最終更新日:
2026-03-04

精液検査は、泌尿器科の病院やクリニックと不妊治療クリニックなどで受けられます。ただし、「どこを受診すればよいのか」は目的によって異なります。

この記事では、精液検査を受けられる場所ごとの違いや、医療機関を選ぶときのポイントをわかりやすく解説します。

精液検査はどこで受けられる?

精液検査を受けられる主な医療機関は、泌尿器科の病院やクリニックと不妊治療クリニックです。それぞれ役割が異なるため、自分の状況に合わせて選ぶことが重要です。

ここでは、各施設の特徴やどのようなケースに向いているかを紹介します。

泌尿器科

精液検査はもちろん、不妊につながるさまざまな要因を総合的に調べたい場合には、泌尿器科への受診が適しているでしょう。

男性不妊の診療を行なっている泌尿器科には、生殖医療の専門医が在籍している施設もあり、精液検査に加えて、異常が見つかった際の詳しい検査まで対応できる場合があります。具体的には、精索静脈瘤の有無やホルモンバランスの異常、精巣の状態を調べる検査などがあげられます。治療可能な疾患が見つかれば、妊娠に向けた状態の改善が期待できる場合もあります。

ただし、すべての泌尿器科で精液検査を行っているわけではなく、さらに精液検査を行っていても不妊治療については専門ではないという施設も少なくありません。受診前に事前に確認しましょう。

産婦人科・不妊治療クリニック

妊娠に関わる検査を男女同時に行いたい場合は、産婦人科や不妊治療クリニックが適しているでしょう。男性に対する精液検査や内分泌検査だけでなく、女性に対する超音波検査や内分泌検査、卵管疎通性検査など、男女それぞれに必要な検査を同じ施設で受けられます。両方の検査結果をもとに、総合的な治療方針を立ててもらえる点もメリットといえます。

ただし、施設によって対応できる治療の範囲は異なります。タイミング法や人工授精までの施設もあれば、体外受精などの生殖補助医療まで行う施設もあります。受診前に治療内容や費用について確認しておくと安心です。

施設によっては、男性は来院せずに女性が精液を持参して提出できる場合もあります。ただし、医師の診察が必要かどうかは施設によって異なります。

自宅(簡易検査キット)

「いきなり医療機関を受診するのはハードルが高い」と感じる場合は、市販の簡易検査キットを利用する方法もあります。

ただし、簡易検査キットで確認できるのは精子濃度や運動率といった限られた項目のみで、医療機関で行なう精液検査の代わりにはなりません。精子の状態を正しく知るには、精液の量だけでなく、精子数や運動能力、形態の正常性など、複数の項目を総合して評価する必要があります。さらに得られた結果から診断をしたり方針を立てたりするのは、やはり医師に相談する必要があります。

簡易検査キットはあくまでも受診のきっかけとし、精液の状態を正確に把握したい場合や妊娠を希望している場合は、医療機関での検査を検討しましょう。

医療機関を選ぶときのポイント

精液検査を受ける医療機関を選ぶときは、「通いやすさ」「採取方法」「今後の治療を見据えているかどうか」といった観点から総合的に判断することが大切です。

また、まずは検査だけを受けたいのか、今後の治療まで見据えているのかによって、選ぶべき医療機関は変わります。自分の目的を整理したうえで受診先を決めるとよいでしょう。

距離の近さ

精液検査では、マスターベーションで精液を採取します。自宅で行なって持ち込む方法と、医療機関で行なう方法がありますが、施設によって対応が異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

自宅採取を希望する場合は、採取から1~2時間以内に提出できる距離の施設を選ぶことが大切です。精液は時間とともに性状が変化してしまうため、できるだけ早く提出することが求められます。多くの施設では採取から1~2時間以内の提出が推奨されています。それ以上の時間でも検査自体は出来ますが、所見が実態よりも悪く出てしまう可能性が高くなります。また、運搬時はできるかぎり体温に近い温度を保つことが望ましいとされています。

医療機関内での採取なら、時間や温度管理の心配はありません。

サポート体制

医療機関を探すときは、心理面でのサポート体制が整っている施設を選ぶと安心です。検査前の強い緊張やストレスは、精液の状態に影響する可能性も指摘されています。そのため、リラックスできる環境かどうかもひとつの判断材料になります。

生殖心理カウンセラーや不妊カウンセラーといった専門資格を持つスタッフがいる施設では、医師だけでなくカウンセラーからも治療方針を丁寧に説明してもらえます。疑問や不安を気軽に相談できる体制が整っていれば、安心して検査に臨めるでしょう。

