AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査は、卵巣内で発育を始めた卵胞から分泌されるホルモンを測定し、卵巣にどの程度卵子の元が残っているかを推測する検査です。不妊治療の方針検討などに用いられます。
AMH検査の費用は、保険適用か自費診療かによって大きく異なります。自治体によっては助成金制度を利用できる場合もあるため、事前に確認しましょう。
この記事では、AMH検査の保険診療と自費診療での費用の違いや助成金の有無についてわかりやすく解説します。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査の費用
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査の費用は、公的医療保険が適用されるか、自費診療になるかによって大きく異なります。それぞれのケースにおける具体的な負担額や、保険が適用される要件について詳しく解説します。
保険適用の場合
AMH検査が保険適用となる場合、基本的には3割負担となります。検査そのものの費用に加えて、診察料や採血料、結果の判断料、医療機関ごとの加算なども加わる可能性があり、2026年1月時点の保険点数では、合計で数千円程度がかかります。費用の詳細は、検査を検討している医療機関に確認してください。
保険適用となるためには、医師によって不妊症と診断され、卵巣機能の評価と治療方針の決定のために医師が必要と判断した場合です。
以前は体外受精などの生殖補助医療を行う場合に限られていましたが、現在はタイミング法や人工授精といった一般不妊治療の段階でも、医師が必要と認めれば保険で検査を受けられるようになりました。
AMH検査と保険適用について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
自費診療の場合
自費診療でAMH検査を受ける場合は、医療機関によって費用が異なるため、受診を検討している施設の料金を確認しましょう。医療機関によってはAMH検査単体ではなく、他のホルモン検査や感染症検査とセットにしたパッケージプランが用意されており、内容次第で費用が大きく変動する場合もあります。
自費診療となるのは、ブライダルチェックの一環として卵巣予備能を調べたい場合や、将来に備えた卵子凍結に向けてAMH検査を実施したい場合などが該当します。また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や早発卵巣不全の診断のみを目的としている場合も、一般的には保険適用外となります。
その他、AMH検査の保険適用は6か月に1回という条件もあるため、短期間で複数回実施する場合も自費になる点に注意しましょう。
AMH検査で活用できる助成金
AMH検査は、自治体によって費用の一部を補助する制度が用意されている場合があります。ここでは、ORINAS ART CLINICがある東京都の制度や対象となる検査、助成される金額について紹介します。
TOKYOプレコンゼミ|妊娠・出産前のヘルスチェック
東京都に住んでいる方は、TOKYOプレコンゼミを活用することでAMH検査の費用助成を受けられます。
TOKYOプレコンゼミとは、東京都が独自で行っているプレコンセプションケアの事業のひとつです。プレコンセプションケアとは、若い世代が自分自身の体への理解を深め、将来のライフプランに合わせて自分の体の状態を整える取り組みを指します。
助成を受けるための主な条件は以下のとおりです。
- 東京都が開催するTOKYOプレコンゼミを受講し、検査について正しく理解する
- 受講完了後、受講証を取得し、同年度内に登録医療機関を受診して医師と相談のうえでAMH検査などを実施する
- 都が実施するアンケートに答える
- 講座受講日から申請日までの間、対象者が継続して東京都の区域内に住民登録している
- 検査初診の日の対象者の年齢が18~39歳であること
検査にかかった費用のうち、30,000円を上限として助成金が支払われます。対象となる検査はAMH検査だけでなく、ホルモン検査や感染症検査なども含まれます。
詳細な申請方法や最新の募集状況については、東京都の公式サイトや以下の記事もご参照ください。
不妊検査等助成事業(東京都)
東京都にお住まいの夫婦であれば、不妊検査等助成事業を活用できる可能性があります。この制度は、不妊症の早期発見や適切な治療へつなげることを目的として、検査費用の一部を東京都が補助するものです。AMH検査も、助成対象に含まれています。
条件や内容は以下のとおりです。
この制度を利用する際の注意点は、夫婦そろって検査を受ける必要があることです。どちらか一方のみの検査では対象にならないため、パートナーと受診のタイミングを合わせなくてはなりません。
また、将来の妊娠に向けてヘルスチェックを行いたい等の目的で受けたブライダルチェック等は、この助成制度の対象にならない点も注意しましょう。
東京都以外でも、自治体によっては独自に検査費用の補助を行っている場合があります。お住まいの市区町村の公式サイトで最新の情報を確認してみてください。
AMH検査で活用できる公的制度
医療費の負担を軽減できる公的制度があり、AMH検査も条件によっては対象となる場合があります。ここでは高額療養費制度と医療費控除について解説します。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、医療機関や薬局で支払った1か月分の医療費が上限額を超えた場合、その差額が払い戻される公的制度です。また、事前に認定証を取得すれば、上限額を超えた分を窓口で支払う必要がなくなり、一時的な出費も抑えられます。
