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最終更新日:
2026-07-27

妊娠初期にお腹の痛みを感じると、「流産の兆候ではないか」「赤ちゃんに影響はないだろうか」と不安になる方もいるのではないでしょうか。

妊娠初期の腹痛は比較的よくみられる症状であり、子宮や周囲の組織の変化、ホルモンバランスの変化などが原因となることがあります。一方で、強い痛みや出血、発熱などを伴う場合は、流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)、妊娠とは関係のない病気が原因となっている可能性もあるため注意が必要です。

この記事では、妊娠初期の腹痛で注意が必要な症状、お腹が痛くなる主な原因、自宅でできる対処法や受診の目安についてわかりやすく解説します。

妊娠初期の腹痛は珍しくない

妊娠初期の腹痛は比較的よくみられる症状であり、腹痛が必ず妊娠の異常に繋がるわけではありません。妊娠すると子宮や周囲の組織の変化、ホルモンバランスの変化などが起こるため、正常な経過の中でも腹痛などの症状が現れることがあります。

実際に妊娠初期の症状を調査した海外の研究の例を挙げると、妊娠した女性の85%が下腹部の痛み・ひきつれを経験しており、吐き気(48%)や嘔吐(46%)よりも頻度が高かったという結果が報告されています1)。腹痛は妊娠初期には珍しくない、多くの方が経験する症状と考えられます。

ただし、強い腹痛や痛みが持続する場合、大量の出血を伴う場合などは、流産や異所性妊娠などが原因となっている可能性もあります。受診が必要な可能性も考慮しつつ、まずは自分の状態をしっかり把握することが重要です。

妊娠初期に注意が必要な腹痛

ここでは妊娠初期の腹痛のなかでも注意が必要なケースを紹介します。

出血を伴う

妊娠初期の出血は、切迫流産や子宮外妊娠(異所性妊娠)の兆候である可能性もあるため注意が必要です。月経2日目のような多量の出血が見られた場合は早めに受診することが推奨されます。

ただし、妊娠初期における出血自体は必ずしも珍しいものではありません。ある研究では15〜25%の人は妊娠初期の出血を経験すると報告されています2)。出血があったら必ず妊娠に問題があるわけではありません。

腹痛に出血が伴う場合は出血量にも注意し、量が多い場合や症状が長く続く場合は受診を検討するようにしましょう。

繰り返す・持続する・強まっていく

下腹部の痛みが繰り返し起こる場合や、長く続く場合、しだいに強まっていく場合は注意が必要です。子宮収縮が起きている可能性があり、切迫流産が疑われることもあります。また、腸閉塞や虫垂炎、尿路結石など、妊娠とは関係のない病気が原因となっていることもあります。

次のような強い痛みがみられる場合は、我慢せず医療機関を受診しましょう。

  • 痛みが波のように繰り返し起こる
  • 痛みがしだいに強まっていく
  • 冷や汗が出るほど痛みが激しい

激しい痛みが続く場合、子宮周りの臓器に強い炎症が起きている可能性もあります。炎症と痛みが子宮収縮を誘発することもあるため、早めの受診を検討しましょう。

発熱や下痢、嘔吐を伴う

腹痛とともに発熱や下痢、嘔吐を伴う場合は、感染症の可能性があります。妊娠中は免疫が低下してウイルスや細菌に感染しやすい状態であり、胃腸炎になる方も珍しくありません。

発熱や激しい下痢が続くと、脱水症状も懸念されます。点滴治療や入院治療が必要なケースもあるため、水分や食事が摂りにくい方は早めに医療機関の受診も検討しましょう。

胃腸炎だけでなく、膀胱炎などの尿路感染にも注意が必要です。妊娠中は尿の流れが滞りやすく、妊娠していないときに比べて膀胱炎になりやすいとされています。排尿時に痛みがある、トイレが近い、出にくいなどの症状がある場合は、尿路感染を疑い受診を検討してください。

妊娠初期の腹痛の原因

妊娠初期におけるお腹の痛みの原因は様々ですが、代表的な例として以下のようなものが挙げられます。

・子宮が大きくなることによる影響

・ホルモンの影響による便秘、胃の不調

・子宮の一時的な収縮

子宮が大きくなることによる影響

子宮が大きくなる過程で、子宮を支えている円靭帯(えんじんたい)が引き伸ばされ、お腹の痛みを感じることがあります。

円靭帯は、子宮の両側から足の付け根に向かって伸びている組織のことです。お腹の中で子宮を支えるロープのような靭帯であり、引っ張られると鋭い痛みにつながることがあります。左右片側の下腹部が痛くなったり、足の付け根につっぱり感が現れたりするケースもあります。

