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最終更新日:
2026-06-29

お腹の張りや下腹部の膨らみが続き、子宮の病気ではないかと不安になる方もいるのではないでしょうか。子宮筋腫は子宮にできる良性腫瘍であり、大きくなると周囲の臓器を圧迫し、お腹の張りや便秘などさまざまな症状を引き起こすことがあります。

一時的な張りであれば様子を見て問題ありませんが、長く続く場合や複数の症状を伴う場合は、子宮筋腫やほかの病気が影響している可能性もあります。適切なタイミングで受診を判断することが大切です。

この記事では、子宮筋腫とお腹の張りの関係、伴いやすい症状、子宮筋腫以外に考えられる病気、受診の目安などを解説します。

子宮筋腫になるとお腹が張りやすい?

子宮筋腫は無症状であることも多い疾患ですが、筋腫の大きさによってはお腹に張りを感じることがあります。筋腫が大きくなると、子宮周りの臓器が物理的に圧迫されやすくなるためです。

筋腫が周囲を押すことで起こる症状は「圧迫症状」といい、お腹の張り以外にもさまざまな消化器症状を引き起こすことがあります。便秘や腹痛、膨満感などが代表的な症状です。

お腹の張りやすさは、筋腫の部位によっても異なります。子宮筋層の中にできる「筋層内筋腫」や子宮の外側にできる「漿膜下筋腫」では、増大すると腸や膀胱など周囲の臓器を圧迫するため、圧迫症状が起こりやすくなります。

一方、子宮の内側に生じる「粘膜下筋腫」は、圧迫症状よりも月経異常や生理痛など月経症状が起こりやすいのが特徴です。

<子宮筋腫の分類>
分類 発生部位 症状の特徴
漿膜下筋腫 子宮の外側(子宮漿膜直下)に発生し、
発育する
大きくなると圧迫症状が起こることがある。
月経異常は少なく、大きくなるまで症状自体が出にくい。
筋層内筋腫 子宮筋層の中に発生し、発育する 大きくなると圧迫症状が生じることがある。
月経異常が起こる
ことがある。
粘膜下筋腫 子宮の内側(内膜直下)に発生し、
子宮の腔内に向けて発育する
月経異常を伴うことが多い。
筋腫が小さくても起こりやすい。

お腹の張りは、食事内容や便通の状態に左右されやすく、短期間であれば必ずしも病的なものとは限りません。ただし、長く続く場合や強い痛みを伴う場合は、子宮筋腫に限らず何らかの病気が関係している可能性も踏まえ、まずは内科の受診を検討しましょう。

子宮筋腫でお腹の張りとともに起こりうる圧迫症状

子宮筋腫が大きくなると、直腸や膀胱などを圧迫し、消化器症状や排尿異常を引き起こすことがあります。これらの圧迫症状の程度は、筋腫の大きさや位置、数と相関関係があるとされており、治療を検討する判断材料のひとつです。

便秘・ガスがたまる・おならが出る

子宮の後方には直腸があり、大きくなった筋腫に圧迫されると便秘になることがあります。便やガスがスムーズに排出されず、おならや下腹部の張りにつながることもあります。

米国の大規模な研究でも、子宮筋腫のある方は消化器症状を経験しやすいことが報告されています。この調査では、便秘・腹部膨満感・下痢のいずれかを経験した人の割合は、筋腫のある方で63.3%、筋腫のない方で50.0%でした1)

症状の程度には個人差があり、ほとんど気にならない方もいれば、なかには生活に支障をきたす方もいます。筋腫が大きくなり症状が強まる可能性もあるため、すでに診断を受けている方も体調変化に注意しながら経過をみることが大切です。

お腹がぽっこり出る・膨らむ

子宮筋腫が大きくなると、下腹部がぽっこりと出たり、膨らんで見えたりすることがあります。人によっては、お腹を触ったときにしこりを感じることもあります。

お腹の膨らみそのものは脂肪の蓄積や一時的なガスだまりなどが原因で生じることもあるため、すぐに子宮筋腫を疑う必要はありません。

ただし、見た目や触れた感覚でどの影響かを見極めるのは難しく、持続する場合は医療機関で原因を確かめることが推奨されます。

このような症状が出た場合にはまず内科を受診して消化器系の疾患の診断をした後、必要に応じて医師の判断で婦人科の受診が勧められます。婦人科では、内診や超音波検査、必要に応じてMRI検査などにより、筋腫の有無やほかに異常がないかを確認します。

頻尿または尿が出にくい

筋腫が大きくなるとトイレが近くなることがあります。膀胱が子宮の手前に位置しており、筋腫によって圧迫されるためです。

一方、筋腫が尿道を圧迫すると、尿の通り道が狭くなり、排尿しにくくなります。ごくまれに尿がまったく出なくなるケースもあるため、症状を見過ごさないことが大切です。

このような症状が出た場合にはまず泌尿器科を受診して泌尿器系の疾患の診断をした後、必要に応じて医師の判断で婦人科の受診が勧められます。

生理前後や生理中のお腹の張りは子宮筋腫のサイン?

