不妊治療には、自治体に申請することで費用の一部が戻ってくる「助成金制度」があります。制度を知っているかどうかで、実際の自己負担額に大きな差が生まれることがあります。
2022年から不妊治療に保険が適用されるようになりましたが、保険が適用されても3割の自己負担はありました。2026年4月から東京都では、これまで「先進医療」の費用のみであった助成の範囲が拡充され、体外受精・顕微授精の自己負担分(保険3割負担分)も新たに助成の対象となる予定です。
なお、申請受付の開始は2026年10月を予定しており、4月以降に開始した治療から遡って対象となる見込みです。
本記事では、主に東京都の制度について助成制度の内容と申請の流れ、近隣県の制度についてわかりやすく解説します。
※本記事の情報は2026年3月時点のものであり、市町村の助成制度は年度ごとに変更されることがあります。対象要件や申請期限などの詳細は、各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で必ず最新情報を確認してください。
不妊治療の助成金制度とは
不妊治療の助成金制度は、都道府県や市区町村などの自治体に申請することで、不妊治療や検査で実際にかかった費用の一部を助成してもらえる公的な制度です。
制度の条件や対象となる範囲、助成の金額などは一律でなく、自治体の制度ごとに異なります。そのため、住んでいる地域の制度をしっかり把握することが重要です。
東京都を例にあげると、不妊治療に関する助成制度として主に以下の2つがあります。
- 不妊検査等助成事業
- 特定不妊治療費(先進医療)助成事業
それぞれの内容を解説します。
東京都不妊検査等助成事業|最大で5万円の助成
不妊検査等助成事業は、子どもを望む夫婦が早い段階で検査や治療を受けやすくなるよう、費用の一部を東京都が支援する制度です1)。対象となるのは不妊検査のほか、タイミング法(排卵のタイミングに合わせて自然妊娠を目指す方法)や人工授精などの一般不妊治療です。
健康保険が使える医療機関での受診費用(薬局での薬代を含む)に対し、夫婦1組につき1回、上限5万円まで助成が受けられます。ただし、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療や、第三者が関与する検査・治療は対象外です。
詳細内容及び最新情報については、東京都のホームページを確認してください。
東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業|最大で15万円の助成
東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業は、特定不妊治療(体外受精及び顕微授精などが該当)における経済的負担を軽減することを目的とした助成制度です2)。
2026年3月までは保険適用の体外受精及び顕微授精を行う際に、併用して実施される 「先進医療」の自己負担分の7割相当のみが助成の対象でした。
しかし、2026年4月以降は助成の範囲が拡充し、保険適用の体外受精及び顕微授精の自己負担分に対しても、助成されることになりました。助成金額は最大15万円であり、所得制限などはなく、保険診療の自己負担分を上限15万円まで助成する制度となります。

申請に関する詳細内容や、先進医療について厚生労働省から指定を受けている医療機関は東京都福祉局のホームページをご確認ください。
2026年4月からの特定不妊治療費(先進医療)助成事業の拡充の詳細については、以下の記事をご覧ください。
東京都 不妊治療 助成金 ニュース記事のリンク
※2026年3月25日時点の情報となります。
助成制度を利用する際の基本的な流れ
詳細は個々の制度によって異なる場合がありますが、助成制度を利用する際の一般的な流れは以下のとおりです。
1.治療開始前:お住まいの自治体の助成制度を確認
対象となる検査や治療、年齢や婚姻の条件、助成の金額などを確認しましょう。
2.治療中:領収書を必ず保管
助成金の申請に領収書そのものの提出は不要な場合もありますが、検査や治療にかかった金額をしっかりと把握するためにも必ず保管するようにしましょう。
3.治療終了後:医療機関に証明書作成を依頼(文書料は医療機関に確認してください)
助成金の申請には医療機関が作成する受診等の証明書が必要になることが一般的です。証明書の発行は有料のケースが多いため、医療機関に確認しておきましょう。
4.申請:必要書類を揃えて自治体に提出
現在は電子で申請するケースも多くなっています。申請方法と申請の期限をしっかり確認しておきましょう。
5.助成金受領:審査後、指定口座に振込(通常1~3か月)
