子宮卵管造影検査(HSG)は、卵管の通りや子宮の形などを調べるために行われる不妊検査のひとつです。「どのような検査なのか」「痛みや出血はあるのか」「どのくらい時間がかかるのか」など、検査を受ける前に気になる方もいるでしょう。
検査を受ける時期や、検査後に注意したい症状についても知っておくことが大切です。
この記事では、子宮卵管造影検査でわかることや検査の流れ、所要時間、検査後の出血、検査を受ける時期、保険適用の条件などについて詳しく解説します。
子宮卵管造影検査(HSG)とは?
子宮卵管造影検査(HSG)とは、腟から子宮の入り口に細い管を入れて造影剤を注入し、造影剤が子宮の中から卵管、お腹の中へと広がっていく様子をX線で撮影する検査です。
卵管は精子と卵子が出会って受精が起こる場所であり、子宮は受精卵が着床する場所にあたります。
卵管造影検査は、妊娠を妨げる要因がないか子宮・卵管の状態をまとめて調べられるため、不妊治療の方針を決める重要な検査のひとつです。
不妊検査では、基礎体温の計測や超音波検査、血液検査などとともに、初期(一次スクリーニング)に実施されることがあります。
子宮卵管造影検査で何がわかる?
子宮卵管造影検査(HSG)では、主に「卵管の通過性」と「子宮の形状」がわかります。
さらに、造影剤の腹腔内(お腹の中)への広がり方から、卵管や子宮周囲の癒着の有無も推定できます。
子宮卵管造影検査はいつ受ける?検査を受ける時期
子宮卵管造影検査(HSG)は、月経の出血が完全に終わってから排卵が起こるまでの間に受けます。月経周期が28日型の方であれば、生理開始日から7~10日目頃が目安です。
排卵後に検査を行うと、すでに受精が成立していた場合に受精卵が造影剤とともに腹腔内へ流れ、流産や異所性妊娠につながるおそれがあります。また、生理中で出血が残っていると、血液が腹腔内に入って合併症のリスクが高まったり、画像が不鮮明になったりするため避けます。
周期が不規則な方は排卵日を予測しにくいため、生理が始まったら早めに受診し、医師と相談して検査日を決めましょう。検査を行う周期は、生理開始から検査終了まで避妊が必要です。
卵管造影検査を受けるタイミングや注意点などについては、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
子宮卵管造影検査の流れと所要時間・服装
子宮卵管造影検査(HSG)では、検査前の受診を含め、2~3回程度の受診が必要になるケースが一般的です。
ORINAS ART CLINICの場合、卵管造影検査は以下の流れで行います。
- 予約:月経1〜3日目頃に来院していただき、医師と共に検査のスケジュール作成等の実施
- 検査:X線室の台の上で仰向けになり、消毒後に細い管(カテーテル)を子宮の入り口から入れ、造影剤を注入しながらX線撮影を行う
- 結果説明:撮影した画像をもとに、医師から検査結果の説明を受ける
当院の場合は、検査にかかる時間は準備を含めて15〜30分程度です。なお、所要時間や通院回数、当日の流れは施設によって異なるため、事前に確認してください。
検査当日は、脱ぎ着しやすい服装(ゆったりめのスカートなど)で来院するとよいでしょう。検査後に少量の出血がみられる場合もあるため、ナプキンを持参しておくと安心です。
当院の卵管造影検査については、以下のページにて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
子宮卵管造影検査は痛い?
