最終更新日:
2026-02-17

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は、卵巣に残された卵子の数の目安を知るための指標のひとつです。妊娠のしやすさを直接示す値ではありませんが、妊活や不妊治療を考えるうえで、現在の体の状態を知る手がかりになります。

AMHの値が示す意味を正しく理解することで、数値に振り回されることなく、自分に合った妊活や不妊治療の選択につなげることができます。

この記事では、AMH検査でわかることや検査を受けるメリット、基準値や正常値の考え方などをわかりやすく解説します。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは?

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵巣の中で発育を開始した卵胞(前胞状卵胞と小胞状卵胞)から分泌されるホルモンです。

女性の体内では、卵胞の発育を制御するホルモンのひとつと考えられており、その詳しい働きについては現在も研究が続けられています。

AMHは、育ち始めた卵胞から分泌されるという特徴があるため、その値を測定することで、間接的に卵巣全体に残された卵子の元(原始卵胞)の総量を推測することができます。

AMH検査でわかること

AMH検査では、発育を始めた卵胞から分泌されるホルモンを測定することで、卵巣の中にどれくらい卵子の元(原始卵胞)が残っているかを推測します。

卵子の元がどの程度残っているかを示す指標を「卵巣予備能」といい、AMH検査は卵巣予備能を評価する検査のひとつです。

AMHの値を正しく理解するための注意点

AMHの値は、あくまで卵子の元の数を推測する尺度であり、卵子の質を評価するものではありません。そのため、AMHの値だけで妊娠のしやすさを直接判断することはできません。

AMHが低い場合でも、年齢や卵子の状態によっては妊娠に至る可能性があります。

また、「卵巣年齢」という表現が使われることもありますが、これは医学的に正式な用語ではありません。たしかに年齢によって変化する(年齢が上がるほど低くなる傾向がある)値ではあるのですが、妊娠において年齢が最も大きく関与するのは卵子の質が変化することによるからです。「卵巣年齢」が高くても実年齢が若ければ妊娠の可能性は十分にあります。

AMH検査でわかるのは卵巣予備能の一側面であり、実際の治療や妊活の方針は、他の検査結果や年齢などとあわせて総合的に判断されます。

AMH検査を受けるメリット

AMH検査の結果を活用することで、一人ひとりの状況に応じた治療の進め方を検討しやすくなります。

妊活や不妊治療において、どの段階の治療を選択するか、また治療に伴うリスクをどう管理するかを考える際の参考情報のひとつとなります。

不妊治療のステップアップの検討ができる

AMH値を確認することで、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療から、体外受精などの生殖補助医療(ART)へ移行するタイミングの検討材料となります。

残された卵子の数が少ないと推測される場合、各ステップに時間をかけるよりも、早めに次の段階へ進むことが望ましい場合があります。

たとえば、日本生殖医学会では35歳未満でも卵巣予備能が低下している場合、タイミング法・人工授精合わせて6周期程度に限定し、適宜早めの生殖補助医療へのステップアップを推奨しています1)

一人ひとりに合わせた採卵方法を検討できる

AMHの値は卵巣内で発育を始めた卵子の個数を表すので、体外受精における採卵数に反映されます。体外受精で採卵を行う際に、卵巣刺激の方法や薬剤量を検討するための指標として用います。

AMH値を把握することで、卵巣の反応が弱すぎて採卵数が少なくなったり、逆に過剰に反応して副作用が強くなったりするリスクを避け、より適切な治療計画を立てることが可能になります。

AMH値の見方|基準値ではなく年齢別の目安で考える

AMH値は生まれつきの卵子の数には個人差があり、正常・異常を分ける明確な基準値はありません。一般的には、同年代の中央値と比べてどの位置にあるかを目安として評価されます。

AMH測定受託検査センターの測定値の資料によると、年齢別のAMHの中央値は以下のとおりです2)

