腟カンジダになると、強いかゆみやおりものの変化などの症状がみられることがあります。「かゆすぎる」「かゆくて寝られない」と悩む方もいるかもしれません。
腟カンジダは比較的よくみられる感染症であり、適切な治療によって改善が期待できます。一方で、似た症状を示す病気もあるため、正しい知識を持って対処することが重要です。
この記事では、腟カンジダでかゆみが起こる理由やかゆみを和らげる方法、市販薬の種類や使う際の注意点などについて解説します。
腟カンジダとは
腟カンジダは、カンジダという真菌が腟内で過剰に増殖し、腟や外陰部に炎症を起こす病気です。比較的よくみられる女性性器感染症のひとつであり、75%の女性が生涯で少なくとも1回は経験するともいわれています1)。
腟カンジダを引き起こすのは、通常は消化管や皮膚などにも存在するカンジダ属真菌です。症状のない人の腟内にみられることもあり、菌がいるだけで腟カンジダというわけではありません。これらの真菌が腟内で過剰に増殖することで発症します。
カンジダの発症は、抗菌薬を飲んだときや妊娠や糖尿病などがきっかけとなる場合があるほか、通気性の悪い下着や不適切な洗浄が原因となることもあるため、日常生活でも注意が必要な感染症です。
腟カンジダの主な症状|かゆすぎる、かゆくて寝れないのは本当?
腟カンジダの主な症状としては以下のものが挙げられます。
- かゆみ
- おりものの増加(カッテージチーズ状や酒かす状のような状態)
- 灼熱感(ヒリヒリする感じ)
- 性交痛 など
腟カンジダを経験した方へのアンケート調査では、かゆみが91.2%、灼熱感が68.3%、腟周辺の赤みが58.1%、カッテージチーズのようなおりものが55.6%、性交痛が40.5%でみられたという報告があります2)。
特にかゆみに関しては、上記の研究報告のとおりほとんどの患者さんが経験する症状であり、症状の程度は個人差はあるものの「強いかゆみ」と表現されることもあります。インターネット上でも「かゆすぎる」「かゆくて寝れない」などの表現が使われるケースもみられ、日常生活に影響を及ぼすことがあるため、適切な処置をすることが重要です。
腟カンジダの治療方法|かゆみを和らげる方法は?
腟カンジダの治療は一般的に婦人科や産婦人科を受診し、薬を使って治療します。一般的には、クロトリマゾールやミコナゾールといった抗真菌の成分を含む腟錠を腟内に使用し、原因となる真菌の増殖を抑えます。外陰部のかゆみや発赤などの症状がある場合は、クリームタイプの塗り薬を使うこともあります。
市販のかゆみ止めの中には、ステロイドが入っていてカンジダが増えやすくなるものや、症状を一時的に抑えるだけで診断を遅らせるものがあります。腟カンジダが疑われるときは、自己判断で使わないようにしましょう。
そのほかに心がけたいこととして、以下が挙げられます。
- かかない(かくと皮膚が傷つき、かゆみや痛みが強くなります)
- 保冷剤をタオルで包み、短い時間外陰部を冷やす
- 外陰部は刺激性石鹸の使用を避けぬるま湯でやさしく洗い、腟の中までは洗わない
- 締めつけが少なく通気性の良い綿の下着や衣服の使用
- 急性期の性交渉を避けること など
また、かゆみを和らげたいからといって自己判断で痒み止めなどを塗るのは避けるようにしましょう。
腟カンジダに対する市販薬については、再発の場合のみ使用することができます。この理由として、かゆみやおりものの症状は腟カンジダ以外の場合でもみられることがあり、本当に腟カンジダなのか判断が難しいからです。
間違った自己診断で薬を使ってしまうと、症状が悪化してしまう可能性があります。腟カンジダが疑われる症状がみられた場合でも、初めての場合は市販薬で対処せずに必ず婦人科や産婦人科を受診してしっかりと診断してもらうことが重要です。
腟カンジダは不妊の原因になる?妊活への影響
腟カンジダ自体が、不妊の直接の原因になるとは考えられていません。ただし、かゆみや性交痛によって性交渉が難しくなるなど、妊活に影響することがあります。
感染症のなかには、卵管に炎症を起こし、不妊につながるものもあります。たとえばクラミジアでは、炎症によって卵管が詰まり、卵子と精子が出会えなくなることがあります。
一方、腟カンジダの炎症は通常、腟や外陰部にとどまり、卵管などには広がりません。ただし、妊活中にかゆみや痛みが強い時期は性交渉を控え、治療を優先しましょう。

初めて症状が出た場合や、症状が続いたり頻繁に繰り返したりする場合は、自己判断せず、婦人科や産婦人科を受診しましょう。かゆみやおりものの変化は、カンジダ以外の病気でも起こるため、原因を確認することが大切です。
また、これから妊活を始めるにあたり、感染症を含め妊娠に関わる体の状態を確認したい場合は、ブライダルチェックも選択肢の一つです。クラミジアなどの妊娠に関わる感染症の有無だけでなく、子宮や卵巣の状態なども調べられます。
気になる点が見つからなければ前向きに妊活を始めるきっかけになり、異常が見つかった場合も、妊娠に向けた対策を早めに検討できます。
ブライダルチェックについて詳しくは、以下のページをあわせてご覧ください。
腟カンジダと似ている疾患
腟カンジダで起こりやすい、かゆみやおりものの変化は、他の病気でも起こります。そのため、症状だけで原因を特定することは困難です。
腟カンジダと似た症状がみられる主な疾患は、以下のとおりです。
症状が似ていても、原因によって治療方法は異なります。初めて症状が出た場合や、発熱・下腹部痛・不正出血などを伴う場合は、自己判断で市販の腟カンジダ薬を使わず、婦人科や産婦人科を受診しましょう。
