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最終更新日:
2026-09-18

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されたあと、この病気について調べていると「太りやすい」「お腹まわりに脂肪がつく」という説明を目にします。実際に体型の変化を感じて不安になった方も、逆に「自分は痩せているのに、本当にPCOSなのだろうか」と疑問を持った方もいるのではないでしょうか。

実のところ、日本のPCOS患者さんでは、肥満を伴わない方のほうが多数派です。全国調査では、PCOSと診断された方のうちBMIが25以上だったのは26.0%でした。つまり4人に3人はBMI25未満ということになります。

「PCOS=太る病気」というイメージは、主に欧米のデータから広まったものです。日本人のPCOSは、体型も症状の出方も欧米とは大きく異なることがわかっています。

この記事では、日本人のPCOSにおける体型の実際、太りやすさに関わる仕組み、そして体重にかかわらず必要な管理について解説します。

なお、これまで「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」と呼ばれてきたこの病気は、2026年5月に国際的な合意のもとで「PMOS(多内分泌代謝性卵巣症候群)」へ名称を変更することが発表されました1)。まだ広く知られている呼び方ではないため、この記事ではこれまでどおりPCOSと表記します。

「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)=太る」は日本では当てはまらないことが多い

日本のPCOS患者さんの体型

日本産科婦人科学会が全国643施設を対象に実施した症例調査(2020〜2022年、PCOS群986例)では、次のような結果が報告されています2)

PCOS群 比較対照群
BMI25以上(肥満)の割合 26.0% 15.9%
BMI30以上の割合 10.3%
多毛がみられた割合 13.5%

比較対照群(排卵障害のない不妊患者)の15.9%と比べると、PCOS群のほうが肥満の割合は高くなっています。この差には意味があり、PCOSと体重のあいだに関連があること自体は事実です。

一方で、絶対数として見れば74%はBMI25未満です。日本のPCOSでは、標準体型や痩せ型の方が多数を占めます。

欧米とはかなり違う

同じ報告のなかで、日本産科婦人科学会は次のように述べています。

日本のPCOS患者では肥満を伴う症例が欧米よりも少ないが、BMI 30以上(肥満2度以上)になると日本のPCOSではわずか10.3%と海外よりも顕著に低い。肥満を伴うPCOSではインスリン抵抗性の関与があり、肥満の有無でPCOSの病態は異なる。日本と欧米のPCOS患者の体型と病態には相違が大きいと思われる。

多毛についても、日本では13.5%にとどまり、欧米の約7割と比べて明らかに低率です。

インターネットで目にする「PCOSの典型的な症状」の多くは、欧米の患者像をもとにしたものです。日本人の場合、そのまま当てはまるとは限りません。

「痩せているからPCOSではない」も誤り

逆の誤解にも触れておきます。

「太っていないからPCOSではないだろう」と考えて受診が遅れることがあります。PCOSは診断までに時間がかかりやすい病気で、海外の大規模調査では、確定診断に至るまでに3名以上の専門家の診察と2年以上の年数を要した患者が多数存在することが報告されています。

体型は診断基準に含まれていません。日本の診断基準は、月経周期の異常、卵巣の所見(またはAMH高値)、アンドロゲン過剰症(またはLH高値)の3つで構成されています。痩せていても、標準体型でも、この3つを満たせばPCOSです。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の太りやすさに関わる仕組み

ここからは、体重が増えやすいと感じている方に向けた説明です。

インスリン抵抗性とアンドロゲン

肥満を伴うPCOSでは、インスリン抵抗性が病態に関わっているとされています。

インスリン抵抗性とは、血糖値を下げる働きをするインスリンが効きにくくなった状態です。効きが悪い分を補おうとして、体はインスリンを多く分泌します。この過剰なインスリンが卵巣に作用すると、アンドロゲン(男性ホルモン)の産生が促されます。アンドロゲンには内臓脂肪の蓄積を促す働きがあるため、お腹まわりに脂肪がつきやすくなると考えられています。