多くの場合一時的なものであり、安静にすると自然に治まるようであれば基本的には心配いりません。

ホルモンの影響による便秘、胃の不調

妊娠初期のホルモンバランスの変化も、お腹の痛みを引き起こす原因のひとつです。妊娠するとプロゲステロンの分泌が増え、胃腸の働きが低下しやすくなるためです。

プロゲステロンは、筋肉を緩める働きがあります。子宮の収縮を抑えるための大切な作用ですが、同時に胃腸の筋肉も緩んでしまい、便が出にくくなります。

また、食道と胃のつなぎ目にある筋肉(下部食道括約筋)が緩むと胃酸が逆流しやすくなり、みぞおち付近に胸やけのような不快感が起こることがあります。特に食後2〜3時間は胃酸が逆流しやすいため、症状が強まるケースもあります。

子宮の一時的な収縮

子宮の筋肉が一時的に収縮し、痛みや張りとして感じられることがあります。

通常、子宮はプロゲステロンの働きにより収縮しにくく保たれていますが、活発に動いたときなどには、子宮筋が収縮と弛緩を繰り返すことがあります。

軽い生理痛のような痛みや、お腹が締め付けられる感覚として表現されることがあり、強い痛みよりも不快感として感じやすい症状です。

一時的な子宮収縮は妊娠中にみられる生理的な現象であり、強まったり長く続いたりしなければ過度に心配する必要はありません。

妊娠初期にお腹が痛いときの対処法

お腹に痛みを感じたら、まずは安静にしましょう。円靭帯が引き伸ばされて起こる痛みや、一時的に子宮が収縮して起こる痛みであれば安静にすると自然に治まっていきます。

便秘や胃の不快感といった消化器症状によって起こっている場合は、飲食のとり方や姿勢を工夫することが症状緩和に役立ちます。具体的な対処法の例を以下で解説します。

安静にして過ごす

鋭い痛みや引っ張られるような感覚が起こっている場合、円靭帯の伸展による痛みの可能性があります。通常、安静にすることで自然と和らいでいくため、楽な体勢で休みましょう。

また、円靭帯の痛みは急な動作で悪化しやすいため、以下の点を意識して過ごしてください。

  • ゆっくりと姿勢を変える
  • 歩くときもゆっくりを心がける
  • 咳やくしゃみをするときは、両手でお腹を支える

痛みが落ち着いているときに、医師にも相談の上、マタニティヨガやストレッチを取り入れるのもよいでしょう。靭帯をやさしく伸ばすことで、引っ張られるような感覚がやわらぐ場合があります。

痛みの強さや続き方に注意しながら過ごし、我慢できないほど痛みが強まるようであれば医療機関を受診してください。

子宮収縮の原因を取り除く

子宮の収縮によって痛みが生じている場合は、その原因を取り除くことが重要です。

動いていた場合は横になり、長時間座っていた場合は軽く歩いてみましょう。痛みが落ち着くまでは、長時間立ち続けたり重い物を持ったりしないことも大切です。

また、緊張をほぐすことで和らぐケースもあります。温かいお風呂に入ったり、本を読んだりと、ご自身がリラックスできる方法を取り入れてみてください。

安静にすると次第に落ち着いていきますが、休んでいても痛みが強まり我慢できない場合は医療機関に相談してください。

便秘を防ぐ

便秘にならないように、水分補給を意識しましょう。一度にたくさん摂るよりも、少量ずつこまめに摂るのが効果的です。

できる範囲で食事内容も工夫してみてください。海藻類やこんにゃくなどは食物繊維を多く含み、便通改善に役立ちます。

ただし、特定の食品に偏ることなくバランスのよい食事が大切です。妊娠初期だけでなく、中期や後期も便秘になりやすいため、妊娠期間全体を通して主食・主菜・副菜のそろった献立を心がけましょう。

なお、いきむとお腹に力が入ってしまうため、あまりにも便が出にくい場合は医師に相談してください。市販の便秘薬のなかには子宮収縮を誘発する可能性のある成分もあるため、自己判断で服用しないようにしましょう。

胃腸に負担をかけない

みぞおち付近が痛くなる場合、胃酸の逆流が影響していることも考えられます。逆流を防ぐために、特に食後は以下2つを意識して過ごしてください。

  • すぐに横にならない
  • 猫背や前かがみにならない

食べた後はできるだけ上体を起こして過ごしましょう。姿勢を正すことが難しければ、椅子の背もたれに軽く寄りかかって休む方法もあります。

夜寝るときには、クッションや枕を用いて上半身を少し高くするとよいでしょう。左側を下にして寝ると、胃酸の逆流を防ぎやすくなります。

つわりで食事がとりにくい方は、少量ずつ何回かにわけて食べてみてください。胃がからっぽの状態が続くと、不快感や痛みが起こりやすくなるため、できるだけ何か口にするとよいでしょう。プリンやゼリーなど、好きなもの・食べやすいもので構いません。

