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最終更新日:
2026-04-14

体外受精において「必ず成功率が上がる」という決定的な方法は、残念ながらありません。しかし、妊娠の可能性を高めるために見直せるポイントはあります。

体外受精の成功には、年齢・卵子の質・胚の育ち方・子宮内環境など、複数の要因が複雑に関わっています。そのすべてをコントロールすることはできませんが、「自分たちで整えられること」と「医療の面で見直せること」の2つの視点で整理すると、取り組む方向性が見えやすくなります。

この記事では、生活習慣の見直しから治療方針の確認まで、取り組みやすいものから整理して解説します。

体外受精の成功率に影響する要因

体外受精の成功には、いくつもの要因が重なって影響しており、女性側だけでなく男性側の状態が関わることもあります。

主な要因は、以下の通りです。

  • 年齢(20代、30代、40代)
  • 卵子の質
  • 採卵できる数
  • 精子の質
  • 胚の発育状況
  • 子宮内環境(着床しやすい環境かどうか)
  • 不妊の原因

これらに加えて、胚の評価方法や培養環境、胚移植の進め方などの医療機関側の方針や設備も結果に影響する可能性があります。

年齢や不妊の原因、胚の育ち方は人によって大きく異なるため、「この方法に変えれば誰でも必ず成功率が上がる」という方法は残念ながらありません。だからこそ、自分の状況を丁寧に見直しながら、医師と一緒に治療方針を相談していくことが大切です。

新鮮胚移植と凍結融解胚移植の違い

医療の面で見直せることのひとつに、胚移植の方法があります。

体外受精では、新鮮胚移植(採卵した周期にそのまま胚移植するもの)と、凍結融解胚移植(一度胚を凍結保存した後融解して移植するもの)の2つの方法があり、現在の医療では、どちらを選択しても累積出生率に大きな差はないとされています1)

近年は凍結技術が大きく進歩し、凍結融解胚移植が増えてきています。また、多胎妊娠のリスクを避けるため、1回の移植で1つの胚を戻す「単一胚移植」が現在の標準的な方針となっています。

体外受精の成功率を上げるために見直したい生活習慣

生活習慣の見直しは、夫婦で取り組みやすく、体づくりの土台として整えやすいポイントです。精子の質にも生活習慣が影響する可能性が示されているため、男性側も含めて取り組むことが望ましいとされています。 

ただし、生活習慣を整えるだけで成功率が大きく上がるとは言い切れません。「できることをサポートとして整える」という姿勢で取り組むと、無理なく続けやすくなります。

食事

妊娠を意識すると、つい特定の食べ物や栄養素に注目したくなりますが、まず大切なのは偏りの少ないバランスのよい食事を続けることです。その上で、葉酸や鉄などの栄養素は妊娠前からの摂取が推奨されています2)

これらを摂取したからといって体外受精の成功率が上がるわけではありません。しかし、胎児の神経管の形成などの妊娠初期の発育にとても重要な役割を持っているため、食事で摂取するのが難しい場合はサプリメントで補うのも方法のひとつです。

ただし、サプリメントは不足しがちな栄養を補うためのものです。自己判断で摂取しすぎるとかえって体に負担がかかることもあります。必要な量や種類は、医師や専門家と相談しながら取り入れると安心して続けられます。

適度な運動

適度な運動を続けることは、適正体重の維持につながる大切な習慣です。

そして、この「適正体重を保つこと」は、男女ともに妊娠に良い影響が期待される比較的根拠のしっかりした改善ポイントのひとつです。

痩せすぎや肥満は、女性では排卵障害の原因になることがあり、男性では精巣のはたらきや精子の質に影響が出る可能性があることが示されています。

そのため痩せや肥満の傾向がある場合、まずは普通体重である「BMI18.5~25.0未満」3)を目指すことがひとつの目安です。

また、運動は、体づくりだけでなく気分転換やストレスの緩和にもつながります。

治療中は心が張りつめやすいため、無理のない範囲で体を動かすことで心身のバランスを整える助けになります。

禁煙・節酒 4)

喫煙や飲酒をする習慣がある場合は、禁煙や飲酒量のコントロールも意識したいポイントです。

たばこに含まれる有害物質は、卵巣機能の低下や卵子の質に影響することがわかっています。男性側では、精子のDNA損傷率も高くなるとされており、体外受精の成功率を上げるためにも男女ともに禁煙が推奨されています。

さらに、妊娠中の喫煙については、胎児への影響を示す研究が多数あります。喫煙する妊婦は非喫煙者と比べて、自然流産のリスクが約2倍、早産が約1.5倍、低出生体重児が約2倍高くなるといわれています。

乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが高まることも複数の研究で示されています。妊娠中は安全な喫煙量は存在しないとされており、体外受精で妊娠が成立した後も同様です。

妊活を始める段階から、パートナーも含めて禁煙に取り組むことが望まれます。受動喫煙も胎児に影響することが示されているため、同居の家族の協力も大切です。

飲酒については、過度な飲酒は男女ともにホルモンバランスが乱れる可能性があり、妊活中・移植後は飲酒を控えることが望ましいとされています。さらに男性の場合は精子の形成を妨げることもあります。