腟カンジダに使える市販薬
腟カンジダに使える市販薬はいくつか種類があります。市販薬として使われる主な成分は以下のとおりです。
いずれも抗真菌薬として使われる同じ系統の成分であり、使い分けの明確な基準などはありません。クリニックや病院で処方された成分で効果があった場合は、同じ成分の薬を選ぶのもよいでしょう。
どの成分がすぐに効くかなど、明確な優劣を示す根拠はありません。症状の程度によっても異なりますが、腟錠を使うとおおむね3日目くらいを目安に症状が改善されてきます。通常は6日連続で使い切りますが、中には1回1錠の使用のみで効果が持続するタイプもあるため、どのタイプかしっかりと理解してから購入するようにしましょう。3日間使っても症状が良くならない場合や、6日間使い切っても症状が消えない場合は、ほかの病気の可能性もあるため、婦人科や産婦人科を受診してください。
なお、市販の腟カンジダ薬は、妊娠中の方や妊娠している可能性がある方は使用できません。この場合は婦人科や産婦人科を受診してください。
腟カンジダについてよくある質問
ここでは、妊娠・妊活中の腟カンジダへの対応や、腟に薬を入れた後の症状について、よくある質問にお答えします。
Q:腟カンジダの治療中に妊娠がわかった場合はどうすればいい?
A:医師に妊娠していることを伝え、使用中の薬について確認しましょう。市販の腟カンジダ薬は、妊婦や妊娠していると思われる人には使用しないよう定められているため、自己判断で使い続けたり、新たに使い始めたりしないでください。
妊娠がわかった時点でまだ症状がある場合や、妊娠後に症状が出た場合も、自己判断せずに受診しましょう。妊娠中は腟カンジダを発症しやすく、使える薬も限られます。妊娠に気づく前に薬を使っていた場合は、薬の名前と使用した時期を医師に伝えてください。
Q:腟カンジダの治療中は妊活をしない方がいい?
A:妊活中でも、かゆみや痛みなどの症状が強い時期は性交渉を控え、治療を優先しましょう。排卵日に合わせて性交渉を予定している場合も、無理をしないことが大切です。
また、人工授精・体外受精などの不妊治療を予定している場合は、腟カンジダの治療中であることを通院先に伝え、今後の治療予定について相談してください。
Q:腟に薬を入れた後に白いカスが出るのは問題ない?
A:薬を入れた後に腟から白いカスやペースト状のようなものが出てきた場合、薬が溶け崩れたものである可能性があります。薬が崩れたものであれば、効果を発揮した後のものであり、腟から出てきても基本的には問題ありません。
ただし、挿入したそのままの形や大きさで腟錠が出てきた場合は、状況によって対応方法が変わる場合があります。自己判断で追加挿入などはせず、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
Q:腟に薬を入れた後にかゆみが強くなるのは問題ない?
A:腟錠を入れた後に、かゆみがむしろ強くなったと感じる場合は注意が必要です。腟カンジダの薬では、いずれもかゆみを含む副作用が注意喚起されています。
腟錠を入れた後の一時的な違和感の可能性もありますが、症状が続いたり強くなってくる場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
院長からのメッセージ
腟カンジダは、妊活中の方からもよく相談を受ける病気のひとつです。「カンジダになったら妊娠しにくくなるのでは」と心配される方もいますが、腟カンジダそのものが不妊の直接の原因になるとは考えられていません。ただ、かゆみや性交痛がつらいまま過ごすことは、妊活のうえでも負担になります。症状があるときは、まず治療を優先してください。
腟カンジダは、健康な方にも起こるありふれた感染症です。抗菌薬を使った後や妊娠中、糖尿病がある場合などに起こりやすくなりますが、はっきりしたきっかけがないことも少なくありません。「不潔にしていたから」というわけではありませんので、ご自身を責める必要はありません。
気をつけていただきたいのは、「前と同じだから」と判断して市販薬を使うことです。細菌性腟症やトリコモナス腟炎など、似た症状でも治療が異なる病気があります。初めての症状のときはもちろん、いつもと症状が違うとき、短い間隔で繰り返すとき、市販薬を3日間使っても良くならないときは受診してください。
また、市販の腟カンジダ薬は、妊娠中や妊娠している可能性がある方は使うことができません。妊活中で妊娠の可能性がある時期に症状が出たときや、人工授精・体外受精の予定が近いときは、通院先に相談してください。
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2026
https://www.jsog.or.jp/medical/11717/
2)Yano J, Sobel JD, Nyirjesy P, Sobel R, Williams VL, Yu Q, Noverr MC, Fidel PL Jr. Current patient perspectives of vulvovaginal candidiasis: incidence, symptoms, management and post-treatment outcomes. BMC Womens Health. 2019 Mar 29;19(1):48.
https://link.springer.com/article/10.1186/s12905-019-0748-8








