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最終更新日:
2026-04-03

不妊症という言葉を耳にしたことはあっても、具体的にどのような状態を指すのか、どのタイミングで受診すればよいのかわからないという方は少なくありません。

本記事では不妊症の定義や原因、受診の目安について解説します。

不妊症とは

不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が1年間避妊をせずに性交しても妊娠に至らない状態をさします1)。「1年間」という区切りは、健康な男女のカップルが妊活を続けた場合に約85%が妊娠するとされる期間です2)

ただし、明らかな不妊の原因がある場合は、不妊の期間にかかわらず不妊症と判断されることがあります。とくに年齢が高い夫婦の場合は、妊娠できない期間が1年未満であっても早めに受診することが推奨されています。

「不妊症かも?」と思ったときの受診のタイミング

「妊娠しにくいかもしれない」と感じた場合や、妊娠を希望していても妊娠に至らない場合には、不妊検査を実施している婦人科や産婦人科、不妊治療専門のクリニックなどを受診し、検査や治療について相談してみましょう。検査を受けることは、自分やパートナーの体の状態を知る大切な機会になります。

年齢によっては、1年よりも早く受診した方がよい場合もあります。米国生殖医学会(ASRM)のガイドラインでは、次のような受診の目安が示されています3)

  • 35歳未満:1年間妊娠しない場合
  • 35歳以上:6か月妊娠しない場合
  • 40歳以上:妊娠を希望した時点で早めに受診2)

また、月経不順や無月経、子宮内膜症がある、骨盤腹膜炎にかかったことがある、などに該当する方は不妊のリスクが高まるといわれています。このような場合は、一般的な目安とされる1年間を待たずに、早めに検査や治療を受けましょう。

不妊症の原因

不妊症にはさまざまな原因があります。WHO(世界保健機関)の調査では、不妊の原因の割合は次のとおりです。

  • 女性側のみに原因がある:41%
  • 男性側のみに原因がある:24%
  • 男女両方に原因がある:24%
  • 原因不明:11%

このように、不妊症は女性だけの問題ではなく、ほぼ半分のケース(48%=24%+24%)で男性側の問題も関与しています。不妊症の検査は女性だけでなく、男性側も合わせて受けることが大切です。

女性側の不妊の原因

女性不妊の原因は、主に以下が挙げられます。

  • 排卵因子
  • 卵管因子
  • 子宮因子
  • 頸管因子

排卵因子は、卵子が正常に育たない、または卵巣からうまく排出されない「排卵障害」がおきている状態が該当します。女性不妊の約25~30%を占めるといわれています。

卵管因子は、卵管が詰まったり狭くなったりして妊娠が成立しにくくなるものです。卵管因子も女性不妊の約25〜35%を占めるとされています。

子宮因子は、子宮の形態や子宮内環境に問題がある場合が該当します。受精卵が着床しにくくなり、結果として不妊につながります。

頸管因子は、子宮頸管の異常によりおりものが十分に分泌されなかったり、子宮頸管が塞がったり狭くなったりする状態があります。精子が子宮内へ進みにくくなり不妊につながります。

女性側の不妊の原因の詳細や女性不妊になりやすい人の特徴については、以下の記事もご覧ください。

男性側の不妊の原因

男性不妊の原因は、主に以下が挙げられます。

  • 造精機能障害
  • 性機能障害
  • 精路通過障害

造精機能障害は、精巣で精子をつくる力が弱まり、精子の数や動き、形などが基準値より下回ってしまう状態で妊娠しにくくなります。男性不妊の82.4%を占めるとされています。加齢によっても造精機能は低下しますが、個人差が大きく、高齢であっても精液所見に問題のないケースも少なくありません。

性機能障害は、勃起障害(勃起できない・維持できない)や、射精障害(射精できない)により、性交がうまく行えず不妊につながります。男性不妊の13.5%を占めるという結果があります。

精路通過障害は、精巣でつくられた精子を体外へ運ぶための経路である「精路」になんらかの障害があるために、精子が体の外へ出せない状態です。男性不妊の3.9%を占めるとされています。

男性側の不妊の原因の詳細や不妊につながる生活習慣については、以下の記事もご覧ください。

不妊症の割合

日本では不妊症の割合が増えていることが知られています。国立社会保障・人口問題研究所が行った2021年の第16回出生動向基本調査では、不妊の検査または治療経験がある夫婦の割合は22.7%であり、4.4組に1組の割合となります4)

また、同じ調査で不妊について心配したことがある夫婦の割合は39.2%となっています。前回の2015年の調査ではそれぞれ18.2%、35.0%という結果であり、近年は不妊症はより身近なものになってきているといえます。

また、実際に不妊治療で生まれる赤ちゃんも増えています。2023年に体外受精や顕微授精などの生殖補助医療で生まれた赤ちゃんは85,048人であり5)、2023年の出生数は727,277人であるため6)、約8.5人に1人が不妊治療の生殖補助医療で生まれた計算となります。

不妊症の検査

女性の検査

女性側の主な検査は、内診・経腟超音波検査、採血によるホルモン検査、子宮卵管造影検査などです。必要に応じて追加される検査の例には、子宮鏡検査、MRI検査、腹腔鏡検査などがあります。