子宮卵管造影検査(HSG)では痛みを感じることがありますが、その強さには個人差があり、誰もが「痛すぎる」と感じる検査ではありません。
海外の研究を参考にすると、卵管造影検査で「生理痛を上回る痛み」を感じた方は全体の38.8%だったと報告されています1)。
痛みは主に、造影剤によって子宮や卵管に圧がかかることで生じ、ピークは注入中から直後の数分間です。同じ研究では、65.3%の方が検査の直後に痛みが消えたと報告されており、多くの場合5~15分ほどで不快感程度に和らぎます。
医師の指示どおりに事前に鎮痛剤を使う、不安を前もって相談する、検査中の痛みは我慢せず伝えるといった工夫で、痛みの軽減が期待できます。
卵管造影検査に伴う痛みについては、先述した研究などを含めて以下の記事にて詳しく解説しています。痛みへの不安がある方は、あわせてご覧ください。
子宮卵管造影検査の後に出血があったら?検査後の注意点について
子宮卵管造影検査(HSG)の後は、少量の出血がみられることがあります。多くはおりものにわずかな血が混じる程度であり、1~2日以内で治まることが一般的です。
卵管造影検査でどの程度の人に出血があるかを調べた調査を紹介すると、油性造影剤を使った群では34.6%、水溶性造影剤を使った群では44.2%という結果が報告されています2)。
この調査は、21〜39歳の中国人のみを対象としており、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など特定の疾患を持つ人は除外されているため、必ずしも全ての人にあてはまるものではありません。一定の人が卵管造影検査後の出血を経験することがわかる結果といえます。
一方で、痛みが徐々に強くなる、2〜3日経っても痛みが引かない、発熱を伴うといった場合は、感染などの可能性も考えられるため、医療機関へ相談してください。
なお、検査後は感染予防のために抗生物質が処方されることがあります。処方された場合は、医師の指示どおりに服用しましょう。
子宮卵管造影検査が保険適用されるケースと費用
子宮卵管造影検査(HSG)は、不妊症が疑われる場合など、医師が診療上必要と判断して行う場合に健康保険が適用されます。
一方、健診などの一環として、自覚症状などがなくご自身の希望で検査を受ける場合は、原則として保険適用外(自費診療)となり、費用は医療機関ごとに異なります。
検査にかかる費用は使用する薬剤などによっても変わります。
卵管造影検査の費用については、以下の記事にて詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。
子宮卵管造影検査はしない方がいいケースはある?
妊娠している可能性がある方、ヨードアレルギーのある方、甲状腺の病気(バセドウ病や橋本病など)がある方、クラミジアなど骨盤内の感染症がある方は、検査を受けられない場合や、別の検査を検討する場合があります。感染症がある場合は、先に治療を行ってから検査を受けます。
子宮卵管造影検査(HSG)の痛みや被ばくへの不安から、受けることをためらう方もいますが、不安だけを理由に検査を避ける必要はありません。医療機関では、痛みを軽減するための工夫がされており、被ばくについても、検査で受けるX線はごく少量で、卵巣への影響はほとんど心配いらないとされています。
子宮や卵管の状態は、その後の治療方針を決めるうえで重要な情報です。アレルギーや体の状態に合わせた対応が必要なため、気になることがあれば医師に相談しましょう。
子宮卵管造影検査に関してよくある質問
ここでは、子宮卵管造影検査(HSG)に関するよくある質問にお答えします。
Q:子宮卵管造影検査のあとに妊娠しやすくなるのは本当?
A:子宮卵管造影検査(HSG)には、卵管や子宮の状態を調べるという検査本来の目的に加えて、検査後の妊娠率を一時的に高めるといった治療的な作用も期待されています。
これは、造影剤の圧力によって卵管内の粘液が押し流されたり、卵管周囲の軽い癒着がはがれたりすることが理由として考えられていますが、はっきりした仕組みは解明されていません。
また、卵管造影検査に使用する造影剤には油性と水溶性があります。18〜39歳で排卵があり、卵管の病気のリスクが低い女性を対象とした海外の研究では、油性造影剤を使ったグループのほうが、検査後6か月以内の妊娠率が高かったと報告されています3)。
ただし、研究で示された6か月という期間は、妊娠率を調査した期間です。妊娠しやすい状態が半年続くことを示しているわけではない点には注意が必要です。
一方で、39歳以上の方や排卵障害のある方、卵管の病気が疑われる方を対象とした別の研究では、油性と水溶性で妊娠率に明らかな差は認められませんでした4)。そのため、すべての方に同じ効果が期待できるとは限りません。
検査後の期間をどう活かすかは、年齢や体の状態、ほかの検査結果によって変わるため、医師と相談しながら決めましょう。
Q:子宮卵管造影検査の2回目を受ける間隔はどのくらいですか?
A:2回目の検査をどのくらいあけて受けるかについて、決まった基準はありません。1回目の結果や年齢、治療の状況をふまえて、医師が検査の必要性や時期を判断します。
例えば、卵管の詰まりが疑われた場合や、造影剤の通過がうまく確認できなかった場合は、一定期間をあけて再検査をすることがあります。
なお、医療機関によっては検査の一環として、数時間後や翌日にもう一度X線撮影を行い、お腹の中への造影剤の広がり方から癒着の有無を確認することがあります。
Q:子宮卵管造影検査の造影剤はどこへいきますか?