年齢 AMHの中央値(ng/mL)
27歳以下 4.69
28歳 4.27
35歳 2.62
40歳 1.47
45歳 0.41

出典: AMH測定受託検査センターによる日本人女性のデータ


上の表は年齢別の中央値(真ん中の値)を示していますが、AMH値には同じ年齢でも大きな個人差があります。 

実際にどの程度のばらつきがあるのかを知るために、健常な日本人女性417人を対象とした研究データもご紹介します。

以下の表では、中央値だけでなく「25-75%の範囲」も示しています。 この範囲は同年齢の健常女性のうち半数(50%)の方が含まれる値の幅を表しており、ご自身の値がそこから外れていても、それだけで異常というわけではありません。

年齢 中央値 25-75%の範囲
20-24歳 5.96 ng/mL 3.30-7.87
25-29歳 5.27 ng/mL 3.49-6.88
30-32歳 4.00 ng/mL 2.06-6.18
33-35歳 2.91 ng/mL 1.87-4.76
36-38歳 1.96 ng/mL 1.29-3.07
39-41歳 1.72 ng/mL 1.07-2.92
42-44歳 1.13 ng/mL 0.51-1.86
45-49歳 0.32 ng/mL 0.15-0.74

出典: Asada Y, et al. Reprod Med Biol. 2017;16(4):364-373. PMID: 29259490

対象: 417人の健常日本人女性(正常月経周期、BMI 19-30)

AMH値は25歳ごろを境に下降しはじめ、30代後半からは急激に減る傾向があります。

同じ年齢であっても数値には幅があるため、中央値の値と比較して一喜一憂はせず、自分の現在の状態を把握するための参考指標として捉え、他の検査結果や年齢とあわせて総合的に考えることが大切です。

妊活・不妊治療におけるAMHが低い・高い場合の影響

AMH値が低い場合や高い場合には、不妊治療の進め方を考えるうえで参考になるポイントや、注意すべき点があります。

それぞれの数値が示す意味を正しく理解し、必要に応じて医師と相談しながら治療方針を検討することが大切です。

AMHが低い場合

AMHが低値であることは、卵巣の中に残っている卵子の元が少なくなっている可能性を示しています。

体外受精などの生殖補助医療では、卵巣刺激に対する反応が弱く、1回の採卵で得られる卵子の数が少なくなる傾向があります。

また、数値が極端に低いと閉経が早まる可能性もあり、治療を実施できる期間が短くなる場合も考えられます。そのため、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療を長く続けるのではなく、早めに生殖補助医療へ進むことが望ましいケースもあります。

ただし、AMH値が低いからといって必ずしも妊娠しにくいということを意味しているわけではありません。卵子の質が年齢相当に保たれていれば、AMH値が低くても妊娠に至る可能性は十分にあります。

AMHの低さについて、詳しくは以下の記事もご覧ください。

AMHが高い場合

AMH値が著しく高い場合には、排卵障害の原因となる「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」が疑われます。

PCOSとは、卵巣内に小さな卵胞が多くみられる一方で、排卵がスムーズに起こらない状態で、生殖年齢にある女性の不妊原因のひとつとして知られています3)

ただし、AMH値が高いからといって必ずPCOSであるとは限らず、診断には超音波検査や他のホルモン検査などを含めた総合的な評価が必要です。

また、AMH値が高い場合は、採卵時に卵巣が刺激に過剰に反応しやすく、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まることがあるため、慎重に治療が行われます。

AMHに関するよくある質問

AMHに関するよくある質問をまとめました。

AMH検査を受けるタイミングは?

不妊治療を開始する際にはAMH検査は必ず施行します。それ以外でAMH検査を受けるタイミングに明確な決まりはありませんが、次のような状況では検討されることがあります。

  • 不妊治療や妊活をはじめる前に、卵巣予備能を知りたい
  • 35歳以上で妊娠を希望している
  • 月経不順や無月経があり、排卵がされているか気になる
  • 卵巣の手術歴があり、今後の妊娠の見通しがどうかを把握したいとき

AMH検査自体は、月経周期の影響を受けにくいとされているため、どのタイミングでも受けることが可能です。しかし、他のホルモン検査と組み合わせて総合的に評価することが多いため、具体的な日程については医師に相談しましょう。

AMH検査は保険適用になりますか?

