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最終更新日:
2026-06-24

凍結融解胚移植を予定している方の中には、「採卵から移植まではどれくらい受診が必要なのか」「自然周期とホルモン補充周期ではスケジュールがどう違うのか」などが気になっている方もいるのではないでしょうか。

凍結融解胚移植では、まず採卵・体外受精によって得られた受精卵を培養して胚を凍結保存した後、次の月経周期以降に胚を融解して移植します(受精卵が成長を開始したものを胚といいます)。移植周期の実施方法には自然周期とホルモン補充周期があり、受診回数や移植日が決まるタイミングなどに違いがあります。

この記事では、凍結融解胚移植の流れや採卵から移植までの一般的なスケジュール、自然周期とホルモン補充周期の違い、移植日当日の流れなどについて解説します。

凍結融解胚移植の流れ

凍結融解胚移植は、あらかじめ凍結保存しておいた胚を融解し、子宮内に戻す治療です。凍結する胚は、採卵後に体外受精や顕微授精を行い、受精卵を培養した上で凍結保存されます。

凍結融解胚移植の流れを理解する際は、凍結胚を作成するまでの採卵周期と、凍結胚を融解して子宮に戻す移植周期に分けて考えるとわかりやすいでしょう。

採卵周期では、卵巣刺激と卵胞の確認を行い、適切な時期に採卵します。その後、体外受精や顕微授精によって得られた受精卵を培養し、移植に適した状態まで発育した胚を凍結保存します。

移植周期では、子宮内膜の状態を整えた上で、凍結保存していた胚を融解して胚移植を行います。子宮内膜の調整方法によって、移植周期は自然周期とホルモン補充周期に大きく分けられます。ここからは採卵周期とそれぞれの移植周期の受診スケジュールについて、一般的な例をあげて解説します。

採卵〜体外受精(胚移植前の採卵周期)のスケジュールの例

凍結融解胚移植を行う前には、移植に使用する胚を作成し、凍結保存するための採卵周期があります。採卵周期では、卵胞の発育状況を確認しながら採卵日を決定し、採取した卵子を体外受精または顕微授精によって受精させます。

その後、受精卵を数日間培養し、発育が確認された胚を凍結保存します。採卵までの期間は、卵胞の成長やホルモンの状態を確認するため、複数回の通院が必要になるのが一般的です。採卵周期の受診スケジュールの例は以下のとおりです。

採卵周期
月経開始後の日数の例
診察・処置の内容
3日目 採血・超音波検査、薬の処方
8日目 卵胞のサイズを確認、卵巣刺激を継続
11日目 卵胞のサイズを確認、卵巣刺激を継続
13日目 卵胞のサイズを確認、卵巣刺激を継続
15日目 卵胞のサイズを確認、採卵日の決定、
採卵前に使用する薬剤の指示
17日目 採卵を実施
24日目 胚培養・凍結結果確認

※実際の受診時期や受診回数は医療機関によって異なります。

移植に適した胚が凍結保存できたら、次の月経周期以降に凍結融解胚移植を行います。凍結融解胚移植は、自然周期またはホルモン補充周期で行われ、それぞれ受診スケジュールが異なります。

自然周期(自然排卵周期)における凍結融解胚移植のスケジュールの例

自然周期の場合は、卵胞の大きさと、血中もしくは尿中の黄体化ホルモン(LH)の値から排卵日を確認し、胚の状態に合わせて移植日を決定します。具体的には4細胞期胚なら排卵2日後、8細胞期胚なら排卵3日後、胚盤胞なら排卵5日後などが一般的です。

