精液検査を勧められたとき、「どこで採取すればいい」「どうやって提出するの」と疑問に感じる方は少なくありません。精液検査では、院内で採精した精子を提出する以外に、自宅で採取した精液をクリニックへ持ち込んで提出することもできます。
ただし、持ち込みの際には、採取から提出までの時間や温度管理など、検査精度に影響するポイントがいくつかあります。
この記事では、精液の採取方法や持参時の注意点、検査を受けられる場所についてわかりやすく解説します。
精液検査では自宅で採取した精液を持ち込みできる?
精液検査では、自宅で採取した精液をクリニックへ持ち込んで検査することができます。ただし、施設によっては院内採取のみに対応しているところもあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
自宅採取・持ち込み検査に対応している施設のなかには、女性パートナーが精液を代わりに持参できるところもあります。男性本人が来院しにくい場合は、そのような施設を探してみるのも選択肢のひとつです。
精液検査における精液の採取方法
精液検査の採取は、マスターベーションで行います。採取の際は、精液が全量容器に入るように注意しましょう。射精の最初に出る液体には精子が多く含まれる傾向があるため、出始めを取り逃すと精子濃度などの数値に大きな誤差が生じる可能性があります。コンドームの中には検査結果に影響する成分が含まれている場合があるため、コンドームの使用は避けましょう。
採精の時期については、WHOの精液検査に関するマニュアルでは、検査前に2〜7日間の禁欲期間を設けることが推奨されています1)。禁欲期間が短すぎると精液量や精子濃度が低下し、長すぎると精子へのダメージが増えるリスクがあります。
禁欲期間を守れなかった場合の対応
禁欲期間を守れなかった場合は、そのまま提出するのではなく、受診先に連絡して対応を確認しましょう。場合によっては、予約の取り直しが必要になることもあります。
検査日が決まったら、禁欲開始日をカレンダーやスマートフォンのリマインダーに記録しておくと管理しやすくなります。
精液検査のために精液を持ち込むときの注意点
自宅で採取した精液を医療機関に持参する際は、採取から提出までの時間と運搬中の温度管理に気をつける必要があります。正しい方法で管理・運搬しないと、検査結果に影響が出る可能性があるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
採取から提出までの時間
採取から提出までは、60分以内におこなうことが望ましいです2)。
自宅での採精を検討している場合は、渋滞や悪天候などの不測の事態を考慮し、余裕のあるスケジュールを立てましょう。精子の運動性は採取後から時間とともに低下するため、できるだけ速やかに届けられる医療機関を選ぶことが大切です。
移動時間の確保が難しい場合は、院内採精も選択肢のひとつです。自宅・院内のどちらが自分に合っているか、医療スタッフに相談しながら無理のない方法を選びましょう。
ORINAS ART CLINICでは原則持ち込みでの精子提出としております。採精後はできるだけ早く、長くとも2時間以内に持参いただくことをおすすめしています。
持ち運ぶときの温度
精液を自宅で採取して持参する場合の適切な温度の目安は20〜36度程度(室温〜体温程度)です2)。この範囲を外れると精子の運動性が低下する可能性があります。
冬場は採精カップをタオルで包み保温バッグに入れるか、コートの内ポケットに入れるなどで体温で保温しましょう。カイロなど高温になるものは精子が死滅するリスクがあるため、使用は避けてください。夏場は、37度を超える環境や直射日光にさらさないよう注意が必要です。
精液検査を受けられる場所
精液検査は、泌尿器科や産婦人科、不妊治療クリニックで受けられます。
泌尿器科は、男性不妊の原因を詳しく調べたい方に向いています。精液検査にくわえ、ホルモン検査や精巣の状態確認など、原因を掘り下げる検査にも対応できる施設があります。ただし泌尿器科の中でも、精液検査を行っていない場合や、不妊治療は専門外という施設もあるため、受診前に確認しておくと安心です。
パートナーと一緒に妊活を進めたい場合は、産婦人科や不妊治療クリニックが適しています。男性は精液検査や内分泌検査、女性は超音波検査や卵管疎通性検査など、双方の検査を同じ施設でまとめて受けられます。両方の結果を総合的に判断したうえで治療方針を立ててもらえるため、二人一緒に妊活を進めやすい環境が整っています。
精液検査を受けられる場所について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
時間や温度の管理に不安がある場合は、院内採精も選択肢のひとつです。どちらが自分の状況に合っているかは、クリニックに相談しながら決めるとよいでしょう。
精液検査に関するよくある質問
ここでは精液検査に関するよくある質問について回答します。
精液を持ち込む際の容器は自分で用意する?
