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タイミング療法

排卵日を確かめながら、妊娠しやすい時期に合わせる治療です

タイミング療法とは

超音波検査で卵胞(卵子が育つ袋)の大きさを測って排卵日を予測し、妊娠しやすい時期に性交渉を持っていただけるよう、医師が日程をお伝えする治療です。必要に応じて、卵胞の発育や排卵を助けるお薬を使います。体外受精などに比べて身体や費用の負担が少なく、不妊治療の最初のステップとして行います。

対象となる方 卵管が通っていて、精子の数や運動率に大きな問題がなく、排卵がある(またはお薬で排卵が見込める)方
通院回数 1周期あたり2〜3回程度
費用 保険診療です。3割負担で1周期あたりおおむね数千円〜1万円程度
続ける期間の目安 35歳未満:6周期程度/35〜39歳:3〜4周期程度/40歳以上:1〜2周期程度

自己流のタイミングと、医療機関でのタイミング療法の違い

「排卵日検査薬を使っているけれど、なかなか妊娠しない」

「アプリの予測日に合わせているのに……」

排卵日は周期ごとにずれることがあります。そのため、月経周期の日数やアプリの予測だけでは正確に捉えきれないことがあります。不妊治療を受診したカップルのうち、妊娠しやすい時期を正しく理解していた方は約1割だったという報告もあります(文献2)。

医療機関でのタイミング療法では、次のような点が異なります。

  • 卵胞を直接確認する:超音波検査で卵胞の大きさを測り、排卵が近い時期を見極めます。ただし排卵のタイミングには個人差があり、予測に誤差が出ることもあります。
  • 排卵を手助けする:卵胞が育ちにくい場合は、お薬で発育を促します。卵胞が十分に育ったところで排卵を促す注射や点鼻薬を使い、排卵の時期を予測しやすくします。
  • 排卵後も確認する:排卵したかどうかを超音波検査で確認します。必要に応じて、黄体ホルモンを補うお薬を使います。

タイミング療法の対象となる方

事前の検査で、次の条件を満たしていることを確認してから始めます。

  1. 卵管が通っていること:子宮卵管造影検査などで確認します。
  2. 精子の状態に大きな問題がないこと:精液検査で確認します。
  3. 排卵があること:自然に排卵がある、またはお薬によって排卵が見込めることを確認します。

不妊期間が長い方や、子宮内膜症がある方などは、タイミング療法から始めずに人工授精や体外受精をご提案することもあります。

治療の流れ(1周期)

Step 時期 内容
Step 1 月経3〜5日目頃※お薬を使う場合のみ 超音波検査で卵巣の状態を確認し、卵胞の発育を助ける飲み薬を開始します(5日間)。
Step 2
卵胞チェック
月経7〜10日目頃〜 超音波検査で卵胞の大きさと子宮内膜の厚さを測り、排卵日を予測します。卵胞の育ち方によっては、2〜3日後にもう一度確認します。
Step 3
タイミング
排卵の2〜3日前〜排卵日 医師がお伝えする日程に合わせて、ご自宅で性交渉を持っていただきます。この期間は連日でも問題ありません。卵胞が十分に育った時点で、排卵を促す注射や点鼻薬を使うこともあります。
Step 4
排卵確認
排卵予定日の数日後 排卵したかどうかを超音波検査で確認します。必要に応じて黄体ホルモンのお薬を処方します。
Step 5
妊娠判定
月経予定日以降 月経予定日を過ぎても月経が来ない場合は、ご来院いただき妊娠判定を行います。

通院の目安:1周期あたり2〜3回程度です。お薬の有無や卵胞の育ち方によって変わります。

なぜ「排卵の少し前」なのか

精子は女性の体内で数日間、受精する力を保つとされています。一方、卵子が受精できるのは排卵後およそ1日以内です。そのため、妊娠しやすいのは排卵日までの数日間で、特に排卵の1〜2日前が最も妊娠しやすいと報告されています(文献1)。排卵の前に精子が待っている状態をつくることが大切です。

費用

タイミング療法は保険診療で受けられます。3割負担の場合、1周期あたりの自己負担額はおおむね数千円〜1万円程度です。診察の回数、お薬や注射の種類、検査の内容によって変わります。

このほか、3か月に1回「一般不妊治療管理料」(3割負担で750円)がかかります。

詳しくは「費用」のページをご覧ください。

期間を決めて取り組むことが大切な理由

タイミング療法は身体への負担が少ない治療です。一方で、続ければ続けるほど妊娠しやすくなる治療ではありません。

超音波検査で排卵日を確認しながらタイミング療法を行った海外の研究では、1周期あたりの妊娠率は約9%でした。妊娠した方の約8割が最初の3周期以内に妊娠しており、6周期を超えると妊娠率はほとんど上がらなかったと報告されています(文献3)。妊娠率は年齢、不妊期間、不妊の原因によって大きく異なります。

