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最終更新日:
2026-04-16

胚移植後から判定日までは、「この症状は何かのサインなのか」「症状がないけど大丈夫なのか」と、体のわずかな変化でも気になりやすい期間です。

胚移植後の体の変化の多くは移植処置や薬や排卵による黄体ホルモン(プロゲステロン)の変化によって起こるため、妊娠自体とは直接関係がありません。症状の有無と妊娠の成否は切り離して考えることが大切です。

この記事では、症状の原因、時期ごとの受け止め方、受診の目安を整理します。

胚移植後に起こりうる症状

胚移植後の体調変化は人によってさまざまです。

<胚移植後の症状の一例>

  • 少量の出血
  • 下腹部の違和感(軽い痛みも含む)
  • 倦怠感
  • 胸の張り
  • 眠気

これらの症状は妊娠初期症状として現れることもありますが、妊娠後に必ず体調変化が起こるわけではありません。実際には、妊娠しても体調変化をまったく感じない方もいます。

とくに胚移植後は、治療そのものが影響してこれらの症状が引き起こされやすいため、「症状があるから着床した」「症状がないから着床していない」とは一概にいえません。

胚移植後に症状が起こる原因

胚移植後に起こりうる症状の背景には、次のいずれか、または複数が関係していると考えられます。

  • 移植処置による影響
  • 黄体ホルモン(プロゲステロン)による影響
  • 妊娠成立にともなってみられる変化

とくに黄体ホルモン補充による症状と妊娠初期の症状は、どちらもホルモンバランスが関係しているためよく似ています。

判定日までは両方の可能性があると考え、焦らず経過を見ることが大切です。

移植処置による影響

移植時の処置によって、移植直後に少量の出血や軽い下腹部痛、違和感がみられることがあります。

胚移植は、細いカテーテルを子宮内に挿入し、胚を届ける処置です。柔らかい移植専用のチューブを用いますが、子宮頸部や子宮内に一時的な刺激が加わることがあり、少量の出血や軽い下腹部痛などが生じることがあります。

ただし、発熱や持続する強い痛み、月経2日目を超えるような多量の出血がある場合は速やかに医療機関を受診してください。そのような症状がなければ、多くの場合は自然におさまります。

黄体ホルモン(プロゲステロン)による影響

胚移植の前後には、黄体ホルモン(プロゲステロン)を補う薬を使うことがあります。また自然排卵周期の場合には自然での排卵が起こり、体内でプロゲステロンが分泌されます。

プロゲステロンは子宮内膜を着床しやすい状態に整え、妊娠維持を助けるホルモンです。プロゲステロンを補うと体が黄体期のホルモン状態となり、生理前や妊娠初期と似た症状が出ることがあります。

ホルモン補充薬の影響としては、腹痛や下腹部の違和感、胸の張りといった症状が代表的です。また、体温を上げたり水分を体にため込んだりする作用もあるため、だるさやむくみを感じることもあります。

妊娠成立による変化

妊娠が成立した場合、妊娠維持に必要なホルモンの分泌量が増加し、吐き気・眠気・胸の張りといった症状が現れることがあります。また、着床する際に少量の出血が起こることもあります。

ただし、妊娠成立後の症状やその程度は人によって異なります。体調変化がなくても妊娠しているケースは多く、症状と妊娠は完全に結びつけられるものではありません。

まったく症状がないとかえって不安に感じる方もいるかもしれませんが、症状がないこと自体は妊娠を否定するものではありません。判定日まで落ち着いて過ごすことが大切です。

時期別:症状の受け止め方と過ごし方

胚移植後は、医師から特別な指示がない限り、過度な安静は必要とされておらず、普段どおりの生活を続けることが基本です。

ただし、症状が気になるときの受け止め方は時期によって異なります。

胚移植直後

移植直後は、軽い出血や下腹部の違和感が起こることがあります。多くの場合、カテーテルを子宮内に挿入する際の一時的な刺激が原因と考えられます。

処置の後に、強い痛みや多量の出血、発熱がある場合は速やかに受診してください。

デスクワークや軽い立ち仕事、家事などは基本的に問題ありません。身体に大きな負荷がかかる作業や激しい運動は控えてください。どの程度活動してよいか迷う場合は、医師に確認することをおすすめします。

胚移植から1週間前後

胚移植から1週間前後は、「この症状は着床のサインなのか」「何も症状がないのは問題ないのか」と気になりやすい時期です。

この時期の体調変化の多くは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響によるものと考えられます。倦怠感や下腹部の張りが気になることがありますが、日常生活に支障がなければ様子をみて問題ありません。症状がないこと自体も、着床を否定するものではありません。

精神的な負担を感じやすい時期ですが、できるだけ穏やかに過ごすことを心がけてみてください。

判定日前

妊娠への期待と不安が入り混じり、体調変化がさらに気になりやすい時期です。ただし、症状の有無や強弱は妊娠の成否とは直接関係しないため、過度に気にしないことが大切です。

この時期は黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響も続いており、胸の張りや下腹部の違和感などがあっても、症状と原因を完全に結びつけることは医学的にもできません。症状の現れ方には個人差が大きいため、他の方の体験はあくまで参考程度にとどめておくことが大切です。

