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胚凍結(受精卵凍結)

胚の凍結保存:安全性と妊娠率の両立を目指して

体外受精では、1回の採卵で複数の卵子が得られ、その結果、複数の胚が発育することがあります。しかし、子宮へ戻す胚の数は、原則として1個ずつ移植することが推奨されています。この方針は、多胎妊娠(双子や三つ子)を防ぎ、母体と赤ちゃん双方のリスクを低減することを目的としています。

このような治療の考え方の中で重要な役割を果たしているのが、胚の凍結保存です。移植に使用しなかった胚を適切に凍結保存しておくことで、次回以降の治療では、再び採卵を行うことなく、胚移植から治療を再開することが可能になります。

また、採卵を行った周期は、卵巣やホルモン環境が一時的に変化していることがあります。そのような場合には、その周期での移植を行わず、すべての胚を凍結し、身体の状態が整った別の周期に移植を行う(全胚凍結)ことで妊娠率向上を図るという選択が取られることもあります。

時を超えて、命をつなぐ。安全で確実な凍結保存技術

当院の凍結方法:ガラス化法(Vitrification) かつての凍結方法は時間をかけてゆっくり冷やすものでしたが、現在は「ガラス化法(Vitrification法)」という急速凍結技術が主流です。

  • 仕組み:胚を凍結のダメージから守るために凍結保護剤を浸透させ、液体窒素(-196℃)の中に一気に入れて瞬時に凍らせます。
  • メリット:胚の中の水分が氷の結晶となって細胞を傷つけてしまうのを防ぎ、ガラス状に固めることで、細胞へのダメージを極限まで抑えます。
  • 融解後の生存率:融解(解凍)した時の生存率は約99%以上と非常に高く、新鮮胚と変わらない妊娠率が期待できます。
胚凍結のイメージ
胚凍結のイメージ

胚凍結のメリット

  1. 身体への負担軽減:一度の採卵で複数回の移植チャンスが得られるため、毎回の注射や採卵手術の負担がなくなります。
  2. 着床環境の最適化:採卵周期はホルモンバランスが乱れがちですが、凍結することで子宮内膜を整えてから移植でき、妊娠率が向上します(全胚凍結)。
  3. 多胎妊娠の防止:良好な胚が複数あっても、一度に複数個戻すと双子や三つ子(多胎)のリスクが高まります。1個ずつ移植し、残りを凍結することで、安全な単胎妊娠を目指せます。
  4. 第2子への備え:若いうちに採卵・凍結した胚を保存しておけば、数年後でも「採卵当時の年齢の卵子」として移植が可能です。

保存期間と更新について

凍結した胚の保存期間は、原則として1年間です。 1年ごとに来院していただいて更新手続き(延長)を行うことで、期間を延長することができます。

  • 手続き:期限が近づきましたらご案内をお送りします。所定の手続きと更新料のお支払いが必要です。
  • 保管期限:更新手続きなく期限を大幅に超過した場合や生殖年齢を超えた場合、夫婦関係が終了した場合など、倫理的な規定に基づき保管終了となる場合があります。

胚培養士メッセージ

胚凍結は、胚の成長をいったん止め、将来の妊娠につなぐための大切な工程です。

当院では、胚の状態を慎重に見極めたうえで、適切なタイミングを判断し、ガラス化法(急速凍結法)による胚凍結を行っています。

凍結後の胚は、監視システムを備えた専用の保存タンクで管理しています。液体窒素量や温度に異常が生じた場合には、胚培養士へ即座に通知が届く体制を整えており、昼夜を問わず状況を把握し、迅速に対応できる仕組みです。

胚凍結は、「凍結すること」だけでなく、安全に保存し続けることまで含めた技術です。私たち胚培養士は、大切な胚を将来へ確実につなぐため、責任をもって凍結・保存管理を行っています。

上條 慎太郎
ORINAS ART CLINIC 院長

未来の家族のための「タイムカプセル」です。

「凍結」と聞くと、卵が悪くなってしまわないか心配される方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、通常の家庭での冷凍とは異なり、現在のガラス化法という技術は非常に優れており、10年前に凍結した受精卵から元気な赤ちゃんが産まれたという報告も世界中にたくさんあります。 

凍結保存は、今の治療のチャンスを増やすだけでなく、数年後の「2人目、3人目」の夢を叶えるためのタイムカプセルでもあります。 お預かりした大切な命の種は、厳重な管理体制(QRICシステム等)のもと、私たちが責任を持って守り続けます。

ORINAS ART CLINIC 院長 

上條 慎太郎