受診時間や設備

受診可能な時間帯もチェックしたいポイントのひとつです。仕事との両立を考える場合、診療時間の幅広さは、通院の継続のしやすさに直結します。一般的な施設は午前・午後の診療で夕方に終了しますが、最近では早朝7時頃から受け付ける施設や、夜間の20〜21時頃まで対応する施設も増えています。

事前に診療時間や設備、実績のある技術者の有無を確認するとよいでしょう。

精液検査でわかること

精液検査では、精液量に加え、精子の濃度・総精子数・運動率・形態(正常形態率)などを評価します。これらの項目は、WHO(世界保健機関)のラボマニュアルに基づく基準値と照らし合わせて判定されます。

精液検査は、男性側に不妊の原因がある可能性がないかを調べるための基本的な検査です。ただし、この検査だけで妊娠の可否を断定できるわけではありません。精液所見が基準範囲内であっても妊娠に至らないケースもあれば、基準値を下回っていても自然妊娠する場合もあります。

また、精子の状態は体調や発熱、ストレスなどの影響を受けやすく、測定値が変動することがあります。そのため、必要に応じて複数回検査を行い、医師により総合的に判断されます。

精液検査の保険適用の有無

精液検査の保険適用の有無は、検査の目的や診療の流れによって異なります。

不妊症の診断や治療の一環として医師が必要と判断した場合は、保険診療となることがあります。一方で、ブライダルチェックや将来に備えたスクリーニング目的の場合は、自費診療となるケースが一般的です。

具体的な費用や保険適用の範囲は医療機関によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

医療機関によってはブライダルチェックで精液検査を受けられる

将来の妊娠に備えた健康確認として、一部のクリニックでは精液検査をブライダルチェックに含めて提供しています。予防的な健康管理を目的としているため、人間ドックと同じく自費での受診が基本です。

男性のブライダルチェックでは精液検査のほかに、超音波検査やホルモン検査、感染症検査などが行われます。実施される項目や範囲は医療機関によって異なるため、事前に確認しましょう。

男性のブライダルチェックについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

精液検査に関するよくある質問

ここでは、精液検査に関するよくある質問について回答します。

精液検査を受ける際の注意点や運搬時に気をつける点は?

WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、正確な結果を得るために、精液検査前2〜7日間の禁欲が推奨されています。

精液の採取方法は、自宅または医療機関内で行う方法があり、施設によって対応が異なります。自宅で採取する場合は、採取後できるだけ早く提出することが重要です。多くの施設では採取から1~2時間以内の提出を求めています。

また、運搬時は精液を体温に近い温度で保つことが望ましいとされています。具体的な方法や注意点は医療機関ごとに異なるため、事前に確認してください。不明点がある場合は、あらかじめ医療機関へ相談しておきましょう。

体調が悪いときに精液検査を受けても大丈夫ですか?

発熱や強い体調不良がある場合は、精子の数や運動率に影響が出ることがあります。そのため、体調を崩している場合は無理をせず、医療機関へ連絡して検査日の変更を相談することが勧められます。

特に高熱があった場合は、その後しばらく精子の状態に影響が残ることがあると報告されています。正確な評価のためにも、体調が安定しているタイミングでの検査が望ましいでしょう。

院長からのメッセージ

「泌尿器科と不妊治療クリニック、どちらに行けばいいのかわからない」というご相談は、外来でもよくいただきます。答えは「どちらが正解」ではなく、「今の状況に何が合っているか」によって変わります。

妊活をこれから始める段階で、パートナーとともに検査を進めたいなら、男女両方の検査を同じ施設で受けられる不妊治療クリニックがスムーズです。精液検査で問題がなければ、そのまま不妊治療にも移れるため妊活を進めていくうえでは利便性が高いと言えます。

一方、まず男性側の状態をしっかり把握したい、原因を特定してから次のステップを考えたいという場合は、男性不妊を専門に扱う泌尿器科が向いています。男性不妊を専門に扱う、という部分が重要で、普通の泌尿器科でも精液検査を扱っているところはありますが、不妊治療については専門ではないところも少なくなく、その場合は治療方針などが不十分になる可能性もあります。

精液検査でわかるのは精液量だけではありません。精子の数・動き・形態を含めて総合的に評価して初めて、男性側の妊孕性の状態が見えてきます。見た目や感覚では判断できないからこそ、数値として確認することに意味があります。

自宅で採取して持参する場合は、採取後1~2時間以内の提出と適切な温度管理が正確な結果につながります。「どう持っていけばいいか」など些細なことでも、受診前に施設へ確認していただくと安心です。

受診先で迷ったときは、「今、何を一番知りたいか」を出発点に考えてみてください。その答えが、自分に合った施設選びの道標になります。

参考文献

一般社団法人日本生殖医学会. ウェブサイト.
日本泌尿器科学会ガイドライン