妊娠検査薬でいち早く確認したい方もいるかもしれませんが、この時期は市販の検査薬で検出できるほどホルモン量が増えておらず、正しい結果が得られないことがあります。妊娠判定は、決められた日に医療機関を受診し、血液検査で確認することをおすすめします。

様子を見る症状と受診すべき症状の目安

速やかな対応が必要なケースもあるため、症状に応じた適切な受診判断が大切です。

以下の表は、様子をみてよいケースと受診を検討するケースの目安の一例です。

症状 様子見のケース 受診を検討するケース
出血 ・おりものに混じる程度
・数日でおさまる
・大量に出血する
・出血が何日も続く
下腹部の痛み ・軽い違和感 ・我慢できないほどの強い腹痛
・徐々に強くなる・持続する
倦怠感 ・日常生活を送れる程度 ・症状が強い
・水分・食事がとれない
お腹や胸の
張り
・チクチク程度の軽い違和感 ・急にお腹が膨らむ
・急激なむくみ、体重増加を伴う
(1日1〜2kg以上の増加が目安)

上記の「受診を検討するケース」に該当する症状がある場合、以下のような状態が疑われることがあります。

異所性妊娠(子宮外妊娠)は、受精卵が子宮以外の場所(多くは卵管)に着床した状態です。強い下腹部痛や出血が続く場合は、速やかに受診してください。

採卵と同じ周期に胚移植をする新鮮胚移植を行った場合には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の可能性も考慮する必要があります。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は、採卵時に使用した排卵誘発剤の影響で卵巣が過剰に反応し、腹水がたまるなどの症状が起こる状態です。お腹の急激な膨らみ・強いむくみ・急激な体重増加がみられる場合は、早めに受診してください。

胚移植後の経過には個人差があります。上記に当てはまらなくても「いつもと違う」と感じる場合は、ひとりで抱え込まず、まずは医療機関へ連絡することをおすすめします。

胚移植後の症状に関するよくある質問

胚移植後の症状に関するよくある質問に回答します。

胚移植後に自覚症状がまったくなくても、妊娠していることはありますか?

自覚症状がまったくなくても、妊娠していることも十分にあります。胚移植後の体調変化や妊娠初期症状の現れ方には個人差があり、何も変化を感じないことは珍しくありません。

また、判定日までの期間は妊娠の極めて初期にあたるため、妊娠が成立しても目立った変化がみられないことは珍しくありません。症状がないこと自体を過度に心配せず、判定日まではリラックスして過ごすことが大切です。

胚移植後、出血する原因は何ですか?

多くの場合、出血の原因は移植処置による刺激やお薬による影響と考えられます。少量の出血であれば、焦らず様子をみることが大切です。

ただし、ナプキンを頻繁に交換するほど出血量が多い場合や、強い腹痛を伴う場合は速やかに受診してください。判断に悩む場合も、まずは医療機関へ連絡することをおすすめします。

市販の検査薬で陰性でしたが、判定日の受診は必要ですか?

市販の検査薬が陰性であっても、判定日の受診は必要です。

妊娠検査薬は、尿中のhCGというホルモンを検出し妊娠を判定するものです。判定日前はhCGがまだ十分な量に達しておらず、妊娠していても「偽陰性」になることがあります。さらに新鮮胚移植をした場合、トリガーとしてhCG(オビドレルなど)を使用した場合には、早期に検査をするとそのトリガーのhCGが検出されてしまうこともありえます。

市販の妊娠検査薬で検査した場合でも、その結果のみで判断せず、決められた日に医療機関を受診してください。

院長からのメッセージ

胚移植後から判定日までの期間は、体のわずかな変化がとても気になりますよね。「この感覚は何かのサイン?」「何も感じないけど大丈夫?」という不安は、診察室でも毎日のようにお聞きします。

はっきりお伝えすると、症状の有無や強さで妊娠の成否を判断することはできません。移植後に感じる体の変化の多くは、排卵や黄体ホルモン製剤による黄体ホルモンの影響です。このホルモンは妊娠が成立した場合もしていない場合も分泌されるため、症状の出方で区別することは医学的にも不可能です。何も感じなくても妊娠しているケースは珍しくありませんし、逆も同様です。

一方で、すぐに受診してほしい症状があります。出血量がナプキンを頻繁に替えるほど多い場合、我慢できないほどの強い腹痛が続く場合、特に新鮮胚移植をした後のお腹が急激に膨らんでむくみや体重増加を伴う場合(OHSSが疑われる)、これらは自己判断で様子を見るべきではありません。夜間や休日でもクリニックに連絡してください。

判定日前に市販の検査薬を使っても、この時期はまだhCGが十分な量に達していないことが多く、正確な結果が出ません。結果がどちらであっても、決められた日に受診して血液検査を受けてください。それが最も確実な判定方法です。

判定日まで、どうか穏やかに過ごしてください。

参考文献
日本がん・生殖医療学会 妊孕性/妊孕性温存について

Nielsen JM, Humaidan P, Jensen MB, Alsbjerg B. Early pregnancy bleeding after assisted reproductive technology: a systematic review and secondary data analysis from 320 patients undergoing hormone replacement therapy frozen embryo transfer. Hum Reprod. 2023;38(12):2373-2381.

日本産科婦人科医会ウェブサイト.

標準的な生殖医療の知識啓発と情報提供のためのシステム構築に関する研究. 患者さんのための生殖医療ガイドライン. 令和4年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業; 2023.