何周期か取り組んでも妊娠しない場合、次のような、通常の検査では分かりにくい理由が隠れている可能性があります。

  • 排卵した卵子を卵管がうまく取り込めていない(ピックアップ障害)
  • 受精がうまくいっていない

こうした場合は、人工授精や体外受精に進むことで妊娠が期待できることがあります。

当院では、次の周期数を目安に、次のステップについてご相談しています。

  • 35歳未満:6周期(約半年)程度
  • 35〜39歳:3〜4周期程度
  • 40歳以上:1〜2周期程度。早めのステップアップもご提案します

不妊期間が2年以上の方や子宮内膜症がある方は、上記より早めの相談をおすすめすることがあります。

ただし、次のステップに進むかどうかを決めるのはお二人です。お二人の考えやペースを大切にしながら、治療の計画を一緒に立てていきましょう。

当院で使用する主なお薬

自然に排卵がある方では、お薬を使わずにタイミング療法を行うこともあります。お薬を使う場合は、月経周期やホルモンの状態に合わせて選びます。

1. 卵胞の発育を助けるお薬

お薬の名前 特徴
レトロゾール(フェマーラ) 【飲み薬】月経3日目頃から5日間服用します。育つ卵胞が1つになりやすく、クロミフェンに比べて子宮内膜が薄くなったり頸管粘液が減ったりしにくいという性質があるため、当院では最初に選ぶことが多いお薬です。
クロミフェン(クロミッド) 【飲み薬】月経5日目頃から5日間服用します。長く使われてきた排卵誘発剤です。レトロゾールで卵胞が十分に育たない場合などに使います。服用した周期に子宮内膜が薄くなったり頸管粘液が減ったりすることがあるため、超音波検査で確認しながら使います。
hMG/FSH注射(ゴナールエフなど) 【注射】連日もしくは隔日で注射します。飲み薬だけでは卵胞が育ちにくい場合に使うホルモン注射です。卵巣に直接はたらきかけるため卵胞を育てる力が強いぶん、複数の卵胞が育ちやすくなります。卵胞がたくさん育った場合は、双子以上の多胎妊娠を避けるため、その周期のタイミングを見送ることがあります。

2. 排卵を促すお薬(トリガー)

卵胞が十分に育った時点で使います。排卵の時期を予測しやすくなり、性交渉の日程をお伝えしやすくなります。

お薬の名前 特徴
オビドレル 【注射】hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)製剤です。投与からおおむね1日半〜2日後に排卵が起こるとされています。
ブセレリン(スプレキュア) 【点鼻薬】GnRHアゴニスト製剤です。鼻にスプレーすると、LHサージが惹起され、排卵が促されます。

排卵を促すお薬を使っても、排卵しない場合や、排卵の時期がずれる場合があります。

参考文献

  1. Wilcox AJ, Weinberg CR, Baird DD. Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. N Engl J Med. 1995;333:1517-21.
  2. Hampton KD, Mazza D, Newton JM. Fertility-awareness knowledge, attitudes, and practices of women seeking fertility assistance. J Adv Nurs. 2013;69:1076-84.
  3. Ahn SH, et al. Predictive Factors of Conception and the Cumulative Pregnancy Rate in Subfertile Couples Undergoing Timed Intercourse With Ultrasound. Front Endocrinol. 2021;12:650883.

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上條 慎太郎
ORINAS ART CLINIC 院長

まずは期限を決めて、確実に取り組みましょう。

「できれば自然に授かりたい」「いきなり体外受精までは考えていない」。不妊治療を始めるとき、多くの方がそう思われます。それはごく自然なお気持ちです。

タイミング療法は、その思いに沿って最初に取り組める治療です。私たちは超音波検査で卵胞の育ち方を確認し、必要なときにはお薬も使いながら、妊娠しやすい時期をお伝えします。排卵の時期は周期ごとに変わることもあるため、毎回の診察で状態を確認しながら進めます。

一方で、タイミング療法は続ければ続けるほど妊娠しやすくなる治療ではありません。妊娠される方の多くは最初の数周期で結果が出ており、それ以降は妊娠率が上がりにくいことが分かっています。

もし数周期取り組んで結果が出なかったとしても、ご自身を責める必要はまったくありません。それは「妊娠できない」という意味ではありません。タイミングを合わせるだけでは越えにくい理由があるのかもしれない、というサインです。人工授精や体外受精は、そうした理由を補うための方法です。

大切なのは、年齢や不妊期間をふまえて、どこまで続けるかを最初にお二人と一緒に決めておくことだと考えています。次に進むかどうかを決めるのはお二人です。その判断に必要な情報は、私たちがきちんとお伝えします。一緒に進んでいきましょう。

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ORINAS ART CLINIC 院長

上條 慎太郎