最終更新日:
2026-02-18

男性不妊に単独で使える助成制度はほとんどなく、多くは「夫婦単位」の不妊検査・治療助成の一部として男性側も対象になります。

男性不妊の検査や治療にかかる費用は、内容によっては公的な助成制度の対象となる場合があります。ただし、多くの制度は「不妊検査・不妊治療」を夫婦(パートナー)単位で支援する仕組みとなっています。

この記事では、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県における助成制度の有無と概要について整理し、確認のポイントをわかりやすく解説します。なお、不妊治療は2022年4月から保険適用が拡大されており、助成制度はその上乗せ支援として位置づけられています。

東京都|男性不妊の検査・治療に使える助成金

東京都では、不妊検査や不妊治療を支援する公的な助成制度が設けられており、男性側の検査や治療も対象に含まれる場合があります。

ここでは、男性不妊の検査・治療に関連する東京都の主な助成制度について整理します。

不妊検査等助成事業

東京都では、保険診療として実施された不妊検査や一般不妊治療にかかった費用の一部を助成する「不妊検査等助成事業」を実施しています。助成金額は最大5万円で、夫婦1組につき1回限り利用できます。助成額は最大5万円で、夫婦1組につき1回限り利用できます。

対象となるのは、精液検査やホルモン検査などの基本的な不妊検査のほか、排卵日に合わせた性交の指導や薬物療法、人工授精といった一般不妊治療です。男性側の検査費用も、夫婦で行う不妊検査の一部として助成対象となります。

対象となる方は、検査開始日における妻の年齢が40歳未満の夫婦です。助成の対象期間は、最初に検査を受けた日から1年間です。

なお、申請期限については令和7年4月1日から変更されており、令和6年4月2日以降に開始した検査の場合、検査開始日から2年以内に申請が必要です。詳細な申請条件や必要書類などの詳細は、東京都福祉局のウェブサイトから確認できます。

なお、将来の妊娠に備えて行うブライダルチェックなど、治療目的ではない検査は助成の対象外となります。

男性のブライダルチェックについては、以下の記事をご覧ください。

東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業

東京都では、不妊検査等助成事業に加えて、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)と併用して実施される先進医療を対象とした「東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業」を設けています。

この制度では、保険診療と組み合わせて行われた先進医療にかかった費用について、自己負担分の一部が助成されます。助成額は先進医療費の7割相当が基準となり、1回あたり15万円を上限として助成を受けられます。

対象となる方は、治療開始時における妻の年齢が43歳未満の夫婦です。助成回数は、妻の年齢が40歳未満の場合は通算6回まで、40歳以上43歳未満の場合は通算3回までと定められています。

申請期限は、1回の治療が終了した日の属する年度末(3月31日)までです。申請が遅れると受理されないため、早めの手続きが重要です。

対象となる先進医療には、ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)や、マイクロ流体技術による精子選別などが含まれます。これらは男性不妊の治療過程で選択されることがある技術です。

なお、助成の対象となるのは、厚生労働省が定める基準を満たした登録医療機関で実施された先進医療に限られます。対象となる技術や要件は変更されることがあるため、申請前に東京都福祉局のウェブサイトで最新情報を確認してください。

東京都の市区町村で使える助成金

東京都が実施する「不妊検査等助成事業」や「特定不妊治療費(先進医療)助成事業」に加えて、市区町村が独自に上乗せ支援を行っている場合があります。これらは都の助成制度を補完する形で設けられていることが多く、男性側の検査や治療が含まれるケースもあります。

たとえば、千代田区では、不妊検査などにかかった医療費の自己負担額から都の助成金を差し引いた残りの金額に対して、上限2万5千円までの支援が受けられます。

また北区では、保険適用の特定不妊治療と併用して実施した先進医療について、都の助成額を差し引いた金額と区の上限5万円を比較し、いずれか少ない金額が支給されます。たとえば、都助成後の自己負担が2万円であれば2万円、6万円であれば上限の5万円が助成される仕組みです。

