女性不妊の原因は年齢や体質だけでなく、排卵や卵管の状態、子宮の病気、生活習慣など、さまざまな要因が関係します。自覚症状がないまま、気づかないうちに妊娠しにくい状態になっていることもあります。
この記事では、女性不妊の主な原因と、不妊になりやすい人の特徴について解説します。
不妊症のうち女性に原因がある割合
不妊症とは、妊娠を望む健康な男女が1年間避妊をせずに性交しても妊娠に至らない状態をさします1)。ただし、女性の年齢が35歳以上の場合は、不妊症の診断基準である1年を待たずに、6ヶ月を目安に検査や治療の開始を検討することが推奨されています。
世界保健機関(WHO)の報告によると、不妊症のうち女性側に原因があるケースは65%とされています(女性側のみに原因があるケースは約40%、男女双方は約25%、男性側のみは約25%、原因不明は約10%)。一方で、男性側のみ、または男女双方に原因がある場合も少なくはなく、不妊は女性だけの問題ではありません。
検査をしても明確な原因が特定できない場合もありますが、適切な治療により妊娠を目指すことは可能です。妊娠を望んでも授からない場合は、原因について理解し、必要に応じて医療機関に相談することが大切です。
男性不妊の原因についてはこちらの記事もご覧ください。
女性不妊の主な原因
女性不妊の原因は、主に以下4つに分類されます。
- 排卵因子
- 卵管因子
- 子宮因子
- 頸管因子
このうち、排卵因子と卵管因子は頻度が高く、男性因子とあわせて不妊症の三大原因とされています。
排卵因子
排卵因子は、卵子が正常に育たない、または卵巣からうまく排出されない「排卵障害」による不妊原因で、女性不妊の約25~30%を占めるといわれています2)。
背景には肥満や急激な体重減少のほか、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症、甲状腺機能異常といった病気が関係していることがあります。
卵管因子
卵管因子は、卵管が詰まったり狭くなったりして妊娠が成立しにくくなる原因で、女性不妊の約25〜35%を占めるとされています3)。
卵管は、精子と卵子が出会い、受精卵が子宮へ移動する通り道で、炎症や癒着が生じると自然妊娠が難しくなることがあります。卵管が炎症や癒着を引き起こす主な原因には、性器クラミジア感染症や子宮内膜症のほか、過去の腹部・骨盤内手術暦などがあります。
子宮因子
子宮の形態や子宮内環境に問題がある場合、受精卵が着床しにくくなります。
原因としては、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症などのほか、先天的な子宮形態異常が影響することがあります。これらの疾患は必ずしも不妊の原因となるわけではありませんが、位置や大きさ、範囲などによっては妊娠しづらくなる要因となります。
さらに、これらの婦人科系疾患は年齢とともに発症リスクが高まるといわれています。月経量の異常や強い月経痛などがみられる場合は、早めに検査を受けることが推奨されます。
頸管因子
頸管因子は、子宮頸管の異常により頸管粘液(おりもの)が十分に分泌されなかったり、子宮頸管が塞がったり狭くなったりすることで、精子が子宮内へ進みにくくなることで起こる不妊原因です。
子宮の入り口にある子宮頸管は、排卵期に精子が通過しやすい状態へ変化しますが、子宮頸部の手術歴や炎症などにより、この変化が起こりにくくなることがあります。
原因不明の不妊について
不妊症のなかには、検査しても原因が特定できない「原因不明不妊」があります。原因不明不妊は、不妊症全体の10〜30%を占めるといわれています4)。
背景には、現在の検査では明らかにできない要因が存在している可能性があります。その中でも、卵子の機能低下は考えられる要因のひとつです。
それ以外の要因の中には、腹腔鏡検査などの詳しい検査により、原因が見つかる場合もあります。妊娠を望んでも授からない場合は、早めに医師へ相談し、必要な検査を受けることが大切です。
女性不妊になりやすい人の特徴
女性不妊の原因はさまざまですが、特に以下に該当する方は注意が必要とされています。
- 35歳以上
- 月経異常がある
- やせている・肥満である
- 性感染症や子宮の病気にかかったことがある
- 喫煙習慣や過度な飲酒習慣がある
これらに当てはまるからといって、必ず不妊になるわけではありませんが、受診を検討するひとつの目安になります。
35歳以上
健康状態に問題がなくても、年齢とともに妊娠する力は低下し、特に35歳を過ぎると妊娠率の低下や流産リスクの上昇がみられ、40代ではより顕著になります。
また、加齢とともに、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系疾患にかかるリスクも高まるため、不妊につながる要因が重なります。
妊娠を望む場合は、年齢を考慮した妊娠計画を立てることが大切です。
月経異常がある
月経不順や無月経、月経過多、強い月経痛などは、排卵障害や子宮・卵巣の病気が隠れているサインであることがあります。
月経以外の出血がみられる場合も含め、異変を感じたら早めに婦人科を受診しましょう。
やせている・肥満である
やせ(BMI18.5未満)や肥満(BMI25以上)のいずれも、排卵障害につながり妊娠に影響することがあります。
