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最終更新日:
2026-09-07

胚移植後、判定日を待つ期間は気持ちが揺れやすい時期です。「どこまで動いていいのか」「この症状は問題ないのか」と不安を感じる方は少なくありません。

基本的には、医師から特別な指示がない限り普段どおりの生活を続けて問題ありません。体調変化が起こっても、日常生活に支障がなければ様子を見て問題ないことが多いです。

ただし、症状の程度によっては速やかな対応が必要な場合もあるため、受診の目安を知っておくことが大切です。

この記事では、胚移植から妊娠判定までのスケジュールや起こりうる症状、過ごし方などについて解説します。

胚移植から妊娠判定までのスケジュール

胚移植から妊娠判定までのスケジュールの目安は以下のとおりです。

初期胚 胚盤胞
移植する胚 培養開始後2〜3日目の胚 培養開始後5〜6日目の胚
着床時期の目安 移植後3〜5日頃 移植後1〜2日頃
妊娠判定日の目安 移植後10日〜2週間頃 移植後10日〜2週間頃

初期胚は採卵後2〜3日目まで、胚盤胞は採卵後5〜6日目まで培養した胚を指します。そのため、移植する胚(受精卵)の種類によって、着床時期の目安が多少異なります。

妊娠判定日は医療機関によって異なりますが、おおよそ移植後10日〜2週間後に、血液中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を測定して確認します。

凍結融解胚移植に関する具体的なスケジュールの例は、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

胚移植

胚移植当日は、医療機関から案内された時間に来院し、胚を子宮内に戻す処置を受けます。ORINAS ART CLINICでは、内診台で腟内を洗浄し、細く柔らかいカテーテルを子宮内に挿入します。その後、超音波で位置を確認しながら胚を子宮内に置き、カテーテル内に胚が残っていないことを確認して終了します。

胚移植の処置は短時間で終わることが多く、多くの場合は麻酔を使用せずに行われます。

移植の方法や移植までの準備の流れについては、以下のページを参考にしてください。

着床

着床時期の目安は、移植する胚の種類によって異なります。

初期胚移植では、胚が胚盤胞まで育つ時間が必要なため、移植後およそ3〜5日、胚盤胞移植では、移植時点ですでに着床できる段階に達しているため、移植から1〜2日後が着床の目安とされています。

胚移植後の着床時期や、着床が成立するまでの流れについては以下の記事をご覧ください。

妊娠判定

妊娠判定は、移植からおおよそ10日〜2週間後に、血液中のhCGを測定して行います。

hCGは、着床が成立すると増えはじめ、検査で検出できる量に達するまでには日数がかかります。そのため、判定日より前に市販の妊娠検査薬を使っても、hCGが検出できる量に達しておらず、妊娠していても陰性になる可能性があります。

市販の妊娠検査薬は、一般的に生理予定日の1週間後以降の使用が推奨されています。移植後の妊娠の有無については、医療機関で指定された日に血液検査などで確認することになります。

胚移植後に起こりうる症状

胚移植後、人によっては体調変化がみられることがあります。よくみられるのは、次のような症状です。

  • 少量の出血
  • 下腹部の違和感(軽い痛みを含む)
  • 倦怠感
  • 胸の張り
  • 眠気

体調変化の多くは、移植処置による一時的な刺激や、排卵や薬によって増える黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響によるものです。

黄体ホルモン補充による症状と妊娠初期の症状はよく似ているため、症状の有無だけでは妊娠の成否を判断することはできません。日常生活に支障がなければ、判定日まで様子をみて問題ありません。

採卵後に新鮮胚移植をした場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による症状が起こる可能性もあります。腹部の膨らみや急激な体重増加、吐き気などがみられる場合は早めに医療機関へ連絡してください。

移植後に起こりうる症状について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

受診が必要な症状の目安

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。

  • 大量に出血する・出血が何日も続く
  • 我慢できないほど強い腹痛がある・腹痛が徐々に強まる
  • 急にお腹が膨らむ・急激な体重増加・吐き気をともなう

これらは異所性妊娠(子宮外妊娠)や採卵後の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が疑われるサインである場合があります。上記に当てはまらなくても、気になる症状があれば医療機関に相談してください。

