「妊活をはじめてどのくらいで不妊症の検査を受ければいいのか」「今すぐ受診したほうがいいのか」と迷う方は少なくありません。
不妊症の検査を検討する一つの目安は、妊活を続けて1年間くらいの時期です。ただし、この期間はあくまでも目安であり、年齢や体の状態によってはもっと早めの時期での検査も推奨されます。ご自身の状況に応じ、適切なタイミングで検査を検討することが重要です。
この記事では、不妊症の検査を受ける適切なタイミングの目安や、実際に検査を受ける際の流れについて解説します。
不妊症の検査を考えるタイミング
不妊症の検査をいつ受けるか悩んだ場合は、以下を軸に整理すると判断しやすくなります。
- 妊活期間
- 年齢
- 女性側の状態(月経に問題がある・過去に婦人科疾患にかかったなど)
- 男性側の状態(性機能が気になる・排尿時に違和感があるなど)
不妊症の検査を検討する一般的な目安は、妊活開始から1年です。これは国際的な不妊症の定義によるものです。ただし35歳以上の方や、お二人のどちらかに気になる症状がある場合は、妊活期間にかかわらず早めの検査が推奨されます。
パートナーと意思を確認し合い、できるだけ早く授かりたい場合も検査を検討するタイミングと言えます。
妊活をはじめて1年以上妊娠しない場合
不妊症とは、妊娠を希望する健康な男女が避妊をせずに性交渉していても、1年間妊娠に至らない状態を指します1)。すでに妊活開始から1年が経過している方は、検査を検討してみましょう。
積極的に妊活すると多くの場合は1年以内に妊娠し2)、それ以降は自然に妊娠する可能性は低くなることが知られています。1年を過ぎても妊娠しない場合は何らかの問題がある可能性があるため、専門医に相談し、ご自身の体に問題がないかを確認してみてください。
年齢が35歳以上の場合
35歳以上の女性は、1年ではなく6か月程度の時期での検査が推奨されます。さらに40代以上の方は、妊活期間問わず妊娠を希望した時点で専門医への相談が勧められます。
<年齢による検査タイミングの目安>
- 35歳以上:妊活開始から6か月経過した段階
- 40歳以上:妊娠を希望した段階(妊活期間問わない)
女性の妊娠する力は年齢とともに低下していき、特に35歳前後を過ぎるとそのペースは早まるといわれており、さらに40代ではその傾向が顕著になります。さらに加齢によって流産率が上昇する傾向もあります3)。
たとえ健康状態に問題がない方でも加齢とともに卵子の数・質は低下していくため、体の変化を考慮した判断が重要です。妊娠を強く希望する場合は、妊活期間を問わず医療機関へ相談してください。
月経の問題や婦人科疾患・感染症の既往がある場合
月経の問題や婦人科系の疾患がある場合、特定の感染症に罹ったことがある場合、そのほか現在の生活習慣により、早期に受診が推奨される場合があります。
例として以下に当てはまる場合は、不妊の原因となる可能性があるため、1年や6か月など特定の期間を待たずに受診を検討しましょう。
- 月経が不順な場合
- 月経量が多い、または月経痛が強い場合
- 過去にクラミジア感染症などの性感染症や骨盤腹膜炎にかかったことがある場合
- やせすぎや肥満がある、喫煙習慣がある場合
月経が不順な方は、排卵障害(排卵がうまく起きていない状態)の可能性があります。排卵障害は不妊に直結する原因のひとつです。排卵障害の原因としては、多嚢胞性卵巣症候群などが知られています。
月経量が多い方や月経痛が強い方は、子宮や卵巣に病気が隠れている可能性があります。たとえば、子宮筋腫は大きさや場所によって着床の妨げになることがあり、子宮内膜症では慢性的な炎症によって卵管が癒着・閉塞する可能性があります。
過去にクラミジアなどの性感染症や骨盤腹膜炎にかかったことがある方は、卵管が炎症や癒着によって狭くなったり塞がってしまっている可能性があります。感染症や炎症自体は治っていても、癒着は残り続けるため、不妊の原因となるため注意が必要です。
やせすぎや肥満、喫煙の生活習慣も不妊につながる可能性があります。極端な体重減少や肥満では排卵が正常に起こらなくなる可能性があります。喫煙は卵巣機能を低下させることが知られており、禁煙することが推奨されます。
該当する項目があっても必ず不妊の原因となるわけではありません。しかし、少しでも不安を感じる場合は事前に検査をしておくことで、安心して妊活を進めることにもつながるため、医療機関へ相談することを検討しましょう。
男性側に気になることがある場合
男性パートナーに気になる症状があるときも、検査を受けるタイミングのひとつです。特に排尿時に痛みやかゆみがある男性は、性感染症などの病気が隠れている可能性もあります。射精時の違和感や勃起の悩みがある場合も、一度専門医へ相談してみると安心です。
また、女性側ほど影響は大きくないものの、男性側も年齢を重ねることで妊娠しにくくなることが知られています。年齢を重ねることで精子の数や運動率が低下し、DNAの損傷率も高くなるため、妊娠しにくくなることに加え、流産や胎児の先天的な問題のリスクも高くなります。
