男性不妊は、身体の見た目だけで判断することは基本的にできません。一方で、精索静脈瘤やクラインフェルター症候群など、原因によっては身体の特徴が手がかりになることもあります。
この記事では、見た目に変化が出る可能性のある病気の例と、見た目ではわからない場合に確認するための検査をわかりやすく整理します。
男性不妊かどうかを見た目の特徴だけではわからない
男性不妊かどうかを、見た目の特徴だけで判断することは基本的にできません。
精子の数や運動率、形態といった妊娠に重要な要素は外見からはわからず、体つきや性機能に問題がなさそうに見えても、不妊につながっているケースは少なくありません。
一方で、精索静脈瘤やクラインフェルター症候群など、一部の疾患の場合には、見た目の変化が手がかりになることもあります。ただし、これらは例外的なケースであり、さらにそれらの疾患であったとしても、見た目だけで不妊の有無を判断することはできません。
男性不妊かどうかを正確に把握するためには、精液検査をはじめとした医療機関での検査が不可欠です。妊娠を希望して妊活を開始しても一定期間授からない場合や、不安がある場合は、早めに専門の医療機関へ相談しましょう1)。
男性不妊で見た目に特徴が出ることがある病気
男性不妊の多くは見た目だけで判断できませんが、原因となる病気によっては、身体的な特徴が現れる場合があります。
ここでは、見た目に変化がみられることがある原因の病気として、精索静脈瘤とクラインフェルター症候群について解説します。
精索静脈瘤
精索とは、精巣からお腹側につながる束状の管で、内部には精管やリンパ管、神経のほか、精巣へ血液を運ぶ動脈と心臓へ戻す静脈が通っています。
精索静脈瘤は、精巣から心臓へ向かう静脈内で血液が逆流し、精索内の静脈がこぶ状に膨らむ病気です。血液が逆流すると精巣内に熱がこもってしまい、精子をつくる機能の低下(造精機能障害)をきたすおそれがあります。90%以上が左側の精巣に発症し、造精機能障害の約3割にはこの精索静脈瘤が関与しているとされています。
病状が進行すると、逆流している静脈の部分がぶどうの房のような膨らみとして目で見て確認できるのが特徴です。見た目だけでなく、陰嚢内に血管のコブが触れることもあり、しばしば「ミミズ腫れ」や「うどん様」などと表現されます。
そのような見た目の変化以外に、足の付け根付近の痛みや陰嚢の違和感を覚える方もいますが、自覚症状がないケースも珍しくありません。精索静脈瘤を発症している場合、症状の有無に関わらず、精液の質に影響を与える可能性があります。
クラインフェルター症候群
クラインフェルター症候群は、男性の性染色体が通常(46,XY)より多い状態(47,XXYなど)で生まれる遺伝性の疾患で、男性不妊の原因となることがあります。
ただし、外見上の特徴がはっきり現れないケースも多く、見た目だけで判断できる病気ではありません。
思春期以降には、以下のような特徴が現れる場合があります。
- 精巣や陰茎のサイズが小さい
- 胸が膨らむ(女性化乳房)
- 体毛や髭が薄い
- 手足が長く、肩幅に対して腰回りが広い など
ただし、これらの症状には個人差があり、すべての方に当てはまるわけではありません。
精液の見た目の特徴だけでは男性不妊の判断はできない
精液の色が薄い、量が少ないと感じると、「精子に問題があるのでは」と不安になる方も多いでしょう。しかし、精液の見た目だけでは、男性不妊かどうかの判断はできません。
射精時に出る液体の大半(90%以上)は、前立腺や精嚢などからの分泌液です。精液の色や量は、これらの分泌液の状態を示すものであり、精子そのものの状態を反映したものではありません。
たとえば、白く濁った精液でも精子がほとんど含まれていないケースがあります。逆に、透明に近い精液でも十分な精子が存在している場合もあります。
精子の状態を正しく知るためには、医療機関での精液検査が欠かせません。気になる点がある場合は、不妊症に対応する泌尿器科やクリニックで、一度相談してみるとよいでしょう。
無精子症については、以下の記事も参考にしてください。
見た目や普段の生活で気をつけたい男性不妊のリスク
男性不妊は病気だけでなく、日々の体の状態や生活習慣が影響することもあります。リスク要因として知られているのが、肥満や喫煙、精巣の温めすぎなどです。
肥満
肥満は体型の変化として自覚しやすい一方で、体の内側ではホルモンバランスに影響を与え、精子の質に関わることがあります。
適正体重の方(BMI18.5〜25.0未満)に比べ、肥満の方(BMI25.0以上)では、体重増加によってホルモンバランスが崩れ、精子の動きが鈍くなったり、形に異常のある精子が増えたりします。