そして脂肪が増えるとインスリン抵抗性がさらに悪化するため、悪循環が生じます。肥満を伴う場合に体重管理が治療の柱になるのは、この循環を断つためです。

ただし、全員に当てはまる説明ではない

重要なのは、この機序が確認されているのは肥満を伴うPCOSについてだということです。日本産科婦人科学会も「肥満の有無でPCOSの病態は異なる」としています。

標準体型や痩せ型の方が「PCOSだから太りやすいはずだ」と考える必要はありません。体重の変化には、食事や運動、睡眠、加齢、ほかの疾患など、PCOS以外にもさまざまな要因が関わります。

「急に太った」場合は別の可能性も

短期間での急激な体重増加は、PCOSでは通常みられません。PCOSに伴う体重の変化があるとしても、長い時間をかけて緩やかに進むものです。

数か月で大きく体重が増えた場合には、甲状腺の病気、副腎の病気、薬の影響、むくみなど、ほかの原因を考える必要があります。自己判断せず、内科や婦人科で相談してください。

痩せ型・標準体型の多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で知っておきたいこと

体重が正常でも、代謝の確認は必要

痩せ型・標準体型の方に減量は必要ありませんが、確認しておくべきことがあります。血糖値の調節がうまくいっているかどうかです。

日本産科婦人科学会の治療指針によれば、PCOSでは痩せ型でも75%、肥満型では95%に耐糖能異常が合併するとされており、特にアジア人でその傾向が顕著だと指摘されています5)

耐糖能異常は、糖尿病になる前の段階で、自覚症状がありません。体重が正常でも起こりうるため、体型だけでは判断できないのです。

体重以外の指標について報告されていること

近年、体重やBMIでは捉えられない体組成の違いを調べた研究が発表されています。

内臓脂肪の状態を反映する指標を用いた解析では、BMI25未満の女性同士を比較した場合でも、PCOSのある方はVAI(内臓脂肪指数)の値が高い傾向がみられたと報告されています3)。ただし同じ研究で、別の指標であるLAP(脂質蓄積産物)では、痩せ型同士の比較で明確な差は認められませんでした。

この結果から言えるのは、「痩せているから代謝の問題がない、とは限らない」ということです。痩せるべきだ、という意味ではありません。

痩せ型・標準体型のPCOSに対して、日本の治療指針は減量を推奨していません。体重を減らすことではなく、血液検査などで代謝の状態を確認し、必要に応じて対応することが勧められています。

体重を減らそうとすることのリスク

PCOSの診断を受けたあと、「痩せれば治るのではないか」と考えて食事制限を始める方がいます。

PCOSの患者さんでは、不安や抑うつに加えて摂食障害の合併にも注意が必要とされており、日本の治療指針でも確認すべき項目として挙げられています5)

また、標準体型の方が体重を減らしすぎると、視床下部の働きが抑えられて月経が止まることがあります。これはPCOSとは別の原因による無月経で、かえって状況を複雑にします。

体重を減らすことが治療になるのは、BMI25以上の場合です。それ以外の方が自己判断で減量に取り組むことは、お勧めしません。

体型にかかわらず、全員に共通して大切なこと

ここまで体型ごとの違いを説明してきましたが、痩せている方も太っている方も共通して必要なことがあります。月経周期を管理することです。

排卵しない状態が続くと子宮内膜に影響する

PCOSでは排卵が起こりにくくなります。排卵がないと、子宮内膜を整えるはたらきをもつ黄体ホルモンが分泌されません。その結果、子宮内膜はエストロゲンの作用だけを長期間受け続けることになります。

この状態が続くと、子宮内膜が過剰に厚くなり、子宮体癌のリスクが高まります。日本産科婦人科学会の報告では、若年の子宮体癌はPCOSなどの月経不順が持続する患者から発生しており、PCOSでは子宮体癌の発症率が2.7倍に増加すると報告されています2)

妊娠を希望していなくても管理が必要

「今は妊娠を考えていないから、生理が来なくても困らない」と感じる方もいます。しかし月経周期の管理は、妊娠の有無とは別の目的で必要です。

3か月以上月経がない、あるいは月経周期が39日以上の状態が続いている場合には、黄体ホルモンを周期的に投与するホルムストローム療法などで子宮内膜を保護します。低用量ピル(OC/LEP)が用いられることもあります。