気になることがない方も、妊娠を望むのであれば女性パートナーとともに体の状態を調べることが推奨されます。WHO(世界保健機関)の報告では、妊娠に至らない原因の約半数は男性側も関与しているとされており、知らないうちに妊娠に影響していることも珍しくありません。

男性不妊の原因となる病気は自覚症状がないものも多く、検査などを受けなければ気づきにくいものです。女性が受診を決めたタイミングで、男性も一緒に体の状態を確認するのもよいでしょう。
男性不妊について、詳しくは以下の記事もご覧ください。
不妊症の検査の流れと月経周期との関連
女性の不妊症検査では、月経周期にあわせて行う検査項目があり、男性では事前に準備が必要な項目もあります。受ける時期をイメージし、具体的に計画しておくと安心です。
ここでは不妊症検査の一般的な流れと、月経周期の時期に合わせた検査などを解説します。なお、実際の検査内容や流れは施設によっても異なるため、予約の際に医療機関に確認しましょう。
女性の不妊症検査の流れと月経周期における検査タイミング
女性の不妊症検査では、月経中に実施するもの・月経後に実施するもの・月経周期に関係なく受けられるものがあります。
<検査タイミングの一例>
- 月経中に行う検査(月経1〜5日目頃):ホルモン検査の一部(血液検査)
- 月経後に行う検査:経腟超音波検査、子宮卵管造影検査(HSG)、子宮鏡検査
- 月経周期を問わない検査:AMH検査・甲状腺ホルモン検査(血液検査)
基本的な検査項目として血液検査や超音波検査を行い、ホルモン値や卵巣の状態を評価します。子宮や卵巣、卵管を詳しく調べるために、子宮卵管造影検査や子宮鏡検査を組み合わせることもあります。
初診予約については、月経周期に関わらずいつでも対応してくれる場合や、受診タイミングを指定してくれるケースもあるため、まずは検査を決意した段階で受診する施設に確認したり、予約を取るようにしましょう。
各検査の流れについては、以下のページをご覧ください。
男性側の不妊症検査の流れ
男性の不妊症検査は、基本的にいつでも受けられます。精液の状態を調べる検査(精液検査)を中心に、血液検査などを組み合わせて行います。
ただし、精液検査については検査前の準備が必要です。採取方法によって当日のスケジュールも異なるため、あらかじめ流れを確認しておきましょう。
<精液検査の流れの一例>
- 検査の2〜7日前:禁欲期間を設ける
- 検査当日:自宅または院内でマスターベーションにより精液を採取
- 自宅で採取した場合:1〜2時間以内に医療機関へ持参する
自宅で採取する場合は、事前に専用の容器を医療機関から受け取る必要もあります。まずはどこで採取するかを施設に問い合わせ、余裕をもった検査計画を立てましょう。
当院の男性向け不妊検査について、詳しくは以下のページをご覧ください。
不妊症の検査を受ける前に知っておきたいこと
不妊症の検査を受けた後は、結果に応じた治療を提案されることがあります。
検査を受けても原因が見つからないケースもありますが、妊娠するための選択肢は広がっています。検査の結果を踏まえ、納得できる治療方針を見つけることが大切です。
検査後に治療が必要になることもある
不妊症の検査後には治療をすすめられることがあります。提案される治療は、大きく2種類あります。
- 不妊の原因となる疾患に対する治療
- 妊娠成立を目指すための治療
不妊の原因に対する治療では、ホルモン分泌異常など飲み薬で対応するケースもあれば、手術が必要なケースもあります。男性では精索静脈瘤、女性では子宮筋腫や子宮内膜症などが代表例です。
妊娠成立を目指す治療は、大きく以下2つにわけられます。
- 一般不妊治療:タイミング法・人工授精
- 生殖補助医療(ART):体外受精(c-IVF)・顕微授精(ICSI)など
基本的にはタイミング法からはじめ、人工授精や体外受精へとステップアップしていきます。
ただし、治療の進め方は状況によって異なります。原因疾患の治療と並行して妊娠を目指す治療を進めることもあれば、原因疾患の治療をせず妊娠を目指す治療のみ進めることもあります。
緊急性のない場合、治療を受けるかどうか、どのように進めるかなどについては、お二人の意思が尊重されます。医師からのアドバイスをもとに、望ましい方針を見つけましょう。
検査で原因が見つからないこともある
不妊症の検査を受けても、原因が見つからない「原因不明不妊」の場合もあります。原因不明不妊は全体の10%以上を占めるともいわれており、決して珍しいものではありません。
原因不明不妊は、本当に原因がないのではなく、精子や卵子の機能低下など現在の検査では確認できない要因があると考えられています。
妊娠しにくい原因がわからないと不安になる方もいるかもしれませんが、特定できなくても妊娠を目指すことは可能です。まずは医師から性交タイミングを助言してもらうなど、納得できる方針を見つけていくことが大切です。
不妊症の検査はどこで受けられる?