睡眠・ストレス解消

睡眠不足や過度なストレスが、体外受精の成功率を直接左右するという明確な根拠は現時点では確立されていません。

ただし、精神的なストレスが不妊に影響を与える可能性は指摘されています。ストレスが強い状態が続くと、性機能や性欲に影響がでるだけでなく、男性では男性ホルモンの分泌が低下したり精子の質に影響が出たりする変化が起こることがあります。

さらに、治療そのものがストレスの原因になることも少なくありません。気分転換の時間を意識的につくることが治療を続けるうえで大きな助けになるため、無理のない範囲でできることから取り入れてみてください。

体外受精を受ける医療機関を選ぶときに確認したいポイント

成功率を考えるうえで、治療を受ける医療機関の環境や方針も関係することがあります。これからクリニックを選ぶ方も、現在通院中の方も、以下のポイントを参考にしてみてください。

体外受精を受ける医療機関を選ぶとき、まず目に入りやすいのが妊娠率や出産率といった成績です。これらの数字は参考にはなりますが、患者の年齢層や治療方針、どんなケースを多く扱っているかによって大きく変わるため、単純に比較することはできません。

数字だけで判断するのではなく、以下のようなポイントも医療機関選びには大切です。

  • 通院のしやすさ、続けやすさ(診療時間や距離、予約のとりやすさ)
  • 医療設備(治療内容、培養設備、検査体制)
  • 病院の対応(説明がわかりやすいか、納得しながら治療を勧められるか)
  • 生殖心理カウンセラーや不妊カウンセラーの有無

体外受精の成功率に関するよくある質問

体外受精の成功率に関するよくある質問をまとめました。

体外受精を複数回行っても妊娠に至らない場合、原因は何が考えられますか?

体外受精が何度もうまくいかない場合、原因がひとつに限られるわけではありません。

胚の異常(染色体の数の異常など)だけでなく、子宮や卵管の異常、子宮内膜の受け入れ準備のずれ、慢性的な炎症、免疫の関与、男性側の精子の問題など、複数の要因が重なっていることもあります。

そのため、結果が出ないときは、どの要因が関係している可能性があるのかを整理し直すことが大切な出発点になります。

医療機関を変えると体外受精の成功率は上がりますか?

医療機関を変えただけで、体外受精の成功率が上がるとは言えません。ただし、治療方針や説明の方法、検査体制、医師との相性が変わることで、治療内容が見直されるきっかけになることはあります。

また、通っている患者さんからは見えづらい要素として培養環境があります。インキュベーターの種類や酸素・二酸化炭素濃度の管理方法、培養液の選択、胚盤胞まで培養するかどうかの方針など、施設によって異なる部分があります。

これらが胚の発育に影響する可能性があることも研究で示されており、培養体制を含めて医療機関を比較する視点は意味があります。

ただし、培養環境を変えれば必ず結果が改善するとも言い切れないため、セカンドオピニオンを含め担当医とよく話し合ったうえで判断することをお勧めします。

院長からのメッセージ

「体外受精の成功率を上げる方法を教えてください」というご質問は、診察室でも本当によくお聞きします。そのたびに、正直にお伝えするように心がけていることがあります。「これをすれば必ず成功率が上がる」という方法は、残念ながら存在しません。

年齢・卵子の質・胚の育ち方・子宮内環境といった要因は、どれだけ努力してもコントロールしきれない部分があります。それでも「自分にできることはないか」と考えるのは、とても自然なことです。

生活習慣の見直しは、その観点から取り組む価値があります。根拠がある程度しっかりしているのは、適正体重の維持・禁煙・過度な飲酒を避けることです。これらは卵子や精子の状態、ホルモンバランスに影響する可能性が示されています。「成功率を上げるため」というより「体の土台を整えるため」という気持ちで取り組むと、無理なく続けやすいと思います。

一方で、生活習慣をどれだけ整えても結果が出ないこともあります。そのときは自分を責めるのではなく、「医療の面で見直せることはないか」を担当医と一緒に確認してください。反復着床不全の検査、移植方法の変更、治療計画の見直しなど、次の手は必ずあります。

どうか一人で抱え込まず、気になることをそのまま相談してください。

参考文献

1)患者さんのための生殖医療ガイドライン.Q18新鮮胚移植と凍結融解胚移植はどう違いますか

https://www.gynecology-htu.jp/reproduction/dl/seishokuiryo_gl_7-q18.pdf

2)妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針~妊娠前から、健康なからだづくりを~

https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf

3)厚生労働省.健康日本21アクション支援システム〜健康づくりサポートネット〜.肥満と健康

https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/food/e-02-001

4)一般社団法人日本生殖医学会.生殖医療Q&A.Q5.どんな人が不妊症になりやすいのですか?

http://www.jsrm.or.jp/public/funinsho_qa05.html