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最終更新日:
2026-04-16

胚移植後、判定日を待つ期間は気持ちが揺れやすい時期です。「どこまで動いていいのか」「この症状は問題ないのか」と不安を感じる方は少なくありません。

基本的には、医師から特別な指示がない限り普段どおりの生活を続けて問題ありません。体調変化が起こっても、日常生活に支障がなければ様子を見て問題ないことが多いです。

ただし、症状の程度によっては速やかな対応が必要な場合もあるため、受診の目安を知っておくことが大切です。

この記事では、胚移植後の過ごし方と起こりうる症状、受診目安などについて解説します。

胚移植後の過ごし方

移植後も普段どおりの生活を続けて問題ありません。

「安静にすることで妊娠率が高まる」といった根拠は確認されておらず、移植直後に安静にした人と活動した人との間で妊娠率に差はなかったとする報告もあります1)

就寝時の寝る向きや姿勢も、基本的には限定されません。移植後の寝方が着床率に影響するといった医学的根拠はないため、就寝時は普段どおりで問題ありません。

仕事・家事

デスクワークや軽い立ち仕事は普段どおりで問題ありません。また、自宅での家事にも特別な制限はありません。

仕事の調整が必要な場合は「不妊治療連絡カード」を活用する方法もあります。

厚生労働省が作成している公的な書面であり、カードを通じて配慮してほしいことを職場に伝えられるため、必要であれば医師に記入を依頼してください。

運動・外出

運動については、ウォーキングや軽いストレッチ程度であれば問題ありません。適度に体を動かすことはリフレッシュにもつながります。軽い運動はストレスを軽減し、良い影響があるという報告もあります。

ただし、腹圧がかかる動作や息が切れるような激しい運動やホットヨガのような高温に長時間さらされる運動は避け、心地よい程度にとどめてください。

買い物や通勤など、日常的な外出も継続して行えます。車での移動も問題ありません。

長時間外出する場合は、疲れがたまらないようこまめに休憩を挟むと安心です。

食事

特別に制限される食べ物や、推奨される食べ物はありません。特定の食品で着床率が変わるとする根拠はないため、普段と同様にバランスのよい食事を意識してください。

妊活中は葉酸や鉄など不足しがちな栄養素の摂取が推奨されているため、移植後も継続して心がけるとよいでしょう。

入浴・性行為

入浴も基本的には可能です。感染予防のために、移植当日のみシャワーを推奨する医療機関もあります。ただし高温に長時間さらされる状態は好ましくありません。判定日までは温泉やサウナを避けるよう案内されることもあるため、気になる方は医師に確認してください。

性行為については、子宮収縮を引き起こす可能性があることから、移植後は控えるよう指示される場合があります。再開の時期については、主治医に確認することをおすすめします。

喫煙・飲酒

たばこに含まれる有害物質は、妊娠への悪影響が報告されています。受動喫煙にも同等のリスクがあるため、パートナーや周囲の方にも配慮してもらいましょう。

アルコールは胎児の発育へ影響を及ぼす可能性があるため、飲酒も量にかかわらず控えることが推奨されています。

胚移植後に起こりうる症状

胚移植後、人によっては体調変化がみられることがあります。

体調変化の多くは、移植処置による一時的な刺激や、排卵や薬によって増える黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響によるものです。

黄体ホルモン補充による症状と妊娠初期の症状はよく似ているため、症状の有無だけでは妊娠の成否を判断することはできません。日常生活に支障がなければ、判定日まで様子をみて問題ありません。

採卵後に新鮮胚移植をした場合には、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)による症状が起こる可能性もあります。腹部の膨らみや急激な体重増加、吐き気などがみられる場合は早めに医療機関へ連絡してください。

移植後に起こりうる症状について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

受診が必要な症状の目安

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関へ連絡してください。

  • 大量に出血する・出血が何日も続く
  • 我慢できないほど強い腹痛がある・腹痛が徐々に強まる
  • 急にお腹が膨らむ・急激な体重増加・吐き気をともなう

これらは異所性妊娠(子宮外妊娠)や採卵後の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が疑われるサインである場合があります。上記に当てはまらなくても、気になる症状があれば医療機関に相談してください。

胚移植後の着床時期について

着床時期の目安は、移植する胚の種類によって異なります。

初期胚移植では、胚が胚盤胞まで育つ時間が必要なため、移植後およそ3〜5日、胚盤胞移植では、移植時点ですでに着床できる段階に達しているため、移植から1〜2日後が着床の目安とされています。