生理中にお腹が張る場合、子宮筋腫が原因となり「器質性月経困難症」が生じている可能性もあります。

器質性月経困難症とは、子宮筋腫などの病気が原因で起こる月経症状のことです。月経中に強い生理痛をはじめさまざまな不調が起こり、下腹部の張りも強まる可能性があります。

ただし、必ずしも子宮筋腫のサインであるとは限りません。お腹の張りは、「機能性月経困難症」や「月経前症候群(PMS)」でも起こることがあります。

状態 症状が出やすい時期 特徴
器質性月経困難症 生理開始時から生理中 ・子宮筋腫や子宮内膜症など、原因となる病気がある
・病状によっては生理前後に現れることもある
機能性月経困難症 生理開始時から生理中 ・原因となる病気は特定されないが、プロスタグランジン(痛みに関わる物質
が多く分泌され、子宮が収縮することで起こる
・お腹の張りのほか、腹痛や吐き気、下痢などを伴うこともある
PMS(月経前症候群) 生理の約3〜10日前から起こり、
生理が始まると軽快する
・女性ホルモンの変動が原因のひとつと考えられる
・お腹の張りや腹痛、便秘などの身体症状のほか、
気分の変化など心の不調を伴うこともある

お腹の張りだけで原因を特定することは難しいものの、症状が出やすい時期や伴う症状にはそれぞれ特徴があります。

お腹の張りが気になるときは、いつ起こるのか、ほかにどのような症状があるのかを記録しておくとよいでしょう。月経周期に合わせて体調変化を整理すると、受診を検討する際の参考になります。

子宮筋腫で起こりやすい月経に関する症状

お腹の張りに加えて月経異常がある場合は、子宮筋腫との関連を考える手がかりになります。子宮筋腫では月経困難症以外に、以下のような月経症状が起こることがあります2)

  • 過多月経:経血の量が非常に多い
  • 過長月経:1回の月経が8日以上続く
  • 不正出血:月経時期以外の出血

とくに子宮の内側に近い粘膜下筋腫では、筋腫が小さいうちから月経症状が現れやすく、貧血や不妊につながることもあるため注意が必要です。月経量が異常に多い場合や通常よりも期間が長い場合は、一度婦人科への相談を検討してください。

子宮筋腫以外でお腹が張ることがある病気

お腹の張りは、子宮筋腫だけでなくほかの婦人科系疾患でも起こりうる症状です。子宮腺筋症や子宮内膜症では、下腹部の張りのほか、強い生理痛や月経過多などを伴いやすいのも特徴です。

また、お腹の張りの原因は、消化器系の病気が関係しているケースもあります。受診先を判断するためにも、代表的な疾患の特徴を確認しましょう。

子宮内膜症

子宮内膜症は、本来は子宮の内側をおおう子宮内膜に似た組織が、子宮の内側以外の場所で発育してしまう病気です。月経の出血がうまく排出されず、周りの臓器や組織と癒着し、月経痛や性交痛などさまざまな痛みを引き起こします。

主に子宮や卵巣周囲の腹腔内に発生しますが、大腸や膀胱などにできることもあり、腹部の張りや腹痛、排便痛などが引き起こされます。

子宮内膜症は女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受けます。エストロゲンは月経周期の中で周期的に増減し、それによって内膜症病変も出血するため、月経を重ねるごとに悪化する可能性があります。痛みだけでなく不妊の原因にもなりうるため、早期発見・治療が重要です。

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮内膜に似た組織が子宮筋層(子宮の壁)で増えてしまう病気です。子宮以外の場所で発育するものは子宮内膜症、子宮筋層内に広がるように発育するものは子宮腺筋症と区別されます。

主な症状は月経過多や強い生理痛ですが、月経時以外にも腹痛や腰痛が生じることもあり、激しい痛みが特徴的です。

筋肉の中で出血が繰り返されることで、子宮の壁が厚くなっていきます。病変が広がると子宮全体が肥大し、腹部の張りにつながる可能性もあります。

子宮腺筋症は40代、とくに出産経験のある方に多くみられます3)。閉経するまでは進行・増悪しやすいため、月経異常が強い場合は放置しないことが大切です。

卵巣腫瘍(卵巣嚢腫)

卵巣にできた腫瘍を卵巣腫瘍といい、悪性度によって良性・境界悪性・悪性に分類されます。小さいうちは自覚症状に乏しく、気づかないうちに大きくなることも珍しくありません。なかには10〜20cmを超えるほど大きくなることもあります。

腫瘍が大きくなり膀胱や直腸を圧迫すると、お腹の張りや膨満感、頻尿や便秘症状などが現れます。腹水がたまりお腹が膨らんでくるケースもあります。

卵巣腫瘍の約90%は良性といわれていますが4)、悪性(卵巣がん)の可能性もあるため早期発見が重要です。お腹のふくらみがあっても太ったことが原因だと思い込んで見過ごす方も多いため、下腹部の張りや違和感が続く場合は、早めに検査を受けることが推奨されます。