2022年4月から不妊治療が保険適用になったことで、高額療養費制度が利用できるようになりました。ただし、高額療養費制度を使用するにあたって対象となるのは保険診療として実施される検査や治療のみで、病気の予防や健康チェックを目的とした自費診療のAMH検査は対象に含まれません。
また、1か月あたりの自己負担上限額は個々によって異なります。制度の詳細や上限額については、加入している健康保険組合や国民健康保険の窓口へ問い合わせてみてください。
医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、所得控除を受けられる制度です。不妊症の診断や治療のために受けたAMH検査であれば、この制度の対象に含まれます。
医療費控除の対象となる基準は以下のとおりです。
- 本人または生計を共にする家族が支払った1年間の医療費が合計10万円を超えている
- その年の総所得金額が200万円未満の場合は所得の5%の金額を超えている
必要性がある検査であれば、自費診療であっても控除の対象になる場合があります。ただし、ブライダルチェックや検診目的の場合は治療目的ではないと判断され、医療費控除の対象外となることがあるため注意が必要です。
医療費控除を利用するためには、確定申告の際に医療費控除の明細書を作成して提出します。領収書そのものを提出する必要はありませんが、税務署から提示を求められた際に対応できるよう、自宅で5年間は大切に保管しておきましょう。
AMH検査を受ける意味とメリット
AMH検査を受ける上で、知っておきたいポイントを解説します。
卵巣年齢という誤解
AMH検査は、卵巣で今育とうとしている卵子から分泌されるAMHというホルモンを測定することで、卵巣に残る卵子の元の数を推測し、卵巣予備能を評価する検査です。
AMHの説明として「卵巣年齢」という表現が使われることがありますが、これは直感的に理解しやすい反面、医学的に正確な用語ではありません。AMHは卵巣に残っている卵子の数の目安を表すものであり、卵子の質や妊娠のしやすさを示すものではないためです。
例えば、AMHが低くても卵子の質が良ければ妊娠は可能ですし、逆にAMHが高くても卵子の質に問題があれば妊娠しにくい場合があります。
AMHの結果は、あくまで「卵巣予備能(卵巣に残っている卵子の数の目安)」を評価するものであり、妊娠の可能性そのものを判定するものではないことを正しく理解することが重要です。
AMHを受けるメリット
では、AMHを測定することは具体的にどのようなメリットがあるでしょうか。
年齢の基準と比較してAMHが極端に低い場合には早発卵巣不全といって卵巣の機能が低下してしまっている可能性があります。逆にAMHが高い場合には多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)である可能性があります。どちらの場合でも月経不順や無月経などの症状が出ることがあります。
またAMHを測定することは、体外受精の採卵時に取れる卵子の数を推定することにも役立ちます。
AMH検査を受けるメリットとして以下の点があげられます。
- 自分の卵巣予備能を知ることで、将来のライフプラン(妊娠のタイミングなど)を考えられる
- 不妊治療の方針決定やステップアップの判断材料になる(例:AMHが低い場合、早めに体外受精を検討するなど)
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や早発卵巣不全(POI)の可能性を考えるきっかけとなる
医師とより具体的な治療方針を検討するためには、客観的なデータが重要な判断材料になります。自身の卵巣の状態を把握することで、今後の選択肢を整理することにもつながります。
AMH検査や費用に関するよくある質問
AMH検査や費用に関するよくある質問についてまとめました。
AMH検査は無料で受けられますか?
AMH検査は基本的に無料では受けられません。しかし、前述したようなTOKYOプレコンゼミや不妊検査等助成事業など、自治体が独自で行っている助成金制度を活用すれば、費用の自己負担が軽くなる可能性があります。
スムーズに助成を受けるためには、まずお住まいの自治体に助成金制度があるかどうかを公式サイトなどで確認し、検査を受ける前に申請の手順を把握しておくことが大切です。また、保険適用が受けられる検査なのかどうかを確認することで、より負担を抑えた形での受診が可能になるでしょう。
AMH検査が保険適用になるかどうかについての詳細は、以下の記事もご覧ください。
院長からのメッセージ
AMH検査について調べている方は、「検査を受けたいけれど、費用がどのくらいかかるのか不安」という気持ちがあるのではないでしょうか。
AMH検査は、不妊症の診断を受けて治療方針を決定する目的であれば、保険が適用されます。保険適用の場合、3割負担で数千円程度の自己負担となることが一般的です。一方、将来に備えた検診目的の場合は自費診療となり、医療機関によって費用が異なります。
東京都にお住まいの方は、TOKYOプレコンゼミや不妊検査等助成事業といった助成金制度を活用することで、費用負担を軽減できる可能性があります。これらの制度には条件がありますので、検査を受ける前に確認しておくとスムーズです。
AMH検査は、卵巣に残っている卵子の数の目安を知るための検査です。「卵巣年齢」という表現がよく使われますが、これは医学的に正確な用語ではありません。AMHの結果は妊娠のしやすさを直接示すものではなく、あくまで治療方針を考えるための一つの情報として活用されます。
検査の意味を正しく理解したうえで、ご自身のライフプランに合わせて検討してください。
参考文献
日本産婦人科医会.(3)卵巣予備能とは
日本生殖医学会.生殖医療Q&A
厚生労働省.令和6年度診療報酬改定の概要【医療技術】

