先進医療

保険診療+αの技術で、治療の「突破口」を開く。

2022年の保険適用拡大により、標準的な不妊治療は保険で受けられるようになりました。 しかし、標準治療だけではなかなか結果が出ない難しいケースがあることも事実です。

「先進医療」とは、厚生労働省が認めた、保険診療と併用して実施することができる高度な医療技術のことです。 これらは、将来的な保険導入を目指して有効性を検証している段階の技術であり、標準治療(保険診療)のように全ての方に対して確立されたエビデンスがあるわけではありません。

しかし、特定の課題(反復着床不全や受精障害など)を抱える患者様にとっては、治療の突破口となる可能性を秘めています。 ORINAS ART CLINICでは、医学的な根拠に基づき、患者様の状況に合わせて「あと一歩」を後押しする先進医療オプションを各種取り揃えています。

※先進医療にかかる費用は全額自己負担となりますが、ベースとなる診察や基本治療(採卵・移植など)は保険が適用されます。

胚培養・移植に関する技術

受精卵(胚)をより良く育て、着床しやすい環境を作るための技術です。

1. タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養

受精卵を培養器(インキュベーター)から取り出すことなく、内蔵カメラで24時間連続観察する技術です。

  • メリット: 胚へのストレス(温度変化・光など)を最小限に抑え、発育過程を動画で解析することで、より良好な胚を選別できます。
  • 当院の方針: 当院では、培養成績向上のため全症例で導入しています。

2. 子宮内膜刺激術(SEET法)

胚盤胞を移植する数日前に、その胚を育てた培養液(胚培養上清液)を子宮内に注入する方法です。

  • 原理: 受精卵は成長する過程で、子宮内膜に向けて「もうすぐ着床するよ」というシグナル(伝達物質)を放出していると考えられています。SEET法では、このシグナルを含んだ培養液をあらかじめ子宮に戻すことで、子宮内膜を着床しやすい状態(受容態勢)へと誘導します。
  • 対象: 良好な胚を移植しても着床しない(反復不成功)方など。

3. 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)

移植の前周期に、器具を使って子宮内膜にわざと軽い傷をつける方法です。

  • 目的: 傷を治そうとする修復機能が働く過程で、着床に必要なサイトカインなどが分泌され、着床環境が改善すると考えられています。
  • 当院の方針: むやみに行うのではなく、反復着床不全(RIF)の方に対し、子宮内膜検査(組織採取)を行う際の副次的な効果として期待する場合などに検討します。

精子選択・受精に関する技術

顕微授精(ICSI)において、より良い精子を選び出すための技術です。

1. IMSI(強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選択術)

通常の顕微授精(約400倍)では見えない微細な構造を、約6,000倍以上の超高倍率顕微鏡を用いて観察し、精子を選別する技術です。 

特に、精子の頭部にある「空砲(液胞)」の有無などを詳細に確認します。頭部に空砲が多い精子はDNA損傷のリスクが高いとされており、これを避けて形態良好な精子を選ぶことで、受精率や胚盤胞到達率の向上が期待できます。

  • 当院の方針: 当院では、顕微授精を行う全症例において、このIMSI技術を用いて精子選別を行っています(追加費用なし)。妥協のない精子選択が、良好な胚を育てる第一歩だと考えているからです。

2. PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)

成熟した精子だけがヒアルロン酸にくっつくという性質を利用して、DNA損傷の少ない成熟精子を選別する方法です。

  • 対象: 過去に受精率が悪かった方、流産を繰り返している方など、精子の質に課題があると考えられる場合。

3. ZyMōt(膜構造を用いた生理学的精子選択術)

遠心分離機を使わず、特殊な膜を泳ぎ抜けた精子だけを回収する方法です。遠心分離による物理的ダメージや酸化ストレスを回避し、DNA損傷の少ない精子を集めます。

  • 対象:
    • 精子DNA断片化指数(DFI)検査の結果が悪かった方
    • 反復して胚盤胞到達率が低い方
    • 原因不明の受精障害がある方

着床不全・不育症に関する検査

「なぜか着床しない」「流産してしまう」原因を、子宮内環境や免疫の観点から詳しく調べる検査です。

1. 子宮内膜受容能検査(ERPeak / ERA)