精液検査に使用する容器は、多くの医療機関では、衛生面の観点から滅菌済みの専用容器が施設側から提供されます。受診予約の際に容器の受け取り方法を確認しておくとよいでしょう。
容器の準備方法は医療機関によって異なるため、受診前に事前確認しておくと当日あわてずに済むでしょう。
院内採精と自宅採精では精液検査の結果は変わる?
一般的に、院内採精のほうがより正確な結果を得やすいとされています。採精直後に精子の運動性が高い状態で測定できるからです。
ただし、自宅採精でも、精液を20〜36度に保ち、採精から60分以内にクリニックへ持参すると院内採精と同等に近い検査精度が期待できます2)。また、自動車など温度変化の少ない移動手段であれば、精子への影響を抑えられると考えられています。
精液検査の結果はいつわかる?
精液を採取したあとは各種処理が必要なため、結果が出るまでに30分〜2時間程度かかります。結果が判明したあとは、改めて医師から説明を受ける流れになります。当日中に結果を受け取れる施設もあれば、翌日以降に再受診が必要な場合もあるため、受診前に確認しておくとよいでしょう。
当日対応の施設では、指定された時間まで院内で待つか、外出が許可されている場合は一時的に外出することもできます。
精液をこぼしてしまったらどうしたらよい?
自宅での採精中に精液をこぼしてしまった場合は、持参先の医療機関へ相談してください。
射精の初期に排出される精液には精子が多く含まれる傾向があるため、少量でもこぼれてしまうと、精子の数や濃度などの検査結果に影響が出る可能性があります。
施設によっては採精し直しとなる場合もあるので、自己判断せず、まずは受診先に連絡して確認するとよいでしょう。
受診前に確認するべきことはある?
事前に以下のような項目を確認しておくことで、当日あわてずに検査に臨めます。不明な点は、予約時に直接クリニックへ問い合わせるとよいでしょう。
- 持ち込みに対応しているか
- 容器は施設から提供されるか
- 施設が指定する禁欲期間の日数
- 検査結果は当日受け取れるか
院長からのメッセージ
精液検査を「持ち込める」ことは知っていても、「どうやって」「どんな状態で」という実務的な部分が気になる方は多いと思います。本記事では、そのような現実的な疑問を順を追って整理しました。
精液検査の結果は採取条件によって大きく変動します。禁欲期間・採取時間・温度管理のすべてが数値に影響します。「1回の結果が悪かった」からといって落ち込む必要はありません。標準的には、条件を揃えたうえで複数回の検査を行い、総合的に評価することが推奨されています。
また、院内採精と自宅採精のどちらが自分に合っているかは、クリニックまでの移動時間・プライバシーへの配慮・精神的なリラックス感など、人によって大きく異なります。「どちらが正解」という話ではなく、採取条件をきちんと守れる環境で採取することが最も重要です。
精液検査はパートナーとともに妊活の状況を把握するための出発点です。結果に一喜一憂するよりも、その数値を手がかりに次のステップを一緒に考えることが大切です。気になることがあれば、遠慮なく担当医に相談してください。
参考文献
1)WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen Sixth Edition
2)男性不妊症診療ガイドライン







