精液の状態は射精の頻度や日々の生活習慣によって日々変化するものであり、精液が水っぽく見えても、それだけで不妊や病気と判断することはできません。
精液の見た目は、精子の数そのものではなく、前立腺や精嚢から分泌される液体の割合や射精の間隔、体調などの影響を受けて変化します。そのため、外観だけで精子の数や質を正確に判断することはできません。
ただし、水のように透明な状態が続く場合や、妊活を続けても妊娠に至らない場合は、精液検査で客観的に状態を確認することが大切です。
この記事では、精液が水っぽく見える背景として考えられる要因や妊娠との関係、精液の状態を正確に調べる方法、受診を検討する目安について解説します。
精液が水っぽくても不妊とは限らない
精液が水っぽい状態であっても、必ずしも妊活に悪影響があるわけではありません。
精子が陰嚢内の精巣で作られるのに対して、精液は主に前立腺や精嚢からの分泌液で構成されており、色や量はこれらの状態を示すものです。つまり、精液の見た目だけでは精子の状態は判断できません。実際、見た目が乳白色でも精子数が少ない場合がある一方、やや透明に近く見えても基準値を満たしているケースもあります。
精子の数や運動率などを正確に知るためには、医療機関で行う精液検査が必要です。
妊活を検討中で精液の状態が気になる方や、妊活をはじめて1年経っても妊娠しない場合は、医療機関での検査を検討しましょう1)。専門家の診断を受けることで、現在の状態を正しく把握でき、必要に応じた適切な対応が可能になります。
正常な精液の見た目と水っぽく見える仕組み
精液の色や見た目を決めているのは、精子そのものではありません。精液全体の約95%以上は前立腺や精嚢からの分泌液であり、精子はその一部を占めるにすぎません。そのため、見た目だけで精子の数や質を判断することはできません。
一般的に、正常な精液はクリーム色から灰白色の乳白色をしています。ただし、個人差があり、やや透明に近く見えることもあります。
射精直後の精液は、いったんゼリー状に固まる性質があります。これは精液に含まれる成分の働きによるもので、時間が経つと次第にサラサラとした液体状へと変化します。この変化を「液化」と呼びます。
多くの場合、室温で15〜30分以内に液状になりますが、水のように完全にさらさらになるわけではなく、ある程度の粘り気は保たれます。射精直後の固まりや時間経過による液化は、生理的にみられる正常な変化のひとつです。
精液が水っぽく見える主な原因
精液が水っぽく見える理由は一つではなく、明確に特定できるとは限りません。精液の外観は分泌液の量や射精間隔、体調などの影響を受けるため、見た目だけで原因を断定することはできません。
ここでは、水っぽく見える背景として関連が指摘されている主な要因を紹介します。
頻繁に射精している
射精の間隔が短いと、精子をつくったり蓄えたりする時間が不足するため、精液の見た目が水っぽくなる可能性があります。
海外の研究では、24時間ごとに射精を繰り返すと、禁欲期間が長い場合と比べて、総精子数が減少することが確認されています。
射精頻度が高いと1回あたりの精液量や濃度が低下する傾向がある一方で、精子のDNA損傷率が低い状態が保たれる可能性を示唆する報告もあります。数は少なくなるが質は良くなるということですね。ただし、これらは条件によって結果はまちまちなため、一概にどちらがよいとは結論付けられません。
不規則な生活習慣や喫煙
生活習慣も精子の状態に関連すると考えられています。
バランスのよい食事をとっている男性のほうが精子濃度や総精子数が良好な傾向があることが報告されています。また、睡眠時間が短い場合や喫煙習慣がある場合、精子数の低下との関連が示唆されています。
ただし、これらは因果関係が確定しているわけではなく、生活習慣のみで精液の見た目が変化すると断定することはできません。
水っぽい精液は無精子症の可能性がある?