子宮内膜には、受精卵を受け入れるのに最適な期間「着床の窓(インプランテーション・ウィンドウ)」があります。 通常は黄体ホルモン投与から約120時間後と言われていますが、人によってはこの窓が開く時期が「早い」あるいは「遅い」場合があります。 窓が閉じている時にいくら良好な胚を移植しても、着床することはできません。

  • 検査内容: 子宮内膜の組織を採取し、遺伝子解析を行うことで、あなただけの「着床の窓」のタイミングを特定します。
  • 対象: 良好な胚を複数回移植しても着床しない(反復着床不全)方。
  • メリット: 移植のタイミングを半日〜1日ずらすだけで、劇的に着床率が改善する可能性があります。

2. 子宮内細菌叢検査(子宮内フローラ検査 / EMMA・ALICE)

子宮内は無菌ではなく、様々な細菌が存在していることが分かってきました。この細菌のバランス(フローラ)が、着床や妊娠継続に大きく関わっています。

  • 子宮内フローラ(善玉菌): 子宮内の「ラクトバチルス(乳酸菌)」の割合を調べます。ラクトバチルスが90%以上を占める環境が、着床に最適とされています。
  • 慢性子宮内膜炎(悪玉菌): 着床を妨げる原因菌(病原菌)がいないかを調べます。慢性子宮内膜炎は自覚症状がほとんどありませんが、不妊症や不育症の大きな原因の一つです。
  • 対象: 反復着床不全の方、流産を繰り返す方、おりものの異常が気になる方。

3. ネオセルフ抗体検査

不育症や着床不全の新たなリスク因子として注目されている「ネオセルフ抗体(抗β2GPIネオセルフ抗体)」を測定する血液検査です。 従来の抗リン脂質抗体検査では、異物(リン脂質)に対する抗体を調べていましたが、この検査では「自分のタンパク質が変性したもの(ネオセルフ)」に対する抗体を調べます。

  • 対象: 原因不明の不育症の方、原因不明の反復着床不全の方。従来の検査ですべて陰性だった方でも、この抗体が陽性になるケースがあり、新たな治療(抗凝固療法など)の糸口になる可能性があります。

費用と助成金について

先進医療にかかる技術料は全額自己負担(自費診療)となりますが、それ以外の診察や処方などは保険が適用されます。

東京都特定不妊治療費(先進医療)助成事業

東京都にお住まいの方は、保険診療と併用して実施した先進医療にかかる費用の一部について、助成金を受け取ることができます。

  • 助成金額: 先進医療にかかった費用の7割(上限15万円
  • 対象: 治療開始日の妻の年齢が43歳未満の夫婦(事実婚含む)で、東京都内に住民登録がある方。

なお、申請には期限があります。詳しくは「助成金ページ」、または東京都福祉局のHPをご確認ください。

民間の先進医療特約

民間の医療保険(生命保険など)に加入されている場合、「先進医療特約」の対象となり、給付金が受け取れるケースがあります。 ご加入の保険内容をご確認の上、必要な書類等があれば受付までお申し出ください。

上條 慎太郎
ORINAS ART CLINIC 理事長・院長

「手詰まり」を感じさせない、豊富な引き出しを用意しています。

標準治療で結果が出ればそれが一番ですが、時には壁にぶつかることもあります。

そんな時、「もう打つ手がない」と諦めるのではなく、「まだこの方法がある」と希望を持っていただくために、当院では科学的根拠のある先進医療を幅広く導入しています。

ただし、先進医療は「やればやるほど良い」というものではありません。あくまで検証段階の技術であり、すべての方に効果が約束されているわけではないからです。

例えば、着床の窓がズレていない人にERPeak検査をしても意味がありませんし、費用負担が増えるだけです。

私たちは、検査結果やこれまでの経過を冷静に分析し、「今のあなたに本当に必要なオプション」だけをご提案します。 東京都の助成金制度なども活用しながら、賢く治療を組み立てていきましょう。

保険診療と先進医療を適切に組み合わせ、最短ルートでのゴールを目指します。

ORINAS ART CLINIC 理事長・院長

上條 慎太郎