胚移植後の過ごし方

移植後も普段どおりの生活を続けて問題ありません。

「安静にすることで妊娠率が高まる」といった根拠は確認されておらず、移植直後に安静にした人と活動した人との間で妊娠率に差はなかったとする報告もあります1)

就寝時の寝る向きや姿勢も、基本的には限定されません。移植後の寝方が着床率に影響するといった医学的根拠はないため、就寝時は普段どおりで問題ありません。

仕事・家事

デスクワークや軽い立ち仕事は普段どおりで問題ありません。また、自宅での家事にも特別な制限はありません。

仕事の調整が必要な場合は「不妊治療連絡カード」を活用する方法もあります。

厚生労働省が作成している公的な書面であり、カードを通じて配慮してほしいことを職場に伝えられるため、必要であれば医師に記入を依頼してください。

運動・外出

運動については、ウォーキングや軽いストレッチ程度であれば問題ありません。適度に体を動かすことは気分転換にもなります。

ただし、腹圧がかかる動作や息が切れるような激しい運動やホットヨガのような高温に長時間さらされる運動は避け、心地よい程度にとどめてください。

買い物や通勤など、日常的な外出も継続して行えます。車での移動も問題ありません。

長時間外出する場合は、疲れがたまらないようこまめに休憩を挟むと安心です。

食事

特別に制限される食べ物や、推奨される食べ物はありません。特定の食品で着床率が変わるとする根拠はないため、普段と同様にバランスのよい食事を意識してください。

妊活中は葉酸や鉄など不足しがちな栄養素の摂取が推奨されているため、移植後も継続して心がけるとよいでしょう。

入浴・性行為

入浴も基本的には可能です。感染予防のために、移植当日のみシャワーを推奨する医療機関もあります。ただし高温に長時間さらされる状態は好ましくありません。判定日までは温泉やサウナを避けるよう案内されることもあるため、気になる方は医師に確認してください。

性行為については、子宮収縮を引き起こす可能性があることから、移植後は控えるよう指示される場合があります。再開の時期については、主治医に確認することをおすすめします。

喫煙・飲酒

たばこに含まれる有害物質は、妊娠への悪影響が報告されています。受動喫煙にも同等のリスクがあるため、パートナーや周囲の方にも配慮してもらいましょう。

アルコールは胎児の発育へ影響を及ぼす可能性があるため、飲酒も量にかかわらず控えることが推奨されています。

そのほか、体外受精の胚移植後の過ごし方の詳細については、以下の記事でも解説しているのであわせてご覧ください。

胚移植後の注意点

胚移植後に大きく制限される行為はありませんが、気をつけておきたい点もあります。

特に、処方された薬の重要性と、市販の妊娠検査薬の扱いについては十分に理解しておきましょう。

黄体ホルモン補充薬を継続する(自己中断しない)

黄体ホルモンの薬が処方された場合は、医師の指示どおりに継続してください。

黄体ホルモンの補充は、子宮内膜を着床しやすい状態に整える目的です。妊娠を維持するためにも重要なため、指示どおりに継続することが大切です。

薬による体調変化が起きた場合は、自己判断で中止せずにまずは医師に相談してください。

フライング検査には注意が必要(正確な結果が得られないこともある)

妊娠検査薬の推奨時期(通常、生理予定日の1週間後以降)よりも早く検査を行うことを「フライング検査」といいます。胚移植後から判定日前に検査する場合もフライング検査に該当し、正確な結果が得られないことがあるため注意が必要です。

妊娠検査薬は、妊娠時に分泌されるホルモン(hCG)を尿中で検出し、妊娠を判定する検査です。

移植後まもない時期はこのホルモンがまだ十分な量に達しておらず、市販の検査薬では「偽陰性(本来は陽性なのに陰性と出る状態)」となることがあります。

また、移植前後にhCG製剤を使用した場合は、薬の影響で「偽陽性(妊娠していないのに陽性と出る状態)」となる可能性もあります。正確な判定は、決められた日に医療機関で受けてください。なお、hCG製剤ではなくGnRHアゴニストと呼ばれる別の種類のトリガーを使用している場合は、この影響はありません。ご自身が使用した薬については担当医にご確認ください。

胚移植後に関するよくある質問

胚移植後の方からよく寄せられる質問に回答します。

Q:胚移植後に基礎体温が下がりましたが陰性ですか?