無精子症(精液中に精子が存在しない状態)や高度乏精子症(精子数が極端に少ない状態)の場合、精液が透明に近く見えることがあります。
たとえば閉塞性無精子症では、精子を運ぶ通路が塞がれているため、精液中に精子が含まれません。その結果、精子などの細胞成分が少なくなり、白濁が弱く見える場合があります。
ただし、見た目のみで無精子症や乏精子症を判断することはできません。外観が透明に近くても精子が存在する場合もあり、正確な診断には精液検査が必要です。
無精子症について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
精液検査でわかること:精液の数や動き
精液検査は、男性不妊の原因を調べるための基本的な検査です。精子の数(濃度)、総精子数、運動率、形態(正常形態率)などを調べることができます。
WHOマニュアル第6版(2021年)に基づく精液検査の主な下限基準値の目安は、精子濃度1,600万/mL以上、総精子数3,900万以上、総運動率42%以上などです。ただし、これらは「妊娠した男性の下位5%の値」であり、基準値を下回っても妊娠に至るケースがある一方、基準値を超えていても妊娠しにくい場合があります。あくまで目安として、医師と総合的に判断することが大切です。
また、精子は体調やストレスに左右されやすく、検査ごとに数値が変動する傾向があります。1回の結果だけで判断するのではなく、複数回にわたって検査が行われるケースも珍しくありません。
精液検査は、泌尿器科や不妊治療を専門とするクリニックで受けられます。男性の生殖機能を専門とする泌尿器科では、生殖医療の専門医が所属する施設もあり、精液検査に加えて、異常所見が認められた際の詳しい検査にも対応可能な場合があります。
なお、すべての医療機関が精液検査に対応しているわけではないため、受診前に確認しておくと安心です。
男性不妊の検査について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
どのくらいの期間水っぽい状態が続いたら受診すべき?
精液が水っぽいと感じる場合、まずは射精の間隔を見直してみてください。禁欲期間が極端に短いと、一時的に精液の量や濃度が低下することがあります。
海外の研究では、禁欲期間が0〜1日程度だと精液量や濃度が少なくなる一方、2〜7日程度の間隔をあけると増える傾向があると報告されています。
禁欲期間を2〜3日以上設けても水っぽい状態が続く場合や、明らかな色の変化(赤色・黄色・緑色など)、痛みや違和感をともなう場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
なお、避妊せずに性交渉を続けても妊娠しない場合は、女性パートナーが35歳未満なら12か月、35歳以上なら6か月を目安に、検査や治療の開始を検討するとよいでしょう。
精液の見た目だけで状態を判断することはできません。不安がある場合は、早めに検査を受けて客観的な情報を得ることが安心につながります。
精液の見た目や検査に関するよくある質問
ここでは精液の見た目や検査に関するよくある質問について回答します。
水っぽい以外で精液の問題を示唆する見た目の異常はある?
精液の問題を示すサインとして、精液の変色があります。
ピンク色や赤色に変色したときは、血精液症(けっせいえきしょう)の可能性があります。これは精液に血液が混ざった状態で、多くは一時的なものです。ただし、出血が続く場合や痛みを伴う場合は早めの受診が必要です。
黄色や緑色に変化している場合は、前立腺や精巣の炎症などが関係していることがあります。感染や炎症があると、精液中の白血球が増加することがあり、精子の運動率低下との関連が指摘されています。
ただし、色の変化のみで感染症と断定することはできません。
いずれの場合も、普段と明らかに異なる状態が続く場合や、痛み・発熱・違和感などの症状がある場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
精液検査は自宅でもできる?
市販の簡易検査キットを使用すれば、自宅で精子濃度などの一部項目を確認できる製品もあります。
ただし、医療機関で行う精液検査では、精子濃度に加えて運動率や形態、総精子数など複数の指標を総合的に評価します。自宅検査では確認できる項目が限られており、医師による診断や追加検査は受けられません。
そのため、自宅検査は受診を検討するための参考情報として活用し、医療機関での検査を検討することが望ましいといえます。
院長からのメッセージ
「精液が水っぽい気がする」と気になりながらも、なかなか人に相談しにくい——そんな思いを抱えてこの記事にたどり着いた方も多いかもしれません。
まずお伝えしたいのは、精液の見た目だけで不妊かどうかを判断することは、医学的にできない、ということです。精液の色や透明感は、射精の間隔、体調、前立腺や精嚢の分泌液の状態などによって日々変化します。白く濁っていても精子が少ない場合もあれば、やや透明に見えても精子の数・運動率ともに基準を満たしている場合もあります。見た目は参考にならないのです。
精子の数や運動率は、精液検査を受けなければわかりません。検査そのものへのハードルを感じる方もいらっしゃると思いますが、泌尿器科や不妊治療専門クリニックで行う精液検査は、採精して提出するだけのシンプルな検査です。
妊活を始めて一年ほど経っても妊娠に至らない場合には、ぜひパートナーとともに検査を検討してください。女性パートナーの年齢が35歳以上の場合は、半年くらいでの受診をお勧めします。
気になることがあれば、一人で抱え込まず、まず検査を受けてみることが、次のステップへの一番の近道です。
参考文献
2)WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th edition. WHO, 2021.
3)Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Definitions of infertility and recurrent pregnancy loss. Fertil Steril. 2023.


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