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最終更新日:
2026-05-26

妊娠初期に胸の張りや痛みを感じる人は多く、8割近くの妊婦に見られるという報告もあります。しかし、症状が出る時期や強さ、続く期間には個人差があり、「症状がなくなった」「そもそも症状がない」と不安になる方もいるでしょう。

本記事では、妊娠初期の胸の張りや痛みが起こる理由や、いつから始まりいつまで続くのか、症状がなくなった場合や症状がない場合の考え方などについて解説します。

妊娠初期の胸の張りや痛みは一般的な症状

妊娠すると、多くの女性が胸の張りや痛みを感じるようになります。これは妊娠に伴う正常な体の変化のひとつであり、代表的な妊娠初期の症状といえます。

妊娠するとエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンの分泌量が増加し、乳管や乳腺組織の増殖、血管の発達が起こります。こうした変化が乳房の張りや腫れ、痛みとして感じられます。

ただし、妊娠したら必ず出るというわけでもなく、中にはこのような症状がでない人もいます。症状の有無、症状の強さ、出る時期や継続する期間などには個人差があると考えられます。

妊娠初期に胸の張りや痛みが出る割合は?

妊娠初期の胸の張りや痛みは多くの人で確認される症状です。その割合を調べた調査がいくつかあり、海外の2013年の調査では、「乳房の痛み・張り」が76.2%の妊婦で妊娠初期にみられたことが報告されています1)

ほかにも日本の2009年の調査では「乳房緊満感」が78.6%の妊娠初期の妊婦にみられたことが報告されています2)

いずれも8割近い人に症状がみられたという結果であり、比較的多くの人が経験する症状といえます。一方で、100%ではなく症状の有無は個人差があることがうかがえます。

妊娠初期の胸の張りや痛みはいつから出ていつまで続く?

妊娠初期の胸の張りや痛みは、早い場合は受精後1〜2週(妊娠週数に置き換えると妊娠3〜4週)からみられる場合もあることが知られており、具体的な症状として乳房の痛み、チクチク感、張り、重く感じる、などがあります。

また、胸の張りや痛みに限らず、妊娠初期症状全般が現れる時期を調べた報告では、出産まで至った136人のうち、最終の月経開始日から36日目(妊娠5週目)までに半数の人に症状が現れたとされています。さらに妊娠8週の終わりまでには89%の人が症状が現れたという結果でした3)

症状がいつまで続くかは、具体的な期間を調査している報告は多くありませんが、日本人を対象にした調査では妊娠初期の「乳房緊満感」が78.6%に対し、妊娠中期(一般的に妊娠14週0日〜27週6日)は70.4%、妊娠後期(一般的に妊娠28週0日〜)は61.4%の妊婦で症状がみられたとされています2)

この結果からは、妊娠中期や後期に進むにつれ、症状が見られる人は減ってくる傾向がある、一方で妊娠後期まで症状が続く場合もあるといえます。

症状がいつから出て、いつまで続くかは個人差が大きいため、経過を見ながら、過度な痛みや張りがみられる場合は医療機関に相談しましょう。

妊娠初期の胸の張りや痛みの症状がなくなったけど大丈夫?

妊娠初期に現れた胸の張りの症状が急になくなると、「お腹の子に何か問題があったのでは?」と不安になるケースもあるかもしれません。しかし、症状がなくなっても通常は過度な心配はいりません。

一般的には症状が出始めてから数週間程度で、体がホルモンバランスの変化に慣れていくため、症状が軽減される傾向があります。

ただし、胸の張りや痛みがなくなった代わりに、他の症状が急激にひどくなったり、体調不良を感じたりする場合や、メンタルが辛い場合は、我慢せずに医療機関を頼るのもよいでしょう。

妊娠初期に胸の張りや痛みがなくても問題ない?