市区町村の制度は年度ごとに内容が変更されることもあります。対象条件や申請期限などは自治体によって異なるため、利用を検討する際は、必ず各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で最新情報を確認しましょう。

神奈川県|男性不妊の検査・治療に使える助成金

神奈川県では、2022年4月に体外受精や顕微授精が保険適用となったことにともない、県独自の特定不妊治療費助成制度は終了しています。現在、県として実施している不妊検査・治療に対する助成制度はありません。
※本記事の情報は2026年2月時点のものです。

ただし、市町村単位では独自の支援制度が設けられている場合があります。

たとえば鎌倉市では、保険適用の体外受精や顕微授精と併用して実施された先進医療について、費用の7割(上限5万円/1回)を助成しています。

また、横須賀市では、以下の2つの制度があります。

  • 保険診療と併用した先進医療について上限5万円まで助成
  • 保険外診療で生殖補助医療を行った場合、30万円を超えた部分に対して上限10万円まで助成

ただし、同一の治療に対して両制度を重複して申請することはできません。

市町村の助成制度は年度ごとに変更されることがあります。対象要件や申請期限などの詳細は、各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で必ず最新情報を確認してください。

男性不妊の検査・治療に使える助成金|埼玉県

埼玉県では、県として一律の助成制度を実施しているわけではなく、不妊検査や不妊治療に対する支援は主に市町村単位で行われています。制度の名称や助成額、対象条件は自治体ごとに異なります。

たとえば、さいたま市では、夫婦で受けた不妊検査にかかる費用の一部を助成しています。検査をはじめたときの女性パートナーの年齢が35歳未満の場合は上限3万円、35歳以上の場合は上限2万円が支給されます。

なお、埼玉県が実施していた早期不妊治療費助成事業は、2022年4月の保険適用拡大に伴い終了しています。ただし、市町村によっては独自に治療費の助成を設けている場合があります。

川口市では、生殖補助医療の保険診療、または保険診療と併用して実施された先進医療の費用の一部を支援しています。対象期間の治療費が3万円以上の場合は上限3万円、3万円未満の場合は千円未満を切り捨てた金額が助成されます。

市町村の助成制度は年度ごとに内容が変更されることがあります。利用を検討する際は、必ず各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で最新情報を確認してください。

千葉県|男性不妊の検査・治療に使える助成金

千葉県では、2022年4月に体外受精や顕微授精が保険適用となったことに伴い、県独自の特定不妊治療費助成事業は終了しています。現在、県として実施している不妊検査・治療に対する助成制度はありません。
※本記事の情報は2026年2月時点のものです。

ただし、市町村単位では独自の支援制度が設けられている場合があります。

たとえば袖ケ浦市では、タイミング法や人工授精などの一般不妊治療、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療、さらに男性側の手術について、年度ごとに夫婦合計で上限5万円まで助成しています。また、保険外で実施される男性不妊の検査についても助成の対象となる場合があります。

野田市では、保険適用・自費診療を問わず、不妊治療や検査に対して1回の治療につき上限20万円まで助成する制度があります。(※年度ごとの要件や条件あり)。

市町村の助成制度は、対象条件や助成額が年度ごとに変更されることがあります。利用を検討する際は、必ず各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で最新情報を確認してください。

助成制度を利用する際の基本的な流れ

  1. 治療開始前:お住まいの自治体の助成制度を確認
  2. 治療中:領収書を必ず保管
  3. 治療終了後:医療機関に証明書作成を依頼(文書料は医療機関に確認してください)
  4. 申請:必要書類を揃えて自治体に提出
  5. 助成金受領:審査後、指定口座に振込(通常1~3か月)

助成制度の対象外となる主なケース

以下の場合は助成の対象外となります。

  • 将来の妊娠に備えた予防的検査(ブライダルチェックなど)
  • 検査や治療目的以外の精子凍結保存
  • 文書料や差額ベッド代などの治療に直接関係しない費用
  • 既に他の自治体で同一治療について助成を受けている場合

助成金と医療費控除の併用について

不妊治療費は医療費控除の対象となります。ただし、助成金を受け取った場合は、その金額を差し引いた自己負担分が医療費控除の対象です。

例:治療費50万円 - 助成金5万円 = 45万円が医療費控除の対象

確定申告の際は、助成金を受け取った旨を記載しましょう。

男性不妊に関するよくある質問

ここでは、男性不妊に関するよくある質問について回答します。

男性不妊の検査・治療は保険適用される?