一方で、適正体重に戻すことで、精子の質が改善したという報告もあります。食べ過ぎに注意し、無理のない範囲で体を動かす習慣を日常生活に取り入れてみましょう。急激なダイエットではなく、継続できるペースで健康的な体重を目指すことが大切です。
喫煙・過度な飲酒
タバコやアルコールの過度な摂取は、精子の質を下げる原因となります。
タバコに含まれる有害物質は、精子の数を減らすだけでなく、動きを鈍くしたり形に異常を生じさせたりします。さらに、血流の悪化や男性ホルモンの分泌量の減少により、勃起障害につながる可能性もあります。
日常的に多量のアルコールを飲んでいる方では、精子が作られる過程に障害が生じる可能性があると報告されています。
妊活を考えている場合は、禁煙と節酒を心がけましょう。
精巣の温めすぎ
日常生活において、精巣を温める行為には注意が必要です。精巣は、通常の体温よりも2〜3℃ほど低い環境で良好に機能するため、温度が上昇すると精子をつくる機能が低下する可能性があります。
具体的には、以下のような習慣は避けましょう。
- 長時間のサウナ利用
- 稼働中のノートパソコンを膝の上に置く行為
- スマートフォンをズボンの前ポケットに入れる習慣
日常のちょっとした習慣を見直すことが、精巣への負担を減らすことにつながります。
ただし、これらの要因があっても、実際に精子の状態は見た目だけでは判断できません。
男性不妊の検査方法
男性不妊は見た目だけでは判断できないため、実際の精子の状態や体の内側の状態を検査で確認することが重要です。
男性不妊の検査には、精子の数や運動率を調べる精液検査をはじめ、精子のDNA損傷を調べる精子DNA断片化指数(DFI)検査、ホルモン検査などがあります。
中でも代表的な検査である精液検査は、その日の体調や精神的な負担によって検査結果が変動する場合があります。そのため、1回の検査結果のみで判断せず、何度か検査を繰り返すこともあります。
男性の不妊検査に関することについては、以下の記事で詳しく解説しています。
男性不妊に関するよくある質問
最後に男性不妊に関するよくある質問について回答します。
男性不妊の検査(精液検査)は自宅でもできる?
精液検査は、簡易検査キットを利用すれば自宅でも行えます。ただし、確認できるのは精子の濃度や運動性など一部の項目のみで、医療機関で行う詳細な検査の代用にはなりません。
自宅での検査は、受診を考えるきっかけとして活用し、精液の状態を正確に知りたい場合や不妊の原因をしっかり調べたい場合には、医療機関での検査を検討しましょう。医師による適切なアドバイスを受けられるため、より確実で信頼性の高い評価が可能になります。
男性不妊の割合と原因は?
WHO(世界保健機関)の報告によれば、不妊症の約半数には男性側の要因が関わっているとされています。男性不妊は主に3つのタイプに分けられます。
最も多いのが造精機能障害で、全体の82.4%を占めています。精巣で精子を作り出す働きが低下し、精子の数や運動性、形態が基準を満たさなくなる状態です。
次に性機能障害が13.5%を占め、勃起が不十分であったり維持できなかったりする勃起障害、射精が困難な射精障害などにより、性交渉自体が難しくなります。
精路通過障害は3.9%に見られ、精巣では精子が生成されているにもかかわらず、精液中に精子が含まれず体外へ排出されない状態を指します。
男性の原因について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
院長からのメッセージ
「男性不妊は見た目でわかるのか」という疑問は、多くの方が抱くものです。結論から言えば、身体的な見た目だけで男性不妊かどうかを判断することは、基本的にできません。
精子の数や運動率、形態といった妊娠に重要な要素は、見た目からはわかりません。体つきや性機能に問題がなさそうに見えても、不妊につながっているケースは少なくないのです。
ただし、精索静脈瘤のように、病状が進行すると陰嚢に膨らみが見えることがある病気もあります。また、クラインフェルター症候群では、精巣が小さい、体毛が薄いなどの特徴が現れる場合もあります。これらは例外的なケースですが、気になる変化があれば、それが受診のきっかけになります。
精液の見た目についても、色や量だけでは精子の状態はわかりません。白く濁った精液でも精子がほとんど含まれていないことがあり、逆に透明に近くても十分な精子が存在していることもあります。
男性不妊かどうかを正確に知るには、精液検査をはじめとした医療機関での検査が不可欠です。妊娠を希望して1年以上(35歳以上の場合は6ヶ月以上)授からない場合は、早めにご相談ください。
参考文献