体型に関係なく、これがPCOSで最も重要な管理です。太りやすさよりも、月経が来ているかどうかのほうが、はるかに大切です。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療法

治療は、症状の改善と合併症の予防を目的に行われます。「生活習慣を整えれば治る」「痩せたら治る」というものではありません。

BMI25以上の場合の体重管理

ここからの内容は、BMIが25以上の方が対象です。標準体型・痩せ型の方には当てはまりません。

肥満を伴うPCOSでは、食事や運動などの生活習慣を整えることで、代謝機能や排卵機能、月経周期が改善すると報告されています。3〜6か月かけて体重の5〜10%程度を減らすことが短期的な目標とされています。

体重管理が重視されるのは、肥満に伴うインスリン抵抗性の悪化がPCOSの症状や内分泌の乱れを強めるためです。またインスリン抵抗性は、排卵誘発剤の効きを弱めることもあります。

食事 ・特定の食事法や過度な制限は控える
・主食、主菜、副菜をそろえたバランスのよい献立にする
・間食は1日1回までなど目安を決める
・夜食は控える
運動 体重維持が目標の場合
・週150〜300分の中強度(自転車、早歩きなど)
・または週75〜150分の高強度(ジョギングなど)

体重減少が目標の場合
・週250分以上の中強度
・または週150分以上の高強度
・筋力トレーニングを週2回

取り組む際は、必ず医師の指導のもとで行ってください。過度な体重管理はかえって逆効果になります。

なお、生活習慣の改善だけでは不十分な場合や、耐糖能異常を合併している場合には、インスリンの効きを助けるメトホルミンという飲み薬の併用が検討されることがあります。ただしメトホルミンをPCOSの治療として使えるのは、耐糖能異常、糖尿病、または肥満を合併している場合に限られます。

妊娠を希望しない場合

症状に合わせた治療が中心になります。

月経周期の異常に対しては、子宮内膜を保護する目的で、黄体ホルモンを周期的に投与するホルムストローム療法が行われます。多毛やニキビなどのアンドロゲン過剰症状には、低用量経口避妊薬(OC)や低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)による薬物療法が推奨されています。

妊娠を希望する場合

排卵誘発剤を用いて排卵を促します。

BMI25未満の方では、レトロゾールが第一選択薬として推奨されています。効果や副作用によってはクロミフェンが選択されることもあります。内服薬で効果が乏しい場合には、注射薬や腹腔鏡下手術が検討されます。

BMI25以上の方では、排卵誘発剤の前に体重管理が先行されます。

PCOSと妊娠率の関係については、以下の記事でも詳しく解説しています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に関するよくある質問

Q:PCOSでお腹が痛くなったり、吐き気がしたりすることはありますか?

A:PCOSそのものが腹痛や吐き気を直接引き起こすという明確な報告はありません。

ただし、PCOSのある方は過敏性腸症候群を合併する割合が、そうでない方より高いという報告があります4)。また治療として低用量ピルを内服している場合や、メトホルミンを使用している場合に、吐き気などの症状が出ることがあります。

腹痛や吐き気は、これら以外にも多くの原因で生じます。症状が続く場合は、医療機関で相談してください。

Q:PCOSは生理痛(下腹部痛)に影響しますか?

A:PCOSが生理痛を引き起こしたり悪化させたりするかどうかは、はっきりわかっていません。生理痛はPCOSの診断基準にも含まれておらず、主な症状としても挙げられていません。

ただし、PCOSのある方は痛みを感じやすい傾向があることや、月経困難症や子宮内膜症のリスクが高まる可能性を指摘する報告もあります。

生理痛がつらい場合や日常生活に支障がある場合は、PCOSとの関連にかかわらず相談してください。別の疾患が背景にあることもあります。

Q:生理不順と太りやすさは関係しますか?

