最終更新日:
2026-03-04

プロラクチンは、排卵や月経周期の調整に関わるホルモンのひとつで、脳の下垂体と呼ばれる部分から分泌されます。妊活中のホルモン検査でこの値が高いと言われると、「不妊の原因になるのでは」と不安を感じる方もいるかもしれません。

とくに「少し高い」「基準値をやや上回っている」と説明を受けた場合、すぐに治療が必要なのか、それとも経過観察でよいのか迷うこともあります。

プロラクチンの値は体調や採血条件によって変動することがあり、数値だけで不妊と断定できるものではありません。重要なのは、排卵が実際に起こっているかどうかや、ほかのホルモンとのバランスを含めた総合的な評価です。

この記事では、プロラクチンが少し高いと言われた場合に、妊活中の方が整理しておきたいポイントを中心に解説します。

プロラクチンが高いと不妊の原因になる?

プロラクチンは脳の下垂体と呼ばれる部分から分泌されるホルモンで、母乳分泌に関連して妊娠中や授乳期には自然に上昇します。それ以外の時期に持続的に高値を示す状態を高プロラクチン血症と呼びます。

プロラクチンが高い状態が続くと、排卵がうまく起こらなくなることがあります。その結果、生理不順や無月経につながる場合があります。

ただし、数値が少し高いだけで必ず不妊になるわけではありません。妊活において重要なのは、実際に排卵が起こっているかどうかです。生理周期や基礎体温、ほかのホルモン値などをあわせて総合的に判断されます。

プロラクチンが高くなる主な原因

プロラクチン値が上昇する背景には、次のような要因が考えられます。

  • 一時的な変動(食事、月経周期、ストレス、睡眠不足など)
  • 薬剤の影響(胃薬、吐き気止め、精神科系薬剤など)
  • 下垂体の異常(プロラクチノーマなど)
  • 甲状腺機能の低下

プロラクチンは日内変動や心理的緊張の影響も受けやすく、採血のタイミングによって一時的に高く出ることがあります。そのため、初回検査で軽度の高値が出た場合、再検査で数値を確認することもあります。

また、症状の有無や排卵の状況によっては、すぐに治療を開始せず、一定期間経過をみることもあります。数値だけで結論を出すのではなく、排卵の状態やほかの検査結果を踏まえて方針が検討されます。

高プロラクチン血症(プロラクチンが高い)と言われたときに整理したいポイント

プロラクチンが基準値を超えて高い状態は、医学的には「高プロラクチン血症」と呼ばれます。ただし、軽度の上昇であってもすべてが治療対象になるわけではありません。

ここでは、特に軽度の高値と言われた場合の考え方を解説します。

プロラクチンの検査を受けるタイミング

プロラクチンは、測定する日や時間帯、体の状態によって数値が大きく変動しやすいホルモンです。より正確な値を把握するために、採血の条件が重要になります。

最も信頼性が高いとされているのは、月経中(月経開始から数日以内)に行う採血です。月経周期のうち、卵胞期の初期にあたるこの時期はプロラクチンの生理的な日内変動の影響を受けにくく、測定値が安定しやすいとされています。また、採血は食事の影響を受けないよう、空腹の状態で行うことが基本です。食事を摂った後はプロラクチンが上昇することがあり、食後の採血では本来より高い値が出る可能性があります。

採血当日の体の状態にも注意が必要です。睡眠不足のまま来院した場合や、採血前に激しい運動をした場合、また診察室での緊張や不安そのものも、プロラクチン値を一時的に引き上げることがあります。乳頭への刺激(検査前に胸部を触った場合など)でも上昇します。

このため、初回の検査でプロラクチンが高い値だった場合、担当医から「条件を整えて再検査しましょう」と提案されることがあります。再検査で正常範囲に戻ることも少なくなく、一度の結果だけで判断が確定するわけではありません。「高い値が出た」という事実よりも、「適切な条件で測定した値がどうだったか」が、実際の評価に使われます。

どのくらいの数値なら治療が必要か

プロラクチンの基準値は検査方法や施設によって異なります。そのため、基準値をわずかに上回ったからといって、すぐに治療が必要になるとは限りません。

前述の通りプロラクチンは食事、月経周期、ストレスや睡眠不足、採血時の緊張などでも一時的に上昇することがあります。軽度の高値であれば、まずは再検査で数値の変動を確認するケースも少なくありません。

数値そのものだけでなく以下の点を合わせて総合的に判断されます。

  • 排卵がきちんと起こっているか
  • 月経周期が安定しているか
  • ほかのホルモン検査に異常がないか

妊活においては、排卵の有無が重要な指標となります。

妊娠における高プロラクチン血症と甲状腺機能の関係

高プロラクチン血症の背景に、甲状腺機能の低下が関係していることがあります。

甲状腺ホルモンが不足すると、体内のホルモンバランスが変化し、その影響でプロラクチン値が上昇することがあります。この場合は、まず甲状腺機能を整えることが優先されます。

甲状腺機能が改善することで、プロラクチン値も自然に落ち着くケースがあります。そのため、妊活中にプロラクチンが高いと言われた場合には、甲状腺機能もあわせて確認することが必要です。