胚移植後の着床時期や、着床が成立するまでの流れについては以下の記事をご覧ください。

胚移植後の注意点

胚移植後に大きく制限される行為はありませんが、気をつけておきたい点もあります。

特に、処方された薬の重要性と、市販の妊娠検査薬の扱いについては十分に理解しておきましょう。

黄体ホルモン補充薬を継続する(自己中断しない)

黄体ホルモンの薬が処方された場合は、医師の指示どおりに継続してください。

黄体ホルモンの補充は、子宮内膜を着床しやすい状態に整える目的です。妊娠を維持するためにも重要なため、指示どおりに継続することが大切です。

薬による体調変化が起きた場合は、自己判断で中止せずにまずは医師に相談してください。

フライング検査には注意が必要(正確な結果が得られないこともある)

妊娠検査薬の推奨時期(通常、生理予定日の1週間後以降)よりも早く検査を行うことを「フライング検査」といいます。胚移植後から判定日前に検査する場合もフライング検査に該当し、正確な結果が得られないことがあるため注意が必要です。

妊娠検査薬は、妊娠時に分泌されるホルモン(hCG)を尿中で検出し、妊娠を判定する検査です。

移植後まもない時期はこのホルモンがまだ十分な量に達しておらず、市販の検査薬では「偽陰性(本来は陽性なのに陰性と出る状態)」となることがあります。 

また、移植前後にhCG製剤を使用した場合は、薬の影響で「偽陽性(妊娠していないのに陽性と出る状態)」となる可能性もあります。正確な判定は、決められた日に医療機関で受けてください。

胚移植後に関するよくある質問

胚移植後の方からよく寄せられる質問に回答します。

胚移植後に基礎体温が下がりましたが陰性ですか?

基礎体温が下がっても、妊娠不成立を意味するものではありません。妊娠すると基礎体温が高く推移する傾向はありますが、必ずしもすべての方にみられる変化とは限りません。

とくに胚移植後は、黄体ホルモン薬の影響によって体温が変動しやすくなります。基礎体温の変化で妊娠の成立・不成立を予想することは難しいため、過度に気にしないことが大切です。

胚移植後、生理痛のような鈍痛がありますが問題ないですか?

胚移植後は、移植処置の影響や黄体ホルモン薬の影響により、下腹部の違和感やチクチク・ズキズキとした痛みを感じることがあります。

日常生活に支障がなければ様子をみて問題ありません。ただし、痛みが強い場合や大量の出血をともなう場合は、速やかに受診してください。

院長からのメッセージ

胚移植後から判定日までの期間は、「どこまで動いていいか」「この症状は大丈夫か」と、いろいろなことが気になりやすいですよね。この記事でもお伝えしているように、基本的には普段どおりに過ごしてもらって大丈夫です。

「安静にするべきでは」と思う方も多いのですが、移植直後に安静にした人と活動した人の間で妊娠率に差はなかったとする研究報告があります。「特別なことをしたかどうか」と妊娠の成否を結びつけてしまうと、何かあったときに自分を責めやすくなります。それを避けるためにも、普段どおりに過ごすことは医学的にも理にかなっています。

症状についても、移植後にみられる体調変化の多くは黄体ホルモン補充の影響です。胸の張り、下腹部の違和感、倦怠感といった症状は、妊娠していても、していなくても同じように起こります。症状がないことも問題ありません。症状の有無で妊娠の成否を予測することは医学的にも難しいため、一喜一憂しすぎないことが大切です。

急いで受診してほしい症状は3つです。大量の出血、我慢できないほどの強い腹痛、そして急激なお腹の膨らみや体重増加を伴う吐き気・むくみです。これらはひとりで様子を見るべきではありません。夜間や休日でもクリニックに連絡してください。

判定日まで、気になることや不安なことがあれば遠慮なく相談してください。小さな疑問でも、聞いてもらえる場所があると思って過ごしてください。

参考文献

1)Zemet R, Orvieto R, Watad H, et al. The association between level of physical activity and pregnancy rate after embryo transfer: a prospective study. Reprod Biomed Online. 2021;42(5):930-937.

標準的な生殖医療の知識啓発と情報提供のためのシステム構築に関する研究. 患者さんのための生殖医療ガイドライン. 令和4年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業; 2023.

厚生労働省. 不妊治療と仕事との両立について. 厚生労働省ウェブサイト.