A:月経不順や希発月経(月経周期が39日以上)があるからといって、太りやすくなるとは限りません。月経不順の原因は、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、体重の変化、甲状腺の病気など多岐にわたります。

一方で、PCOSのように月経不順と代謝の両方に関わる病気もあります。生理が来ない状態が続いている場合は、体重にかかわらず受診を検討してください。

Q:卵巣嚢腫とPCOSは同じような病気ですか?

A:名前は似ていますが、まったく別の病気です。

卵巣嚢腫は、卵巣の中に液体がたまって袋状にふくらむ良性の腫瘍です。大きくなるとお腹の張りや痛みが出たり、腹囲が大きくなったりすることがあります。これは脂肪が増えたのではなく、腫瘍そのものが大きくなったことによる変化です。

PCOSは、卵巣に小さな卵胞が多数できて排卵が起こりにくくなる状態で、腫瘍ではありません。

お腹が出てきたと感じる原因には、両者以外にもさまざまな可能性があります。気になる場合は、自己判断せず婦人科や内科に相談してください。

Q:痩せているのにPCOSと言われました。診断は間違っていませんか?

A:間違いではありません。日本のPCOS患者さんの約4分の3はBMI25未満です。

体型は診断基準に含まれていません。日本では、月経周期の異常、卵巣の所見(またはAMH高値)、アンドロゲン過剰症(またはLH高値)の3つすべてを満たす場合にPCOSと診断されます。

痩せているからといって、治療や管理が不要になるわけでもありません。排卵が起こりにくい状態が続けば、子宮内膜への影響は体型に関係なく生じます。

院長からのメッセージ

「PCOSだと太ると書いてありました」というご相談をたまに受けるのですが、この記事でお伝えしたとおり、日本のPCOSの方で太っている方は4人に1人程度です。診断基準の一つである多毛の方も1割少々にとどまります。インターネットに出てくる「PCOSの典型像」は、欧米の患者さんを想定して書かれたものが多く、日本人にそのまま当てはまるわけではありません。

逆の誤解も見かけます。「痩せているからPCOSのはずがない」というものです。体型は診断基準に入っていません。標準体型でも痩せ型でも、月経周期の異常があってほかの条件を満たせばPCOSです。この思い込みが原因で受診が遅れる方は、実際にいらっしゃいます。

痩せ型の方が「PCOSと言われたから痩せなければ」と食事を減らすのは、逆効果です。体重が減りすぎると別の理由で月経が止まりますし、PCOSの方は摂食障害を合併しやすいことも知られています。減量が治療になるのはBMIが25以上の場合で、それ以外の方には勧めていません。

体型よりも気にしていただきたいのは、月経が来ているかどうかです。排卵がない状態が長く続くと、子宮内膜が厚くなり続けて、将来の子宮体癌のリスクにつながります。妊娠を希望されていない方でも、この管理だけは必要です。3か月以上生理が来ていない、周期が40日を超えることが続いている、という方は、体型に関係なくご相談ください。

PCOSは長く付き合っていく体質です。今すぐ何かが起こるわけではありませんが、放っておいてよいものでもありません。一緒に確認していきましょう。

参考文献

1)Teede HJ, Khomami MB, Morman R, et al; Global Name Change Consortium. Polyendocrine metabolic ovarian syndrome, the new name for polycystic ovary syndrome: a multistep global consensus process. Lancet. 2026 Jun 6;407(10545):2329-2339.
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(26)00717-8/fulltext

2)公益社団法人日本産科婦人科学会. 多嚢胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について. 日本産科婦人科学会ウェブサイト.
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOS1_20231204.pdf

3)Parsaei M, et al. Lipid accumulation product and visceral adiposity index in polycystic ovary syndrome: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Lipids in Health and Disease. 2025;24(1):311.
http://doi.org/10.1186/s12944-025-02719-y

4)Mathur R, et al. Polycystic ovary syndrome is associated with an increased prevalence of irritable bowel syndrome. Digestive Diseases and Sciences. 2010;55(4):1085-1089.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19697132/

5)公益社団法人日本産科婦人科学会. 本邦における多嚢胞性卵巣症候群の治療指針(full version). 2025.
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOSshishin_20250717.pdf