高プロラクチン血症の治療

高プロラクチン血症の治療は、数値の程度や原因、排卵への影響によって異なります。軽度の上昇で排卵が保たれている場合には、すぐに治療を開始せず、経過をみることもあります。

排卵に影響が出ている場合には、ドパミン作動薬と呼ばれる種類の薬剤を用いた薬物療法が選択されることがあります。これによってプロラクチン値を下げ、排卵を促す治療が行われます。多くの場合は、カベルゴリン(商品名:カバサール)という薬を1週間に1錠内服する治療から開始されます。

他の薬の影響によってプロラクチンが増加していることが疑われる場合には、原因となっている可能性のある薬の中止や減量、種類の変更が検討されます。ただし、自己判断で中止するのではなく、個人の状況や病気との兼ね合いも踏まえながら医師と相談のうえで調整されます。

プロラクチン値が非常に高い場合、下垂体に腫瘍(プロラクチノーマ)が存在していないかを確認するためにMRI検査を行います。下垂体腫瘍は大きさや症状によって治療方針が異なります。微小腺腫であればドパミン作動薬で良好にコントロールできることがほとんどです。腫瘍が大きい場合には視野障害や頭痛などを伴うこともあるため精査が必要となります。いずれも個別の状況に応じて判断されます。

高プロラクチン血症に関するよくある質問

高プロラクチン血症に関するよくある質問に回答します。

プロラクチンが少し高いだけでも不妊になる?

軽度の上昇があっても、排卵が保たれている場合は妊娠に至るケースもあります。重要なのは数値そのものよりも、実際に排卵が起こっているかどうかです。

プロラクチンは食事、月経周期、ストレスや睡眠不足、採血時の緊張などによって変動することもあるため、単回の検査結果だけで不妊と判断されるわけではありません。

プロラクチンが高くても生理がきていれば問題ない?

生理があっても、必ずしも毎周期きちんと排卵しているとは限りません。排卵の有無は、基礎体温やホルモン検査などをあわせて確認します。

そのため、生理があることだけで安心せず、医師の診断を受けることが大切です。

不妊治療中は高プロラクチン血症は優先的に治療すべき?

プロラクチン値が高い場合、まず考えるべきは「何が原因でプロラクチンが上がっているか」です。

甲状腺機能低下症や薬剤などが原因と考えられる場合には、他の診療科と連携しながら治療が検討されます。いずれも、プロラクチンを直接下げる治療より先に行われるべきステップです。

原因が取り除かれた後、あるいは明らかな原因がなくプロラクチン値の上昇が続いている場合には、排卵への影響を評価した上で治療を検討します。月経が不順だったり、排卵が確認できない状態であれば、ドパミン作動薬によってプロラクチン値を直接下げる治療が選択されます。一方、プロラクチン値がやや高くても排卵が保たれていれば、すぐに薬物治療を開始せず経過をみることもあります。

不妊の原因はひとつとは限らないため、プロラクチンだけを単独で評価するのではなく、他の検査結果、年齢、妊活の経過を含めた全体像の中で治療の優先順位が決められます。

高プロラクチン血症の治療中に妊娠がわかった場合は?

高プロラクチン血症の治療では、妊娠が判明した時点でドパミン作動薬の治療を中止することが原則です。

しかし、使用されるドパミン作動薬は妊娠への影響が小さいとされており、妊娠初期に使用されていた場合も多くは問題なかったと報告されています。そのため下垂体腫瘍の増大が疑われる場合など、例外的に妊娠中も継続が必要になることがあります。

いずれも自己判断で継続・中止せず、速やかに担当医に相談してください。

院長からのメッセージ

妊活中の検査で「プロラクチンが高い」なんて言われると、不安になってしまいますよね。たしかにプロラクチンは排卵に関係するホルモンで、不妊検査としても重要です。

しかしその一方で、プロラクチンは月経周期や採血のタイミング、食事・緊張・睡眠不足といった日常的な要因でも大きく変動しやすいホルモンです。月経中・空腹時という適切な条件で測定し直すと、正常範囲に戻るケースも多くあります。一度の検査結果だけで判断が確定するわけではない点を、まず頭に置いておいてください。

数値そのものよりも大切なのは、「実際に排卵が起きているかどうか」という機能的な評価です。プロラクチンが基準値を超えていても排卵が保たれていれば、すぐに治療介入が必要になるわけではありません。逆に、軽度の上昇でも月経不順や排卵障害を伴う場合には、丁寧な評価と対応が求められます。

もうひとつ見落とされがちな点として、甲状腺機能の低下がプロラクチン上昇の背景に隠れていることがあります。この場合、甲状腺を先に治療することでプロラクチン値が自然に改善することもあるため、プロラクチンだけを切り取って判断するのではなく、甲状腺を含めたホルモン全体のバランスとして評価することが重要です。

値が高い場合には、下垂体にホルモンを分泌するような腫瘍がないかをMRIで確認することがあります。担当医を通じて脳神経外科などの専門医への受診が必要になることがありますが、微小腺腫であれば内服のみで対処できる場合がほとんどです。

一つの数値に一喜一憂せず、排卵の状況や他のホルモン値も含めた全体像を担当医と一緒に確認することが、最初の正しいステップです

参考文献
日本産婦人科学会 産婦人科診療ガイドライン