胸の張りや痛みは妊娠初期でも比較的一般的な症状です。そのため、症状がないと正常に妊娠できていない可能性を考えてしまうこともあるかもしれません。このようなケースも、医療機関で正常な妊娠判定ができていれば基本的には問題ありません。

先述のとおり、妊娠初期に「乳房の痛み・張り」や「乳房緊満感」の有無を調べた調査では、8割近い人に症状があったとされています。一方で、2割以上ではこのような症状がなかったともいえます。

妊娠後の症状は個人差が大きく、ホルモンバランスの変動も人それぞれです。血液中のホルモン値が変化しても症状として感じないケースも考えられるため、症状がでなければ妊娠の経過に問題があるというわけではありません。医療機関での診察で問題なければ落ち着いて経過を見守るようにしましょう。

妊娠初期に特に乳首が痛いのは問題ない?

妊娠初期に痛みや張りが出るのは、乳房と乳首のどちらも可能性があります。妊娠初期で起こる体の変化として、乳房が大きくなりより敏感になる、乳首がより突き出るようになる、などそれぞれで変化の可能性があります。

乳房の側面に痛みを感じたり、乳首がチクチクしたり痛んだりするのは、妊娠に伴う乳管系の発達と、より多くの小葉の形成によるものが原因のひとつとしてあります。乳管とは、乳房の中で母乳を乳首まで運ぶ細い管のことです。小葉とは、母乳をつくる腺房という小さな組織が集まってできた、ブドウの房のような構造です。小葉から乳管を通じて母乳が乳首へ運ばれます。

妊娠するとこの「管」と「房」が増えて乳房全体が膨らみ、張り感や痛みが生じると考えられます。

妊娠初期と生理前の胸の張りや痛みはどう違う?

妊娠初期と生理前症候群(PMS)における胸の張りや痛みの違いとしては、症状の持続期間が挙げられます。

生理前症候群(PMS)における胸の張りや痛みの原因は、ホルモンによる乳腺の発育などが影響すると考えられており、妊娠初期の張りや痛みの原因と比較的近い原理となります。ただし、生理前症候群(PMS)の症状である場合は、生理が始まると症状が改善するため、長くは続きません。

一方、症状の強さや部位は大きく変わらないこともあり、これらの特徴から妊娠初期の症状なのか生理前症候群(PMS)の症状なのかを見分けるのは難しいといえます。

胸の張りや痛みが妊娠初期症状であるか気になる場合は、生理予定日の1週間後を目安に妊娠検査薬を使用したり、医療機関への受診を検討しましょう。

院長からのメッセージ

妊娠初期に胸が張る、乳首が痛い——そういう症状があると「ちゃんと妊娠できているのかもしれない」と感じる方もいれば、逆に症状がなくて「何かおかしいのでは」と心配する方もいます。どちらも自然な反応です。

症状があるかどうかは、妊娠の正常さとは直接関係がありません。胸の張りはホルモンの影響で起こる変化のひとつですが、同じホルモンが分泌されていても感じ方には個人差があります。症状がなかった方が次の妊娠では強く感じる、ということも珍しくありません。

「昨日まであった症状が急になくなった」と不安になる方もよく相談にいらっしゃいます。体がホルモンの変化に慣れてくると症状が落ち着いてくることはよくあることです。症状がなくなったこと自体は、妊娠の経過が悪くなったサインではありません。

妊娠の状態を確認できるのは、血液検査や超音波検査だけです。症状の有無で一喜一憂するのではなく、定期的に受診して確認していくことを大切にしてください。

参考文献

1)Nazik E, Eryilmaz G. Incidence of pregnancy-related discomforts and management approaches to relieve them among pregnant women. J Clin Nurs. 2014;23(11-12):1736-1750.

2)新川治子, 島田三恵子, 早瀬麻子, 乾つぶら. 現代の妊婦のマイナートラブルの種類, 発症率及び発症頻度に関する実態調査. 日本助産学会誌. 2009;23(1):48-58.

3)Sayle AE, Wilcox AJ, Weinberg CR, Baird DD. A prospective study of the onset of symptoms of pregnancy. J Clin Epidemiol. 2002 Jul;55(7):676-80.

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