A:子宮卵管造影検査(HSG)で注入された造影剤は、子宮の中から卵管を通り、卵管の先端(卵管采)からお腹の中(腹腔内)へと広がります。その後、造影剤の種類によって異なる経過で体の外へ出ていきます。
水溶性の造影剤は、子宮の中に残った分は腟から流れ出て、お腹の中へ広がった分は血液に吸収されたあと尿として排泄されます。いずれも比較的すみやかに体の外へ出ていきます。
一方、油性の造影剤はお腹の中に長くとどまり、少しずつ吸収されます。国内の研究では、検査後に体内のヨウ素が多い状態が半年ほど続き、その間に甲状腺刺激ホルモン(TSH)の数値が一時的に変わることがあると報告されています5)。
多くは自然に元に戻るとされていますが、甲状腺の病気(バセドウ病や橋本病など)がある方は、事前に医師へ相談してください。
Q:卵管造影検査で詰まっていたらどうなりますか?
A:子宮卵管造影検査(HSG)で詰まりが見つかっても、「詰まっている=妊娠できない」とは限りません。
詰まりが片側だけで、もう一方の卵管が通っていれば、自然妊娠の可能性は残ります。一方、両側が詰まっている場合は自然妊娠が難しくなるため、体外受精などが検討されます。
また、この検査で見ているのは造影剤の流れであり、卵管が一時的に収縮して流れていないように見えることもあります。そのため、1回の結果だけで確定せず、再検査や別の方法で確認することがあります。
治療には、卵管鏡下卵管形成術で卵管を広げる方法と、卵管を介さずに妊娠を目指す体外受精などがあります。年齢や卵巣機能、精子の状態なども踏まえて検討します。
卵管造影検査にて詰まりが見つかった場合の影響や症状について詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
院長からのメッセージ
卵管造影検査は、不妊の原因を調べるうえで最初の段階に行う大切な検査のひとつです。ただ、「痛い」という話を聞いて、受けるのをためらう方も少なくありません。
痛みの感じ方には個人差があります。海外の研究では、生理痛より強いと感じた方は4割弱で、6割以上の方は検査が終わるとすぐに痛みが引いていました。痛みが心配な方は、検査の前に遠慮なく伝えてください。鎮痛剤を使うなど、できる工夫があります。
知っておいていただきたいのは、この検査で見ているのは卵管そのものではなく、造影剤の流れだということです。卵管が一時的に縮んで、通っていないように見えることもあります。ですから結果は一度の画像だけで決めつけず、ほかの検査や経過と合わせて判断します。
油性の造影剤には、検査後の妊娠率を高める効果が報告されていますが、その効果がはっきり確認されているのは、39歳以下で排卵があり、卵管の病気のリスクが低い方です。また、油性の造影剤は体内に長くとどまり、甲状腺の数値に影響することがあります。どちらの造影剤を使うかは、年齢や体の状態をふまえて一緒に決めていきましょう。
ヨードのアレルギーや甲状腺の病気があって造影剤を使えない方には、当院では造影剤を使わない子宮鏡下卵管通水検査を代わりに行うこともできます。不安なことがあれば、検査の前にご相談ください。
参考文献
1)Socolov D, Boian I, Boiculese L, et al. Comparison of the pain experienced by infertile women undergoing hysterosalpingo contrast sonography or radiographic hysterosalpingography. Int J Gynaecol Obstet. 2010;111(3):256-259.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20850745/
2)Zhang J, Lan W, Wang Y, Chen K, Zhang G, Yang W, Chen H, Xu W, Ma J, Qin W, Zhang Y, Wang W, Wang H, Dong Z, Wang Y, Chen Y, Gang N, Tang Y. Ethiodized poppyseed oil-based contrast medium is superior to water-based contrast medium during hysterosalpingography regarding image quality improvement and fertility enhancement: A multicentric, randomized and controlled trial. EClinicalMedicine. 2022 Apr 5;46:101363.
https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(22)00093-1/fulltext
3)Dreyer K, van Rijswijk J, Mijatovic V, et al. Oil-Based or Water-Based Contrast for Hysterosalpingography in Infertile Women. N Engl J Med. 2017;376(21):2043-2052.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1612337
4)Huijser J, Zhu Q, Kamphuis D, et al. O-197 Oil-based versus water-based contrast media for hysterosalpingography in infertile women with advanced age, ovulation disorders or high risk of tubal pathology: a randomised controlled trial. Hum Reprod. 2025;40(Supplement_1):deaf097.197.
https://academic.oup.com/humrep/article/40/Supplement_1/deaf097.197/8170418
5)Kaneshige T, Arata N, Harada S, et al. Changes in serum iodine concentration, urinary iodine excretion and thyroid function after hysterosalpingography using an oil-soluble iodinated contrast medium (lipiodol). J Clin Endocrinol Metab. 2015;100(3):E469-E472.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25546154/







