子宮内膜ポリープの原因は明確にはわかっておらず、さまざまな要因が関連していると考えられています。現時点では子宮内膜ポリープの発生に精神的なストレスが関係するという医学的根拠はありません。
子宮内膜ポリープは症状として異常子宮出血(不正出血など)がみられたり、不妊の原因となる場合もあるため、医師の指示のもと適切に対応することが大切です。
この記事では、子宮内膜ポリープの原因や発生・悪化に関係する要因、ストレスの関係などについて解説します。
子宮内膜ポリープとは
子宮内膜ポリープとは、子宮内膜の表面にできる数mmから数cmの小さなできもの(=腫瘍)です。子宮内膜が過度に厚くなったり、細胞が増殖したりすることで起こります。
子宮内膜ポリープの多くは良性の腫瘍であり、状態によっては経過観察することもあります。ただし、不正出血や過多月経・過長月経をともない貧血がみられる場合は、適切な治療が必要です。
また、ポリープの大きさや位置によっては不妊の原因にもなります。ポリープが見つかった場合、たとえ症状がなくても医師から継続的な診察を受けて、治療の有無を診断することが大切です。
子宮内膜ポリープの原因とストレスの関係は?
精神的なストレスは、現時点では子宮内膜ポリープの直接的な原因にはならないと考えられています。
ただし、慢性的なストレスは身体へのさまざまな影響を与える可能性があります。
例えば、慢性的なストレスは肥満の発症に関係する可能性が報告されています。肥満は子宮内膜ポリープの因子としてもあげられているため、間接的に影響する可能性はあります。しかし、明確な因果関係は証明されていないため、現時点ではストレスが子宮内膜ポリープの原因になるとはいえません。
子宮内膜ポリープの原因
子宮内膜ポリープが発生する原因は明確にはわかっていません。しかし、以下が関係していると考えられています。
<発生に関係すると考えられる要因>
- エストロゲンによる刺激:肥満、タモキシフェンの服用 など
- 子宮内膜の慢性的な炎症
<悪性化リスクとなりうる要因>
- 加齢、閉経、高血圧など
エストロゲンの影響
エストロゲンは、月経後から排卵までの時期に多く分泌される女性ホルモンです。
妊娠に備えて子宮内膜を厚くする大切な働きがありますが、分泌が過剰になると、内膜が必要以上に増えてしまうことがあります。このような状態が続くことで、子宮内膜ポリープができやすくなる可能性があると考えられています。
エストロゲンの影響の代表例として、肥満と乳がん治療薬「タモキシフェン」の使用について紹介します。
肥満
肥満の状態では、体内のエストロゲンが増えやすくなります。脂肪組織には、男性ホルモンをエストロゲンに変える酵素があり、体内のエストロゲン量が増えることでポリープができやすくなる可能性があります。
乳がん治療薬「タモキシフェン」との関連
乳がんの治療に用いられる「タモキシフェン」という薬は、子宮内膜ポリープの発生と関連していることが知られています。
タモキシフェンは、乳房ではエストロゲンの働きを抑えることで、乳がんの治療・再発防止に用いられます。一方、子宮に対してはエストロゲンと似た作用として働くため、子宮内膜が刺激されやすくなるのです。
タモキシフェン服用中のすべての方にポリープが発生するわけではありません。タモキシフェンの服用が必要な場合は、主治医や婦人科医と相談して定期的に子宮内膜の状態を確認しながら適切な治療をすることが大切です。
子宮内膜の慢性的な炎症の影響
子宮内膜ポリープが形成されるのは、慢性的な炎症が関係している可能性も知られています。子宮内膜ポリープでは正常な子宮内膜と比較して、炎症に関係する肥満細胞の数が多いことがわかっています。
炎症が続くと組織の損傷が起こることがあり、この修復過程において血管の増殖とポリープの形成につながっている可能性が推測されています。
加齢・閉経・高血圧との関係
加齢や閉経も、子宮内膜ポリープが前がん病変(がんになる手前の状態)や悪性病変のリスクを高める可能性が指摘されています。
月経があると生理周期にともない子宮内膜が変化します。この内膜の変化がポリープを自然に消退させる役割を果たし、がん化のリスクを抑える一因と考えられています。
一方、閉経後は子宮内膜の変化がなくなるため、悪性化が進むリスクが高まる可能性があるのです。
高血圧も悪性化のリスクを高める要因とされています。ただし、高血圧の方ではBMI(体格指数)が高い傾向もあることから、直接的な原因というよりは相関関係にあると考えられています。
子宮内膜ポリープでみられる主な症状
子宮内膜ポリープでは無症状の場合もあれば、月経異常や重度の異常子宮出血(不正出血など)をともなう場合もあります。また、子宮内膜ポリープが妊娠しにくさにつながることも示唆されています。
異常子宮出血
「異常子宮出血」は子宮内膜ポリープの代表的な症状です。子宮内膜ポリープをもつ女性の約68%に発生するともいわれています。
出血の特徴は人によってさまざまですが、主な症状は以下の3つです。
- 不正出血:月経時期以外に子宮から出血が起こる
- 過多月経:1回の経血量が多い
- 過長月経:月経日数が通常より長い(8日以上)
