最終更新日:
2026-02-24

AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値は、卵巣に残っている卵子の元(原始卵胞)の数の目安となります。一般的に、AMHの値そのものを大きく改善することは難しいとされていますが、数値が低いからといって妊娠の可能性がなくなるわけではありません。

AMHはあくまで卵子の元の数の目安であり、妊娠に大きく関わる卵子の質や、妊活・不妊治療の進め方とは別に考える必要があります。実際には、AMHが低い場合でも妊娠に至るケースは十分にあります。

この記事では、AMHの改善が難しいとされる理由や、AMHが低い場合でも妊娠を目指すことができる理由、将来の妊娠に向けて今できることについて、医学的な考え方をもとにわかりやすく解説します。

AMHは改善できる?数値が改善したように見えるケースや注意点

AMHは卵巣内で発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンであり、その値は卵巣予備能(卵巣に残っている卵子の元の数)を推測する目安として用いられます。

卵子の元である原始卵胞は胎児のときにつくられ、生まれた後は新たに作られることはなく減るのみで増えることはありません。そのため、AMHの値も年齢とともに低下していくのが一般的で、卵子の元の数そのものが増える形でAMHが改善することはありません。

一方で、AMHは卵子の元の数そのものではなく、周期のたびに発育している卵胞の数であるため、発育過程にある卵胞の状態や測定条件の変化により数値が一時的に変動し、結果として「改善したように見える」ケースがあります。ただし、この場合でも卵巣に残っている卵子の元の数が増えたわけではない点に注意が必要です。

AMH値が上昇して改善したように見えるケースとして以下のような例があります。

ただし、これらはいずれも卵子の数が増えることを示すものではなく、測定値の変動として捉える必要があります。

  • ビタミンDのサプリメントなどの使用
  • DHEA成分の摂取
  • 低用量ピルの使用中止

なお、AMH検査には測定誤差(±15%程度)があるため、複数回測定した場合に数値が多少変動することは正常な範囲内です。一度の測定値の変動だけで一喜一憂せず、総合的に判断することが大切です。

ビタミンDのサプリメントなどの使用

ビタミンDはAMH値に影響を与える可能性が知られています。ビタミンD欠乏は妊娠率・着床率の低下や流産リスクとの関連が指摘されており、妊娠前から不足しないよう摂取が推奨されている栄養素のひとつです。

海外の研究では、ビタミンDの摂取によりAMH値が上昇したという報告もあり1)、AMHへの影響を与える可能性が考えられています。

ただし、ビタミンDを摂取することでAMHが確実に改善する、あるいは妊娠率が向上することが医学的に確立されているわけではありません。仮にAMHの値が上昇した場合でも、卵巣に残っている卵子の元の数が増えるわけではない点に注意が必要です。

AMHの値が気になる場合でも、自己判断でサプリメントを使用するのではなく、医師などの専門家と相談したうえで、必要に応じて活用することが重要です。

DHEA成分の摂取

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は体内で性ホルモンの前駆体となる物質で、海外の研究で、DHEAを摂取することでAMH値の改善が認められたという報告があります2)

一方で、DHEAは体内のホルモンバランスに影響を及ぼす可能性があり、安全性や有効性については十分な検討が必要とされています。DHEAは男性ホルモンに変換されるため、不適切に使用すると、多毛や声の低音化などの男性化症状が現れる可能性があります。また、ホルモン感受性のある腫瘍(乳がんや子宮内膜がんなど)がある場合には使用できません。

日本ではDHEAは医療現場で標準的に使用される治療ではなく、サプリメントとしての使用も一般的ではありません。自己判断での使用は避け、必ず専門医の判断を仰ぐようにしましょう。

ピルの使用中止

経口避妊薬(ピル)などのホルモン剤は、卵胞の発育を一時的に抑える作用があります。AMHは発育途中の卵胞から分泌されるため、ピルの使用中にAMHを測定すると低く測定される場合があります。

このため、ピルの使用を中止した後の検査では、AMH値が上昇したように見えることがありますが、これは卵巣予備能が回復したことを示すものではありません。

ピルの使用や中止の判断は、避妊・治療目的や体調によって大きく異なります。AMH検査の結果を理由に自己判断で中止することは避け、必ず医師と相談してください。

AMHが低くても妊娠できる可能性はある

AMHの数値が低くても、妊娠できる可能性はあります。

妊娠できるかどうかに最も大きく影響するのは、AMHの数値そのものではなく、卵子の質です。卵子の質は女性の年齢に最も関係するため、AMHが低くても質の良い卵子が排卵されれば妊娠の期待は十分に持てます。

たとえば年齢が若い方であれば、AMHが低くても卵子の質が保たれている可能性が高いため、妊娠の期待値は高くなります。一方で、AMHが高くても年齢を重ねた方であれば、卵子の質が低下しているリスクがあり妊娠率が低下する傾向にあります。

AMHは、あくまでも卵巣内に残っている卵子の元の数の目安となる指標であり、卵子の質を評価するものではありません。数値の結果のみにとらわれすぎず、自分の年齢や体の状態に合わせた適切な治療方法を検討することが大切です。

AMHについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

AMHが低くなる原因

AMHの数値が低くなる要因はひとつではありません。

最も一般的な要因として加齢があり、年齢を重ねるにつれて、誰でもAMH値は低下していきます。

そのほか、早発卵巣不全などの疾患、喫煙習慣、卵巣の手術歴、経口避妊薬(ピル)の使用なども、AMH値に影響を与えることがあります。そのため、現在の病気や症状、服用している薬、過去の治療歴などについては、受診時に医師へ正確に伝えることが重要です。