消化器系の病気

お腹の張りは、消化器系の不調でもよくみられる症状で、代表例が便秘によって起こる一時的なケースです。

ただし、お腹の張りに加えて強い腹痛や嘔吐を伴う場合や、便やガスがまったく出ない場合は、腸閉塞などの可能性もあります。すぐに治療が必要な場合もあるため、速やかに医療機関を受診してください。

また、胃腸に明らかな異常がないにもかかわらず、胃腸の動きや知覚の問題で張りを感じる場合もあります。代表的な原因として以下が挙げられます。

病気・状態 特徴
過敏性腸症候群(IBS) お腹の痛みや不快感に加え、下痢・便秘などの便通異常、
腹部の膨満感を伴うことがある。
機能性ディスペプシア(FD) 胃もたれや胃の痛み、腹部膨満感が続く。
呑気症(空気嚥下症) 無意識に空気を過剰に飲み込みやすくなる。ガスがたまり、
げっぷやおなら、膨満感が現れる。

これらが原因の場合、食事内容や生活習慣、ストレス管理を意識することで改善するケースもあります。まずは規則正しい生活を心がけ、よくならない場合は医療機関に相談しましょう。

お腹の張りが気になるときの受診先・受診目安

受診すべきか迷った際は、お腹の張り以外の症状に注目してみてください。

便秘やガスだまりなど消化器症状が中心の場合は、内科や消化器内科へ相談するとよいでしょう。急激な痛みや吐き気を伴う場合は、我慢せず速やかに受診を検討してください。

一方、下腹部の症状に加えて月経異常がある場合や、頻尿・腰痛など消化器系以外の症状を伴う場合は、婦人科にも相談してみてください。

とくに以下の症状がみられるときは、早めの相談が推奨されます。

  • 月経量が異常に多い
  • 生理時に鎮痛剤を使うほど痛みが強い
  • 生理以外に出血する
  • 動悸や息切れなど貧血症状がある

受診先に迷う場合、まずはかかりつけ医に相談するのも選択肢です。検査結果や症状によって、適切な診療科を案内してもらえることがあります。

子宮筋腫は、目立った症状がないまま大きくなることもあります。不妊の原因にもなるため、お腹の張りが気になった時点で一度検査を受けてみるのもよいでしょう。

子宮筋腫やお腹の張りについてよくある質問

子宮筋腫やお腹の張りなどについてよく寄せられる質問について回答します。

子宮筋腫で下痢することはありますか?

子宮筋腫により腸が圧迫されると、下痢することもあります。腸の動きが乱れることで、消化器症状全般が起こりやすくなります。

ただし、激しい下痢や吐き気を伴う場合は、感染症や胃腸炎などの可能性もあります。すでに子宮筋腫の診断を受けている方も、下痢がひどい場合はほかの病気の可能性も踏まえて受診するようにしましょう。

どのくらいお腹がぽっこりすると子宮筋腫が疑われますか?

筋腫ができた場所によっては見た目に変化が出にくいこともあり、外見だけでは判断できません。お腹がぽっこりするからといってすぐに子宮筋腫を疑う必要はありませんが、以前より明らかに目立つ場合は、原因を確認しておくと安心です。

とくに漿膜下筋腫は自覚症状が乏しく、知らないうちに大きくなっていることもあるため、不安な場合は念のため婦人科で相談してください。

院長からのメッセージ

お腹の張りが気になって調べていると、子宮筋腫が見つかる方もいます。ただ、お腹の張りの原因は子宮筋腫だけではなく、消化器系の不調やホルモンの影響によるものも多いため、すぐに「子宮の病気かもしれない」と決めつける必要はありません。

子宮筋腫は無症状のまま経過することも多い病気です。約3人に1人が持っていると言われるありふれたもので、あるから必ず治療をしなくてはいけないというものでもありません。問題になるのは、筋腫が大きくなって周囲の臓器を圧迫するようになったとき、または月経異常(過多月経・過長月経)が強くなり日常生活や貧血に影響するときです。症状の程度は筋腫の位置と大きさによって大きく異なります。

妊娠を希望している方にとっては、子宮筋腫の種類と場所が着床や妊娠継続に影響することがあります。特に子宮の内側に近い粘膜下筋腫は、小さくても不妊の原因になることがあるため、妊活を始める前に一度確認しておくことをお勧めします。

お腹の張りや月経の変化が気になっている方は、「まだ大丈夫だろう」と先送りにせず、一度内科や婦人科で超音波検査を受けてみてください。検査は短時間で終わるものが多く、状態を知るだけでも安心感につながります。

参考文献

1)Fuldeore MJ, Soliman AM. Patient-reported prevalence and symptomatic burden of uterine fibroids among women in the United States: findings from a cross-sectional survey analysis. Int J Womens Health. 2017;9:403-411.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5476627/

2)厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト. 月経について
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menstruation.html

3)日本内分泌学会. 子宮腺筋症. 日本内分泌学会ウェブサイト.
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=78

4)日本婦人科腫瘍学会. 卵巣腫瘍. 日本婦人科腫瘍学会ウェブサイト.
https://jsgo.or.jp/public/ransou.html