極端にやせると、ホルモンバランスが乱れ、排卵障害や無月経が引き起こされることがあります。また、不妊だけでなく骨粗しょう症など健康にも影響を与える可能性があるため注意が必要です。
一方、肥満の場合も月経不順や排卵障害が起こりやすく、自然妊娠だけでなく不妊治療においても妊娠率が下がるという報告もあります。また、妊娠中の合併症や早産のリスクにもつながるといわれています。
性感染症や子宮の病気にかかったことがある
性感染症や子宮筋腫、子宮内膜ポリープなどの子宮の病気も、不妊の原因となることがあります。
女性の性器クラミジア感染症は、80%以上が無症状といわれており3)、気づかないうちに卵管に炎症や癒着を引き起こすことがあります。不妊の原因だけでなく、異所性妊娠(子宮外妊娠)の原因にもなるため、早期発見と治療が重要です。
子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科系疾患も、卵管の通過性や受精卵の着床環境に影響し、妊娠を妨げることがあります。
過去の感染や既往歴が影響するケースもあるため、現在は症状がなくても注意が必要です。
喫煙習慣や過度な飲酒習慣がある
喫煙は、不妊のリスクを高める大きな要因のひとつです。たばこに含まれる有害物質は、卵巣機能や卵子の質に悪影響を及ぼすことが知られています。
また、受動喫煙も流産や胎児の発育に影響することがあるため、妊娠を希望する場合は、パートナーとともに禁煙に取り組むことが重要です。
過度な飲酒もホルモンバランスを乱すおそれがあるため、妊活を機に節酒を心がけましょう。
女性不妊の原因に関するよくある質問
女性不妊の原因に関してよくある質問に回答します。
Q:女性不妊で最も多い原因は何ですか?
女性不妊で頻度が高い原因のひとつは、卵管因子(卵管の異常)です。性器クラミジア感染症や子宮内膜症などにより、卵管に炎症や癒着が生じることがあります。
また、排卵因子(多嚢胞性卵巣症候群〔PCOS〕などの排卵障害)も女性不妊で多くみられる原因です。
Q:女性不妊の原因はどのように調べますか?
女性不妊の原因は、超音波検査やホルモン検査、子宮・卵管の検査などを組み合わせて調べます。
<不妊の原因を調べる検査例>
- 経腟超音波検査
- ホルモン検査
- 性感染症検査
- AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査
- 子宮卵管造影検査 など
どの検査を行うかは、症状や年齢、これまでの経過をもとに医師が判断します。
将来の妊娠に備えて体の状態を知りたい場合は、不妊検査のほか「ブライダルチェック」という選択肢もあります。
Q:女性側に不妊の原因がある場合、どのような治療をしますか?
不妊の原因に応じて、排卵障害の治療や卵管の通りを改善する治療などを行います。
排卵障害をともなう多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、排卵が起こりやすくなるように生活習慣を見直しながら、排卵誘発剤による治療をおこないます。一方、卵管の詰まりや癒着が原因と考えられる場合には、卵管の通りを改善する治療や手術を検討します。
また、状況によっては、タイミング療法や人工授精、生殖補助医療などの不妊治療を検討することもあります。
望ましい治療方法は一人ひとり異なるため、医師やパートナーと相談しながら納得できる治療方針を決めていくことが大切です。
院長からのメッセージ
「妊娠を望んでも授からない期間が続くと、『自分に何か問題があるのでは』と不安になる方は少なくありません。このような不安は当然のことでしょう。
この記事では、特に注意が必要な特徴として、35歳以上、月経異常、体重の問題、性感染症の既往、喫煙・飲酒習慣を挙げました。これらに当てはまるからといって必ず不妊になるわけではありませんが、妊娠を望む場合は早めに検査を受けることで、適切な対応が可能になります。
特に35歳以上の方は、妊娠する力が年齢とともに低下するため、6ヶ月を目安に検査を検討することが推奨されています。また、月経異常や性感染症の既往がある方も、一度詳しく調べておくと安心です。
不妊は女性だけの問題ではなく、男性側や男女双方に原因があることも少なくありません。パートナーと一緒に検査を受けることも大切です。
どんな小さな不安でも、まずは医療機関で相談してみてくださいね。
参考文献
1)日本産科婦人科学会.不妊症.日本産科婦人科学会ウェブサイト.
2)標準的な生殖医療の知識啓発と情報提供のためのシステム構築に関する研究. 患者さんのための生殖医療ガイドライン. 令和4年度厚生労働科学研究費補助金 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業; 2023.
3)日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会. 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編 2023.
4)日本生殖医学会. Q8.不妊症の治療にはどんな方法があり、どのように行うのですか? 日本生殖医学会ウェブサイト.