また、不妊の原因を調べると同時に、妊娠に向けた体の状態を確認することも大切です。そのため、これまでかかった病気などを伺う既往歴を含めた問診のほか、血圧測定、血液検査、尿検査、風しん抗体価検査などが行われることがあります。

男性の検査

男性側の検査の基本は精液検査です。マスターベーションで精子を採取し、精液量、精子濃度、精子の運動率、運動の質、形態などを調べます。必要に応じて、視診・触診、超音波検査や血液検査などが行われるケースもあります。

男性不妊の検査については、以下の記事をご覧ください。

不妊治療の種類

不妊症の治療は、原因に応じて適切な方法が選択されます。原因となる疾患がある場合は、その病気に対する内科的治療や外科的治療が行われます。一方、原因が特定できない場合には、妊娠の成立を目指した治療が進められます。

不妊治療は大きく「一般不妊治療」と「生殖補助医療(ART)」のふたつに分類されます。

  • 一般不妊治療:タイミング法、人工授精
  • 生殖補助医療:体外受精、顕微授精(ICSI)など

不妊治療のステップアップの流れと目安

それぞれの不妊治療にはどういう人にどのような治療を行うべきかという適応が有ります。多くの場合は、タイミング法や人工授精の一般不妊治療から始め、妊娠に至らない場合に体外受精を含む生殖補助医療へとステップアップしていくのが一般的です。

ただし、不妊の原因やこれまでの妊活の経過によっては、最初から生殖補助医療が検討されることもあります。

不妊治療では、通常の内科などの受診と異なり、月経周期に合わせて適切なタイミングで通院する必要があります。そのため、仕事との両立が課題になることも少なくありません。不妊治療と仕事との両立について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

不妊症についてよくある質問

感染症は不妊症の原因になる?

性感染症は、男女ともに不妊の原因になります。たとえば、クラミジア感染症では、卵管や付属器に炎症が起こることで卵管障害につながることが知られています。

性感染症と診断された場合、パートナーも感染している可能性があるといえます。二人で検査や治療を受けることが大切です。

若くても不妊症になることはある?

加齢は不妊の大きな要因ですが、年齢だけが原因とは限りません。年齢が若くても不妊になることもあり、実際に20代で不妊治療を受けている人もいます。

不妊には年齢以外にもさまざまな原因があるため、「不妊かもしれない」と感じた場合は産婦人科で相談しましょう。

不妊治療は保険適用や助成金の対象になる?

不妊治療は2022年4月から保険適用となりました。また、自治体によっては不妊治療に対する助成制度を設けているケースがあります。

不妊治療の保険適用や助成金については、以下の記事をご覧ください。

不妊症と不育症の違いは?

不妊症は妊娠が成立しにくい状態のことを指しますが、不育症は妊娠はするが流産してしまう状態です。(専門的には「流産あるいは死産が2回以上ある状態。生児の有無は問わず、流産または死産が連続していなくてもよい」とされています7)。)

不妊症と不育症の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

院長からのメッセージ

「不妊症かもしれない」と感じたとき、その言葉の響きに少し気持ちが重くなる方は多いと思います。ただ、不妊症というのは特定の病気の名前ではなく、「一定期間妊娠に至っていない状態」を指す言葉です。原因がある場合もあれば、検査をしてもはっきりしない場合もあります。「不妊症と言われた」=「何か深刻な病気がある」ということではありません。まずそこは、少し肩の力を抜いて読んでいただければと思います。

「1年」という定義は「1年経つまで待ちましょう」という意味ではありません。年齢や月経の状態によっては、もっと早く動いた方がいい場合もあります。「気になるなら一度来てみよう」という気持ちで、ためらわずに受診してください。

もうひとつ知っておいてほしいのは、不妊の原因は女性だけにあるわけではないという事実です。WHO(世界保健機関)のデータでは、男性側のみに原因がある場合が約24%、男女両方に原因がある場合も約24%あります。つまり、不妊に関係するカップルの約半数で男性側の要因が関与しています。これは責任の話ではなく、「一緒に調べた方が早く原因に近づける」という話です。精液検査は採血ほど体に負担もなく、結果も数日で出ます。パートナーと一緒に受診していただけると、私たちも全体像を把握しやすくなります。

不妊治療がどれくらい身近なものになっているか、少し数字でお伝えします。2023年のデータでは、生まれた赤ちゃんの約8.5人に1人が体外受精などの生殖補助医療を経ています。左利きの方の割合、AB型の方の割合と、ほぼ同じです。日常の中でごく自然に目にする存在と同じ比率で、不妊治療を経て生まれた命がいる。そう考えると、治療を選ぶことが特別なことではなくなってきていることが実感できるのではないでしょうか。

「受診するほどのことかな」と思ったまま、時間だけが過ぎてしまうのが一番もったいないことです。気になることがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。

参考文献

1)日本産科婦人科学会.不妊症.日本産科婦人科学会ウェブサイト.

2)American Society for Reproductive Medicine. Defining Infertility. ReproductiveFacts.

3)American Society for Reproductive Medicine Practice Committee. Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion (2021).

4)国立社会保障・人口問題研究所 -第16回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書-

5)日本産科婦人科学会. 2023年 体外受精・胚移植等の臨床実施成績

6)厚生労働省. 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況

7)日本不育症学会. 不育症について