男性不妊に関する検査や治療には、保険診療として実施されるものと、自費診療(自由診療)となるものがあります。保険が適用されるかどうかは、診断の目的や実施内容、回数などによって異なります。

一般的に、不妊の原因を調べるための精液検査や血液検査、超音波検査などは、医師が必要と判断した場合に保険診療となることがあります。また、精巣から精子を採取する手術なども、条件を満たせば保険適用となる場合があります。

一方で、精子DNA断片化指数(DFI)検査などの一部の検査や先進医療は、原則として自費診療となります。検査や治療の費用は医療機関によって異なるため、受診前に保険適用の有無や自己負担額について確認しておくことが大切です。

男性不妊の検査について、詳しくは以下記事をご覧ください。

男性不妊の検査・治療で利用できる高額療養費制度とは?

高額療養費制度は、1か月間に支払った保険診療の自己負担額が一定の上限を超えた場合に、超過分が払い戻される公的制度です。上限額は年齢や所得区分によって異なります。

2022年4月以降、体外受精や顕微授精などの一部の不妊治療が保険適用となったため、保険診療として行われた不妊治療については高額療養費制度の対象になります。男性不妊の検査や治療も、保険診療で実施された場合には制度を利用できます。

なお、自費診療(自由診療)や先進医療の費用は、高額療養費制度の対象外となります。制度の利用方法や上限額の詳細については、加入している健康保険組合や自治体の窓口で確認してください。

男性不妊の原因にはどのようなものがある?

男性不妊の原因は大きく、精子をつくる力の低下(造精機能障害)、性機能の問題(性機能障害)、精子の通り道の障害(精路通過障害)などに分類されます。

国内の報告では、最も多い原因は造精機能障害で、全体の82.4%を占めます1)。精巣での精子の産生能力が低下し、精子の数や運動性、形態に異常がみられる状態です。

その他の男性不妊の原因について詳しくは、以下の記事も参考にしてください。

院長からのメッセージ

「助成制度は『知っているか』で大きく変わります」

不妊治療の助成制度は、自治体によって内容が大きく異なります。同じ治療を受けても、お住まいの地域によって受けられる支援が変わるのです。

特に注意していただきたいのは、多くの制度で「申請期限」が厳格に定められていることです。治療が終わってから「そんな制度があったのか」と気づいても、期限を過ぎていれば助成を受けることはできません。

男性不妊の検査や治療は、単独での助成制度はほとんどありませんが、夫婦で行う不妊検査・治療の一部として助成対象となります。精液検査やホルモン検査、精子回収術なども、条件を満たせば支援を受けられる可能性があります。

ただし、制度は変わっていくものです。できるだけ最新の情報にアップデートするように努めていますが、この記事も古くなります。治療を始める前に、まずお住まいの自治体の最新情報を確認してください。

分からないことがあれば、自治体の担当窓口に直接問い合わせることをお勧めします。利用できる制度を最大限活用して、経済的な負担を少しでも軽減しながら治療に臨んでいただければと思います。

参考文献

1)こども家庭庁.男性不妊について.こども家庭庁ウェブサイト

日本泌尿器科学会.男性不妊症診療ガイドライン

東京都福祉局.不妊検査等助成事業の概要

千代田区.不妊検査等助成事業

北区.東京都北区特定不妊治療費(先進医療)の助成

鎌倉市.不妊・不育症治療費助成制度について

横須賀市.不妊治療(生殖補助医療)に対する医療費助成

埼玉県.新ウェルカムベイビープロジェクト関連事業(早期不妊検査・不育症検査に関する助成制度 )

千葉県.地域保健課の業務概要

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