これらの出血が続くと貧血を起こすことがあるため、医師の診断のもと適切に治療をする必要があります。
不妊
子宮内膜ポリープの大きさや位置によっては、不妊の原因になることがあります。
ポリープが子宮頸管や卵管の入口付近に存在すると、精子が通過しにくくなる可能性があります。また、ポリープが受精卵の着床するスペースを占め、物理的に着床を妨げる可能性も知られています。
また、近年通常のポリープよりも小さいマイクロポリープと呼ばれる病変がある場合、慢性子宮内膜炎である可能性が高いということが報告されています。慢性子宮内膜炎は着床障害を起こす可能性があることが知られています。
子宮内膜ポリープは、出血や月経異常などの自覚症状がない場合も多く、不妊検査の過程で超音波検査や子宮卵管造影検査などで偶然発見されるケースも少なくありません。
妊娠を希望している場合は、ポリープの大きさや位置、症状の有無などを踏まえ、主治医とともにご自身に必要な治療方針を見つけることが大切です。
子宮内膜ポリープの検査
子宮内膜ポリープの検査では、主に以下の方法が用いられます。
一次検査として経腟超音波検査をおこない、ポリープの有無や形状を調べます。超音波検査で子宮内膜ポリープが疑われた場合は、子宮鏡検査やソノヒステログラフィーを追加して検査します。
子宮鏡検査ではポリープの位置や大きさ、個数を把握し、手術の必要性を評価します。ソノヒステログラフィーは、不正出血がある方の子宮内病変を捉えるのに優れた検査です。
これらの検査を組み合わせることで、より正確な診断と治療が可能となります。
子宮内膜ポリープの治療
子宮内膜ポリープの治療は、症状の有無や不妊への影響、悪性の可能性を総合的に評価して決定されます。必要な場合は、子宮鏡下手術によってポリープを摘出します。
不妊症の場合、ポリープを切除することで妊娠しやすくなることが複数の観察研究で示されています。人工授精や体外受精においても妊娠率が高まるとの報告もあるため、必要な場合は摘出します。
子宮内膜ポリープと診断されたあとに心がけたいこと
子宮内膜ポリープと診断された場合は、定期的に医師の診察を受け、状態の変化を確認することが大切です。
無症状で閉経前の場合はポリープが自然に退縮することもありますが、10mmを超える大きさでは自然退縮しにくいため、慎重に経過を観察します。
また、子宮内膜ポリープは再発することもあるため、医師の指示に沿って継続的にフォローを受けましょう。
「不正出血が増えた」「月経量や周期が変わった」など、これまでと違う症状に気づいた場合は、自己判断せず早めに医師へ相談してください。
子宮内膜ポリープに関するよくある質問
子宮内膜ポリープに関してよくある質問に回答します。
Q:子宮内膜ポリープは20代でもなりますか?
子宮内膜ポリープは20代で発症することもあります。
好発年齢は40代とされていますが、生殖年齢の女性から閉経後の女性まで幅広い年齢層でみられる疾患です。
年齢に関係なく、不正出血などの症状がある場合や、検査で指摘された場合には、自己判断せず、医師の判断に沿って適切に対応することが大切です。
Q:子宮内膜ポリープが悪性である確率はどのくらいですか?
産婦人科診療ガイドラインに掲載されている研究報告の一部では、子宮内膜ポリープが悪性である確率は約0.8%と報告されています。全体として、悪性である可能性は高くありません。
ただし、ポリープ切除後の病理検査で、前がん病変やがんが見つかるケースもあります。年齢や閉経、高血圧がある方はとくにそのリスクが高まるとされているため、年齢や状況に応じて医師と相談しながら、必要な検査や対応をおこなうことが大切です。
Q:子宮内膜ポリープは多発することがありますか?
子宮内膜ポリープは、ひとつだけできるケースもあれば、複数できるケースもあります。再発することもあるため、摘出したとしても定期的に医師の診察を受けることが必要です。
院長からのメッセージ
子宮内膜ポリープと診断されて、不安を感じていらっしゃる方も多いと思います。特に「ストレスが原因では?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。
まずお伝えしたいのは、子宮内膜ポリープの原因は明確にはわかっておらず、ストレスが直接的な原因であるという医学的根拠はないということです。ご自身を責める必要はありません。
子宮内膜ポリープの多くは良性で、無症状の場合は自然に小さくなることもあります。ただし、不正出血がある場合や、妊娠を希望される場合には、適切な治療が必要になることがあります。
現在考えられているリスク因子としては、エストロゲンの影響(肥満、ホルモン剤の服用など)や慢性的な炎症が挙げられています。また、閉経後や高血圧がある方では、悪性化のリスクがやや高まる可能性が指摘されています。
大切なのは、気になる症状があったときには定期的に医師の診察を受け、状態の変化を確認することです。「不正出血が増えた」「月経の様子が変わった」など、いつもと違う症状に気づいたら、早めにご相談ください。
お一人お一人の状況に合わせて、一緒に最適な対応を考えていきましょう。
参考文献

