で確認することが大切です。

着床出血については、詳しくは以下の記事もご覧ください。

出血があったときの対応と注意点

胚移植後に出血があった場合、慌てずに状態を観察することが大切です。出血の量や色、伴う症状によって、自宅で経過をみてよいものか、早めに医療機関へ相談すべきかの判断材料になります。

出血の量や伴う症状を確認する

出血があったときに確認しておきたい主な項目は、以下のとおりです。

  • 出血量
  • 持続時間
  • 伴う症状(腹痛など)

ただし、出血量や程度には個人差があり、同じ量の出血でも感じかたは人によって異なります。「自分の症状が受診すべきレベルかどうか判断できない」と感じる場合も、無理に判断しようとせず、まずは医療機関に状況を伝えて指示を仰いでください。

また、胚移植後の出血では、異所性妊娠(子宮外妊娠)に注意が必要です。異所性妊娠は胚移植後の妊娠でも一定の頻度で起こるとされ、状態によっては複数の検査や入院が必要になることがあります。異所性妊娠は早期発見が大切なため、多めの出血や強い腹痛、持続する出血がある場合は、判定日を待たずに速やかに受診することが望ましいです。

黄体ホルモン補充薬は中止しない

胚移植後、黄体ホルモン補充としてプロゲステロン製剤を投与する場合があります。このホルモン補充薬は、妊娠を維持するために欠かせない役割を担っているため、出血があったからといって薬を中止してしまうと、子宮内膜の環境が整わなくなる可能性があります。

判定日前に出血があった場合でも、医師の指示がない限り処方された黄体ホルモン補充薬は継続してください。「妊娠していなかったら薬を続ける意味があるのか」と不安に思うかもしれませんが、判定日までは妊娠が成立している可能性を前提に、子宮内膜の環境を維持しておくことが重要です。不安がある場合は自己判断で中断せず、主治医へ相談しましょう。

出血で妊娠の有無を判断しない

判定日前に出血があると、「生理が来た=妊娠していない」と受け止めてしまうかもしれませんが、妊娠の有無は、適切な時期での血液検査による妊娠判定でしか確認できません。

仮に妊娠検査薬を用いて妊娠判定の時期よりも早めに検査(いわゆるフライング検査)をした場合でも、偽陰性(陰性が出ても妊娠していること)や偽陽性(陽性が出ても妊娠していないこと)が出る可能性があり、実際の状態を正しく反映しないケースがあります。医療機関での血液検査によって妊娠の成否を判定するため、定められた判定日は必ず受診してください。

胚移植後から判定日までの過ごし方について、以下の記事もご覧ください。

判定日を待たずに受診すべき症状の目安

胚移植後の出血は、経過観察で問題ない場合がほとんどです。ただし、多量の出血がある場合や、出血以外にも体調の変化がある場合は、判定日を待たずに受診したほうがよい状況もあります。以下のような症状がみられる場合は、早めに受診してください。

  • 強い下腹部痛
  • 腹部膨満感
  • 持続する多量の出血
  • 発熱
  • 吐き気・嘔吐、めまい、ふらつき

これらの症状は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、異所性妊娠、感染症など、早期対応が必要な状態のサインである場合があります。異所性妊娠は胚移植でも発生する可能性があるため、出血に腹痛を伴うときは注意が必要です。自己判断で様子を見続けず、気になる症状があれば早めに受診することが、安心と安全の両面から重要です。

出血以外の体調変化や受診の目安について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

院長からのメッセージ

判定日の前に出血があると、頭が真っ白になる方が多いと思います。「もう終わった」「薬を飲み続けても意味がないのでは」と思ってしまうのは、とても自然な反応です。ただ、その結論はまだ早いです。

移植後の出血には、移植時のカテーテルによる刺激、黄体ホルモン補充剤の影響、そして妊娠が成立した際に起こることもある着床出血など、いくつかの原因があります。出血があっても妊娠が継続したケースは実際に存在しており、出血の有無や量だけで妊娠の成否を判断することは医学的にも不可能です。

大事なお願いがあります。出血があっても、黄体ホルモン補充薬を自己判断で中止しないでください。この薬は妊娠を維持するうえで大切な役割を担っています。妊娠が成立していた場合に薬を止めてしまうことで、本来なら継続できたかもしれない妊娠を失うリスクが生じます。判定日まで薬を続けてください。

一方で、大量の出血・強い腹痛・発熱・ふらつきがある場合は、判定日を待たずにすぐに連絡してください。特に出血と腹痛が重なるときは、子宮外妊娠の可能性もあるため早期確認が必要です。

判定日には必ず受診してください。結果がどちらであれ、次のことを一緒に考えましょう。

参考文献

1)Jabara S, Barnhart K, Schertz JC, Patrizio P. Luteal phase bleeding after IVF cycles: comparison between progesterone vaginal gel and intramuscular progesterone and correlation with pregnancy outcomes. J Exp Clin Assist Reprod. 2009 Oct 20;6:6.

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