タイミング療法

医学の力で、自然妊娠の確率を「最大化」する。

「排卵日検査薬を使っているけれど、なかなか妊娠しない」

「アプリの予測日通りにタイミングをとっているのに...」

そう悩まれている方は少なくありません。自己流のタイミング法で結果が出ないのは、予測した排卵日が実際の体のリズムと微妙にずれていたり、卵胞が十分に育っていなかったりすることがあるからです。

タイミング療法は、医師が超音波検査やホルモン検査を駆使して「最も妊娠しやすい瞬間」をピンポイントで予測し、さらに必要に応じてお薬の力を借りることで、「質の良い卵子を、最適なタイミングで排卵させる」ための治療です。

まずはこのステップで、自然妊娠の可能性を徹底的に追求してみましょう。

自己流と医療機関での治療の違い

ただ「日を合わせる」だけではありません。医学的な介入を行うことで、妊娠への条件を整えます。

  • 卵胞モニタリング:超音波検査で卵胞(卵子の入った袋)のサイズをミリ単位で計測し、排卵日時を正確に予測します。
  • 排卵の確実性:卵胞が育ちにくい場合は「排卵誘発剤」で発育を助けたり、「hCG注射」などで排卵を確実に促したりして、チャンスを逃さないようにします。
  • 着床環境の整備:排卵後のホルモン状態もチェックし、必要であれば着床を助けるお薬を使用します。

当院で使用する主な薬剤

当院では、患者様の体質やホルモン値に合わせて、最適なお薬を組み合わせて使用します。

1. 卵子を育てるお薬(排卵誘発剤)

卵胞の発育を助け、質の良い卵子を育てます。卵胞が育ちやすくなる反面、育ちすぎてしまうと双子などの多胎のリスクが増えるため、専門医のもとで適切に使用する必要があります。

薬剤名 特徴
フェマーラ
(レトロゾール)
【飲み薬】
単一卵胞発育を起こしやすく、クロミッドに比べて子宮内膜が薄くなったり頸管粘液が減少したりしにくいため、当院では第一選択として使用することが多いお薬です。
クロミッド 【飲み薬】
歴史のある排卵誘発剤です。効果は確実ですが、長く使い続けると子宮内膜が薄くなるなどの副作用が出ることがあるため、使用期間に注意しながら処方します。
ゴナールエフ
hMG/FSH
【注射】
飲み薬だけでは卵胞が育ちにくい場合などに使用するホルモン注射です。直接卵巣に働きかけ、卵胞の発育を強力にサポートします。自己注射ペンタイプなどもあり、通院負担を減らすことも可能です。刺激が強いぶん多数の卵胞が育ちやすくなるため、量や期間を慎重に調節しながら使用します。

2. 排卵を確実に起こすお薬(トリガー)

卵胞が十分に育ったタイミングで使用し、排卵のスイッチを入れます。これにより、性交渉を持つべき時間をピンポイントで指定できます。

薬剤名 特徴
オビドレル 【注射】
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)製剤です。投与から約36〜40時間後に排卵が起こるため、タイミングを合わせるために使用します。
スプレキュア
(ブセレリン)
【点鼻薬】
GnRHアゴニスト製剤です。鼻にシュッとスプレーすることで、脳下垂体からLH(黄体形成ホルモン)を一気に放出させ(フレアアップ)、排卵を促します。

タイミング療法の適応(対象となる方)

基本的には、事前のスクリーニング検査で以下の条件を満たしている方が対象となります。

  1. 卵管が通っていること:子宮卵管造影検査などで確認済みであること。
  2. 精子の状態が良好であること:自然妊娠可能な数の精子がいること。
  3. 排卵があること:自然排卵、またはお薬によって排卵が見込めること。

治療の流れ

生理周期に合わせて、数回ご来院いただきます。

Step 時期 内容
Step 1 卵胞チェック
(月経開始10〜14日目頃)
超音波検査で卵胞の大きさと内膜の厚さを測ります。
医師より「この日とこの日にタイミングをとってください」と具体的にアドバイスします。必要に応じて排卵誘発剤を使用します。
Step 2 タイミング 医師の指示に合わせて、ご自宅で性交渉を持っていただきます。
排卵を確実にするため、点鼻薬や注射を使用する場合もあります。
※「排卵直前」が最も妊娠しやすいタイミングです。
Step 3 排卵確認
(予測日から数日後)
確実に排卵したかどうかを超音波検査で確認します。
排卵が確認できたら、着床をサポートする黄体ホルモンのお薬などを処方する場合もあります。
Step 4 妊娠判定 生理予定日を過ぎても生理が来ない場合は、ご来院いただき妊娠判定を行います。

「期間を決めて頑張る」ことが大切な理由

タイミング療法は、身体的な負担が少ない治療ですが、漫然と何年も続けてしまうことはおすすめできません。

一般的に、タイミング療法で妊娠される方の多くは、開始から3〜6回以内に結果が出ています。

もし数回しっかりとタイミングを合わせてトライしても授からない場合、そこには「卵管が卵子を取り込めていない(ピックアップ障害)」や「受精できていない」といった、通常の検査では特定しにくい原因が隠れている可能性があります。

その場合は、人工授精や体外受精といった「別の有効な手段(=まだ残されている希望)」に進むことで、結果が出る可能性が十分にあります。

最も大切な「年齢(時期)」を逃してしまわないよう、当院では以下の回数を目安に、次のステップへの相談をさせていただいています。

  • 35歳未満:6回(約半年)程度
  • 35歳〜39歳:3〜4回程度
  • 40歳以上:1〜2回、または早期のステップアップを推奨

ただしステップアップはあくまで任意です。不妊治療は誰かに強制されてするものではないので、お二人のペースも大事にしながら治療スケジュールを作っていきましょう。

上條 慎太郎
ORINAS ART CLINIC 理事長・院長

まずは無理せず確実にトライしましょう。私たちは全力でサポートします。

不妊治療を始めるとき、「できれば自然に授かりたい」「体外受精まではしたくない」と思われるのは当然のことです。

ですから、まずはタイミング療法でできる限りのことをやりましょう。私たちは排卵のタイミングを見極め、お薬で卵子の成長を助け、全力でサポートします。

ただ、もし数回頑張ってみて結果が出なかったとしても、決してご自身を責めたり、悲観的になる必要はありません。

それは「妊娠できない」ということではなく、「今の方法では乗り越えられないハードルがあるかもしれないけれど、別の方法なら飛び越えられるよ」というサインかもしれないからです。

一番怖いのは、「もっと早く次の方法を試していればよかった」と後悔することです。適切な方法を選択することが妊娠への一番の近道です。

そのためには「時期」の見極めがとても重要です。まずは今のステップを全力で。そして、もしもの時は私たちが次の希望を提示します。一緒に進んでいきましょう。

ORINAS ART CLINIC 理事長・院長

上條 慎太郎