最終更新日:
2026-01-29

AMH(抗ミュラー管ホルモン)が低い場合でも、見た目の特徴や自覚症状が現れることはほとんどありません。そのため、「AMHが低い人の特徴」を日常生活の中で実感することは少ないのが実情です。

一方で、AMHが低い人の特徴は、妊娠を考えたときや不妊治療を検討する場面で現れます。

AMHは卵子の数の目安を示す指標であり、数値が低いからといって妊娠できないわけではありませんが、年齢や背景によっては、治療方針や妊娠までの時間の考え方に影響することがあります。

この記事では、AMHが低い人の特徴と自覚症状についてや、AMHの数値が低くなる原因と妊娠への可能性を広げるためにできることについて解説します。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは

AMHとは、卵巣の中に卵子の元がどれくらい残っているかを示す目安となるホルモンです。

女性の卵子の元となる細胞は胎児期に一生分が作られ、生まれた後に新しく増えることはありません。そのため、年齢とともに卵子の元は減少しますが、残っている数には個人差があります。

AMHは育ちはじめた未熟な卵胞から分泌されるため、卵巣の中に残る卵子の元が多いほど数値は高く、少ないほど低くなるといわれています。

AMH値を「卵巣年齢」と表現することもありますが、これは医学的には正確ではありません。AMHが示すのは、あくまで卵子の数の目安であり、卵子の質や妊娠の可否そのものを示す指標ではありません。

AMHが低い人の特徴:自覚症状はほとんどない

AMHが低い人に、見た目の特徴やはっきりした自覚症状が現れることはほとんどありません。排卵が順調であれば毎月の生理も変わらず来るため、検査をしない限り自分では数値の低さに気付きにくいのが実情です。

一方で、症状がなくてもAMHが低い場合は、閉経が早まる可能性や、体外受精などの治療で一度に採取できる卵子の数が限られる可能性があります。

なお、早発卵巣不全が背景にある場合は、月経不順や無月経といった症状がみられることがあります。

AMHが低くなる主な原因

AMHが低くなる要因はひとつではありません。加齢のほか、早発卵巣不全、経口避妊薬(ピル)の内服、喫煙、卵巣の手術歴などが関係することがあります。

これらの中には一時的な低下で済むものと、卵巣予備能そのものが減少するものがあるため、自身の状況と照らし合わせて理解しましょう。

加齢

年齢を重ねるにつれて、AMH値は低下していきます。血液中のAMH値は20代半ばをピークに、その後は年齢とともに下降していきます。

卵子の元は胎児期に一生分が作られ、生まれた後に新しく増えることはありません。生まれた時点では約100~200万個の卵子の元を持っていますが、新しい卵子が追加で作られることはなく、年齢とともに減少していきます。

思春期には約20~30万個まで減少し、その後も減少を続けます。そのため、加齢に伴ってAMHが低くなるのは自然な現象といえます。

ただし、不妊治療において年齢が最も影響するのは卵子の「質」であり、AMHはあくまで卵子の数の目安である点は理解しておきましょう。

早発卵巣不全

早発卵巣不全とは、40歳未満で卵巣の機能が低下し、閉経に近い状態になってしまう疾患です。この場合、AMHの数値は測定感度以下(検出できないほど低い値)を示すことが多く、初期段階では月経不順、進行すると無月経の状態になります。

また、急激なホルモンバランスの乱れによって、顔のほてり感や発汗といった更年期障害のような症状が40歳未満でも出現することがあります。もし、生理が不規則になっている、ほてりを感じるといった自覚症状がある場合は、早めに医療機関に相談しましょう。  

経口避妊薬(ピル)の内服

経口避妊薬(ピル)を服用している期間は、一時的にAMHの数値が低くなる傾向にあります。

これは、実際に卵子の数が減ってしまったわけではなく、排卵を抑える薬の作用により卵胞の発育が抑制されるためです。AMHは育とうとしている卵胞から分泌されるため、ピルによって卵胞の発育が抑制されるとAMHも分泌されなくなるのです。

一般的に、ピルの内服をやめれば数ヶ月でAMHの数値は回復するといわれています。

喫煙

喫煙はAMHが低いことと関連するという報告があります。海外の研究では、喫煙している女性は非喫煙者に比べてAMHが低い傾向が示されています。

この影響は『現在の喫煙習慣』に関連するとされています。禁煙が卵巣予備能の低下速度を遅らせる可能性はありますが、一度低下したAMH値が回復するかどうかについては、まだ十分な研究がありません。

喫煙の習慣がある場合は、さらなる卵巣予備能の減少を防ぐためにも禁煙を心がけましょう。

卵巣の手術経験

過去の手術によるものが、AMHの数値に影響している場合があります。特にチョコレート嚢胞などの卵巣手術を受けたことがある場合は、卵巣予備能を減少させてしまう要因になっていることがあります。