不妊検査としてのAMH検査は2022年4月から保険適用が開始されています。以前は体外受精などの生殖補助医療を受ける方が排卵誘発剤の投与量を決定するために行う場合に限られていました。2024年6月からは、条件を満たす場合に、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療においても保険適用の対象となっています。

ただし、ブライダルチェックや健康チェックなど、不妊治療以外の目的で受ける場合は、原則として自費診療になります。

AMH検査の保険適用や費用に関しては、以下の記事もご覧ください。

AMH検査キットを使えば卵巣予備能がわかりますか?

AMH検査キットは、自宅で採血し郵送することでAMH値がわかるという簡易的なチェック方法です。これを使えば卵巣予備能の目安を確認でき、医療機関を受診する時間が確保できない方でも、自分のタイミングで手軽に検査を行えます。

AMH検査キットで卵巣予備能の目安を知ることはできますが、検査結果の医学的な評価や今後の治療方針の判断には、医療機関での診察が不可欠です。

食事や生活習慣の改善でAMHの数値は増えますか?

食事や生活習慣の改善で、卵子の質を維持できる可能性があります。

女性の卵子の元は胎児期に一生分がつくられ、出生後に新しくつくられることはありません。成長とともに卵子の元の数は減少していく一方であるため、卵子の元の数の目安であるAMH値を回復させるのは医学的に難しいのが現状です。

卵子の数自体は増やせませんが、食事や生活習慣を見直すことで、残された卵子の質を保つうえで良い影響が期待されます。

詳細に関しては、以下の記事をご覧ください。

院長からのメッセージ

AMH検査は大切な指標ですが、数値だけに振り回されないでください

AMH検査は、卵巣予備能を評価できる便利な指標として広く使われるようになりました。血液検査だけで測定でき、月経周期の影響も受けにくいため、妊活や不妊治療を考える際の参考情報として本当に役立ちます。実際、体外受精における卵巣刺激の方法を決める際には欠かせない情報となっています。

一方で、AMH検査が便利であるがゆえに、少し安易に使われてしまっている面もあり、私自身、患者さんのお話を伺っていて気になることがあります。

まず「卵巣年齢」という表現です。この言葉は医学的に正式なものではなく、むしろ誤解を招きやすい表現だと感じています。AMHは確かに年齢とともに低下しますが、妊娠に最も大きく影響するのは卵子の質であり、これは実年齢と強く関連しているからです。たとえば28歳の方でAMH値が低くても、卵子の質は28歳相応に保たれており、妊娠の可能性は十分にあります。

診療の中で「AMH値が低いから妊娠できないと言われて、とてもショックでした」と不安そうにご相談される方がいらっしゃいます。そのお気持ちはよくわかりますが、これは誤解なのです。AMHはあくまで卵子の数の目安であって、卵子の質を示すものではありません。実際に、AMH値がほぼ検出できないほど低い方でも、年齢が若ければ質の良い卵子が得られ、妊娠・出産に至るケースは決して珍しくありません。

また、AMH値だけを見て「すぐに体外受精をしなければ」と焦ってしまう方もいらっしゃいますが、少し立ち止まって考えていただきたいのです。AMHは治療計画を立てる際の参考指標の一つにすぎません。本来は年齢、月経周期、他のホルモン値、超音波所見、パートナーの検査結果なども含めて、総合的に判断していくべきものです。

検査の数値は確かに気になりますし、不安になるお気持ちもよくわかります。でも、数値に振り回されず、ご自身の状況を正しく理解することが何より大切です。AMHが低くても高くても、お一人おひとりに適した治療の進め方が必ずあります。

検査結果を見て不安に思うことや、わからないことがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。一緒にお気持ちを整理しながら、あなたにとって最善の方法を考えていきましょう。

参考文献

1)日本生殖医学会. Q8.不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか?

2)AMH測定受託検査センター.最前線から知る不妊治療と卵巣予備能の最新知見.「アクセスAMH(IVD)」測定値の年齢別分布(中央値)

3)産婦人科診療ガイドラインー婦人科外来編2023

4)Asada Y, Morimoto Y, Nakaoka Y, Yamasaki T, Suehiro Y, Sugimoto H, et al. Age-specific serum anti-Müllerian hormone concentration in Japanese women and its usefulness as a predictor of the ovarian response. Reprod Med Biol. 2017;16(4):364-373. doi: 10.1002/rmb2.12055.

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