不妊症の検査は、不妊治療を専門とするクリニックや一般の婦人科・産婦人科で受けられます。
多くの不妊治療専門クリニックでは、男性と女性が一緒に検査を受けられ、お二人の結果を踏まえた治療方針を提案してもらえます。
一般の婦人科や産婦人科も不妊症の検査に対応している場合が多いですが、対応範囲は施設によって異なります。検査項目や男性への対応、検査後の治療などについては事前に確認しておきましょう。
男性の場合は、男性不妊に対応する泌尿器科で検査を受けられる場合もあります。男性がお一人で検査を受けたい場合は、選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。
不妊症の検査に関するよくある質問
不妊症の検査について、よく寄せられる質問に回答します。
生理中に不妊検査をするのはなぜですか?
不妊検査の一部を生理中に行うのは、月経や排卵に関わるホルモンの基礎値を測定するためです。
月経1〜5日目頃は次の排卵に向けて卵巣が準備を始める時期であり、ホルモンの値が最も低い時期です。基礎値とも呼ばれるこの時期のホルモンの値を調べることで、卵巣が脳からの指令に反応しているか、卵胞が順調に発育していける状態にあるかなどを確認し、卵巣機能や排卵に問題がないかを評価することができます。
基礎値のように時期が決まっている検査もありますが、初診予約は月経周期を問わず対応している医療機関がほとんどです。検査スケジュールを確認するためにも、まずは受診を検討している施設に問い合わせてみるとよいでしょう。
妊娠に関する検査は妊活前でも受けられますか?
妊活をはじめる前でも、不妊症に関する検査を受けることは可能です。妊娠や出産に関わる体の状態を調べる検査として「ブライダルチェック」を提供する医療機関も多く、不妊検査とは目的に応じて使い分けられています。
ブライダルチェックは今の体の状態を知ることを目的とした検査で、結婚や妊活に関わらずいつでも受けられます。一方、不妊検査は妊娠に至らない原因を調べて治療につなげるための検査です。ご自身の状況や目的を医療機関に伝えたうえで選択するとよいでしょう。
不妊検査とブライダルチェックの違いについては、以下の記事をご覧ください。
院長からのメッセージ
妊活をしようとしたとき、「いつ検査を受けたらいいのだろう」という疑問がわいてくるのは自然なことです。一般的な目安は1年ですが、年齢や体の状態によっては、それより早く動いた方が良い場合があります。
35歳以上の方は6ヶ月を目安に、40代の方は妊娠を希望した時点で相談することをお勧めします。これは「焦らせたい」のではなく、卵子の数と質は年齢とともに変化していくという医学的な事実を踏まえた提案です。妊活期間がまだ短くても、気になることがあれば遠慮なく受診してください。
もうひとつお伝えしたいことがあります。不妊の原因は男女どちらか一方だけとは限りません。多くのガイドラインで、妊娠に至らない原因の約半数は男性側も関与しているとされています。女性だけが検査を受けても全体像はわかりません。検査はお二人で受けるものです。「自分は関係ない」と思っているパートナーにも、ぜひ一緒に来ていただければと思います。
検査で原因が見つかれば対処する手がかりになりますし、原因が見つからない場合でも妊娠を目指す選択肢はあります。「何もわからない」まま時間が過ぎるより、現在の状態を知ることの方が次の一歩につながります。
不安なことがあれば、まずはクリニックを受診して話だけでも聞かせてください。
参考文献
1)日本産科婦人科学会. 不妊症. 日本産科婦人科学会ウェブサイト.