なお、自然周期でも全く薬剤を使わないわけではなく、医療機関や患者さんの状態によっては、クロミフェンやレトロゾール、hCGなどを排卵の補助的に使う場合があります。

自然周期のスケジュールは、排卵のタイミングを確認した上で移植日を決めるため、排卵前後に複数回の来院が必要になることがあります。

受診スケジュールの例を挙げると以下のとおりです。

移植周期(自然周期)
月経開始後の日数の例
診察・処置の内容
2日目 胚移植の実施の判断
12日目 卵胞の状態を確認
15日目 排卵の確認、移植日の決定
20日目 胚移植の来院(胚盤胞の場合は排卵5日後)
29日目 妊娠判定

※実際の受診時期や受診回数は医療機関によって異なります。

ホルモン補充周期(ホルモン調整周期)における凍結融解胚移植のスケジュールの例

ホルモン補充周期では、エストロゲン製剤やプロゲステロン製剤を使用して子宮内膜の状態を整え、胚を受け入れやすい状態にした上で胚移植を行います。自然な排卵に合わせる必要がないため、自然周期と比べて移植日の予定を調整しやすい点が特徴です。

ただし、移植周期中はホルモン剤の使用が必要となり、妊娠が成立した後もしばらく薬剤の使用を継続する場合があります。そのため、薬の使用が負担になる可能性もあります。

ホルモン補充周期での受診スケジュールの例を挙げると以下のとおりです。

移植周期(ホルモン補充周期)
月経開始後の日数の例
診察・処置の内容
2日目 移植周期開始の確認、薬の処方
12日目 子宮内膜の状態確認、移植日の決定、薬の処方
20日目 胚移植の来院(胚盤胞の場合はプロゲステロン製剤開始5日後が目安)
29日目 妊娠判定

※実際の受診時期や受診回数は医療機関によっても異なります。

初期胚移植と胚盤胞移植の違い

凍結融解胚移植では、移植する胚の発育段階にも違いがあります。初期胚移植は4細胞期胚や8細胞期胚を移植する方法です。自然周期では、排卵の2〜3日後に移植するスケジュールとなります。

胚盤胞移植は名前のとおり胚盤胞まで培養した胚を移植します。移植できた場合は妊娠率が初期胚よりも高いとされていますが、胚盤胞まで発育しなければ移植できないというデメリットもあります。しかし、近年は培養液などの改善により胚盤胞に到達できる割合も増加しているため、胚盤胞での移植が増えています。スケジュールとしては、自然周期では排卵5日後の移植が目安となります。

新鮮胚移植と凍結融解胚移植の違い

新鮮胚移植と凍結融解胚移植では、凍結の処置の有無と移植時期に違いがあります。

新鮮胚移植は採卵・体外受精後に培養した胚を、採卵と同じ周期に移植する方法です。一般的に採卵から2〜5日後に移植する方法であり、全体のスケジュールでみると治療期間は短くなります。採卵数が少ない場合に検討される方法です。凍結融解による胚へのダメージがないというメリットがある一方で、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクがある点や、採卵数が少ないため凍結融解胚移植よりも採卵当たりの妊娠率が低くなる可能性がデメリットとして挙げられます。

凍結融解胚移植は、採卵・体外受精後に培養した胚を液体窒素などで凍結し、採卵した次周期以降に移植する方法です。治療期間は新鮮胚移植よりも長くなるものの、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクを回避でき、子宮内膜の状態を整えてから移植できるメリットがあります。

日本産科婦人科学会の2023年のデータでは、新鮮胚移植における体外受精・顕微授精の妊娠率(移植周期あたり)は23.1%、凍結融解胚移植における妊娠率は40.5%となっています。また、それぞれの移植周期数は新鮮胚移植における体外受精・顕微授精は24,743件、凍結融解胚移植は271,361件であり、凍結融解胚移植が国内では主流となっていることがわかります1)

凍結融解胚移植のスケジュールに関してよくある質問

ここでは凍結融解胚移植のスケジュールに関してよくある質問に回答します。

移植の受診スケジュールはいつ決まる?