AMHが低くなる原因について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

AMHの結果をふまえて妊娠に向けてできること

AMHの検査結果をふまえ、将来の家族計画や妊娠に向けて、今できる取り組みについて整理します。数値だけにとらわれすぎず、自分の状況に合った選択肢を考えることが大切です。

パートナーと今後のことについて話し合う

AMH検査でわかった体の状態について、パートナーと共有し、今後の方向性を一緒に話し合いましょう。

AMHは卵子の元の数の目安であり、数値が低い場合には、妊活や不妊治療に使える時間が限られる可能性があることもあります。こうした背景を含めて、現状を共有しておくことで、今後の選択について二人で考えやすくなります。

また、不妊の原因の約半数は男性だといわれていることからも、男性側も検査を受けることなども含め、しっかり話し合いの場を持つことが重要です。

今後の不妊治療の進め方について相談する

AMHが低い場合には、今後の妊活や不妊治療の進め方について、医師と相談することが勧められます。

検査結果から卵巣予備能の目安を把握することで、タイミング法や人工授精といった一般不妊治療をどの程度続けるか、あるいは生殖補助医療への移行を検討するかといった判断材料になります。

医師と相談しながら、自分に合ったペースや選択肢を考えていきましょう。

食事や禁煙など生活習慣の改善

妊娠に向けて、バランスの良い食事やストレス管理、禁煙といった生活習慣の見直しも大切な要素です。

食事によってAMHの数値そのものが改善するわけではありませんが、主食・主菜・副菜をそろえた食事を意識し、妊娠に向けて特に重要な栄養素(葉酸、鉄、タンパク質、ビタミンD、ビタミンE、亜鉛など)を適切に摂取することは、妊娠に向けた体づくりに良い影響が期待されます。

また、喫煙は妊娠や胎児の発育に影響を及ぼす可能性が指摘されており、喫煙習慣とAMH値の低下との関連が示唆された研究もあります。妊娠を考えている場合には、可能な範囲で禁煙に取り組むことが望ましいでしょう。

AMHに関するよくある質問

AMHに関するよくある質問に回答します。

AMH検査をもう一度受けたいのですが保険適用されますか?

AMH検査の保険適用には一定の条件があります。前回の検査からの期間や、検査の目的(不妊症の患者に対する卵巣機能の評価および治療方針の決定)などが考慮されるため、実際に保険診療で受けられるかは医療機関に確認するのが良いでしょう。

AMH検査の保険適用に関しては、以下の記事をご覧ください。

AMH検査キットを使えば卵巣予備能がわかりますか?

自宅で採血して郵送するタイプのAMH検査キットを使うことで、AMH値の目安を知ることは可能です。

ただし、AMH値の数値は単独で判断するものではなく、年齢や他のホルモン検査、超音波検査などとあわせて総合的に評価されます。そのため、検査キットの結果だけで正確な卵巣予備能や、今後の妊活・治療方針を判断することは難しいといえます。

検査キットは、忙しくてすぐに受診できない場合などに現状を知るきっかけとしては有用ですが、結果をどう受け止めるか、次に何をすべきかについては、医療機関を受診し医師のアドバイスを受けることが大切です。

院長からのメッセージ

AMH検査で低い値が出ると、「改善できないか」と不安になるお気持ちは本当によくわかります。実際、診療の中でも「サプリメントで良くなりますか」「何をすれば数値が上がりますか」というご相談をよくいただきます。

正直にお伝えすると、AMHの数値そのものを大きく改善することは医学的に難しいのが現状です。卵子の元である原始卵胞は胎児期に一生分がつくられ、出生後は減る一方だからです。ビタミンDやDHEAなどで一時的に数値が上昇したという研究報告はありますが、それは測定値の変動であって、卵子の数が増えたことを意味しません。

でも、ここで立ち止まって考えていただきたいのです。AMHは卵子の「数」の目安にすぎず、妊娠に最も重要なのは卵子の「質」だということです。質は年齢と強く関連しているため、たとえAMHが低くても年齢が若ければ、質の良い卵子が得られ妊娠に至る可能性は十分にあります。

大切なのは、数値に一喜一憂することではなく、今の状況を正しく理解し、限られた時間を有効に使うことです。AMHが低いということは、妊活や治療に使える時間が限られている可能性があるというサインでもあります。タイミング法を何周期も続けるよりも、早めに次のステップを検討した方が良い場合もあるかもしれません。

また、不妊の原因の約半数は男性側にあるといわれています。AMH検査をきっかけに、パートナーにも検査を受けていただき、二人で今後のことを話し合う機会を持つことも大切です。

数値の改善に固執せず、バランスの良い食事、禁煙、ストレス管理など、妊娠に向けた体づくりに目を向けること。そして、医師と相談しながら、ご自身に合った治療の進め方を一緒に考えていくこと。それが、今あなたにできる最も現実的で効果的な選択だと私は考えています。

検査結果に不安を感じたときは、一人で悩まずにどうぞご相談ください。あなたの状況に合わせた最善の道を、一緒に見つけていきましょう。

参考文献

1)Moridi I, Chen A, Tal O, Tal R. The Association between Vitamin D and Anti-Müllerian Hormone: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2020 May 28;12(6):1567.

2)Agarwal R, Shruthi R, Radhakrishnan G, Singh A. Evaluation of Dehydroepiandrosterone Supplementation on Diminished Ovarian Reserve: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Study. J Obstet Gynaecol India. 2017 Apr;67(2):137-142.

日本産婦人科医会.(3)卵巣予備能とは?

日本生殖医学会.生殖医療Q&A

日本産婦人科学会,日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2023
Wesevich V, Kellen AN, Pal L. Recent advances in understanding primary ovarian insufficiency. F S Rep. 2020 Sep;1(2):89-99. doi: 10.1016/j.xfre.2020.05.008.

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