術後、AMH値はさらに低下することがありますが、数ヶ月かけて一定程度回復する場合もあります。ただし、手術前の値まで完全に回復するとは限りません。

AMHが低いとわかったときにできること

AMHが低いとわかった場合は、専門家と相談しながら今後の方針を考えていくことが大切です。

一度低下してしまったAMHの数値は一般的に回復することはありませんが、数値を知った上で妊娠への可能性を広げるためにできることはあります。

自分の卵巣予備能を知ることは、タイミング法から人工授精、さらに体外受精などの生殖補助医療(ART)へ進むタイミングを判断する重要な材料になります。特に35歳未満であっても、卵巣予備能が低下している場合は、治療の進め方について早めに医師と相談しておくと安心です。

また、将来子どもを持ちたいと考えている場合は、自身の年齢と卵子の状態を正しく理解し、パートナーと今後のライフプランについて話し合っておくことも重要です。

AMHに関するよくある質問

AMHに関するよくある質問について回答します。 

AMHが低いとどんなデメリットがありますか?

AMHが低い場合、体外受精において一度に採取できる卵子の数が少なくなる傾向がある点が、ひとつのデメリットとしてあげられます。

AMHは発育中の卵子数の指標であり、体外受精では、1回の調節卵巣刺激で採取できる卵子数と一定の関連があるとされています。つまり、AMHが低い場合は、治療効率の面で不利になることがあります。

またAMHが低い場合は閉経が早まる可能性も示唆されており、治療期間が短くなってしまう可能性もあります。

卵巣予備能が低下している場合は、治療の進め方やタイミングについて、早めに医師と相談しておくことが望ましいとされています。年齢に関わらず、状況に応じた方針を検討することが大切です。

AMHが低いと卵子の質も低下しているのですか?

AMHが低いからといって、卵子の質が低下しているわけではありません。卵子の質に最も大きく関係しているのは、AMH値よりも年齢です。

たとえば、25歳の方のAMH値が低めであっても、卵子の質は年齢相応であり、妊娠率が40歳相当になるわけではありません。一方で、35歳を過ぎると卵子の数の減少と同時に卵子の質の低下も顕著になります。

現時点では加齢による卵子の質の低下を防いだり、一度低下した卵子の質を改善したりする方法はありません。

AMHが低いと自然妊娠できませんか?

AMHが低いからといって自然妊娠ができないわけではありません。

AMHはあくまでも卵子の数の目安であり、妊娠の成立そのものや卵子の質を直接示す指標ではありません。卵子の数が少なくなっていても、排卵が起こっており、卵管の通過性や精子の状態などに問題がなければ、自然妊娠に至るケースもあります。

ただし、AMHが低い場合は、妊娠の可能性を考えるうえでの時間的な制約がある可能性もあるため、状況に応じて早めに医師へ相談し、方針を確認しておくと安心です。

院長からのメッセージ

AMH検査で『低い』という結果が出ると、『もう妊娠できないのではないか』と不安になる方は少なくありません。そのような心配をされることは、とても自然なことです。

まず知っていただきたいのは、AMHはあくまで『卵子の数の目安』であり、『卵子の質』や『妊娠の可否』を直接示すものではないということです。たとえば、25歳の方のAMH値が低めであっても、卵子の質は25歳相応であり、妊娠率が40歳相当になるわけではありません。実際に、AMHが低くても自然妊娠に至る方はいらっしゃいます。

一方で、AMHが低い場合、閉経が早まる可能性や、体外受精などの治療で一度に採取できる卵子の数が限られる可能性があることも事実です。特に妊娠を希望されている場合は、時間的な制約を考慮して、早めに専門医に相談されることをお勧めします。

AMHの数値が低くなる原因は、加齢だけではありません。ピルの使用、喫煙、卵巣の手術歴なども影響します。ご自身に当てはまる要因があるか、一度振り返ってみてください。

大切なのは、AMHの数値を知った上で、ご自身の状況に合わせた対応を考えることです。35歳未満であっても、卵巣予備能が低下している場合は、治療の進め方について早めに医師と相談しておくと安心です。将来子どもを持ちたいと考えている場合は、パートナーと今後のライフプランについて話し合う良い機会にもなります。

『AMHが低い』という結果に、必要以上に不安を感じる必要はありません。正しい情報を持って、ご自身にとって最善の選択をしていただければと思います。どんな小さな疑問でも、遠慮なく医療機関に相談してくださいね。

参考文献

1)Dólleman M, Verschuren WM, Eijkemans MJ, Dollé ME, Jansen EH, Broekmans FJ, van der Schouw YT. Reproductive and lifestyle determinants of anti-Müllerian hormone in a large population-based study. J Clin Endocrinol Metab. 2013 May;98(5):2106-15.
日本産婦人科医会.(3)卵巣予備能とは?

一般社団法人日本内分泌学会.早発卵巣不全

一般社団法人日本生殖医学会.生殖医療Q&A

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