体外受精では、1回の採卵で複数の卵子が得られ、その結果、複数の胚が発育することがあります。しかし、子宮へ戻す胚の数は、原則として1個ずつ移植することが推奨されています。この方針は、多胎妊娠(双子や三つ子)を防ぎ、母体と赤ちゃん双方のリスクを低減することを目的としています。
このような治療の考え方の中で重要な役割を果たしているのが、胚の凍結保存です。移植に使用しなかった胚を適切に凍結保存しておくことで、次回以降の治療では、再び採卵を行うことなく、胚移植から治療を再開することが可能になります。
また、採卵を行った周期は、卵巣やホルモン環境が一時的に変化していることがあります。そのような場合には、その周期での移植を行わず、すべての胚を凍結し、身体の状態が整った別の周期に移植を行う(全胚凍結)ことで妊娠率向上を図るという選択が取られることもあります。
当院の凍結方法:ガラス化法(Vitrification) かつての凍結方法は時間をかけてゆっくり冷やすものでしたが、現在は「ガラス化法(Vitrification法)」という急速凍結技術が主流です。

凍結した胚の保存期間は、原則として1年間です。 1年ごとに来院していただいて更新手続き(延長)を行うことで、期間を延長することができます。
胚凍結は、胚の成長をいったん止め、将来の妊娠につなぐための大切な工程です。
当院では、胚の状態を慎重に見極めたうえで、適切なタイミングを判断し、ガラス化法(急速凍結法)による胚凍結を行っています。
凍結後の胚は、監視システムを備えた専用の保存タンクで管理しています。液体窒素量や温度に異常が生じた場合には、胚培養士へ即座に通知が届く体制を整えており、昼夜を問わず状況を把握し、迅速に対応できる仕組みです。
胚凍結は、「凍結すること」だけでなく、安全に保存し続けることまで含めた技術です。私たち胚培養士は、大切な胚を将来へ確実につなぐため、責任をもって凍結・保存管理を行っています。