A:基礎体温が下がっても、妊娠不成立を意味するものではありません。妊娠すると基礎体温が高く推移する傾向はありますが、必ずしもすべての方にみられる変化とは限りません。

とくに胚移植後は、黄体ホルモン薬の影響によって体温が変動しやすくなります。基礎体温の変化で妊娠の成立・不成立を予想することは難しいため、過度に気にしないことが大切です。

Q:胚移植後、生理痛のような鈍痛がありますが問題ないですか?

A:胚移植後は、移植処置の影響や黄体ホルモン薬の影響により、下腹部の違和感やチクチク・ズキズキとした痛みを感じることがあります。

日常生活に支障がなければ様子をみて問題ありません。ただし、痛みが強い場合や大量の出血をともなう場合は、速やかに受診してください。

Q:胚移植後に症状がない場合は陰性ですか?

A:胚移植後に症状がなくても、妊娠判定が陰性とは限りません。胚移植後の体調変化には個人差があり、自覚症状がないまま妊娠が成立している場合も十分にあります。

症状の有無で結果を判断することはできないため、医療機関で指定された日に妊娠判定の検査を受けて確認しましょう。

Q:胚移植後の判定前に生理がきてしまった気がしますが、移植は失敗でしょうか?

A:判定前の出血は必ずしも生理とは限りません。出血の有無だけで移植が失敗してしまったかどうかの判断はできないため、指定された日にしっかり受診して検査をしましょう。

過去の研究では、生殖補助医療後の妊娠初期に一定の割合で出血があることが確認されています。主な原因として、胚移植時の刺激による出血、黄体ホルモン補充の影響による出血、着床出血などの可能性が挙げられます。

胚移植後の出血や判定日を待たずに受診すべき症状の目安は、以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご覧ください。

院長からのメッセージ

胚移植後から判定日までの期間は、「どこまで動いていいか」「この症状は大丈夫か」と、いろいろなことが気になりやすいですよね。この記事でもお伝えしているように、基本的には普段どおりに過ごしてもらって大丈夫です。

「安静にするべきでは」と思う方も多いのですが、移植直後に安静にした人と活動した人の間で妊娠率に差はなかったとする研究報告があります。「特別なことをしたかどうか」と妊娠の成否を結びつけてしまうと、何かあったときに自分を責めやすくなります。それを避けるためにも、普段どおりに過ごすことは医学的にも理にかなっています。

症状についても、移植後にみられる体調変化の多くは黄体ホルモン補充の影響です。胸の張り、下腹部の違和感、倦怠感といった症状は、妊娠していても、していなくても同じように起こります。症状がないことも問題ありません。症状の有無で妊娠の成否を予測することは医学的にも難しいため、一喜一憂しすぎないことが大切です。

急いで受診してほしい症状は3つです。大量の出血、我慢できないほどの強い腹痛、そして急激なお腹の膨らみや体重増加を伴う吐き気・むくみです。これらはひとりで様子を見るべきではありません。診療時間内であれば当院にご連絡ください。時間外で症状が強い場合は、救急外来の受診もためらわないでください。

判定日まで、気になることや不安なことがあれば遠慮なく相談してください。小さな疑問でも、聞いてもらえる場所があると思って過ごしてください。

参考文献

1)Zemet R, Orvieto R, Watad H, et al. The association between level of physical activity and pregnancy rate after embryo transfer: a prospective study. Reprod Biomed Online. 2021;42(5):930-937.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33832865/