助成金を振り込んでもらう口座を準備しておきましょう。審査などの過程があり、通常は1〜3か月程度はかかる見込みで考えておきましょう。年度末など申請集中時は4か月程度かかる場合があります。
東京都以外の都道府県の助成制度について
東京都以外の都道府県でも同様の制度が設けられている場合があります。ここでは神奈川県、埼玉県、千葉県の例を紹介します。
神奈川県の不妊治療の助成金制度
神奈川県では、県としての不妊治療に対する助成事業は2026年3月時点では行っていません。しかし、市町村ごとに独自の助成を実施している場合があります。
横須賀市では、不妊治療(生殖補助医療)に対する助成制度があります。保険適用の治療と併用して行った先進医療に対して上限5万円の助成、または保険適用外(自費)で行った治療に対して30万円を超えた金額分の助成(上限10万円)があります。
平塚市では、不妊治療(先進医療)費助成事業として、保険適用の体外受精・顕微授精と併せて実施された先進医療に対して上限5万円の助成制度があります。
埼玉県の不妊治療の助成金制度
埼玉県は、2026年3月時点で県として不妊治療費の助成制度は確認できず、市町村独自制度が中心となっています。
川口市では、生殖補助医療費助成事業を実施しています。保険診療の体外受精・顕微授精および併用した先進医療(男性不妊治療を含む)を対象に、1回につき上限3万円の助成が受けられます。
熊谷市では、特定不妊治療(体外受精・顕微授精)・男性不妊治療に対する助成制度があり、1年度あたり10万円を限度に通算5年度までの助成があります。
千葉県の不妊治療の助成金制度
千葉県は、2026年3月時点で県として不妊治療費の助成制度は確認できず、市町村独自制度が中心となっています。
野田市では、不妊治療費助成金支給事業を実施しています。人工授精や体外受精・顕微授精が対象となり、不妊治療1回につき上限20万円の助成が受けられます。
柏市では、特定不妊治療費(先進医療)助成事業として、特定不妊治療(体外受精・顕微授精)と併用して行った先進医療における費用の10分の7を、上限3万円まで助成を受けられます。
不妊治療の助成金に関するよくある質問
ここでは、不妊治療の助成金に関するよくある質問について回答します。
都道府県と市区町村の助成金は併用できる?
都道府県と各市町村の助成金は、要件を満たせば併用できる場合があります。東京都の北区の場合、先進医療にかかった費用から東京都の助成額を差し引いた残額と、北区の上限額(5万円)を比べて、低い方が支給されます。
なお、本記事の情報は2026年3月時点のものです。内容が変わる可能性があるため、最新情報はお住まいの区市町村のホームページや窓口でご確認ください。
43歳以上でも利用できる不妊治療の助成金はある?
自治体の助成制度は、体外受精・顕微授精の保険適用の対象となる43歳未満を基準としているケースが多くなっています。しかし、中には独自の基準で助成制度を設けている自治体もあります。
立川市では、自費診療助成金制度を設けています。本来医療保険を適用される治療内容ではあるが、年齢・回数制限を超えたことにより「自費診療」となった人を対象に、45歳未満であれば5万円を上限に助成が受けられます。
43歳以上で不妊治療をお考えの方は、住んでいるの市区町村の窓口やホームページで、独自の助成制度がないか確認してください。
院長からのメッセージ
不妊治療を始めようとしたとき、やはり気になるのは費用のことですよね。「助成金があると聞いたけれど、自分は対象になるのか」「どのタイミングで申請すればいいのか」と迷う方は多いと思います。本記事では、東京都の主な2つの制度を中心に、申請の流れと近隣自治体の制度をまとめました。
助成制度をうまく活用するためのポイントが一つあります。それは、「治療と並行して、早めに準備を始めておく」ということです。治療前に要件を確認し、領収書や証明書を保管しておくことが、後の申請をスムーズにする近道です。特に証明書の発行には医療機関への依頼と一定の時間がかかりますので、治療終了後は早めに準備を始めてみてください。
うれしいお知らせとして、2026年4月からは東京都の助成制度が拡充され、これまで対象外だった体外受精・顕微授精の保険診療における自己負担分も助成の対象となる予定です。詳細は今後東京都福祉局の公式ページで順次公開されますので、ぜひ最新情報をご確認ください。
助成制度は、治療に向き合うみなさんを支える大切な仕組みです。都道府県の制度と市区町村の制度は、条件を満たせば併用できる場合もあります。ひとりで抱え込まず、まずはお住まいの自治体に問い合わせてみてください。制度を知ることが、一歩を踏み出す後押しになれば幸いです。
参考文献