水分がまったく摂れない、3日以上何も食べられないといった状態は脱水が懸念されるため、この場合は我慢せず医師に相談しましょう。

腹痛時の受診に備えて準備しておくこと

いざというときに備えて、医療機関の緊急連絡先や地域の救急相談窓口を確認しておきましょう。夜間や休日に強い痛みが起こる可能性もあります。

また、あらかじめ以下のポイントを整理しておくと、緊急で受診したときに痛みの状況をより正確に伝えられます。

  • 腹痛が始まったタイミング
  • 痛い場所
  • 痛み方(何もしていなくても痛い、お腹を押すと痛いなど)
  • 続き方(ずっと続いている、波があるなど)
  • 腹痛以外の症状

不妊治療を受けている方で使用中の薬がある場合は、メモや写真で記録しておきましょう。緊急で受診する際に、正確な情報を伝えられるよう準備しておくことが大切です。

すでに母子手帳を交付されている方は、妊娠経過を伝えるために受診時に持参してください。

妊娠初期にお腹が痛いときによくある質問

妊娠初期の腹痛について、よく寄せられる質問に回答します。

Q:妊娠4週や5週の下腹部痛は流産や異常のサインでしょうか?

A:妊娠4〜5週に痛みや張りを感じても、すぐに異常が疑われるわけではありません。妊娠のごく初期でも、妊娠に伴う体の変化によりチクチクとした痛みや違和感が生じることがあります。不妊治療中の方は、胚移植の処置や薬の影響も考えられます。

なお、超音波で胎嚢(赤ちゃんの袋)が確認できるのは妊娠5週頃であり、妊娠4週では正常な妊娠かどうかをまだ正確に見極められない可能性もあります。

異常ではないかと不安が強い場合、まずは医療機関へ電話で相談し、受診の必要性とタイミングを確認しましょう。

Q:お腹の痛みは右側または左側だけに出ることもありますか?

A:腹痛が右側もしくは左側だけに痛みが出ることもあります。

円靭帯は、子宮の左右から足の付け根に向かって伸びているため、片側どちらかだけにつっぱるような痛みが出やすいのが特徴です。便秘している方は、左下腹部を中心に痛みを感じることもあります。

ただし、虫垂炎や子宮外妊娠でも片側だけに痛みが出る場合があるため、位置だけで受診するべきかの判断はしないことが重要です。

我慢できないほど痛い・出血や発熱、吐き気などを伴うといった場合は、医療機関を受診してください。

Q:腹痛で仕事がつらい場合はどうすればよいですか?

A:腹痛が強く仕事がつらい場合、我慢せず医師に相談しましょう。状態によっては、勤務時間の短縮や仕事内容の調整が必要と判断されることもあります。

医師から働き方に関する指導を受けた場合は、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」を記入してもらう選択肢もあります3)

母健連絡カードは、医師から受けた指導内容を事業主へ伝えるためのツールであり、カードを通じて職場に配慮を求めやすくなります。特に立ち仕事や長時間労働の方は、無理をせず体調を優先しましょう。

院長からのメッセージ

妊娠初期にお腹が痛くなると不安になってしまいますよね。多くの方が同じ経験をされています。

妊娠初期に起こるお腹の痛みには、大きく2種類あります。子宮が大きくなる過程で円靭帯が引き伸ばされる痛み、ホルモンの影響で胃腸の動きが変わることで起こる不快感——これらは妊娠に伴う生理的な変化であり、安静にしていると落ち着いていくことが多いです。円靭帯の痛みは、左右どちらか片側の下腹部に鋭くチクッとした感じとして現れやすく、急に立ち上がったり動いたりすると悪化することがあります。胃腸由来の不快感は、便秘や胸やけのような症状として現れることが多く、食後に特に気になる方もいます。どちらも不快ではありますが、妊娠の異常を示すサインではありません。

一方で、痛みが強まっていく、止まらない、多量の出血を伴う、発熱や嘔吐などの症状を伴うといった場合は、流産や子宮外妊娠、感染症などを否定するために早めの確認が必要です。特に出血と腹痛が重なるときは、次の受診を待たずに受診できる医療機関を探してください。症状が強い場合は救急外来も選択肢のひとつです。

不妊治療中の方は、移植後の薬の影響で生理痛のような感覚が出やすいです。それも含めて、気になることは次の診察まで待たずに話してください。

「何もできない、ただ待つしかない」という時間はとても不安なものです。その気持ちに寄り添いながら、一緒に経過を確認していきたいと思っています。

参考文献

1)Sapra KJ, Buck Louis GM, Sundaram R, Joseph KS, Bates LM, Galea S, Ananth CV. Signs and symptoms associated with early pregnancy loss: findings from a population-based preconception cohort. Hum Reprod. 2016;31(4):887-896.
https://academic.oup.com/humrep/article/31/4/887/2380064

2)Snell BJ. Assessment and management of bleeding in the first trimester of pregnancy. J Midwifery Womens Health. 2009 Nov-Dec;54(6):483-91.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1016/j.jmwh.2009.08.007

3)厚生労働省.母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)について.働く女性の心とからだの応援サイト
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/renraku_card/