自然周期の場合は、排卵日確定後に移植日が決まります。そのため、直前までは移植日は確定しません。また、排卵が遅れるような場合は、排卵したことを確認するための受診スケジュールも考慮する必要があります。

ホルモン補充周期の場合は移植周期の初回の受診日の時点で移植日のスケジュールを決めるケースもあります。そのため、自然周期よりも予定を立てやすいメリットがあります。

実際のスケジュールは医療機関によっても異なるため、体外受精を開始する時点で確認しておくとよいでしょう。

凍結融解胚移植にかかる合計の期間はどれくらい?

凍結融解胚移植は、採卵周期から含めると最低でも2か月程度、3〜6か月程度かかることもあります。

実際に移植する周期は子宮内膜の状態などにも左右され、採卵周期の次周期が適さないケースも少ありません。希望のスケジュールがある場合はあらかじめ伝えつつ、自然周期で実施するかホルモン補充周期で実施するかなど、医療機関の方針も含め確認しておくようにしましょう。

なぜ採卵後にすぐ移植せず、いったん凍結するのですか?

理由は大きく2つあります。

ひとつは、子宮内膜の状態です。採卵では、1回の採卵でできるだけ多くの卵子を得るために排卵誘発剤を使用します。この過程で卵巣から多量のホルモンが分泌されますが、このホルモンの影響が子宮内膜にも及び、胚が着床しにくい状態になってしまうことがあります。採卵周期にそのまま移植しても、子宮内膜の環境が十分に整っていないために着床率が下がる可能性があるため、周期を改めて内膜の状態をリセットしてから移植する方が、妊娠率の向上につながります。

もうひとつは、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクです。OHSSは排卵誘発剤によって卵巣が過剰に反応した場合に起こる副作用ですが、採卵周期にそのまま妊娠が成立すると、妊娠によって分泌されるホルモン(hCG)がさらに卵巣を刺激し、OHSSが重症化・遷延しやすくなります。胚をいったん凍結し、次周期以降に移植することで、このリスクを大きく下げることができます。

こうした理由から、現在は凍結融解胚移植が体外受精の標準的な方法となっており、日本のデータでも移植の大部分が凍結融解胚移植によって行われています。

凍結融解胚移植の移植日当日の流れは?

移植日当日は凍結した胚を融解し移植できる状態にします。移植ではカテーテルを用い、超音波で確認しながら子宮内に胚を戻します。

移植そのものの処置は数分〜数十分程度で終わりますが、移植当日はすべての工程を含めると半日〜1日かかる場合もあるため、余裕をもったスケジュールを心がけましょう。

院長からのメッセージ

「採卵が終わったら次はいつ移植できるのか」「何回通えばいいのか」——こうした疑問は、仕事をしながら治療を続けている方にとって、とても現実的で大切な情報です。

なぜすぐに移植せず、いったん凍結するのかと疑問に思う方もいるかもしれません。採卵では排卵誘発剤を使って多くの卵子を育てるため、卵巣から大量のホルモンが分泌されます。このホルモンは子宮内膜にとっては必ずしも好ましくない影響を与えることがあり、採卵した周期のままでは着床しにくい状態になっていることがあります。また、採卵後に妊娠が成立すると妊娠ホルモンが加わって卵巣への刺激が続き、OHSSが重症化するリスクがあります。周期を改めることは、こうしたリスクを避け、より良い状態で移植を迎えるための合理的な判断です。「回り道」ではなく「より確実な道」です。

大まかなスケジュールとして、採卵周期が1ヶ月、移植周期がさらに1ヶ月、合計2ヶ月前後というイメージです。ただし子宮内膜の状態が整わない場合は次の周期に延びることもあります。治療全体を3〜6ヶ月のスパンで考えておくと、精神的な余裕が生まれます。

スケジュールや治療の進め方で不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

参考文献

1)日本産科婦人科学会. 2023年体外受精・胚移植等の臨床実施成績. 日本産科婦人科学会ウェブサイト
https://www.jsog.or.jp/activity/art/2023_JSOG-ART.pdf