「妊娠はできる」その力を、今度は「育てる力」へ。
妊娠検査薬の陽性反応を見て喜んだのも束の間、流産という悲しい結果に終わってしまう。
それを2回、3回と繰り返した時の絶望感は、計り知れないものがあります。
「不育症」とは、妊娠は成立するものの、お腹の中で赤ちゃんが育たず、流産や死産を繰り返してしまう状態を指します。
決してご自身のせいではありません。そこには、医学的に対処可能な原因が隠れていることがあります。
悲しみを乗り越え、次の妊娠へ向かうために。まずは原因を知ることから始めましょう。
不育症の定義と原因
一般的に、流産を2回繰り返す場合を「反復流産」、3回以上繰り返す場合を「習慣流産」と呼びます。
これらはどちらも「不育症」に含まれ、2回以上の流産経験がある時点で、リスク因子の検査(スクリーニング)を行うことが推奨されています。
原因の内訳
流産の約60〜80%は、受精卵の偶発的な染色体異常(偶然起こる遺伝子のエラー)によるものです。これは誰にでも起こりうることで、ご夫婦のどちらにも原因はありません。 しかし、検査をすることで以下のような「リスク因子」が見つかることがあります。
- 子宮形態異常:子宮の中が狭かったり、仕切りや壁があったりして、赤ちゃんが育ちにくい形をしている場合(中隔子宮など)。
- 甲状腺機能異常:特に甲状腺ホルモンが不足していると流産しやすくなります(甲状腺機能低下症)。
- 抗リン脂質抗体症候群 (APS): 血液が固まりやすくなる(血栓ができやすくなる)自己免疫疾患です。 子宮や胎盤への血流が悪くなることによって不育症の原因になります。無治療のままだと将来的に脳梗塞や肺塞栓症などの重い合併症が起こるリスクもあるため、内科的な管理として、アスピリンやヘパリンを用いた適切な治療を行って血栓を予防することが非常に重要です。
- 凝固因子異常:血液を固める因子の異常(プロテインS欠乏症など)で、胎盤に血栓ができやすくなります。
- 夫婦染色体異常(均衡型転座など):ご夫婦のどちらかに「均衡型転座」という染色体の特徴がある場合があります。これは、染色体の一部が入れ替わっているものの、遺伝子の量自体には過不足がないため、ご本人は全く健康上の問題なく生活されています。 しかし、卵子や精子が作られる過程で染色体の過不足が生じやすく、それが流産の原因となることがあります。
※当院では夫婦の染色体検査は行っておりませんので、必要に応じて専門施設をご紹介いたします。
当院で行う主な検査
詳しく問診を行った上で、必要な検査を組み合わせて実施します。
- 超音波検査・子宮鏡検査:子宮の形や内膜の状態を確認します。
- 血液検査
- 抗リン脂質抗体:ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体など。
- 凝固系検査:プロテインS、プロテインC、第XII因子など。
- 内分泌検査:甲状腺機能(TSH, FT4)、糖尿病検査など。
治療方法(対策)
原因が見つかった場合は、その原因に対する治療を行います。
- 低用量アスピリン療法 / ヘパリン療法:抗リン脂質抗体症候群や凝固異常の場合、アスピリンやヘパリンといった血液をサラサラにするお薬(抗凝固薬)を使って、子宮や胎盤の血流を維持します。これにより、出産率が改善します。
- 子宮手術:子宮形態異常(中隔子宮など)の場合、手術で形を整えることで流産を防げる場合があります。
- 甲状腺治療:チラージンなどのホルモン剤を服用します。
- PGT-A(着床前胚染色体異数性検査):繰り返す流産の原因が受精卵の染色体異常である場合、体外受精において移植前に胚の染色体を調べることで、流産を回避できる可能性があります。当院ではPGT-Aを用いた体外受精は自費診療となります。
費用について
不育症の検査・治療の多くは保険適用となります。
※一部の特殊な検査や、先進医療(PGT-A等)は自費診療となります。
- 費用:「料金ページ」をご確認ください。
- 助成金:自治体によっては不育症検査への助成金制度があります。